2014年11月25日
【オススメ!】『図解でひらめく! ビジネスのヒント55』中村和巳
図解でひらめく! ビジネスのヒント55 (リクルートスペシャルエディション)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、リアル書店でたまたま見つけた起業本。著者の中村和巳さんは、大手外資コンサル会社で新規事業等のコンサルティングに従事し、現在は大企業やネットベンチャーの事業開発を支援されているだけあって、「起業のリアル」が生々しく描かれています。
アマゾンの内容紹介から。
プロのコンサルでは自明だけど、素人はよくわかっていない基礎コンセプトを55連発。 何よりもビジネスヒントの図解が正確で、「直観でわかる! 使える! 」が特徴。
このコンテンツ内容で、このお値段というのは、「お買い得」以外の何物でもありませぬ!
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【ポイント】
■1.「利益」と「規模」のどちらかを備える事業を始めるにあたって最も大事なものは「利益」「規模」の2つです。少なくともこのどちらかが大きくないと事業として成功することはできません。絶対に必要です。「利益」が必要な理由は、必ず不況が乗るからです。利益の少ない事業は不況時に資金ショートを起こしやすく、倒産してしまいますから、不況を生き抜くことができません。(中略)
「規模」が必要な理由も、やはり不況が来るからです。不況時には大企業か規模の大きい事業のほうが有利です。規模の大きな事業は下請けを使いますから、不況時には下請けを減らすことによって、自社の雇用を維持します。
■2.「拡大する格差」上下のどちらかを支援する
例えば、格差の拡大を大いに反映したのが、自動車産業でした。輸入を中心とする高級車と低価格を売りにする小型車、軽自動車の双方が増え、中間的な性格の自動車は減っていきました。この間、トヨタが作ったレクサス、アウディといった目新しいメーカーが大きく業績を伸ばしています。
格差の下側に注目したビジネスも数多く伸びました。非正社員を中心する派遣ビジネス、低価格を売りとするユニクロを筆頭としたファスト・ファッション、ブランド品の在庫処分に注目したアウトレット・モールなど、数多くの成功した事業は格差の下側の伸びを反映したものです。
■3.「気分のオマケ」を付けておく
「心理」を伴ってヒットした事業は多数あります。コーヒーショップに楽しい気分を持ち込んだスターバックスコーヒーは、上手に心理を応用しています。(中略)このように、数多くのヒットビジネスの背景には「気分」という隠れた勝因が潜んでいるのです。
「気分」と「感情」は異なります。感情は一時的なものですが、気分は持続的に維持されます。従って、ビジネスに「気分」を取り入れようと考えるのなら、購入前から購入時、購入後まで楽しんでもらう一貫した工夫が求められます。つまり、「買う前から楽しくて、使ったあとも楽しい」という一流の流れをプロデュースしたほうが良いのです。
■4.「社会事業」の考え方でビジネスを拡張する
現代ビジネスの最前線は、「社会事業」の領域に達しています。例えば、プリンターを販売した場合に、トラブル対応のためのコールセンターを幾ら充実させても儲かりません。しかし、顧客が購買後のアフターフォローを望んでいるのであればプリンターと電話対応サービス、保証サービスをセットで売ればいいのです。このようにしてヒットした事業が沖電気です。沖電気は一見儲からな牡会的な役割を買って出たことが、結果的に販売強化に結びつきました。
■5.価格を上げたいなら、「モノ」から「ヒト」に近付く
人は誰でも自分のことを考えています。モノのことは考えていません。ですので、価格を上げたかったらモノの価値ではなく、人に近い側の価値を上げるのが最も早いやり方です。例えばですが、インターフェースと呼ばれる画面表示やタッチの出来において優れる製品は昔から高く売れる傾向がありました。アップルの製品が高値で売れる理由のひとつは、タッチが使いやすいといった皮膚感覚の話であり、通信の性能によるものではありません。(中略)
「なんだモノか」と粗末にされるから、高い価格で売れなくなるのです。しかし、「これは自分に関係する」と思えば、人は財布の紐を緩めます。その人情を活用できないようでは買い叩かれる一方です。一度「モノ」から「人」に視点を移してやり方を変えてみてはいかがでしょうか。
■6.起業したいなら、まず「現職で1位」を取る
起業して成功している人のほぼ全てが、サラリーマン時代には職場のエースでした。以前いた職場の役職者に、退職を慰留されているケースは幾らでも見つかります。あるいは天才プログラマー兼大学生であったり、最高クラスの大学院の博士など、「勝ち組」が成功しているケースが大多数です。
