2014年08月10日
【サッカー】『日本代表はなぜ敗れたのか』湯浅健二,後藤健生
日本代表はなぜ敗れたのか (イースト新書) (イースト新書 36)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日のブラジルW杯の「検証本」。サッカー関係の著書も多い「重鎮」お2人が、ザックジャパンやその他の各国代表を斬りまくっています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
全国民の絶大な期待を背負ってブラジルW杯に臨みながら、グループリーグ敗退に終わったサッカー日本代表。「自分たちのサッカー」に殉じようとした彼らは、何に挫折したのか? 一時の低迷から再生を果たして王座に還り着いたドイツが体現するサッカーの未来像とは? ブラジル、スペインが陥った陥穽、アルゼンチン、オランダが見せた矜持、天才プレーヤーたちの真価……。サッカー界最強の論客コンビがどこよりも深く詳しく熱戦の真髄を読み解く、2014FIFAワールドカップ同時進行ディスカッション!
すでに日本代表の新監督はハビエル・アギーレ氏に決定しましたが、今だからこそ読んでおきたい1冊です!
日本代表、頑張れ!2014 / Richard, enjoy my life!
【ポイント】
■1.後半9分、なぜ遠藤を入れたのか後藤 そうなんだよ。ドログバがすごいのはもちろんなんだけど、出てきたタイミングが完璧だった。あれがたとえば、後半開始からだったとしたら、まだ対処しようがあった。後半が始まって日本が攻める形ができて、何本かシュートを打ちました。そこで遠藤が出てきて「さあ、もう少し攻めに行くのかな」と思ったら、向こうが目を覚ました。その瞬間にドログバが出てきてやられてしまった。もちろん、どんな状況であってもドログバが出てきたらやられていたかもしれません。でも日本が逃げ切る可能性もあったのに、その可能性を自分たちで潰しちゃったなという気がします。(コートジボアール戦後)
■2.コンディションは心理に左右されるか
湯浅 後藤さんの言うことは正しいと思う。たた、サッカーは心理ゲームというところがあって、グラウンド上でやっている選手は相手が強いと思った瞬間に、疲労度が2倍になるんですよ。感じ方だからね。もちろん物理的に準備しなければいけないというのはそうなんだけれど、日本の選手はコートジボワールの選手が強いなと感じていたと思うんですよ。局面のプレーとか、個人的な面とか。そういう相手とやるときはとても疲れが出てくるんです。それもあったんじゃないかな。(コートジボアール戦後)
■3.バリエーションの乏しさ
後藤 それはやっぱり、ひとつは「バリエーションが少ないチームだったな」ということだよね。これまでに何度もああやって相手に守られて、セルビアにやられてブルガリアにやられてべラルーシにやられて、とさんざんやってきて、アジアでもさんざんあったことなのに、そういう時にどうやるかをもうちょっとね……。ロングボールを使う、パワープレイをする、いろんなやり方を準備しておかなくちゃいけなかったなと。
湯浅 それを準備していなかったのに、付け焼き刃でやっちゃったりさ。結局、後藤さんが言ったのは正しいと思う。こういう状況になって「何か変化が必要だから変化をつけましょう」となった時に、まずリーダーがいないし、ザッケローニも用意していなかったし。(ギリシャ戦後)
■4.できなかった「自分たちのサッカー」
後藤 問題は、できなかったこと。それはなぜかと言えば、相手との力関係と日本側のコンディションの間題の両面があって、それが第一。それから、自分たちのサッカーができなかったらおしまいですって、それはサッカーのゲームとしてあり得ないですよね。相手は当然、それを潰しにくるわけだから、できない時でもなんとかしてリズムを戻すようなことをしなきゃいけないんだけど、日本は自分たちのサッカーに凝り固まってしまって、それでおしまいですというチームになってしまった。だから、2つ問題がある。なぜできなかったのかということと、できない時にどうするかという引き出しを作れなかったこと。(コロンビア戦後)
■5.ザッケローニの限界
後藤 ザッケローニはクラブの監督としてはそれなりの経験を持っている人だけど、代表チームは初めてだった。それでチーム作りはうまく行かなかったし、こういう短いトーナメントの戦い方もはっきりしなかった。ザッケローニは職人的に毎日グラウンドに出て、少しずつ調整して作りあげたチームで戦うというやり方をずっとやってきた人。でも、代表チームだと日にちも試合数も足りないから、それができなくなっちゃって、自分の思い描いていたようなことはできなかったのだろうと、僕は気の毒に思っていますけどね。次の監督は、代表監督としての実績・経験のある人を選んでほしいなと思っています。(コロンビア戦後)
