2014年12月12日
【ハックルさん激白!?】『『もしドラ』はなぜ売れたのか? 』岩崎夏海
『もしドラ』はなぜ売れたのか?
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、リアル書店で目にして、思わず即買いしてしまった1冊。お馴染み岩崎夏海さんが、『もしドラ』の誕生の秘密と、その大ヒットの要因を振り返る、という興味深い内容です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
300万部のミリオンセラーとなり、社会現象ともなった『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』。
この伝説の作品は順風満帆で刊行となったわけではない。
何があったのか?
小説家になろうとするも挫折、秋元康氏のブレーンになるも「戦力外通告」を受け、人生のどん底とも言える状態になってしまう……。
『もしドラ』刊行から5年、ミリオンセラーの陰にあった、人知れぬ挫折と涙、そして作品への執念をいま語る。
かつてはてなブックマークでホッテントリーに入りまくってた頃から、岩崎さんを知る方にとっては、感慨深いのではないかと(私含む)……。
宮脇書店 本店 店頭 もしドラ等身大POP / fukapon
【ポイント】
■1.「ゆっくりした変化」に着目する時代の潮目を読むとき、ぼくが心がけているのは「ゆっくりとした変化」に着目することだ。それも、肉眼では気づけないような微細な変化を見つけ出すことに気を割いている。
なぜなら、そういう微細な変化こそ重要だからだ。微細でゆっくりとした変化こそ、次の時代を決定づけるのである。
逆に「速く、大きな変化」は、本当の変化につながらない。すぐにまた揺り戻しが来て、元の鞘に収まるからだ。そうして、長い目で見ると変化とならない場合も多い。
両者の違いは、喩えていうなら「氷河の流れ」と「潮の満ち引き」の違いだ。
■2.アーカイブを引用する
ぼくが『ダ・ヴィンチ・コード』に惹かれたのには理由がある。それは、『ダ・ヴィンチ・コード』のヒットが、ぼくの考えた理論を裏づける形で展開していたからだ。『ダ・ヴィンチ・コード』は、ぼくが考えたヒットの法則をそのまま実践するかのように流行していた。それに強く惹きつけられたのだ。
その理論とは、「アーカイブを引用する」というものである。つまり、そのコンテンツの中に、先行する何かのコンテンツがそのまま出てくる――そういうコンテンツこそが、魅力あるコンテンツとして多くの人の胸を打つ――と考えていたのだ。
■3.キャラクターは女性の方がファンが付く
男性というのは、同性である男性のキャラクターに対しては、同性愛者でない限りあまり興味を示さない。しかし女性は、同性愛者でなくても同性である女性のキャラクターに対して強い関心や興味を示すのだ。
実際、『涼宮ハルヒの憂鬱』の女性キャラクターには、たくさんの女性ファンがついていた。だから、男性キャラクターと女性キャラクターだったら、ファンとなってもらえる可能性は断然女性キャラクターの方が高かったのだ。
■4.『がんばれ! ベアーズ』を原型にする
そんなとき、三谷幸喜さんの多くの作品は『がんばれ! べアーズ』を踏襲していると聞いたのだった。だから、これを見習いたいと思った。さらにいえば、ぼくもいつかは『がんばれ! べアーズ』を原型とした作品を書いてみたい――そう考えたのである。
そんな折、ドラッカーの『マネジメント』を読んだ。読みながら、これはぼくが構想していた「17歳の女子高生と人類にとってのアーカイブを組み合わせた作品」のモチーフにぴったりだと思いついた。17歳の女子高生と『マネジメント』は、いかにも結びつきにくいものなので、それを組み合わせれば、大きな異化効果が期待できると思ったのだ。
■5.「た」と「だ」を繰り返す
物語というのは、覚醒しているときよりも、朦朧としているときの方がよりリアルに、より面白く感じられるものだ。(中略)
鼓直の訳文は、読者をそういう状態にいざなうのである。だからぼくは、なぜ彼の訳文にそうした効果があるのか、あるとき、自分なりに分析してみたことがあった。
すると、そこで見つけたのは、語尾に「た」と「だ」が頻出する――ということだった。このことが、韻を踏むとまではいかないが、独特のリズムを形作っていた。そうして読者を、何とも言えない朦朧とした気持ちにいざなうのだ。そこのところに物語を流し込むから、よりリアルに、より面白く感じられるのだった。そのためぼくも、いつか「た」や「だ」が頻発する文体で小説を書いてみたい――と思っていた。
