2014年10月18日
【資料力】『最速で「求められる人材」になる方法』井筒廣之

最速で「求められる人材」になる方法 (単行本)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、東大法学部出身で日本コカ・コーラ、ミスミグループを経てマンパワーグループ社長を務められた井筒廣之さんの仕事術本。書影でうっすら見えるサブタイトルに『この「資料力」からすべてが始まる』とあるように、「仕事ができる人の資料の作り方」を指南してくれています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
報告書、稟議書、企画書、プレゼン資料……仕事の能力は「紙1枚」に表われる!
あなたの「評価」に直結する書類――それが「資料」なのです。
本書は、人材キャリア育成のプロが初めて明かす、いつどこでも能力を発揮できる人材になる方法。
著者自身が「資料力」ひとつで、大企業、ベンチャー、外資系などさまざまな組織で実績を積んできた秘訣とは何か?
「資料」を制する者は、仕事も制するのです!

Creative Commons Documentation in real life / tvol
【ポイント】
■1.資料に実力が表われる長年、多くのビジネスパーソンと仕事をしてきて、「その場、そのときに求められる能力」かあるかどうかが端的にわかるポイントが1つあります。
それは、その人が作り、出してくる「資料」です。
どんなにいい提案でも、その根拠や展望を示すことができなければ、説得力はありません。また、どんなに口頭での説明が巧みでも、人を動かし、目的を実現していくためには、相手がその良さを理解し、周囲に広めていかなくてはいけません。
それには、その人の考えや構想を、提案書や企画書、稟議書、報告書といった「資料」に表わすことが必要なのです。
■2.7/10は捨てる
自分が作った資料を見て、絞り切れていないと感じるのなら、まずは一度見直してみることです。対策が10個あったら、これぞ、というもの以外の7つは捨てる。(中略)
実際に、キーとなる対策を2つか3つ選んで、それを徹底的にやると、ほとんどの場合、ほかの問題もその2つか3つに引っ張られる形で自然に改善されていきます。
そう考えると、本当に必要な対策は絞れてきます。
資料作りも同じです。
やたらと多くの項目を作る必要はありません。最も重要なところにフォーカスして、そこに全力投球することが大事になってくるのです。
■3.「いい資料」の7つのフレームワーク
(1)現状分析
(2)今後の見通し
(3)原因分析と反省
(4)解決策
(5)実施後の見通し
(6)残された課題
(7)今後の進め方
(詳細は本書を)
■4.「主文」を通して読み、つながっているかを確認する
資料の各ぺージに、「主文」として「タイトル」「結論」を書いたら、次に、それぞれのぺージのタイトルと結論が、資料全体でつながっているかを確認することも大切です。
たいていの場合、1つの流れになっていなかったり、矛盾していたりします。そうしたら書き直しです。(中略)
プレゼンの直前にエクセルの表は直せませんが、文字で入れている「タイトル」や「結論」なら5分で直せます。大部分の人は1ぺージごとのタイトルと結論は整えるのですが、それが資料全体でつながるような工夫まではなかなか意識が及びません。
しかし、それを整えるだけで、説得力が何倍にも変わるのです。
■5.方向感をハッキリ出す
難しい案件であればあるほど、資料を作る人にとって難しい内容になればなるほど、当然のことながら、上に立つ人にとっても判断が難しいわけです。
にもかかわらず、断片的なデータや情報だけを与えられて、
「さあ、どうしますか?」
と言われても、当然判断に苦しみます。私だったら、そういう人は、自分の側近に置きたくありません。自分の考える方向と違ってもいいから、その人なりの結論を出したうえで報告してほしい。上司にとって必要なのは、そういう人なのです。(中略)
判断のタイミングが迫っていればいるほど、資料の方向感はよりはっきりさせること。進むべき方向も、今後の進め方もきちんと書く必要があります。
■6.数字を○で囲む
どんな順番でどうやって説明するかを考え、そのポイントとなる部分を○で囲んでいく。それが「丸打ち」です。
受験勉強のときに、試験に出そうな重要ポイントに蛍光ぺンでアンダーラインを引いたのと同じような感覚です。
これだけで、その資料のバリューは相当上がります。(中略)
資料を見た人が、その丸印を目で追うだけで、数表が表わしているメッセージが伝わるように、全体のつながりを意識しながら○をつけてください。
私は、主文に関係する数字に○を打つときは赤、それ以外には青で○を打ったり、点線や四角で囲んだりと、ポイントがすぐに目につくようにさまざまな工夫をしています。
【感想】
◆今まで「資料作り」の本というと、下記関連記事にもあるような、表・グラフの書き方や、フォントの大きさといったビジュアルネタが多かったように思います。それらに比較すると、本書はもうちょっとレイヤーが高いというか、経営判断を下すような方の視点(上記ポイントの5番目辺りは、特にそうですね)。
というのも、おそらく著者の井筒さんが、下のレベルで資料を作りまくっていた頃は、まだパワポもなかったからではないか、と。
井筒さんは1961年生まれでいらっしゃいますから、新卒の頃は、まだWindows95も出ていません(当たり前)。
その分、「見てくれ」よりは、「本質」に迫っているのも、ある意味当然なんだと思います。
◆だからと言って、本書が具体的な図やグラフがないかというと、決してそうではありません。
実は上記ポイントの3番目の「7つのフレームワーク」を解説した第3章では、あるケーススタディをもとに詳しく作り方を解説。
その事例とは「自社ジュース(「スーパーオレンジ」)が他社ジュース(「濃いオレンジ」)の発売以来、売上を落としている現状を打開したい」というもので、7つのフレームワークごとに、具体的な資料の作り方が表やグラフ入りで指南されています。
類書では、個々のテーマに対する資料の作り方はありましたが、このように流れを追って、最初から最後までフォローした本はなかったかも。
TIPS的には、この章が一番テクニカルなので、当ブログの読者さん的にはお見逃しなく。
◆ところで、本書の中でも特に興味深かったのが、上記ポイントの4番目の「『主文』が全体を通してつながっているかを確認する」というお話でした。
なお、ここで言う「主文」とは、「そのページの中で最も重要な点」を意味します。
ちなみに、井筒さんは多くの人から「プレゼン直前の数分間で資料をパワーアップさせる力がすごい」と言われてきたそうなのですが、それは、この「つながりを確認して、つながっていない場合に直しているだけ」のことが多いのだとか。
もっとも、普通は、つながり以前に「主文」自体が書けていないことが多いようで、井筒さんはよく「この主文は"父は男だ""海は広いです"文章になっている」と部下に指摘するのだそう。
これは、「父が男なのは当たり前」「海が広いのも当たり前」であり、要は「何も言っていないのに等しい」ということ。
本書では、具体的な「主文の書き方」の実例が収録されていますので、気になる方は、詳しくはそちらをお読みください。
◆当ブログでは、どちらかと言うと、上記で言及した「ビジュアルネタ」に近い作品の方が人気なのだと思います。
実際、下記関連記事を見ても、いくつかの「ビジュアルネタ」がメインの本のレビューは、はてブ人気エントリーになったくらい。
ただ、「クライアントを動かすビジュアル」を備えた資料も大事ですが、本書が主張するような「上司が納得する」資料も大事かと。
自分自身、会社員時代を思い起こしてみると、上記ポイントの5番目のような「方向感」など、まったく意識したことがありませんでした。
当時の私が本書を読んでいたら、もうちょっと上司受けも良かったのかもしれません。
「資料力」を高めたい方に!

