2014年09月26日
【スゴ本!】『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール,ブレイク・マスターズ
ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「起業」というニッチなテーマであるにもかかわらず、既にアマゾンランキングで総合2位まで登りつめた1冊。HONZの田中さんが「1000冊売りたい」と言ったり、土井英司さんが、メルマガで「これはひさびさ、文句なしに「買い」の一冊」「本当に心震わせられる起業本」等々激賞されていたという、いわくつきの作品です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
たとえば、日本が「失われた20年」と言われている間に、世界のイノベーションを引っ張っているのはアメリカ、特に西海岸のシリコンバレーだ。アップルやフェイスブックといった名前がすぐに思い浮かぶけれど、数多のスタートアップが起業しては消えていく世界でもある。
そんな中、次々と成功する企業を立ち上げる起業家集団がある。
オンライン決済サービス・ペイパルの初期メンバーとして繋がりが深く、現在もシリコンバレーで絶大な影響力を持つことから「ペイパル・マフィア」とも呼ばれる彼らは、ご存知ユーチューブ(YouTube)をはじめ、電気自動車のテスラ・モーターズや民間宇宙開発のスペースXからイェルプ(Yelp!)、ヤマー(Yammer)といったネットサービスまで、そうそうたる企業を立ち上げてきた。
本書はそのペイパル・マフィアの雄、ピーター・ティールが、母校スタンフォード大学で行った待望の起業講義録である。
起業を志す方から、投資をなさっている方まで、まさに必読の「スゴ本」です!
またもや付箋を貼りまくり……。
20140927追記:Kindle版も既に出ていました!
ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか
MWC Barcelona 2013 - eBay, Paypal / Janitors
【ポイント】
■1.進歩の2つの未来未来を考える時、僕らは未来が今より進歩していることを願う。その進歩は次の2つの形のどちらかになる。ひとつは水平的進歩、または拡張的進歩と言ってもいい。それは、成功例をコピーすること、つまり1からnへと向かうことだ。水平的進歩は想像しやすい。すでに前例を見ているからだ。もうひとつの垂直的進歩、または集中的進歩とは、新しい何かを行なうこと、つまリゼロから1を生み出すことだ。それまで誰もやったことのない何かが求められる垂直的進歩は、想像するのが難しい。1台のタイプライターから同じものを100台作るのが水平的進歩だ。タイプライターからワープロを創れば、それは垂直的進歩になる。
■2.大きな市場は避ける
スタートアップが狙うべき理想の市場は、少数の特定ユーザーが集中していながら、ライバルがほとんどあるいはまったくいない市場だ。大きな市場はいずれも避けるべきだし、すでにライバルのいる大きな市場は最悪だ。起業家が1000億ドル市場の1パーセントを狙うと言う場合は常に赤信号だと思った方がいい。実際には、大きな市場は参入余地がないか、誰にでも参入できるため目標のシェアに達することがほとんど不可能かのどちらかだ。たとえ小さな足がかりを得たとしても、生き残るだけで精一杯になるだろう。壮絶な競争から利益が出ることはない。
■3.隠れた真実を探す
隠れた真実には2種類ある――自然についての隠れた真実と人間についての隠れた真実だ。自然についての隠れた真実はいたるところに存在する。それを見つけるには、物理世界で発見されていないものを探さなければならない。でも、人間についての隠れた真実は違う。自分自身について知らないこともあれば、他人に知られたくなくて隠していることもある。だとすれば、どんな会社を立ち上げるべきかを考える時、問うべき質問は2つ――自然が語らない真実は何か? 人が語らない真実は何か?
■4.気の合う相手と始める
何かを始めるにあたって、最も重要な最初の決断は、「誰と始めるか」だ。共同創業者選びは結婚のようなもので、創業者間の確執は離婚と同じように醜い。どんな人間関係もはじめは楽観的なムードに包まれている。うまくいかない可能性を冷静に考えると興ざめなので、誰も考えない。だけど、創業者の間で和解しがたい対立が生まれると、その犠牲になるのは企業だ。(中略)
今スタートアップに投資する時には、創業チームを調べる。技術的な能力や補完的なスキルも重要だけど、創業者がお互いをどれだけよく知っているかや、一緒にうまくやっていけるかも同じくらい重要だ。
■5.CEOの報酬は適切な額にする
仕事に100パーセント打ち込んでもらうには、報酬が適切でなければならない。僕はかならず、投資を求める起業家に、自分自身にいくら払うつもりかと訊くことにしている。CEOの給料が少なければ少ないほど、会社はうまくいく。これまで数百のスタートアップに投資してきた中で、僕が気づいたひとつの明らかなパターンがそれだ。べンチャーキャピタルが投資するアーリーステージのスタートアップでは、CEOの年収は15万ドルを超えてはならない。
■6.どんなビジネスも答えを出すべき7つの質問
1 エンジニアリング
段階的な改善ではなく、ブレークスルーとなる技術を開発できるだろうか?
2 タイミング
このビジネスを始めるのに、今が適切なタイミングか?
