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2014年08月26日

【数字】『数字で考える力』佐々木裕子


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数字で考える力 (次の10年にプロフェッショナルであり続ける人の教科書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった1冊。

「東大法学部⇒日銀⇒マッキンゼー」という華麗な経歴をお持ちである佐々木裕子さんが、「数字」をビジネスシーンで活用する方法をレクチャーして下さっています。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
21世紀を生き抜くビジネススキルを提供する「21世紀スキルシリーズ」創刊第3弾!
外資系コンサルティング出身の現役ビジネスパーソンによる、世界標準スキルをお届けします。
「数字で考える力」とは、
・数字という事実を切り口に、「何が起きているのか」の本質を把握する力
・数字を使って自分で考え、確信を持って判断する力
・数字をコミュニケーションツールとして使って、まわりを動かしていく力
です。

前作『実践型クリティカルシンキング』同様、授業形式を紙上で再現しており、「数字で考える力」が身につくこと必至です!





Happy Pi Day - P versus NP / Takashi(aes256)


【ポイント】

■1.自分の中に「基本数字」を持つ
 たとえば「小学校1年生の子どもの年間のお小遣いが10万円」と言われたら、「そりゃちょっと高いんじゃないの」と思うわけですよね。なぜそう思ったのか、思考プロセスを紐解いていくと、自分がかつて小学生のときにもらっていたお小遺いと比較したり、世の中のお父さんがもらっているお小遣いと比較したり、子どもがお小遣いで買うものの平均価格帯と比較したりしているから。自分の中にもっている基本数字と比較しているから、「高過ぎる」という判断ができるのです。
 私たちは身近なものについては常日頃自分で考え、判断しているので、そういうものに対してはけっこうな数の「基本数字」が頭に入っていると思うのですが、たとえばスケールが会社や国家レべル、世界レべルになった瞬間に、自分の中にある「基本数字」が極端に少なくなってしまう。この結果、そういう問題に当事者意識をもって自分で考える、というプロセスが始まらず、表面的な批評家になってしまったり、「思考停止」してしまったりする傾向があるように思います。


■2.実感のわく数字に翻訳する
2012年の日本の企業の女性管理職比率は11.1%で、上昇し続けています。この数字は高いでしょうか? 低いでしょうか? 問題ですか? 問題じゃないですか?
 この数字だけでは判断が難しいかもしれません。でもここで、「欧米の女性管理職比率は軒並み40%を超えている」と言われたらどうでしょう? 「え、そうなの? それに比べると日本の数字はすごく低い。問題だな」と思いますよね。
 さらにこの数字の何がどう問題なのか、本質を考えて判断しようと思うと、こんな疑問もいてくると思います。「もともと採用されたときはどうなんだろうか? 採用の男女比率そのものも違うのではないか?」「入社した女性の何人に何人が管理職になり、男性は何人に何人が管理職になるんだろう?」(中略)
 大切なことは、数字が表している事業はいったい何なのか、その本質に迫るために、問い続け、分解し、自分がその実感がわくところまで数字を翻訳すること。これを意識してください。


■3.タテヨコななめでダブルチェックする
 たとえば、ある商品の売上を20%アップさせよう、という方針と施策が決まったとき、ほんとうにできるのか、チェックしなければなりません。
 まず、「全体の数字と矛盾していないか?」をチェックします。
 現在の市場規模で可能なのか? 市場の成長率から見て、矛盾はないか? 市場の成長率がマイナス10%のときの売上20%アップと、市場の成長率がプラス20%のときの売上20%アップってたいへんさが全然違いますよね。(中略)
 次に、「施策の数字にまで落とし込んだときに実行可能か?」をチェックします。
 売上20%アップするっていうことは、営業の人員を増やすの? それとも、同じ人員での1人当たりのノルマが増えるの?(中略)  
 市場規模のような大きなところから、実際の現場まで全部つなげてみないと全体像がわからない。月当たりとか1日当たりとか、実感のわく数字にしなければなりません。


■4.正しく適切に比較する
 前項でも何度も言いましたが、分析って比較なんです。何かと比較をして、その本質を際立たせるのが分析です。
 比較するものの定義をしっかり理解して、正しいものと比較する。1時間目に「専門職なのに保育士の給料は安い」という分析をやりましたが(38ページ)、ほかの専門職と比べるとき、平均給料だけでなく、年齢も比べないといけなかったですよね。
 ジャイアント馬場さんの身長が高い、と言うとき、一般人の体重と比べても意味ないですよね。ちゃんと身長と身長を比べる。
 正しいアップル・トゥ・アップルの比較をする。比較対象を適切に選ぶことが大事です。


