2014年08月06日
【資料作成】『プレゼンは資料作りで決まる! 意思決定を引き寄せる6つのステップ』天野暢子
プレゼンは資料作りで決まる! 意思決定を引き寄せる6つのステップ
*Kindle版アリ
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。著者の天野暢子さんは、プレゼンテーションを中心としたコンサルタント「プレゼン・コンシェルジュ」として活躍されている、「プレゼンのプロ」です。
アマゾンの内容紹介から。
この提案を通したら、相手(意思決定者)にはどんないいことがある?この提案にはいくらお金がかかる?金額は意思決定の必須要素。いつまでに、どんな返事をすればいい?相手が迷わないように、期限を設けて決定を促そう。目標意識、気配り、自分らしさ、使いやすさ、シンプル。5秒で採用される資料が、今すぐ作れる!このままマネれば大丈夫!
プレゼンに限らず、資料作りの「勘所」を色々と学べる良書です!
Slides / tompagenet
【ポイント】
■1.人は権威や公的データに弱い図書館や書店の書籍、辞典、白書なども参考にして、使えそうなデータを探します。学術書や論文は巻末の参考文献によって価値が認められます。公式の著作物を基に作成した書籍や論文であるということが権威や信頼に結びつくのです。官公庁や公的機関の出した出版物は信頼してまず間違いありません。その際、引用するデータは必ず出典を明示しましょう。
■2.ベネフィットには物質べネフィットと感情べネフィットの2種類がある
ビジネスの現場で「価格が安い」「コストダウンが見込める」最新のデザイン」といったものは物質べネフィットになる要素です。その先に"これで部署の年間目標が達成できそうだ""これならノルマの売り上げが確保できる"という未来がイメージできるからです。(中略)
一方は感情べネフィットです。物事を決めるのは機械でもシステムでもなく人間です。そこには必ずその人の感情が人ります。「なんとなく東京人は虫がすかない」「赤いものなら何でも好き」という、好みや好き嫌いに近いべネフィットも考慮しなければいけないのです。「楽になる」「面白い」「新しい」などは感情べネフィットにつながります。
■3.スライドタイトルは16字以内で
ところで、テレビに出る字幕(テロップ)は1画面15〜20字程度とご存じでしょうか。ニュースの概略を伝えるタイトルテロップは16字以下と決まっています。長年の研究から2〜3秒で認識できる文字数は16文字とわかっているため、それが厳しく守られているのです。一方、インターネットはというと、重大ニュースを並べた「Yahoo!ニュース」の見出しが13文字です。こちらもネットサーフィンする人の目に留まる字数が研究されてこの数字になっています。総合すると、動的な画面では13〜16字程度の字数に絞り込まなければ文字が認識されないということです。
■4.シンプルな文を書く3つのルール
(1)2文節で書く(1)は短文の基本ですが、もっともシンプルな文章は「何が」+「どうだ」と2文節で書きます。(中略)(2)接続詞を省く
バリエーションとして「どのような」+「何」、「なぜ」+「こうする」があります。まずは2文節で文章を書くことから始めてみましょう。新聞を見てください。どこにも接続詞はないはずです。新聞記事をお手本に接続詞をすべて取り除けば短文で構成された文章に変身します。(3)不要な装飾文を省くなくても意味がわかる文や単語も排除していきます。具体的には慣用句や修飾句です。「それもそのはず」「一もニもなく」「のどから手が出るほど」などの慣用句は小説など読み物なら文や単語が強調され、情感も湧いてくるので意味がありますが、資料には不要な装飾です。
■5.場面によってグラフを使い分ける
情報が瞬時に直感でき(Usability)、相手(Whom)が意思決定しやすいビジュアルの代表格がグラフです。事実の列挙ではなく、自分が伝えたいポイントに焦点をあて視覚で強調できるのがグラフのメリットです。ただし、数字データがあるものしかグラフには加工できないという大原則があります。[主なグラフの特徴](詳細は本書を)
円グラフ→全体の中の割合を見せる
棒グラフ→各項目の値・量を見せる
折れ線グラフ→時系列の変化を見せる
帯グラフ→異なる項目の内部比率を比較する
■6.使用色を3色に決める
周囲を見回すと、コンビニや飲食店、銀行などのマークや看板の多くは3色までで表現されているはずです。世界各国の国旗も3色のものが主流。決めた色以外は使用禁止というルールを守るのがプロなのです。
