2014年09月05日
【脱・コミュ障?】『戦略思考で鍛える「コミュ力(りょく)」』増沢隆太
戦略思考で鍛える「コミュ力(りょく)」(祥伝社新書) (祥伝社新書 381)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、東京工業大学特任教授であり、組織コンサルタントの増沢隆太さんの最新作。増沢さんは、大学院生向けのキャリアデザインやコミュニケーションの講義を担当するほか、企業研修や社会人向けセミナー等もされてらっしゃる「コミュニケーション」のプロとも言える方です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「コミュ力」というと、アナウンサーのような上手な話し方や、カリスマ経営者のようにウケるプレゼンができることだと思う人も多いが、それは大きな誤解だ。
本書では、「戦略思考」を用いて、社会人として本当に必要な「コミュ力」を身につける方法を伝授する。就職面接から、営業活動、プレゼン、仕事でのおわび、キャリアデザインにまで活かすことができるのだ。
特に就職・転職の面接等に効果がありそうな1冊です!
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【ポイント】
■1.企業がコミュニケーション能力を求める理由ではなぜ、コミュニケーション能力はここまで求められているのでしょう。それは企業社会が「組織」だからです。(中略)
社会で活動するための基本単位が「組織」であり、会社員に代表される組織人として活動するのが社会人です。そしてそうした社会人を目指す学生にはコミュニケーション能力が求められるのです。これが「コミュニケーション能力」が長年にわたって、そしておそらくこの先も常に、「企業(組織)が求めるもっとも重要な能力」の位置にある理由です。
■2.コミュニケーション3原則
1.「目的設定」すること伝えるためのカギとなる「主たるメッセージ」を絞ることで、そのコミュニケーションによって達成したい目的を明確化します。目的は、達成した時の姿であり、ゴールの明確化ともいえます。2.「相手」目線を持つことコミュニケーションには必ず相手がいます。相手のいないコミュニケーションはコミュニケーションではありません。相手はそのコミュニケーションにおいて、何を考え、何を望んでいるのか、これは単に理屈だけでなく感情をも汲み取る必要があります。3.「ロジック」が成り立つことここでいうロジックとは、相手との理解の共通化が成立することです。自分本位の一方的な主張は、コミュニケーションではありません。相手にわかりやすく自分の意見を伝えるために、自分の理屈ではなく、相手も受け入れられる論理的整合性が必要です。
■3.「正解」を探そうとしてはいけない
コミュニケーションそのものは目的ではありません。目的達成するために、コミュニケーションというツールを使うのです。これは絶対に間違ってはならない順番です。達成したい目的が定められなければ、コミュニケーションに意味がなく、どれだけ技術を高めたところで「上手なコミュニケーション」に至ることはできません。
コミュニケーションが上手く取れない人や、就活で思うように進まない学生は、ほとんどこの逆をいっています。「良いコミュニケーション」、「良い答え」を探すことだけに力を注ぎ、肝心の目的が何だかわからなくなっているのです。
■4.最強のツール「オウム返し」
会話において、「相手の話を聞いていますよ」というサインを出すためには、「ええ」とか「なるほど」といった言葉でもよいのですが、それだけでは相手に生返事をしているととらえられかねません。その際に相手の発した言葉、単語、文をそのまま気持ちを込めて繰り返すことは、非常に有効な方法なのです。
何しろその言葉を発したのは「相手」自身です。他人が表現した言葉に違和感を覚えることはあっても、自分のいった言葉にそう感じることはまずありません。つまり失敗することがほとんどなく、上手くはまれば共感が伝わりやすい。なおかつ自分で言葉を探さずとも「相手」が発する言葉を利用するだけでよいのです。
■5.「要約」によって傾聴する
もう1つ、すぐ使える技法に「要約」があります。これまた話の中で、相手の説明が進むとともに、その理解も進みます。話を聞きながら、それをまとめて「要するにこうしたんだね!」などと会話で伝え返すのが「要約」です。
