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2014年10月29日

【見た目の科学】『卒アル写真で将来はわかる 予知の心理学』マシュー・ハーテンステイン


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卒アル写真で将来はわかる 予知の心理学


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、すでに土井英司さんのメルマガにて取り上げられていた1冊。

著者のマシュー・ハーテンステイン氏は、デポー大学で心理学部准教授をつとめる人物であり、本書の原本は昨年米国で発売された際には、新聞書評でも多くの賛辞が寄せられたのだそう。

アマゾンの内容紹介から。
卒業アルバムから将来が見抜けることを発見した気鋭の心理学者が明かす、意外な「未来を見抜く手がかり」が満載!

まさかヒトがこんなに見た目で左右されるとは!?





McGuffey High School yearbook portraits 1935 / Miami U. Libraries - Digital Collections


【ポイント】

■1.幅の広い顔の男性は嘘をつきやすい
 綿密に準備された実験によって、幅の広い顔の男性は、ほっそりした顔の男性に比べて、ライバルを蹴落とすために、3倍の嘘をつくという結果が得られた。
 また、べつの実験では、被験者にふたつのさいころを投げさせた。出た数で50ドルのギフトカードがあたるくじに参加できる回数が決まるのだ。幅の広い顔の男性はほっそりした顔の男性の9倍も、結果を水増しした――要するに、嘘をついた。さいころを振って実際に出た数よりも高い数字を申告するケースが9倍にもなったのだ。


■2.左右対称の男性がモテる
 左右対称の持つ力を立証するための実験は数々おこなわれてきたが、もっとも興味深くもっとも有名なのは、精子の質と匂いの関係を調べたものだろう。その実験では被験者の男性の耳と肘、足首、指を測定して、左右対称のレべルを算出した。それから、被験者にデオドラント製品や香水の類をいっさいつけずに、数日問、同じTシャツを着て眠るように頼んだ。その後、そのTシャツを女性に渡して、好ましい匂いかどうか判定してもらった。
 驚いたことに、左右対称な体の男性が着たTシャツの匂いのほうが好ましいという結果だった。とりわけそのTシャツを好んだのは、生理周期の中で排卵日にある女性が多かった。


■3.くびれの大きい女性の方が、賢い子供を産む
 男性が低いWHR(ウェスト・トゥ・ヒップ・レシオ)を好む理由を解明するための研究の中でもとりわけユニークなのは、ウィリアム・ラセックとスティーヴン・ゴーリンがおこなった研究だろう。無数の女性から得たデータを検証して、ラセックとゴーリンは身も蓋もない仮説を立てた。WHRが高い女性より、WHRが低い女性のほうが、認知能力がすぐれた子供を産むというものだ。
 尻と太腿には、妊娠期間と授乳期間を通して赤ん坊の脳の発達に必要な長鎖脂肪酸を含む脂肪が蓄えられる。WHRが低い女性のほうが、妊娠期間と授乳期間にその脂肪酸を赤ん坊により多く与えられるとしたら、その子供はより賢くなるにちがいない。データのさまざまな変数を調整したところ、ラセックとゴーリンはそれが事実であることを発見した。


■4.満面の笑みで写真におさまる人は寿命が長い
 より最近の実験では、1950年代初頭に活躍して、その後亡くなった野球選手の写真を調べて、3つのグループに分けた。笑っていない選手と、微笑している(デュシェンヌの笑いではない)選手と、満面の笑み(デュシェンヌの笑い)を浮かべている選手の写真に分けたのだ。それから、婚姻関係の有無、大学に通ったか否かなどのさまざまな差異を調整した結果、満面の笑みを浮かべている選手は長生き――平均して80歳――しているのが判明した。それとは対照的に、かすかに笑っている選手の平均寿命は75歳、まったく笑っていない選手は73歳だった。


■5.教授の評価は数秒で決まる
 意外にも、音声なしの30秒間の映像から大学教授を分析した被験者の予測と、6秒間の映像による予測の精度は変わらなかった。(中略)
 音声なしのわずか数秒の映像で見られる態度から、学期末の評価を予測できる――同じ大学で働く教授にそう話すと、ほぼまちがいなく誰もが驚いて、「その決定的な数秒間にどんなことが起きているのか?」と訊いてくる。ある研究によれば、すぐれた授業とは"教師の顔、手、体、声の表現が際立って豊かで、教師はじっと座っているのではなく、教室内を動きまわり、聞いている者に強い印象を与え、そのための努力をつねに怠らないこと"だそうだ。つまり、聞き手に向かって熱意の手がかりを浴びせかけるのだ。


■6.選挙の当選者は5歳児でも分かる
 5歳の子供が外国の選挙に勝利する人物を予測できる――あなたが友人にそう話したところで、疑いの目で見られるのがおちだ。だが、それこそがスイスの研究者チームが実験して、<<サイエンス>>にも載った発見なのだ。子供たちが船長に選んだ人物は、71パーセントの確率で国会議員選挙に当選した。その確率は大人による同人物の当選予想正解率とほぽ同じだ。(中略)
 さまざまな研究結果を見ると、"顔のカは絶大で、それによって政冶家として支持されるかどうかが決まる"と言えそうだ。なぜ、ある顔は有能そうに見えて、ある顔はそう見えないのかは、まだ解明されていない。(中略)
 わかっているのは、候補者の顔の有能さを人が瞬時に知覚できることだ。


