2014年11月26日
【知的生産】『サマる技術』船登惟希
サマる技術 (星海社新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、東大出身にして、ディー・エヌ・エーを経て独立し、参考書の執筆等を行っているという、船登惟希さんの新書。タイトルにある「サマる」とは「要約(サマリー)する」の略なのですが、選書から読んだ本のまとめ方、内容の覚え方まで指南してくれる、というスゴ本です!
アマゾンの内容紹介から、一部引用。
あなたは、先月読んだ本の内容を覚えていますか? 仕事の合間に読んで「ためになった!」と思ったネットの記事の内容を人に話すことができますか? 私はこれが、心底苦手でした。仕事柄、年間1000冊以上の本に目を通しますが、読んだそばから内容を忘れてしまい、頭に入れたはずの知識を活かすことができていなかったのです。しかし、ある時『認知科学』という学問分野に出会い、科学的なアプローチをもってこの課題の克服に成功します。キーワードは、要約(サマる)×クラウド。さあ、「使い捨ての知識」を頭に流しこむ日々に別れを告げ、「一生ものの知」をスマホに入れて持ち歩く、生産性の高い人生をスタートさせましょう!
ただの「読書本」とは、まったく違う1冊でした!
Reading / ZapTheDingbat
【ポイント】
■1.本の選び方の注意点●探検型
(1)「売れ筋商品がすべて良いわけではない」●追求型
(2)「翻訳本は良質なものも多いが、注意も必要」
(3)「読んで満足しない」
(4)「なぜその本が気になったのか自問する」
(1)「「探検型」とは根本的に異なることを意識する」(詳細は本書を)
(2)「できるだけ多くの本を読む方がよいという前提」
(3)「1冊目に学術書の入門編を読む」
■2.目次を読むことはあまり有効ではない
ちなみに、「目次を読む」ことを推奨している読書術の本もありますが、私はあまり有効だとは思いません。なぜなら、本を読み進めていく過程で目次の内容を忘れてしまうことが多いからです。
人は一般に、意味をなすものを長期的に覚えており、忘れにくいことが知られています。目次は、各章の要点が羅列されているだけなので、全体として意味をなしているとは言えません。よって、頭に残りにくいのです。(中略)
目次は本の輸郭でしかなく、その中身となるのが「はじめに」「あとがき」「各章の最初と最後」ですので、やはり、大事にするぺきは「はじめに」と「あとがき」、「各章の最初と最後」なのです。
■3.覚えたいことを「何度も読む」のは時間の無駄
一般的に長く覚えておくために有効だと言われ、よく行われるのが必要な情報を「繰り返し読むこと」です。これを専門用語でリハーサルと呼びます。リハーサルは、ワーキング・メモリ内に情報を留めておくためには有効ですが、貯蔵庫に移すには作用はほとんどないということが知られています。つまり、残念ながら、長い間記憶しておくのに有効な方法であるとは言えません。
例えば、初対面の人と打合せをする際、その人の名前を覚えようと「田中さん、田中さん……」と繰り返し頭の中で唱えたことはありませんか?
