2014年11月23日
【雑貨屋魂!?】『キッチュなモノからすてがたきモノまで 文化屋雑貨店』長谷川義太郎
キッチュなモノからすてがたきモノまで 文化屋雑貨店
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、リアル書店で偶然見つけた1冊。日本の雑貨文化を長らくリードしてきた文化屋雑貨店の開店40周年記念して(?)、店主の長谷川義太郎さんが、そのポリシーや考えを熱く語って下さっています。
アマゾンの内容紹介から。
高度成長期のイノベーションにあえて逆らうかのように古くからある雑貨を集め、一大ムーブメントを起こした文化屋雑貨店。40周年を迎えてますます意気揚がる名物店主の長谷川義太郎さんがズバッと語るクリエイティブ論と、それにまつわる商品のビジュアルを満載。
「売れるものより、売りたいものを」という長谷川節を、お楽しみアレ!
bunkaya zakkaten / [cipher]
【ポイント】
■1.「買う側の人」と「売る側の人」人間のタイプって大別していうと、「買う側の人」「売る側の人」の2つに分かれると思うんだ。あたしは人を見るときに、だいたいその2つのタイプで判断してる。(中略)
たぷん、お豆腐屋さんはケーキ屋さんに行っても、そうは簡単に買わないと思う。お豆腐はどういう豆でできてるかってことは当然知ってるわけだけど、それがあるから、なんとなくケーキのこともわかっちゃう。原価とかね。そうなると、そうは簡単に買えなくなるもんなんです。
それと同じで、我々もいろんなものを見てきたし、つくってきたから、おろそかにはものを買えなくなっちゃった。
■2.ブランド名にはお金を出さない
「リーズナブルなものが必ずよい」って考え方ともちょっと違うんだけどね。例えば、我々は「負けたと思ったら買う」という言い方をするんだけど、たとえ原価が安いことがわかってても「すげー面白い」「これは本当にほかにはないぞ」というものだったら100万円でも買っちゃうかもしれない。
ただ、そのリーズナブルなデザインとたいして変わらないものがブランド名だけで急に値段が跳ね上がっちゃうようなものはやっぱり「拒否」の姿勢が出るんだよ、頭の中で。
■3.クリエーターなら絶対に一番汚い道を選ぶべし
どうしてああもみんな並ぶのが好きなんだろう。あのパワーはすごいよね。「なにがなんでも、その店のものを買う」「なにがなんでも、そこじゃなくちゃ食べたくない」とか(苦笑)。
安い、うまいってこともあると思うけど、たぶんあれ、一般的な価値観で行列をなしてるだけじゃん。それを迫っかけてたら大変だし、バカそのものですよ。そういう一般的な価値観は、避けて通っていくほうが絶対に楽しいよってことも、文化屋では常々考えてきたんだけどね。
四方に分かれた道の角で、「おまえはどれを選ぶ?」って問われたら、あたしだったら絶対に一番汚い道を選ぶよ。それはまず鉄則でしょう、クリエイターだったら。
■4.世の中に浸透し始めると、もうイヤになる
ただ、儲かることを考えれば、ほうろうだけやってれば業界でトップになれるんだけど、今度は陶器とか洋服とか、つぎ込むところが別になっていっちゃうんだよね。だから、虻蜂取らずともいうけど、なんか中途半端。でも、浅く広くでそのときどきで楽しいことだけを優先してきたんだよ。
世の中に浸透し始めると、もうイヤになる。変わっちゃうの、興味の対象が(笑)。あと、もう世の中に浸透させたんだったら、以降は「売る」っていうことだけの人に任せればいいとも思ってたしね。それは公言してた。「うちが底上げしたものを、デカいところがやったほうがいいに決まってんじゃないですか」つってね。
■5.「空間移動」で価値を高める
よく我々は「空間移動」って言うんだけど、最初の頃はまだ文化屋を始める前からやってたことを広げた感じだったんだよ。つまり「空間移動」っていうのは、例えば時代遅れとされて浦和とかで売れ残ってるものを、渋谷の文化屋に持ってくると、別の価値が出たり新しいジャンルができちゃうってこと。
すごい高度成長期でさ、もちろん自分には「みんなが喜ぶだろう」っていう確信があった。ただ、ファッション屋さんだけじゃなくて、気鋭のクリエイターとかにもウケるのは不思議だなと思ったけどね。アンディ・ウォーホルとかヴィヴィアン・ウェストウッドとかも来て喜んでたみたいだし、香港の子たちも来てたし。