【感想】

◆タイトルには「卒アル」とありますが、実際に卒業アルバム絡みのお話が出てくるのは、第3章だけ。

ここでは著者のマシュー・ハーテンステインの教え子2人が、高齢者から「若い頃の写真で一番大切なもの」を集め、現状との関係性を探っています。

その結果分かったのが、「離婚した人に比べ、そうでない人は自然な明るい笑みを浮かべている」ということ。

この「目のまわりにしわが寄り、目尻にカラスの足跡ができる」、いわゆる「デュシェンヌの笑い」がある人は、結婚が長続きするのだそうです。

このことを踏まえて、大学の卒業アルバムの写真を何百枚と検証してみたところ、満面の笑みを浮かべていた人に比べて、そうでない人の離婚率は5倍にのぼったのだそう。

さらには、「満面の笑み」が寿命にまで関係していることは、上記ポイントの4番目の通りです。


◆このように本書では、「外見」から分かる「内面」のお話が満載。

たとえば上記ポイントの1番目の「幅の広い顔の男性は嘘をつきやすい」というお話は、下記目次の第1章からなのですが、この「顔の幅」の問題は、「嘘」だけでなく「殺人者」にも見られる傾向とのこと。

ただ、顔が細ければいいのか、というと必ずしもそうではないのは、下記目次の第6章の見出し通りです。

アマゾンの詳しい内容紹介でも触れられているように「フォーチュン500企業のCEOの顔写真だけで会社の業績がわかる」のだとか。

上記では抜き出していないため、詳細は本書を読んで頂くとして、結論としては「CEOの顔の面積と会社の業績に繋がりがあるのは、統計的にはハッキリしている」のだそうです。


◆とはいえ、このように「見極めるポイント」が分かるお話はまだいいのですが、問題は「無意識レベル」のお話。

典型的なのが上記ポイントの6番目で、実験内容について本書から抜粋すると、こんな感じでした。

「スイスの5歳から13歳の子供たちに船旅のコンピューターゲームをさせ、ゲームの終わりにフランスの国会議員候補の立候補者の顔写真を2人ひと組ずつ見せて、自分の乗る船の船長にふさわしいのはどちらか問う」

そしてその結果は、上記の通りです。

さらに研究者は、バラク・オバマとジョン・マケイン、バラク・オバマとヒラリー・クリントンなど、2人ひと組の写真を子供たちに見せてみると、77%の確率でマケインよりオバマを、90%の確率でクリントンよりオバマを選んだのだとか。


◆これとは逆に、私たちが「見た目から分からない」のが、「嘘のしぐさ」。

ある研究で、サモアから中国まで58ヵ国の人々に、「嘘をついているしぐさ」をあげてもらったところ、「目をそらす」という回答が最も多かったのだそう。

ところが「人がどこを見ているか」ということと、「嘘をついているか」どうかには明確な関連はない、とのこと。

しかも本書によると、捜査官や容疑者の尋問担当も含めて、大半の警察官が嘘を見抜くことに関しては、一般人レベルなのだそうですから、推して知るべしです。

とはいえ、嘘を見抜く研究に関しては、この本の著者は別格のようですが。

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顔は口ほどに嘘をつく

何でエクマンがこのような研究を始めたのか知らなかったのですが、自殺願望のある重度のうつ病患者の嘘を見抜くためだったとは……。

この本、相変わらずKindle版も出ず、中古も値崩れしていないのですが、この機会にそろそろ読んでみようかな、と。


◆本書は翻訳本としては、薄い部類であり、かつ、巻末には30ページ超の注書きが付されています。

それゆえ、当初は簡単に読み切れるかと思いきや、実験や研究の結果が大量に収録されていて、意外と手こずった次第。

ぶっちゃけ、テーマ的には軽めなんですけど、アプローチが「科学的」なので、結果的には「骨太」仕様になったのかな、と。

昨年来、個人的にブームである「科学的自己啓発書」の流れを汲む作品として、なかなか楽しめました。


自分の見た目が気になる1冊!

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卒アル写真で将来はわかる 予知の心理学
第1章 殺される顔、殺す顔
第2章 排卵日にはゲイがわかる
第3章 卒アル写真で将来はわかる
第4章 嘘をつく奴の顔はここが違う
第5章 話は中身よりも話し方
第6章 顔の細い社長の会社は業績が悪い
第7章 なぜ子供は選挙の当落を当てられるのか?


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【スゴ本!】『やってのける 〜意志力を使わずに自分を動かす〜』ハイディ・グラント・ハルバーソン(2013年09月24日)

【スゴ本!】『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』イアン・エアーズ(2012年10月30日)

【99%?】『FBIトレーナーが教える 相手の嘘を99%見抜く方法』から選んだ嘘つき の7つの特徴(2012年09月09日)

「その科学が成功を決める」がもっと評価されるべき5つの理由(2010年03月23日)


【編集後記】

◆嘘を見抜く技術に関しては、この本は良かったです。

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FBIトレーナーが教える 相手の嘘を99%見抜く方法

「スゴ本」だけあって、あまり値崩れしてませんね……。

レビューは上記関連記事にて。


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Posted by smoothfoxxx at 09:00
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