2014年07月14日
【速報!】『影響力の武器』の[第三版]を[第二版]と比較してみました
影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
【はじめに】
◆先月、『影響力の武器[第三版]』が出る前の段階で、「こういう内容では?」という予想記事を書きました。参考記事:【速報】『影響力の武器[第三版]』がいよいよ登場!(2014年06月09日)
その後、発売日にリアル書店で探したのですが、私が行った某書店では見当たらず。
そこで大人しくアマゾンで注文したところ、昨日到着したので、上記記事を改めて検証してみようかと。
[第二版]と[第三版]にどんな違いがあるか気になる方は、ぜひご覧ください。
Affiliate Summit West 2010 607 / affiliatesummit
【ポイント】
■1.ページ数はほぼ一緒だった◆まず気になっていたのが、アマゾンで見る限りページ数が[第二版]と[第三版]とで一緒だったこと。
「参考事例を大幅に増量」というのに、ページ数が変わらない、というのはさすがに誤植ではないかと思っていたのですが、ほぼ同じでした。
というか、[第二版]の496ページというのは、どこからどこまでを指すのか良く分からないのですが、巻末の参考文献に記された最後のページ数は「469」なので、ひょっとして、これってそもそも誤植だったのでは?(今さらw)
一方、[第三版]の同じ部分までのページ数は「473」。
「大幅増量」の裏には、逆に「削除」された部分があることが伺えます。
■2.大見出しも一緒
◆次に目次をチェック。
各章ごとの大見出しは「ほぼ一緒」でした。
完全一致でないのは、第5章のサブタイトルがちょっとだけ違うからで、[第二版]で「第5章 好意―優しい泥棒」だったのが、[第三版]では「第5章 好意―優しそうな顔をした泥棒」に変更。
それにつづく小見出しについても、ちょっとした違い以外は、これまた「ほぼ一緒」でした。
■3.巻末の文献数は大幅増加
◆巻末に文献が列挙されているのですが、こちらは大幅に増加しています。
[第二版]が「365」だったのに対して、[第三版]では「403」
ただし、最初の方だけ付き合わせてチェックしたのですが、[第二版]であったものが[第三版]ではいくつか割愛されていて、そこに新しいものが加わっている模様。
これはやはり、本文の方で事例が入れ替わっていることに伴うものだと思います。
■4.「読者からのレポート」も増量&差し替えアリ
◆[第一版]から[第二版]にかけての大きな変更点だった「読者からのレポート」。
こちらも[第三版]にかけて変更されていました。
まずレポート数が「14」から「21」へ増加。
このうち[第二版]であったものが、2つ削除されているので、新ネタは「9」追加されたことになります。
この「読者からのレポート」は、ネタ的にはそれほど古いわけではないので、削除されたのは、単純に新ネタと比較した結果ではないか、と。
■5.「設問」も1箇所を除き同じ
◆各章の終わりに「設問」として、「内容の理解」並びに「クリティカルシンキング」と題された問いが収録されていますが、こちらは1箇所を除いてそのままでした。
具体的には第7章の希少性のところで、[第二版]では「キャベツ人形」が競売場で高値で取引された事例だったのが、差し替えられたこと。
キャベツ畑人形とは - はてなキーワード
ご存知ない方のために画像を貼っておきます。
class portrait / Carla216
とはいえ、差し替えられた新ネタというのが、「紀元前355年」の話なんで、思いっきり昔になってるんですがw
■6.章冒頭の写真は全とっかえ
◆覚えてらっしゃる方も多いと思いますが、[第二版]では各章のタイトルページの裏側に、その章の内容に関係した広告の写真が掲載されていました。
[第三版]でも同様に写真が掲載されているのですが、すべて違うモノに変更。
それも広告ではなく、何かの写真(出典不明)で、それに伴い上記「設問」の「クリティカルシンキング」の各章最後の問題が「本章の冒頭にある広告は、どのような点で本章の内容を反映しているだろうか」だったのが、「本性の冒頭にある写真は〜」に変わっています。
そういう意味では、上記5.で「設問は1箇所以外同じ」と言いましたが、厳密には全部の章のその部分が変更されていますね。
■7.本文でも事例の入れ替えアリ
◆一方、本文の方でも、いくつかの事例が入れ替えられています。
たとえば[第二版]の第2章では、ビリヤード台のセールスの記事を引用した事例が載っていたのですが、これは記事が「1975年」と古いものだったせいか削除。
他にもくどい表現や他で代用できる部分が、パラグラフ単位でカットされたりしてましたが、キリがないので割愛します。
逆に新ネタは、ほぼおしなべてタイミング的に新しいもので、例えば台風「カトリーナ」の後の援助活動のお話やら、細かいところでは、「親が買わされるおもちゃ」の具体例に「Xbox」や「Wii」が追加されていたこと等w
さすがに[第二版]から、和書ベースでも7年経っていますから、アップデートしたかったのだと思われ。
■8.「訳がこなれてきた」感アリ
◆前回の記事で「新訳で読みやすくなった」らしいと言っていたのは、本当でした。