最速で「求められる人材」になる方法 (単行本)
1章 できる人は「仕事のポイント」をつかんで、外さない―その本質を「紙1枚」に表わせるか
2章 「評価」に直結する1通の書類―それが「資料」―最低限、ここだけは要注意
3章 この「仕事の進め方」が身についた人は強い―「7つのフレームワーク」が質も効率も劇的に上げる
4章 必ず伸びる人はこんな「説得力ある資料」を出してくる―あなたに“強力な援軍”を!
5章 「資料力」ひとつで“もっと大きな仕事”ができる―「実行力」「問題解決力」「論理力」…を一気に強化するために
【関連記事】
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【オススメ!】『外資系コンサルのスライド作成術―図解表現23のテクニック』山口 周(2012年10月22日)
【資料作成】『「伝わる」「通る」ビジネス資料作成術』渡辺克之(2013年05月03日)
もしものときのための『ウォールストリート・ジャーナル式図解表現のルール』6選(2011年04月13日)
【編集後記】
◆最近の当ブログにおける「資料ネタ」のヒット作。
外資系コンサルが実践する 資料作成の基本 パワーポイント、ワード、エクセルを使い分けて「伝える」→「動かす」王道70
結構なお値段なのに、中古もまったく値下がりしていません。
レビューは上記関連記事にて。

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