2014年12月07日
お前らもっと『交渉は創造である』の凄さを知るべき
交渉は創造である ハーバードビジネススクール特別講義
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、前々回の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。中々「骨太」ゆえ、翌日分の本と並行しながら、時間がある時に読み続けていて、やっと昨日読了しましたよ(遅すぎw)。
アマゾンの内容紹介から。
大物作家から持ち込まれた原稿は、1400ページを超えていた。出版社は、「これでは長すぎる」と言い作家は「原稿は削れない」と言う―。交渉は決裂し、原稿はお蔵入りに。決裂した交渉をひきとり、ベストセラーを二つ出すことになったノートン社の「創造的枠組み転換」とは?北アイルランドの和平交渉から、教え子の誘拐事件まで、20年以上、実際の交渉の研究を続けてきた著者が初めて明かす交渉のABC。
思わず付箋も貼りまくりました!
なお、タイトルはお約束の「ホッテントリメーカー」作でありますw
Prof Mnookin at the CMR No011F / U.S. Embassy Tel Aviv
【ポイント】
■1.相手の目にどう映っているか意識する一流の交渉人は、状況が相手の目にどう映っているかにも気を配る。ウィリアム・ユーリーは著書『ハーバード流"No"と言わせない交渉術:決定版』で、その場の状況にくまなく目配りすることの重要さを説く。相手と真剣に交渉しながら、公平な第三者のように状況を俯瞰するのである。ユーリーはこれを「バルコニーに出る」と表現する。それにはステージの中央に立ちながら、最後列に座っている観客の視点も併せ持つという高度な心理的能力が必要だ。こうした能力を身につけると、自分の発言が必ずしも交渉相手にそのまま伝わらないこと(逆に相手の発言をあなたが誤解していること)もあるとわかるようになる。
■2.「そいつだったら、どうするだろう?」と考える
コーネル大学のエバン・ボルマン、二ューヨーク大学のカイル・エミッチの最近の研究では、我々は他人が直面している問題について考えるときのほうが、自分が同じ問題に直面しているときよりも創造的な解決策を思いつくことが明らかになった。
映画『ザ・プロフェッショナル』で、ジーン・・ハックマン演じる犯罪組織の親玉が、自分はそんなに頭が切れるわけではない、と語るシーンがある。
「オレは、自分より頭のいいヤツのことを想像するんだ。『そいつだったら、どうするだろう?』って」
■3.今直面している状況を、過去の状況と比較する
交渉をしているときは、過去に見たことのある優れた解決策を思い返してみよう。まるで関係のなさそうなケースでも構わない。目の前の状況に役立つような教訓、関連性、組み合わせが見つかるかもしれない。本書などで事例を読んだら、ひと呼吸おいてこう自問してみよう。「こんなケースを経験したことがなかったか」「あのとき失敗した交渉に、こんなアプローチを使うことができたんじゃないか」「将来に向けてノウハウを充実させるにはどうしたらいいだろう」と。
■4.交渉相手を協力者にする
交渉の当事者同士が一緒にまとめた合意案ほど、受け入れられる可能性は高くなる。交渉に出席しない他の関係者の支持も取り付けなければならない場合はなおさらだ。脚本家でプロデューサーのロバート・コスバーグは、ハリウッドで「売り込みの達人」と呼ばれた。コスバーグはこう語っている。「映画会社にアイデアを売り込むには、聞き手を自分の協力者にしなければならない。聞き手が自分の上司に売り込むときに、それは自分の企画で、通すことが自分の利益だと思ってもらう必要があるからだ。ボブ・コスバーグのプロジェクトではなく、自分のプロジェクトだ、と。ぼくの名前なんか出してもらわなくていい」
■5.過去の交渉から学ぶための3つの注意点
経験から正しく学ぶには次の3つの注意点を頭に入れておくといい。1 誤った教訓を引き出さないようにしよう。見当違いの結論にもとづいて行動するより、何が正解かわからないことを認めるほうがはるかにいい。
2 満足と成功を混同しない。
3 交渉はあなた一人でするものではない。
■6.交渉の後に振り返る
このような振り返りの作業は一人ですることもできるし、会社あるいは組織を代表して交渉をしたのならチームとともに取り組んでもいい。交渉の事前準備の大切さを理解している人は多いが、交渉後の分析はおろそかになりがちだ。それは組織にとっても、個人にとってももったいないことだ。「事後レビュー」は軍隊では常識であり、交渉においても習慣にすべきだ。
