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2014年11月17日

【ファッション】『1億人の服のデザイン』滝沢直己


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1億人の服のデザイン


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、元・イッセイミヤケのデザイナーにして、ユニクロのデザインディレクターに就任された滝沢直己さんのご本。

当ブログの読者さん的には、「スティーブ・ジョブズが新製品発表時にいつも着ていたタートルネックTシャツをデザインした人」と言う方がなじみ深いかもしれません。

アマゾンの内容紹介から。
ユニクロに新風を吹き込んだデザインディレクターは、イッセイミヤケで、服作りを究め、東京大学総合研究博物館で、科学との融合を模索…1人を魅了するか、1億人に届けるか、「売れる」もの作りの哲学は変わらない。

イッセイミヤケは着たことがなくとも、ユニクロをアイテムに取り入れてる方なら、要チェックです!




【ポイント】

■1.アップルの製品の手触りが良いワケ
 ジョブズ氏との会話の中で、とても記憶に残っていることがあります。
 僕があるイタリアのプログクトデザイナーの話をした時のことです。そのデザイナーは、何か形を決める際に、素材などを手で触っていると形が浮かんでくるのだそうです。そうすると、自然に形が生まれてくるのだ、と。その話を伝えたら、彼はすかさずこう言いました。
「That makes sense (その通り)」
 Macの製品でも、たとえばiPhoneを手にすると、こんなことを感じませんか? 他のものと比べて質感も手触りも全然違う。指先に触れる感覚が心地よく、視覚的にも不思議と気持ちがいい、使いやすい、と。


■2.みなが同じ服を着ていていい
 世界各国に店があるユニクロには、国境を越えたお客さまがいます。そして、多くの人が同じ服を着ています。世界中を旅しているとウルトラライトダウンを着ている人と出会う確率が高くなりました。「ファッションとは自己表現でしょう。同じ服を着ている人が多いをんて嫌じゃないの?」。少し前はそんな声も聞こえてきていました。
 みなが同じ服を着ていていい。
 僕はそう思います。
 実際、昔に比べて人と同じ服だって関係ない、と思う消費者は多くなっているはずです。今は「自分」があるから、同じものを着ていても違いが出るのです。


■3.ユニクロは「ファッションの部品」である
 イネス・ド・ラ・フレサンジュは、かつて、シャネルのミューズ(シンボル的存在)であった、フランス人のトップモデルです。(中略)
 ユニクロの服がなぜ好きなのか、と聞いてみました。
「バレエシューズみたいだから」
 ヒールが低いフラットなバレエシューズは、フランス人女性なら必ず一足は持っています。ジーンズに合わせられるし、夜のディナーにもはいていける。もちろんドレスにだっていい。バレエシューズは、組み合わせるスタイルによって価値が変化するということを、「ファッションの部品」であるというユニクロの服の特徴に重ね合わせたのです。ユニクロの柳井正社長の哲学と一緒でした。


■4.引き算されて、最後に残ったピュアなものは美しい
 たとえばレインパーカーを作るとしましょう。デザインはどうするのか。ポケットを付けてみようか。ジッパーを付けてみようか。デザインチームと話し合います。パーカーにとって本質的な価値とは何か。「雨風がしのげること」。これが基本です。すると、「ジッパー使いにする」「下から風がこないようにひもを付ける」といった、最低限必要な機能が浮かんできます。話し合いをもとに、無駄と思われる装飾は、どんどん省いていき、ターゲットとなる小売価格に近づけていくよう努力するのです。
 こう話していくと、一見、ユニクロのデザインは、シンプルすぎるのではないか、という印象を持たれるかもしれません。
 実は、こうして、一番重要なことを突き詰めていって出てきた服のデザインというものは、本当にピュアなのです。


■5.モノづくりの後には、言葉もデザインする
 たとえば、カジュアル衣料のギャップが、1980年代、ポケット付きのTシャツを売り出しました。Tシャツにポケットを付けただけという、ごくシンプルなデザインです。
 ところがそれに「ポケットT」という名前を付けて、大々的にキャンぺーンをする。すると、特別な工夫はなにもないのに、「ああ、Tシャツにポケットが付いたんだね。これを着ているとクール」「かっこいいんだよね」とみながそこに価値を見いだして、ポケットTの魅力に染まっていく。すばらしいものを創り上げた次には、人の心に訴える言葉もデザインしなければなりません。