「要約」といっても、適切な情報をまとめるということが目的なのではなく、むしろ「きちんと聞いている」「あなたの話に興味がある」ということを具体的に表現するため、流れを損なわなそうな適切なタイミングで、相手の話を要約して、伝え返すことが重要です。
■6.「質問」で婉曲に反論する
反対意見の欠陥を指摘するのではなく、その障害や問題点を問い質すことで、結果として否定に導く意図です。ただし、単純に否定しているのではなく、疑問形にすることで、もしかしたらその欠陥については解決策や対処法が見つかるかもしれません。
頭ごなしに否定するより、まずは問題点を質問し、その上で明確な答えが得られなければその点を突いて反論していくほうが、感情的反発とは感じられにくいでしょう。
【感想】
◆冒頭で、本書の著者である増沢さんが、キャリアデザインの講義を担当されていることは触れましたが、その一環として「マナー」や「礼儀作法」についても論じられるそう。ただし、よくある「マナー講師」や「航空会社のキャビンアテンダント」の方を呼ぶことはないのだとか。
なぜなら、そうした方々はマナーや礼儀のプロですが、ビジネスの世界に必要なマナーとは、接客サービスのものとは違うから。
同様に、アナウンサーや芸能人などの「しゃべりのプロ」を呼ぶ意味もない、と増沢さんはお考えです。
◆つまり、まずは「コミュニケーションによってどんなことを実現したいか」という目的を固めるべき……ということで、上記ポイントの2番目の「コミュニケーションの3原則」に繋がってきます。
たとえば、就職活動をする上では「上手い自己アピールをする」ことは、最終目的ではないはず。
その先にある、応募先企業からの「内定」こそがゴールでしょう。
そう考えると、やみくもに「自分のアピールポイント」を力説することが、目的達成につながらないことは明解です。
「サークル副部長として、やる気のないメンバーにも積極的に話しかけを行い、リーダーシップを発揮しました」的な、ありがちなアピールをどれだけ上手にやったとしても、有名企業の人事担当は、心の中では「はいはい……」とうんざりしていること必至。
それよりは、「企業が『雇いたい』と思う」ことが何であるかを考えて表現することが何より重要である、と増沢さんは言われています。
◆なお、本書では具体的に「多くの企業において求める適性に合う」と判断されるであろうアピール例も挙げられていますが、ここでは自重。
そもそも、「何が正しいか」ではなく、「特定個人」と「特定組織」との間で行われる「特定のコミュニケーション」で、「何が求められているか」を考え、「目的設定をすべし」。
それは何も、就活だけでなく、私たちの普通のビジネスシーンにおいても同じことです。
相手の「得」や「メリット」になることは何か?
それこそ、マーケティングからセールスまで、必要とされる思考であることは間違いないでしょう。
◆本書では、増沢さんの現職の絡みからか、面接に関する内容が多かったです。
一方、第4章では、さまざまなシーンでの「コミュ力」に関して言及。
中でも「おわびコミュニケーション」においても、上記ポイントの2番目の「コミュニケーション3原則」が成立する、と言う指摘は目からウロコでした。
逆にマナー書などで書かれている「頭を30度下げる」というようなTIPSは、「コミュニケーション」とは言えない気が……。
さすが昨今テレビや新聞で、「おわびの専門家」と紹介されてらっしゃるだけのことはありますね。
コミュニケーションの本質に触れられる1冊!
戦略思考で鍛える「コミュ力(りょく)」(祥伝社新書) (祥伝社新書 381)
第1章 誤解されている「コミュニケーション力」
第2章 コミュニケーション力は、戦略思考で鍛える
第3章 「コミュ力」を上げる聞き方と伝え方
第4章 さまざまな場面で生かす「コミュ力」――緊張緩和、おわび、キャリアプラン
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【編集後記】
◆昨日書店で見かけて、ビックリしたのがこちら。フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方
私が持っている旧版は真っ黄色だったのに、どうしてこうなった?(AA略)。
ま、まさか名前が「ピンク」だから(ダジャレ乙!)とかじゃないですよね……?
ご声援ありがとうございました!
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