【感想】
◆実際のワールドカップの期間中や、その直後から、日本代表の戦いぶりに対する批判を数多く目にしてきました。サッカー解説者、評論家から、個人ブログ、Twitter、さらには匿名のまとめブログ等々。
ただ、その多く、というかほとんどすべてが、テレビの画面を通じて観た「日本代表」に通じて論ぜられたものです。
それに対して本書で対談されているお2人は、実際に現地で観戦した上で、発言されているわけですから、より「ナマの声」に近いかと。
さすがに、実名で記事を書かれたり、本を出されているご両名ですから、「●●が中心になって不満の声が」的な、芸能ニュース的なお話はありませんでしたが。
◆また同様に、敗因を特定の選手に求めるようなこともありません。
局面局面において、「こうすべきだった」「こうして欲しかった」という話はあっても、「こいつのせいで」ということはなく。
ただし、初戦のコートジボアール戦で喫した失点に関しては、吉田と森重が「身体をぶつけようが、ユニフォームを引っ張ろうが何でもやって」止めにいくべきだった、とのこと。
個人的には、ゴール前の守備もさることながら、どちらも簡単にセンタリング上げさせたのが、まず問題だし、特に2点目に関しては、GKの川島が止められたんじゃないかと……。
とはいえ、後藤さんの言うように「よく2点で済んだ」というのは同意で、「ひょっとしたら、このおかげで得失点差で決勝トーナメント進出できるのでは?」なんて、薄ぼんやりと思ってたのですが(大甘)。
◆一方、ギリシャ戦に関しては、選手の退場もあってギリシャが引きこもってしまい、上記ポイントの3番目のように「打つ手の少なさ」が目立つ結果となってしまいました。
アジア相手でも、引きこもりには苦戦していた日本代表ですから、堅守で知られるギリシャから得点することは、元々難しかったのでしょう。
むしろフラグというか、「散々攻めて得点できないうちに、カウンターから失点して終了」もしくは、「セットプレー1発で終了」となってもおかしくない試合だった気が。
そういえば日本代表は、「高さ」に難点がある、と言われながらも、コーナーキックやフリーキックから失点しなかったのが、終わってみたら不思議でした。
……もっとも、失点した試合は、それ以前に簡単にポンポンと点を取られてしまったんですけどねw
◆そしてコロンビア戦は、試合前は「この試合に勝てば!」とか「一矢報いる」と言ってたのが、むなしくなった試合でした。
「ギリシャに勝たなくて、かえってGLの突破の可能性が高まった(キリッ!)」なんてお話もありましたが……。
「ギリシャに勝たなくてよかった……」サッカーW杯、引き分けでGL突破の可能性が“ちょっと”アップ!? - Infoseek ニュース
ただし、それも「コロンビア戦の勝利」が大前提。
ところが始まってみたら、それがまず不可能であることを思い知らされたワケで、その後大会の「スター」となったハメス・ロドリゲスにチンチンにされてしまったという。
〜 糸冬 了 〜
◆なお、冒頭の内容紹介でも触れられているように、本書は日本敗退後も、ブラジルW杯についての対談が続きます。
ブラジルの衝撃的な敗退や、オランダの躍進、メッシアルゼンチンの不調(?)、そして多くのGKの活躍等々。
もちろん優勝したドイツについてもページを割いていますし、そもそも湯浅さんは、ケルン国立体育大学の専門課程(サッカー)を終了され、また、ドイツのプロサッカーコーチライセンス(ブンデスリーグのチームの監督もできるそう!)をお持ちの方ですから、ドイツサッカー協会の内部情報もちらほらw
今後、世界はドイツを中心に回っていくことになりそうですが、果たして日本代表はどうなる(どうすべきな)のか?
気になる方は、新書にしては結構厚めのこの本で、色々学んで頂けたら、と思います。
サッカーファンなら、要チェックの1冊!
日本代表はなぜ敗れたのか (イースト新書) (イースト新書 36)
第一章 日本は戦う準備ができていたか?
第二章 世界との力の差
第三章 ああ、メッシが日本人だったら
第四章 「自分たちのサッカー」の敗北
第五章 決勝トーナメントの激闘
第六章 ブラジル惨敗の衝撃
第七章 強くて美しいサッカーの勝利
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【編集後記】
◆W杯を振り返る本として、この作品も。フットボールチャンネル03 代表23人が語る 敗北の真実 惨敗への直視こそ未来への一歩
こちらは、選手の声のようですね。
ご声援ありがとうございました!
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