■6.売れてるものをずっとやるのはつまらない
なんせね、売れてるときってつくってるものがつまんないの。うんと売れてるときって、自分たちにとっては最高のものじゃないもんね。単純に新しい商品をつくる時間の制約も出てくるし、売れてる商品をフォローすることばっかりになるし。
お客さんに「こんなものもあるんですよ」ってことで「価値観のアベレージを上げる」っていう意味で言えば、もう終わった仕事でもあるわけだから、売れてるものをずっとやるのはつまんないの。
そう考えると、やっぱり作品とか商品ってウンコのようなものだと思いますよ。出すまでは「ウーン、ウーン」とがんばるんだけど、出た瞬間もう見たくないし、恥ずかしいっていう(笑)。もう次のことをしたくなるっていうね。
【感想】
◆リアル書店で本書を見た際、私なんぞは「うぉぉぉ!!」となって、思わず手に取ってしまったのですが、それは私が若かりし頃、文化屋雑貨店は「憧れの店」の1つだったから。もちろん、雑貨屋さんですから、手が届かないほど高い商品を売っていたわけではありません。
それでも、自分のルックスやファッションに自信のない人間にとっては、敷居が高い店だったワケでして。
……この辺は、昔のディスコ(死語)に入店チェックがあったことを知らない世代の方には、うまくご理解頂けるかわからないのですがw
◆実際、本書で長谷川さんは、創業時から今までのことをあれこれ振り返られているのですが、登場する面子も半端でなく。
○中西俊夫&立花ハジメ(プラスチックス)
○水野誠一(元西武百貨店社長、後年ロフトを立ち上げる)
○野宮真貴(ピチカート・ファイヴ)
○小栗壮介(バルビッシュ デザイナー)etc……。
その他にも著名スタイリストの方がわんさか出てくるワケです。
また、お店に憧れて店員さんになった人が、その後モデルやスタイリスト等になったケースも多々。
この辺の「交遊録」的な情報は、本書収録のアンケート集「文化屋雑貨店ファンクラブ」にてご確認を。
◆ちなみに、文化屋雑貨店が始めたことで、その後ファッション業界で一般的になったモノもいくつかあって、例えば度の入っていない「伊達メガネ」がそう。
かつては、サングラスの度ナシはありましたが、普通のメガネで度がないものはなかったのだとか(知らなんだ)。
さらに、今では当たり前のように行われている、ファッションブランドの多ジャンル展開も、文化屋雑貨店が発端らしく。
以前は、どのブランドも服しか作っておらず、バッグも靴も靴下もなかったところ、当時の人たちのファッションに合うような小物をどんどん作っていったのを、彼らが取り入れることに。
結果、某ブランドでは、文化屋雑貨店の靴下を大量に買い付けて、自分たちのところで売った、なんてこともあったのだそうです。
◆本書の中で、長谷川さんが繰り返し表明していたのが、「儲かること」「売れること」に対する「反対」の姿勢。
上記ポイントの4番目、6番目辺りでも主張しているように、本当に「売れること」に対して、こだわってらっしゃいません。
これぞまさに「流行を作る」側の思考であり、今主流ののマーケティング思考とはちと違うかと。
とはいえ、一見「好きなことをやって生きろ」というテーマの本かと思いきや、本書のまさに最初のお話が「『いつかお店をやりたい』って人はだいたいダメ」と、いきなり「ドリーマー」を叩き潰しているというw
歯に衣着せぬといいますか、言いたい放題の言葉の中に、クリエイティブとビジネスのヒントが隠されている1冊でした。
私のように、懐古主義で買うのもアリで!
キッチュなモノからすてがたきモノまで 文化屋雑貨店
巻頭 SUMIRE×文化屋雑貨店
謹啓その1 金はねぇほうがええぞー!
謹啓その2 空間移動からものづくりへ!
謹啓その3 売れたらヤーンピ!
謹啓その4 墓は要らない。骨はどっかにまいてくれ!
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【編集後記】
◆ちょっと気になる本。直感を信じる力: 人生のレールは自分で描こう
お馴染み、ライフネット生命の岩瀬さんが新刊を出されているので、チェックしておかねば!
ご声援ありがとうございました!
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