3 独占
大きなシェアがとれるような小さな市場から始めているか?
4 人材
正しいチーム作りができているか?
5 販売
プロダクトを作るだけでなく、それを届ける方法があるか?
6 永続性
この先10年、20年と生き残れるポジショニングができているか?
7 隠れた真実
他社が気づいていない、独自のチャンスを見つけているか?
【感想】
◆下記目次にもあるように、本書は日本語の序文を瀧本哲史さんが書かれています。ぶっちゃけ、今回の記事より、その序文を読んで頂いた方が、本書の魅力はより感じ取れるハズ(ヲイヲイw)。
瀧本さんと言うと、当ブログ的には「京大の先生」「スキルアップの人」的なイメージがあるかもしれませんが、そもそも「エンジェル投資家」ですから、むしろ本書のようなテーマの方が本職です。
そんな瀧本さんにとっては、本書の著者であるピーター・ティールは「尊敬の念をおかざるを得ない存在」であるとのこと。
確かに投資家としてのティール氏は、フェイスブックの「最初の外部投資家」だったり、他にも、リンクトイン、ヤマー、イェルプと言った投資を成功させていますから、それも当然かと。
◆ところで、本書のタイトルの由来は、上記ポイントの1番目で言うところの「垂直的進歩」から来ています。
この「ゼロから1を生み出す垂直的な進歩」とは、ひと言で表わすと「テクノロジー」であり、ティール氏は「2番手ライバルより10倍優れたテクノロジーが必要」と主張。
つまり、それ以下の優位性では「そこそこの改善」としか見なされず、特に混みあった市場での成功は難しくなります。
ここでの「テクノロジー」とは、「ソリューション」も含んでおり、たとえばペイパルはイーベイでの取引を「少なくとも10倍は改善した」(7〜10日かけて小切手を送るところ、即送金ができるようになった)ことにより、競争から抜け出しました。
◆逆に「水平的進歩」とは、いわゆる「グローバリゼーション」であり、たとえば中国は、これを国家ぐるみで行なっています。
ちなみに瀧本さんは序文で、日本の現状について触れられており、「ゼロから1」どころか、「儲かりそうなビジネスに似たようなコンセプトで殺到する」と指摘。
最近ではソーシャルゲームですとか、バイラルメディア、さらにはメディアアプリもその様相を呈しています。
ただ、ティール氏なら、このような業界の現状のプレーヤーには絶対投資しないかと。
もちろん、そう考えない方(企業)もいらっしゃるわけですが。
ニュースアプリのグノシーがKDDIから資金調達−海外拡大 - Bloomberg
スマートニュースがグリー、Atomico、ミクシィなどから約36億円の資金調達 - TechCrunch
◆なお、上記ポイントの3番目の「隠れた真実」に関して、本書はヒントを授けてくれています。
ひと言で言うと「誰も見ていない場所」を探す――「学校では教わらない重要な領域が存在するだろうか?」と考えよ――とのこと。
たとえば、物理学は主要な専攻科目として確立されていますが、占星術はその対極にはあるものの「重要な領域」とは言えません。
では、栄養学は?
栄養学は誰にとっても重要な反面、ハーバードに栄養学の専攻はなく、優秀な科学者たちは別の分野へと進みます。
大規模研究のほとんどが、30〜40年前に行われたもので、「その多くには深刻な間違いがある」のだとか。
栄養学は簡単ではないけれど、不可能でないことは明らかだ。隠れた真実を見つけられるのは、まさにこういう分野だ。なるほど確かに!
◆冒頭の画像からもお分かりのように、本書には「ピン!」と来た部分が沢山ありました。
とにかく、今回抜き出した以外の箇所だけで、もう1本余裕で記事が書けるくらいw
さすが『ブラック・スワン』のタレブ氏が、本書の帯で「2度読もう。あるいは念のため、3度読んでもいい。これは名著だ」と言うだけのことはあります。
ただし「起業本」ですから、いつものスキルアップ本とは違い、「実践してみる」わけにはなかなかいかない点にはあらかじめご留意頂きたく。
そもそも、たとえ起業するにしても「安易なパクリ」をいましめている点で、かなりハードルは高いのですが。
これはオススメせざるを得ません!
ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか
日本語版序文 瀧本哲史
はじめに
1.僕たちは未来を創ることができるか
2.一九九九年のお祭り騒ぎ
3.幸福な企業はみなそれぞれに違う
4.イデオロギーとしての競争
5.終盤を制する―ラストムーバー・アドバンテージ
6.人生は宝クジじゃない
7.カネの流れを追え
8.隠れた真実
9.ティールの法則
10.マフィアの力学
11.それを作れば、みんなやってくる?
12.人間と機械
13.エネルギー2.0
14.創業者のパラドックス
終わりに―停滞かシンギュラリティか
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【編集後記】
◆本書と同じく土井さんがオススメされていた本。「ザクとうふ」の哲学
こちらも面白そうですね。
ご声援ありがとうございました!
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