資料は用紙の地色(背景色)の白と、文字の黒がありますから3色に決めても実際には5色見せていることになります。3色だけでは単調に感じるかもしれませんが、青を選んだ場合、少し濃い青、少し薄い青などで表現を広げます。
【感想】
◆本書の「はじめに」では、「通る資料の5つの要素」なるものが紹介されています。それは天野さん曰く、GHOUS(ガウス)である、と。
・Goal(目標意識)上記ポイントの5番目で、サラッと「Usability」というフレーズが出てくるのも、天野さんがGHOUSを意識しているから。
・Hospitality(気くばり)
・Originality(自分らしさ)
・Usability(使いやすさ)
・Simple(シンプル)
ちなみに、それに続く「Whom」は、いわゆる「6W2H」の「Whom」であり、本書の本文では、どの項目も小見出しの下に「6W2H」のうちのどれに該当するTIPSかが明記されています。
◆本書の特徴として挙げられるのが、基本的な事から、かなりマニアック(?)なTIPSまでカバーしていること。
たとえば、どんな資料を作る時も、「6つのステップ」を踏む必要があり、それは下記目次の通り(仕様を決める→構成する→文を書く→ビジュアルを準備する→編集する→チェックする)です。
これは、天野さんのやり方を私たちが再現するためのプロセスであり、まさに冒頭の内容紹介にあるように「このままマネれば大丈夫!」。
一方で、天野さんは広告会社、広告主、マスメディアにそれぞれ勤務したことから「プレゼンする側」と「される側」の両方を経験しており、「通る」プレゼンの秘訣もご存知です。
個人的に「マニアックだなー」と思ったのが、プレゼンを受ける側のサイトや社長のブログ等をチェックして、「感情ベネフィットを探る」というもの。
たとえば上記ポイントの6番目に「使用色を3色に決める」とありますが、「コーポレートカラーは水色と黄色」「社長は巨人ファン」等の情報が得られたとしたら、プレゼンで使う色も「水色や黄色」にしたり、「オレンジ(ジャイアンツのイメージカラー)」にしたり、といった工夫をする作戦もあるワケです。
……ちなみに、ライバルメーカーのテーマカラーで作られた資料を見た某メーカーが、「使い回しだ」と直感して、営業マンを追い返した、ということもあったのだとか。
◆「使い回し」といえば、スライド資料と配布資料を兼用することについて、天野さんは否定的です。
たとえば、スライドは画面全部を使えるところ、配布資料は左の綴じしろ部分は見えなくなってしまいますので、コンテンツ全体を右寄せにする必要が。
また、濃い背景色に白抜き文字を載せたようなスライドを印刷すると、紙面が真っ黒になってしまいます(たまにセミナーの資料等で、そういう「真っ黒」なのに遭遇しますがw)。
こういう場合には白黒(明暗)を逆にした印刷用データを使えば、インクやトナーの無駄使いが防げる、と。
こういう細かい部分が、「さすがプロだな」と思った次第です。
◆なお、本書の巻末には「今すぐ使えるプロのお宝テンプレート集!」と題して、「そのまま参考にできる」テンプレートを収録。
これは版元サイトからもダウンロードできるもので、私のように、プレゼンの経験が極めて乏しい人間には、ありがたいことこの上ないです。
もちろん、本文中にも具体例として、さまざまな資料が登場しますし、こちらも参考になるかと。
毎回、この手の資料作成本をレビューするたびに思うのですが、テキストだけでは伝えきれない部分があるのは、ご留意頂きたく。
資料作成を基礎から学べる1冊です!
プレゼンは資料作りで決まる! 意思決定を引き寄せる6つのステップ
1 「6W2H」で「仕様を決める」!
2 資料を「構成する」!
3 資料の「文を書く」!
4 資料の「ビジュアルを準備する」!
5 資料を「編集する」!
6 資料を「チェックする」!
巻末資料(このまま使えるプロの必勝テクニック!
今すぐ使えるプロのお宝テンプレート集!)
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もしものときのための『ウォールストリート・ジャーナル式図解表現のルール』6選(2011年04月13日)
【編集後記】
◆もうすぐ出る「資料作成本」がこちら。外資系コンサルが実践する 資料作成の基本 パワーポイント、ワード、エクセルを使い分けて「伝える」→「動かす」王道70
以前、当ブログで『外資系コンサルの仕事を片づける技術』をご紹介したことのある吉澤準特さんの新刊。
これも要チェックですね!
ご声援ありがとうございました!
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