たとえば[第二版]のこんなフレーズ。
自動的な影響力の武器がどこにあるかをよく知っており、自分の欲しいものを得るためにそれをうまく使う人がいるものなのです。これが[第三版]だとこうなります。
世の中には、自動的な影響力の武器がどこにあるかをよく知っており、自分の欲しいものを得るためにそれをうまく使いこなす人たちがいます。個人的にはかなり「文章として自然」になったのではないか、と。
この事に関しては、巻末の「訳者あとがき」において、社会行動研究会翻訳分担者の安藤さんと川奈さんからも、こんな発言が。
内容とは別に、今回の「影響力の武器(第三版)に加わった「新しさ」は、訳文の質である。第一版と第二版で翻訳に携わってきたのは社会心理学の研究者グループであり、翻訳に関しては所詮素人である。できるだけ正確に訳出することを心がけてはきたが、訳文であることがわかるような、ぎこちない箇所も少なくなかった。今回はプロの翻訳家が加わったことによって、文章の流れがスムーズになり、格段に読みやすくなったと思う。実際、アマゾン等にも明記されていないのですが、[第三版]からは社会行動研究会のメンバーに加えて、翻訳者として、曽根寛樹さんのお名前が。
ベスト・アメリカン・短編ミステリ2012
実際、読んでいて今まで以上にスムーズに読めることウケアイだと思います。
【感想】
◆以上、速報ベースで、[第二版]からの相違点等を列挙してみました。[第二版]と並べて、1行1行読んでいたら、とんでもなく時間がかかったので、まだ第3章までしかチェックが済んでいないのですが、上記ポイントの6番目までについてはこれで確定。
8番目の「訳」についても、おそらく印象は変わらないでしょうから、今後変わるとしたら、7番目くらいでしょうか。
「えー、この事例カットしちゃうの?」的な話があったら、申し訳ないのですが……。
◆また、前回の記事で変更点として挙げられていた「マンガの追加」ですが、これは恐れていた(?)『影響力の武器 コミック版』からの転用ではありませんでしたw
影響力の武器 コミック版
参考記事:【ネタ?】『影響力の武器 コミック版』が想像の斜め上だった件(2013年09月16日)
確かに追加されていたのですが、それはあくまで「挿絵」レベルのイラスト。
パッと見で目についたのが、「DILBERT」ですとか(このイラストが収録されているわけではありません)。
Dilbert / Tobyotter
逆に削除されていたものもありましたので、トータルとして「追加」ということだと思います。
◆他にも細かいところで違いがあったので、こちらはまとめて。
・[第二版]で強調部分は傍点処理だったのが、[第三版]では太字(&ゴシック体)に。
・[第二版]では普通に「ロー・ボール・テクニック」と言っていたのが「承認先取り法」と言い換えられている(字数節約?)。
・ちなみに、「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」は[第三版]では「譲歩的要請法」と言われているが、良く見たら[第二版]でも本文中では「『拒否したら譲歩』テクニック」と呼んでいたw
・本体価格が[第二版]では2,800円だったのが、[第三版]では2,700円に値下げされている(なお、[第一版]は余裕で3000円超だったハズ)。
◆なお、今般[第三版]の発売にともない、アマゾンでは[第二版]のプロパーでの取り扱いが終わった(マーケットプレイスのみ)模様。
個人的には、わざわざ[第二版]を買いだめする必要はないと思いますし、どちらもプロパーで買えるにしても、やはり[第三版]を選ぶと思います(100円安いしw)。
それはやはり、事例の差し替えもさることながら、読みやすさが改善されたこと。
原書で読んだワケではないので、原文に忠実か否かという観点はないのですが、やはり500ページ近い本を読むなら、少しでも訳がこなれてた方が楽ではないか、と。
もちろん普通の方は、私のように、[第一版][第二版][第三版]と3冊揃える必要はないと思いますがw
今後は[第三版]推しで参ります!
影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
第1章 影響力の武器
第2章 返報性―昔からある「ギブ・アンド・テイク」だが
第3章 コミットメントと一貫性―心に住む小鬼
第4章 社会的証明―真実は私たちに
第5章 好 意―優しそうな顔をした泥棒
第6章 権 威―導かれる服従
第7章 希少性―わずかなものについての法則
第8章 手っとり早い影響力―自動化された時代の原始的な承諾
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【編集後記】
◆今回、「訳のこなれ方」を改めて意識することとなったので、この本についても。影響力の正体 説得のカラクリを心理学があばく
確か原本は[第二版]と同じハズなのですが、こちらもキチンと翻訳者さんが訳されているので、読みやすいハズ。
また、『影響力の武器』にはないKindle版があるのも魅力ですねw
ご声援ありがとうございました!
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