【感想】
◆タイトルからして、普通の交渉術の本と違う本書は、確かに内容の方も異なっていました。実際、本書では「相手を打ち負かす」といったタイプの交渉術とは無縁です。
そもそも、交渉術の本に良く出てくる「「BATNA(バトナ:交渉が決裂した時の対処策として最も良い案)」辺りは、すでに「常識」の範疇で。
むしろ、BATNAが役に立たなかったり(歩よれば双方の利益を大きくできる等)、BATNAが用意できないような交渉(まだ他に内定をもらっていない学生等)でどうすべきか、等々について掘り下げているのが本書なわけです。
◆TIPSとは違うので、上記ポイントでは取り上げませんでしたが、本書の冒頭にはこんなエピソードがありました。
投資会社を経営するある男性が、小さなケーブルテレビ会社を800万ドルで買収し、事業を黒字化することに成功します。
彼は1年後に近隣の同業者を買収して事業を拡大することにし、その買収金額をMAX1200万ドルと試算の上、相手企業のオーナーと交渉しますが、1500万ドルを要求され、交渉は難航。
売り手の最低価格が、買い手の最高価格を300万ドルも上回っている状況で、いかに合意に持ち込むか……?
いかんともしがたく、去り際に彼は「最後に1つだけ質問させて下さい」とオーナーに問いかけます。
「おたくの会社に1500万ドルの価値があるとしたら、うちの会社はどうでしょう?」そこで彼は、交渉をひっくり返し、買い手から売り手へと立場を変えたという。
「そうだな、おたくは少し規模が小さいから、1400万ドルぐらいだろう」
なんという、パラダイムシフトw
◆もう1つ興味深かったのが、ボスニアとセルビアの車のナンバープレートのお話。
対立していた両者は、1995年のデイトン合意締結後も関係が冷え込んでいました。
ボスニア政府はセルビアのキリル文字のナンバープレートを使う気がなく、セルビア政府もボスニアが採用している普通のアルファベットを受け入れるつもりがなく。
どちらかが譲歩し、相手のアルファベットを受け入れることなど考えられませんでした。
果たして、この問題をどのように解決すべきか?
……については、本書にてご確認を(ネタバレ自重)。
これまた「目からウロコ」の解決策でした!
◆実は、こうした「創造的なアプローチ」は、本書でも第4部の「上級編」に多く収録されており、上記ポイントもそこからのものがほとんどです。
お時間がない方は、リアル書店で第4部の第10講だけでもご確認を!
実は上記のナンバープレートは、第10講における事例問題の1つであり、ここには全部で4つの「創造的な解決法を学ぶ問題」が収録されていました。
……ここだけで記事をまとめた方が良かった可能性も?(今さらw)
もちろん、いきなり「上級編」というアプローチに抵抗のある方は、私のように第1部からじっくりお読み頂ければ。
かれこれ2週間以上かかって読んできましたが、個人的にはそれだけの価値がある作品だと思っております。
「ワンランク上」の交渉術を学びたい方に!
交渉は創造である ハーバードビジネススクール特別講義
第1部 基礎編
1.そもそも交渉が必要か?
2.『オーシャンズ11』にみる交渉の三角形
3.ニューヨークの大地上げに学ぶ
第2部 変化する現場で
4.一流の交渉人は「二面性」を兼ね備える
5.アドリブの極意
6.危機的状況をどう脱するか?
第3部 各段階のテクニック
7.開始
8.重大局面
9.締めくくり方
第4部 上級編
10.創造力による枠組み転換
11.追求者と満足者
最終講 交渉に正義はあるか?
交渉でカオスを受け入れるべき25の理由 戦略の手引き
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【交渉術】『最強交渉人のNOをかならずYESに変える技術』島田久仁彦(2013年08月08日)
【交渉術】『プロ弁護士の「心理戦」で人を動かす35の方法』石井琢磨(2013年07月29日)
【裏ワザ?】『弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール』奥山倫行(2013年01月13日)
【編集後記】
◆「交渉術」と言えばこちらの本も。ハーバード実践講座 内面から勝つ交渉術
ページ数的にも、今日の本よりは読みやすそうですね。
ご声援ありがとうございました!
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