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2014年10月12日

【オススメ!】『「お金と心理」の正体 マーケティングの極意は「金融」にあり』ADK金融カテゴリーチーム


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「お金と心理」の正体 マーケティングの極意は「金融」にあり


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、株式会社アサツー・ディ・ケイの金融カテゴリーチームの手による「マーケット本」

ただし、「食べ物」や「車」のような「実体」があるものとは違い、「金融」には、それ独自のマーケティング手法が必要なことが良く分かりました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
人間の本性は「金融」に表れる!
最強の広告仕掛け人たちが「人々の行動」にスイッチを入れる8つのツボを初公開! !
本当の消費者ニーズの捉え方が、わかる! 100万人の金融関係者、300万人のマーケッター必読! !

なるほどまさに「行動経済学」を応用したマーケティング手法なのだな、と。





Blue Piggy Bank With Coins - Retirement / kenteegardin


【ポイント】

■1.「周りのみんな」というアプローチは効く
 国際投信投資顧問のグローバルソブリン(略称:グロソブ)の新聞広告で、以前、「同期のあいつも始めたらしい」というキャッチコピーが使われたことがあります。
 グロソブは、日本ナンバーワンの投資信託で、当時、団塊世代をコアターゲットにして積極的にアプローチしていました。大いに人気商品になったのですが、次第に頭打ち感が出てきていました。
 そこで、それまで商品特性やパフォーマンス(運用実績)をうたい上げていたのをピタリとやめ、商品特性とはまったく関係のない、「同期のあいつも……」とやり始めたのです。これもフレーミングの代表的な例で、異なる視点からのアプローチでしたが、結果は大成功、グロソブへの関心を再度高めたのでした。


■2.「一生付き合える」イメージを定着させる
 金融機関が提供する商品やサービスは、家電やクルマのような「プロダクツ」ではありません。取り扱うのは、具体的な形がない商品です。
 その商品も内容が複雑すぎたり、あるいは逆に他社のそれと似すぎたりするため、消費者はその良し悪しを判断することは極めて困難です。(中略)
 そこで消費者が、サーピスを提供する金融機関や商品を選ぶにあたって、重要な指標として浮上してくるのが、その企業にそなわるイメージや雰囲気です。
 確かに、金融に限らずいかなる業界でも、企業イメージはマーケティングにおいて欠かせない要素ですが、その重要性の度合いはまったく異なります。金融業界においては、極端に言えば「それがすべて」といっていいほど、不可欠なものなのです。


■3.「銀行だってサービス業」で、「企業柄」を形成したりそな銀行
 2003年、新たに就任した会長が、就任早々、リーダーシップを発揮します。彼が、社内外に訴えたのが、
「銀行の常識は、世間の非常識。銀行はサービス業。」
 でした。サービス業としての自覚を持ち、個人や中小企業のお客様をもっと大事にしようと、社を挙げて「真のリテールバンク」の確立にまい進することをステートメントとして宣言しました。
 これは、当時の銀行や金融の常識を大きく覆すものでした。というのも、金融機関は自分たちがサービスを提供しているとはほとんど認識していなかったからです。日本の金融機関の中で、自らをサービス産業と規定したのは、このときのりそな銀行が初でした。


■4.消費者金融のお店が明るく笑顔なワケ
 これにもわけがあります。利用者はお金がなくて困惑した人たちばかりです。悲壮感や自己嫌悪、コンプレックスを抱えて来店するのが普通です。
 もし、訪れる店がうらぶれたところにあったり、店内がうら寂しい雰囲気だったらどうでしょう。さらに気持ちは暗くなるはずです。ますます自分がお金を借りたことに、罪悪感を強く持つことになるでしょう。こうした思いを感じた人は、一度は利用してくれても、なかなか頻繁に利用してくれません。
 一方で、最初は暗い気持ちで訪れても、店内が意外に明るくてオープンで生き生きとしていれば、利用者は非常に救われた気持ちになります。自己嫌悪に陥ることもなくなり、
「自分は借りてもいいんだ」
 という気持ちになっていく。そういう世界観を意識的につくっているのです。