■5.常に言葉の定義を意識する
 数字で議論しましょう、と言っているにもかかわらず、抽象的な言葉をつかってしまうことはよくあります。「突出している」とか「ナンバーワンになる」とか「ここが肝だと思います」みたいな言葉ですね。気をつけていても、してしまう。私たちの習性だと思います。
 そういうときって、実は人によってその言葉の理解がぶれていることもよくあるのです。「突出している」って、人によって感覚が違いますよね。「ナンバーワン」といっても、5馬身離したナンバーワンなのか、ハナ差でもナンバーワンなのか。売上なのか利益なのか。ここが明確でないと、話がかみ合わない。
 実際、「日本の少子高齢化は深刻です」と言われても、「深刻ってなんだ?」となってしまいますね。でも、「2050年には日本の人口の4割が65歳以上になりますよ」と言われると、途端にリアリティが湧いてきますよね。


【感想】

◆1つ1つの引用部分が長くなってしまったので、この辺で。

前回同様、演習部分を避けてご紹介しているので、本書の醍醐味というか、演習を実際に解いていく過程で、色々な考え方やスキルが身につく様が分かりにくいのがちと残念です。

例えば、本書の第2章「数字で考える 実践編」では、1つの章を丸々使って演習問題を1問解いているのですが、ここは上記ポイントでは必然的に割愛せざるをえず。

ただ、これが「数字で考える」という本書のテーマに非常に沿ったものなので、簡単に触れておきたいと思います。


◆まず問題はこれ。
なぜ、少子化なのに待機児童が増えているのか?


出典:保育所関連状況取りまとめ(平成 25 年 4月 1日) - 厚生労働省

話としては何となく聞いたことはあっても、ではどのくらい待機しているのか、というと意外と(というか、普通は)知らないものです(上記グラフによると、約2,3000人)。

本書では、この問題に対して、以下のような手順でアプローチ。
1.仮説を立てる
2.なぜ? を構造分解する
3.必要な数字を集める
4.データがなければ、推計する
5.タテヨコななめにダブルチェックする
6.データの定義を確認する
一部、上記ポイントで登場するTIPSも見受けられますね。


◆さて、この手順で解いていくと、途中途中で新たな疑問や不可解な点が明らかになります。

まず、いきなり判明したのが『「保育利用児童」を「保育所定員数」が常に上回っている』(上記リンク先PDFの初っ端のグラフで分かります)という事実。

……ではなんで待機児童がいるのか?

また、キチンと手順を追って出来上がった数字を、STEP5でダブルチェックすると、公表された数字とまったく食い違う羽目に!?

そして、ここであきらかになった「事実」とは……?(ネタバレ自重)


◆こうした「推測」する使い方だけでなく、本書の第4章では、経営分析で用いられる数字も取り扱っています。

登場するのが「おもちゃメーカーのA事業部の事業部長に就任した」と仮定して、「A事業部の営業利益を上げる施策を考える」演習。

理屈的には「固定費を下げる」「売り上げを増やす」「利益率を上げる」となるわけですが、現在の利益が約4.7億円のところ、目標の7億円に達するには、それぞれかなり大変な事が分かります。

たとえば、「人件費カット」で対応すると、金額で「4割減」、「人数」で対応すると、「55人いるスタッフのうち、23人クビにする」ことになるという……。

ただし、ここでは「正解」を求めるのではなく、「数字をざっくりと理解」し、「実感できる数字に分解して落とし込む」ことができれば良い模様。

かなり分かりやすく解説されていますので、この手の数字にアレルギーがある方でも、ご一読頂ければ、と。


◆おそらく本書は、佐々木さんの前作がツボだった方には、そのまま受け入れられると思います。

テーマ的にも、より日常業務に近いものですし、実践する機会も多いハズ。

個人的には、第3章で解説されていた「ウォーターフォールグラフの効果的な使い方」がツボでした。

滝グラフ - Wikipedia

具体的には本書をご覧頂くとして、「営業利益よりも人件費増が大きく、今年は昨年度対比20%の営業利益減となった」という内容を、確かに「3秒で直感的にわかる」ようにできているな、と。


ビジネスシーンで数字を使いこなすために!

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数字で考える力 (次の10年にプロフェッショナルであり続ける人の教科書)
1時間目 数字で考える 基礎編
2時間目 数字で考える 実践編
3時間目 数字をグラフや図にする
4時間目 事業を数字で理解する


【関連記事】

【思考法】『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子(2014年07月01日)

【決断力】『早く正しく決める技術』出口治明(2014年05月16日)

【暗算】『ビジネスで差がつく計算力の鍛え方』小杉拓也(2013年10月03日)

【論理的思考】「過去問で鍛える地頭力」大石哲之(2009年07月02日)

「数に強くなる」畑村洋太郎(2007年03月04日)


【編集後記】

本書と同じく、ディスカヴァーさんの「次の10年にプロフェッショナルであり続ける人の教科書」シリーズで、もう1冊。

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はじめての事業計画のつくり方 (次の10年にプロフェッショナルであり続ける人の教科書)

こちらも面白そうです!


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