■6.表紙の鍵は背景にアリ
また背景には、ぼくが子供の頃に遊んでいた多摩川の支流の浅川をイメージしてもらうようお願いした。
この表紙が、『もしドラ』の売上に果たした貢献は計り知れない。中でも取り分け、背景の効果は大きかったと思っている。
というのも、前述したように背景は、他の表紙と大きく差をつけるファクターになるのと同時に、キャラクターとは違って人々の無意識に訴えかけるため、なおさら強い訴求力を持つからだ。
しかもその絵柄が、夏の青い空に清涼な川の流れと、日本人の琴線に響くような美しい要素に満ちているとなれば、多くの人に魅力的に感じてもらえるだろうことは想像に難くなかった。
【感想】
◆本書のまえがきでは、岩崎さんが『もしドラ』のヒット後に、最も多く聞かれたものとして、「ここまで売れると予想していましたか?」という質問を挙げています。これは、前提として質問者が「いや、していませんでした」的な回答を予想したものであることは明白。
しかし岩崎さんはこの質問に対して、「はい、していました」と、毎回答えていたのだそう。
本書は、なぜ岩崎さんがそう答えていたのか、つまり「なぜここまで売れると思っていたのか」を明かしたものです。
◆岩崎さん曰く「単に1つの理由からではない」とのこと。
上記ポイントでは、そのいくつかについて簡単に抜粋していますが、執筆当時(もしくはそれ以前)から、そう考えていた、と言われたら、「そうなんですかー」と言うしかなく……。
この手の大ヒット作品については、ヒット後に当事者から「タネ明かし」をされることがあるものの、その多くが「後づけ」だったりします。
実際、上記のポイントも、それぞれが「ヒットの要因」ではあるかもしれませんが、「こうしたからダブルミリオンまで行く」とまで言い切れるものではないでしょう。
……岩崎さんは、やたら発売前の時点で「200万部売れる」と予測していたことを強調している(編集の加藤さんとの会話を紹介する等)んですけどねw
◆とはいえ、上記のポイントは、少なくとも岩崎さんが「なぜ、このようにしたのか」の「理由」が明かされている点で、一読の価値は十分あります。
特に、私個人としてはあまり快適ではなかった「『た』と『だ』の繰り返し」に、そんな意図が込められていたとは。
ちなみに、上記ポイントの5番目では触れていませんが、この文体には「耐用年数を長くする」効果がある模様。
また、その後フォロワーを大量に生み出したあの表紙も、ついメインキャラクターに目が行ってしまいますが、実は背景にまでこだわっていたんですね。
実際、『もしドラ』の表紙は、人物と背景を別の方が描かれていて、その分製作費が倍かかったのだそうです。
肝心の本書の表紙は、めっちゃ暗くて、ちょっと不安なんですがw
◆ただし、岩崎さん自身も言われているように、この『もしドラ』のヒットには「運」の要素もありました。
はてなダイアリーでは人気だった頃に、『もしドラ』の原型となる記事を「自信を持って」投稿したものの、完全に不発で、「まなめはうす」さんに拾われて、何とか復活して「ホッテントリ」入りした、とか。
そしてもちろん、その記事を編集の加藤さんが、そのエントリーを目に留めなければ、「本」という形にはならなかった可能性は高いです。
丁度加藤さんのいたダイヤモンド社が、ドラッカーの生誕100年を記念して、「ドラッカーキャンペーン」を行なう予定であり、その関連本を検討していたことも、「時の運」と言えるでしょうし。
そういう意味で、「再現性」の点で難しい部分もありますが、ヒットの分析やマーケティング好きの方なら、本書はお楽しみ頂けるハズ。
……はてなダイアリー時代のエピソードももちろんありますし(小声)w
ハックルさんの知られざる真実がここに!
『もしドラ』はなぜ売れたのか?
●主な内容
『もしドラ』は挫折から生まれた
時代の潮目を読む方法
発想力、想像力の養い方
ドラッカーとの出会い
最初のシノプシス
ブログをスタートさせる
加藤さんと会う
唯一の奇蹟
涙の理由
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【編集後記】
◆ちょっと気になる本。外資系エリートのシンプルな伝え方
早くもKindle版も出ていますが、果たして!?
ご声援ありがとうございました!
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