■5.「一般のみんなの意見」が一番安心できると感じている
 よく考えると、「一般のみんな」は、最も金融知識に乏しく、一番あてにならないはずですが、にもかかわらず安心や信頼を感じている。いかに、日本人が大多数の意見を信じる傾向にあるか、多数派を形成したいのかということを表していると言えるでしょう。
 お金にまつわることに関しては、「自分だけが損をしたくない」という意識が背景に強くあるのです。
 言い換えれば、「自分だけが、馬鹿を見るのがイヤ」ということにほかなりません。
 そして、この意識を突き詰めていくと最終的には
「損をしたとしても、みんなで損をするのなら仕方がない」
 というところに帰着します。すなわち、日本人はお金の損得という実際問題よりも、プライドの方を重く見ているということです。


■6.8つの金融マーケティングの手法
(1)イメージ・ポジションMAP分析
(2)ターゲット・プロファイル分析
(3)逆アプローチ型ポジ・ネガ分析
(4)ブランド・シナプス分析
(5)メタファー分析
(6)ニューロマーケティング調査
(7)ターゲット・フォトソー卜分析
(8)ワークショップ・グルイン


(詳細は本書を)


【感想】

◆本書で指摘されて「なるほど」と思ったのが、こと「金融」に関するマーケティングは、一般的な商品のマーケティングとは異なる点が多い、ということ。

まず、冒頭や上記ポイントの2番目にあるように「カタチ」がありません。

しかも、同じくポイントの2番目にあるように内容が複雑すぎたり、他社と似過ぎたりしています。

おまけに、消費者がそれらに関する知識に乏しい上、通常「どうしても手に入れたい」ワケでもありません。

実際、ADK金融カテゴリーチームが発足した1999年頃は、銀行は「護送船団方式」であり、店舗規制や新商品規制があったため、個別の広告活動はほとんど行なわれていませんでした。

当時のマーケッターや銀行関係者の間では「金融にマーケティングなんてあるの?」と言われていたのだそうです。


◆本書は、その後のADK金融カテゴリーチームが、試行錯誤しながら追求し、分析した結果をまとめたもの。

特にキモとなるのが、第2章の「人を動かす8つのツボ」です。

具体的には、アマゾンの内容紹介に列挙されているので割愛しますが、ここには付箋を貼りまくり。

実は上記ポイントの最初と最後以外は、全てこの第2章からになっています。


◆ちなみに、この第2章で割愛した中で興味深かったのが、「ニューロマーケティング調査」のお話。

「ニューロマーケティングとは何ぞや?」について、Wikipediaで見つからなかったので、これは企業のサイトなのですが……。

ニューロマーケティング:ソリューション紹介|DNP 大日本印刷株式会社 C&I事業部

要は、「脳波を計測することによって、人の無自覚から生じる行動原理や裏ニーズを明らかにする」調査方法とのこと。

この調査方法による結果と、アンケート調査の結果とを比較すると、「基礎化粧品」や、「通販の健康食品」については、両者がほぼ一致したにもかかわらず、「お金」をテーマにしたところ、大きな違いがでたのだそう。

詳細や、何故こういう結果になったかについては、本書にてご確認下さい。


◆一方、第3章は具体的な「金融マーケティングの手法」ということで、小見出しのみ上記ポイントの6番目に列挙しました。

続く第4章は、実際の「広告の仕掛け」について。

画像タイプの広告は、探すのも、ここに貼るのも難しいので、CM動画をご紹介しておきます。





こうした広告が何を意図し、どういう仕掛けがあるのか、等も本書にてご確認を。


◆というワケで、本書はマーケッターの方なら必読でしょう。

何せ「この15年間で約250社のクライアントに携わった」結果がこの1冊に集約されているのですから、内容は極めて濃厚。

第3章がテクニカル過ぎるのが、私を含む一般の人にはちとハードルが高いのですが、それ以外の部分で余裕でペイしています。

……ホント第2章まで読んだ時は、付箋貼り過ぎてどうなるかと思ったくらいなんでw

いずれにせよ、行動経済学がお好きな方なら、一読の価値はあるハズ!


多少読む人を選びますが、オススメせざるを得ません!

4766785843
「お金と心理」の正体 マーケティングの極意は「金融」にあり
第1章 なぜ今、金融マーケティングなのか
第2章 人を動かす8つのツボ
第3章 心理を捉える金融マーケティングの手法
第4章 消費者が動き出す広告の仕掛け
第5章 金融マーケティングとインターネット戦略


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【編集後記】

◆「お金」と「行動経済学」と言えば、この本もそうでした。

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お金と感情と意思決定の白熱教室: 楽しい行動経済学

レビューは上記関連記事にて。


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