高度成長期と現代ビジネスの違いは、ここにあります。誰でも出来るタイプの事業で起業できる機会は既に消滅しているのです。(中略)
逆に、起業の世界で最も早く消えるのは「元大企業、成績中位の正社員」です。大企業にいて自信過剰になって起業したのでしょうが、前職の企業名には何の意味もありません。
【感想】
◆この本、形式としてはムック本なので、ページ数はあまりないのですが、ぶっちゃけ付箋を貼りまくりました。いつもならその画像を掲載しているところ、なまじ本自体が薄いので、画像だけ見ても、かえって訳がわからなくなるというw
スタイル的には、見開き2ページで1つのテーマについて論じていて、かつ右ページはタイトルにもあるように「図解」なので、文字数としてはむしろ少ないハズなのに、これはスゴイことだな、と。
それと言うのも、著者の中村さんが、起業の現場を直にみつめてきただけあって、納得できるお話や、目からウロコの指摘が多かったから。
また、その右ページの「図解」はポンチ図などではなく、「コンサルの現場で実際に使用されている図を引用」しているとのことなので、こちらも是非ご覧頂きたく。
◆上記の通り、「付箋を貼りまくった」くらいなので、割愛したお話の方が倍以上多く、ここでもどれかをご紹介しておかねば。
たとえば、「『新しい販路』ができると、チャンスができる」。
これは、スマホによって定額制の映画配信が普及したり、インターネットによってネット証券が成立したりする、というものです。
同様に、コンビニ棚によって、DHCの化粧品が広まったことも挙げられるでしょう。
ならば、既存の大企業も、同じことをすればいい、と思いがちですが、実際には社内の反対が大きいため、新販路への対策がいつも遅れるのだそう。
◆また、似たような外部要因として、「法規制」もビジネスに影響を与えています。
たとえば、人材派遣法の改正で、派遣業界は大きく成長しましたし、大店法の改正によって、ロードサイドに大型小売店が乱立するようになりました。
ここで問題なのが「法改正が実現するか否か」なんですが、その見分け方について中村さん曰く、「法改正が実現しないことによる不利益が大きいほど反対者は大人しくなるから、その法改正は可決されやすくなる」とのこと。
本書では、例として「待機児童解消加速化プラン」が実現されるかどうかを検証していますので、こちらも要チェックで。
◆もう1つ、これに関連して、「日本人の特徴」がビジネスに影響を与える例を。
日本人は、何か問題があっても、「先送りを好んだ挙句に一気に状況を変える」特徴があるのだとか。
確かに、明らかに閉塞していたのに抵抗を続けていた商店街は、コンビニや大型専門店に取って代わられましたし、長年死に体であった国鉄も、一気に改革されました。
今後同じように「一気に変わる」と思われるのが、農協や、既に使命を終えている住宅公団、多すぎる地方空港、維持できない年金制度……etc。
こういう分野には、いずれ大きなビジネスチャンスがありそうです。
◆他にも、追加したいネタが山ほどあるので、せめて見出しだけでも!
●「新しい空間」は、若者の間で確実にヒットする
●先行する市場、先行するビジネスを観察する
●マスはマスと、ニッチはニッチと戦っている
●コスパで勝てないときは「自分たちの文化」を強めてみる
●セグメント化できない需要は「流れ」で考える
●大企業との付き合い方は3つしかない
冒頭の「本書の使い方」によると、時間がないときは、これらの見出しをざっと流し読みするだけでも、ビジネス脳が活性化されるはず、とのこと。
この本自体、どこに置かれるかが微妙な形式なので、なかなかリアル書店でも見つからないかもしれませんが、見かけたら、是非手に取ってみてください。
起業を考える方のみならず、ビジネスモデル好きにもオススメです!
図解でひらめく! ビジネスのヒント55 (リクルートスペシャルエディション)
第1章 新しいビジネスを見つけるためのヒント
第2章 今のビジネスを強化するためのヒント
第3章 ビジネスの現場で困ったときに役立つヒント
第4章 起業して、上手く成功するためのヒント
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【編集後記】
◆同じくリアル書店で見かけた、面白そうな1冊。型にハマればうまくいく。戦略的キャラ替え仕事術
既にKindle版も出ているのですが、どうしたものかと……。
ご声援ありがとうございました!
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