■6.答えがほしいのなら、リサーチする
 僕はユニクロの若いデザイナーに、「答えがほしいのなら、リサーチをしなさい」と言ってきました。デザインをリサーチし、マーケットをリサーチし、テクノロジーをリサーチする。
 シャツの襟の形について、「なぜ、この大きさになるのか説明しなさい」と問います。「いいと思ったからです」では答えにならない。
 世の中のどんな動きをとらえることができたのか。今、ジャケットの襟の大きさやネクタイの幅はこう変化してきている。だからこの襟になった。そう説明できたうえで、デザインにどんな工夫をしたかが大切なんです。


【感想】

◆ジョブズのタートルネックの話の詳細は、以前、この記事で読んだことがありました(ブクマが500を超えているので、ご覧になった方も多いハズ)。

ジョブズが黒タートルを着た理由が今明らかに。きっかけは日本 : ギズモード・ジャパン

まず「あれ?」と思ったのが「色」のことで、滝沢さんによると、黒ではなくて「濃紺」なのだそう(画像を見ると黒に見えますが)。

作ったデザイナーが「濃紺」と言うのですから、多分濃紺なんでしょうけど、かなり濃い紺色ですよね。

また、素材については、見た感じからは全然分かりませんでしたが、「ラグビージャージのような厚めのしっかりした生地」なのだとか。

他にも、いったん作って送ったタートルが返品された理由(数百枚っすよww)等、詳細は本書にて。

ジョブズらしいといえば、らしいんですが……。


◆そんな「1人のため」に服を作る世界から、ユニクロのような「全世界の人々のため」に服を作る世界へ転身した滝沢さん。

本書のタイトルにもある「1億人の服」というのは、まさにユニクロでのお話になります。

着こなしに関するヒントは、上記ポイントの2〜4番目にある通り。

「ユニかぶり」なんて言葉もありますが、「自分」さえあれば、同じ服を着ていても「違いが出せる」とのこと。

実際、滝沢さんがパリやニューヨークに行って、ファッション関係者に会うと、高級ブランドを身につけていながら、ユニクロのレギンスやシャツも合わせていて、しかもかっこいいのだとか。

ちなみに、上記ポイントの3番目に出てくるイネスは、滝沢さんが打ち合わせで初めて会った時には、プラダのジャケットをはおって、ユニクロのジーンズを履いていたそうです。


◆さらに滝沢さんは、最近ではヤンマーでこんな農作業着を作られました。

『ヤンマープレミアムアグリカルチュラルウエア』数量限定!いよいよ発売開始!|2014年ニュースリリース一覧|ニュースリリース|ヤンマー

外人さんが着ているせいかもしれませんが、とても農作業着には見えない…w



なお、この佐藤可士和さん率いる「ヤンマー プレミアムブランドプロジェクト」では、フェラーリなども手掛けた奥山清行さんが、今週のビックリドッキリメカ斬新なトラクターをデザインなさっています。

ネットで「未来過ぎる」と話題、ヤンマー次世代トラクターは理屈抜きで実物がヤバい - 週アスPLUS

このプロジェクトに関しては、サイトもあるのですが、いきなり大音量が流れるので、職場等での閲覧の際にはご注意を!

YANMAR PREMIUM BRAND PROJECT


◆本書はビジネス書コーナーに置かれています(版元が日経さんですし)が、多少なりともファッションやデザインに興味を持ってらっしゃる方の方が、腑に落ちるのではないでしょうか。

ただ、冒頭でも触れたように、滝沢さんは、他ならぬ「ユニクロ」のデザイナーなワケですから、自分が日頃着ている服が、どのような思想の元に作られているかを知る事は、決して無駄ではないと思います。

上記ポイントの4番目にあるように、なるほど、引き算していってできたのが、ユニクロの商品なんだな、と。

そんなワケで、私自身、今度ユニクロに行く際には、今までとは違った見かたで商品を吟味しそうなヨカン。

少なくとも本書は、「オレとユニクロ」さんは、必読でおながいします。


ファッションやデザインについて考えさせられた1冊!

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1億人の服のデザイン
スティーブ・ジョブズ氏のTシャツ
「お気に召すまま」の時代に
1億人の服のデザイン
あなたもデザイナー
イネスのパリジャンシック
最後に残る本質の魅力
データのしばり
風を読む
美を超える、自分を超える
わくわくさせる服〔ほか〕


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【ブランド経営】「堕落する高級ブランド」ダナ・トーマス(2009年05月22日)


【編集後記】

◆ヤンマーのプロジェクトのリーダーでもあった佐藤可士和さんの新刊。

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佐藤可士和の打ち合わせ

この本にあるように、滝沢さんとも打ち合わせをされたんでしょうか……。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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