しかし、議題に集中して数分もすると「あれ、鈴木さんだっけ? 高橋さんだっけ?」となり、テーブルに並べられた名刺をこっそり見るハメになったりします。こうした経験はまさに、リハーサルが長期記憶には有効ではない証拠なのです。
■4.メタ認知のために、要約を作る
要約は、主題をきちんと摑んでいなければ、作ることができません。
要約を作ることを通して、自分が理解できているかどうかをチェックすることができ、その過程を経ることで、さらに理解度が向上するのです。このように自分が理解しているかどうかを自分自身で確認することを、専門用語でメタ認知といいます。
要約を通して理解できていない箇所を発見すると、もう一度読み返したり調べたりして、それを補おうとします。こうして、必然的に理解が深まります。
■5.Google Documentを使って要約を作ってみよう
本書では、私が最も使いやすいと判断し、実際に日々使用している、Google Documentを使って解説していきます。(1)インターネットに接統したパソコンを用意する(詳細は本書を)
(2)要約用のフォルダを作る
(3)ジャンルごとにフォルダを作る
(4)ファイルを作る
(5)自動改行をONにする
(6)要約を作る
■6.小見出しごとに要約を作る
「活用する」ためには、できるだけ多くの事例を一緒に覚えるべき、ということは以前お話しましたが、そういった意味でも、小見出しごとに要約を作るべきなのです。
また、章の最初には概要や全体における位置づけ、章の最後にはまとめなどが記載されているものですが、小見出しでは、そこで著者が何を言いたいのか、章の中のどういった位置づけなのかを読み手側がきちんと捉えなくてはなりません。そういった観点からも、小見出しごとにきちんと要約し、著者の意図していることを読み取ることには、大きな意味があります。
【感想】
◆冒頭でも触れたように、本書は「要約」がメインテーマなのですが、それ以外にも重要なお話がいくつもあって、見逃せませぬ!まず第1章では「選書」について。
正直、ここだけで記事が1本書けるくらい付箋を貼りまくったのですが、そのいくつかは上記ポイントの1番目にサラっと書かれています。
たとえば、いきなり翻訳本が俎上に上がっている理由の1つが「事例の紹介に多くのページを割いており、無駄が多い」こと。
具体例ではなんと、デール・カーネギーの『人を動かす』のとある部分が挙げられています。
人を動かす 新装版
詳細は本書を読んで頂きたいのですが、確かに指摘された箇所は、主題に比べて、事例が多すぎるカモ。
他にも、当ブログの読書さんであれば、この第1章は活かせる「選書TIPS」が豊富にあると思われます。
◆続く第2章は「読んだ本」の内容をいかに記憶して、活かすか、というお話で、これらは「読書術」のみならず、勉強本のテーマにも近いもの。
ところが、上記ポイントの2番目にあるように、王道テクの1つである「目次を読む」ことがdisられてて、ビックリの巻!?
さらに、上記ポイントの3番目では、「繰り返し読む」ことも否定されており、これは勉強本著者さんだったら、ひと言いいたいところではないか、と。
巻末に参考文献がどっさり収録されているものの、具体的にどの本に書かれているのかが分からないのが、ちと残念なのですが……。
◆一方、「繰り返し読む」ことの代わりに、船登さんが推奨しているのが、「整理整頓」と「キーワード化」。
前者のテクニックは、「グループに分ける」「順々に並べる」「階層化する」「図表を作る」等。
後者のテクニックは、「言い換える」「意味づけする」「イメージ化する」等で、これらは、従来の勉強本とも矛盾しません。
他にも、「より多く記憶するには『アタマを空っぽにする』より、紐づけられる分、知識が多い方がよい」等、なるほどな指摘もありました。
……これはもう、今後ガチな勉強本を出して頂いた方が良さそうなw
◆そして第3章からが、本題である「要約」について。
上記ポイントの5番目では、Google Documentを使う前提になっていますが、本書ではキチンとクラウドとアナログ(とPCや外付けHD)の、それぞれのメリット・デメリットを挙げて比較しています。
ただし、シェアをしたり、モバイルやタブレットからも使えることから、本書ではクラウドを推奨。
もっとも、「要約」のやり方自体は、アナログでも、PCでも活用できるものなので、私のような超アナログ人間でも実践できます!
……と言いつつ、ボリューム的な問題で、上記ポイントではほとんど触れられていないのですが。
本書では、実際の文章を用いて、具体的な要約の手順を示していますので、そちらをご覧頂きたく。
いったん要約した後に、それらを構造化し、削っていった結果、3ページ強あった文章が簡潔にまとめられています。
◆なお、第3章では「1冊の本の要約」でしたが、第4章では「複数の本の要約」を指南。
確かに「複数の要約を1つの体系的な知に統合することで、活用しやすさが大きく増す」という本書の指摘はもっともです。
これもまたボリューム的に引用できなかったので、詳しくは本書にて(すいません)。
ただ読書するのではなく、活用する前提で要約する、という本書の主張は、多くのビジネスパーソンにも賛同して頂けるかと。
書評系ブロガーとしても、目からウロコが落ちました!
サマる技術 (星海社新書)
序章 情報の扱いには、正しい技法がある
第1章 「いい本」を選びとる方法
第2章 「理解」「記憶」「活用」のメカニズム
第3章 本をサマって、活用する
第4章 サマる技術で、「知」を統合する
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【編集後記】
◆「勉強本オタク」としては、巻末の参考文献にあったこの本が気になりました。記憶と思考 (認知科学の基礎 3)
かなり古い本ですし、内容もよくわからないのですが……。
ご声援ありがとうございました!
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