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2014年07月06日

【行動経済学】『なぜ、それを買ってしまうのか』加藤直美


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なぜ、それを買ってしまうのか (祥伝社新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。

食費生活コンサルタントである加藤直美さんが、私たちの消費行動について分析されています。

アマゾンの内容紹介から。
あなたは、「なぜ、これを買うのか?」と、自問してみたことはありますか? 「希少価値」、「天然素材」、「高級食材」といったキャッチフレーズに私たちは弱く、それほど魅力を感じていないのに、ついつい買ってしまった経験は、誰にもあるははずです。 はたして、それは「なぜ?」なのか。 著者は、長年、客が「なぜその商品を選んだのか」をリサーチし、調査と研究を重ねてきました。 豊富な実例を元に、買い物行動のメカニズムを脳科学の知見から解き明かします。

行動経済学好きの方なら、要チェックです!





Seiyu jam rollback / Brave New Films


【ポイント】

■1.「損得勘定」の3つの特徴
 これまでのところを整理してみると、損得勘定にはだいたい3つの特徴が見られます。
(1)損した気分は、得した気分より強く感じられる。
(2)損か得かの分岐点は、置かれている状況や期待している状況により、どう判断したかの基準値で損得の気分に割れる。
(3)損得ともに基準値から離れるほど、感情の起伏は小さくなる。
(詳細は本書を)


■2.値下げ幅は最初の金額に左右される
 最初の価格が12万円のちょっきり価格の場合、11万円もしくは10万円と、値切るほうも1万円単位のちょっきり教字で考え、最終的な価格もちょっきりにしようとします。一方、最初の価格が11万9800円の半端な場合は、11万9000円とか11万4800円とか、最終的な価格も半端になりがちです。
 すると、最終的な価格は、最初の価格がちょっきりだった12万円のほうが、半端な11万9800円より安くなってしまいます。これに似た実験は、何度も追試が行なわれていますが、ほぼ同じ傾向が見られます。ちょっきり価格のほうが半端な価格より、値下げ率が大きくなるのです。


■3.「100円ショップ」での買い物を楽しいと思うワケ
 選ぶことには、リスクが伴います。できるだけリスクを回避したければ、よく吟味して慎重に選ばなければいけません。でも、いつも慎重に選んでいては疲れるばかり。買い物を楽しむことができなくなります。
「100円ショップ」に代表される安価な均一価格ショップでの買い物を楽しいという消費者が多いのは、品揃えが豊富で選べる楽しさだけでなく、みんな100円の安心感、しかも100円の安心感から、失敗を気にしないで気軽に買えるからです。買った後でしっくりこなくても、まあ100円だからと諦められます。それで、ついついたくさん買ってしまう人もいるようです。


■4.「値引き」と「ポイント」を使い分ける
 値引きは、通常価格との差からすぐに「お得」を知らしめてくれるので、不況のあおりで気持ちが萎縮しがちな消費者のカンフル剤になるでしょうが、その場限りの効果しかありません。
 ポイントは、何となく「お得」な感じがする上、その場ではっきりしませんが、次への来店動機になります。さらにポイントが貯まってくるほど来店動機も強くなります。
 カンフル剤をいきなり止めるのはリスクがあります。中間的な「値引き&ポイン卜」でポイントを貯める楽しさを体験してもらうことは意味のあることでしょう。


■5.衝動買いをしがちな人は直感に頼る
 よく行くコンビニで、商品をセットで買うと値引いてくれる「セット値引き」キャンぺーンをしていました。
お弁当とお茶をセットで買ったら590円でした。
お弁当はお茶より500円高いです。
お茶の価格はいくらでしょう?
 パッと思いついた価格(数字)をそのまま答えにした人は、仕事や人間関係などに問題を求める前に、自分自身を振り返る必要があります。
 とはいえ、この課題に挑戦した人の過半数は、パッと浮かんだ数字に飛びついてしまいます。つまり、直感だけに頼ったのです。
 直感では90円となったでしょう。何となく正しく見えるので、検算するのを怠ってしまう人が多いのです。


■6.選択する権利とその権利を使うことは別
 第2章で、商品の比較検討は、ワーキングメモリーの限度枠「7±2」で行なわれていると言いましたが、実際の買い物では、この「上限」まで使われることもほとんどないのが分かります。まったく初めて購入を検討する商品ジャンルであれば、きっと限度枠「7±2」を使うでしょうが、普段よく買っている商品ジャンルでは、最初に目に入ったよく買う商品がそのときの条件に合えば、そのまま買ってしまうのです。
 私たちは、選択肢が多いことを好みながら、実際に選択肢が多ければ選ぶストレスを感じます。この一見して矛盾した感覚を要約すれば、選択肢の多いことは「自由」や「選択権」という権利の範囲が広がることで喜ばしいことですが、その自由や権利を行使するかどうかは、また別の自由というわけです。


【感想】

◆本書はアマゾンにしては珍しく(?)、帯がしっかり書影として写っています(現時点では)。

ここにある問題については、上記ポイントで1つくらいは触れたかったものの、いわゆる「ネタバレ」になってしまうので、とりあえず自重。

一応書影にある問題部分だけここに描きだすと、こんな感じです。
(1)1980円の「500円引き」と「30%引き」
(2)「75g1000円」と「50g698円」
(3)「月額1000円で年間364本レンタル」と「月額1200円で年間468本レンタル」
詳しくは本書にてご確認を。

ただし、この部分は厳密には行動経済学とはちと違うカモ。

特に(2)と(3)は、単位当たりの値段もさることながら、「必要量」や「視聴可能量」の問題もありますしね。


◆また、上記ポイントの4番目に関連して、次のようなケースが挙げられていました。

家電専門店で1万円の買い物をした場合に

 (A)100人のうち1人に1万円値引き

 (B)買い物客全員に1000円引き


のどちらを選ぶか?

さらに、同じケースでポイントカード(1ポイント=1円)がある場合に

 (C)100人のうち1人に1万ポイントプレゼント

 (D)買い物客全員に1000ポイントプレゼント


のどちらを選ぶか?

……私は小市民なんで、(B)と(D)を選んだのですが、それって結局「値引きもポイントカードも同じ」ワケで、研究成果と無関係だったの巻ww

ちなみに、オリジナルの実験では、(A)を選んだ人が4割を超え、(B)を選んだ人が8割を超えたそうです。


◆また、この実験では、設定を同じままにして、購入金額だけ10万円に引き上げた場合と、1000円に引き下げた場合も、購入者の選好がどう変わるかも比較。

結果、10万円の場合には、「値引き」「ポイント」ともに確実な方を選ぶ人が圧倒的となり、一方、1000円の場合には、不確実な方を選ぶ人が増えたのだとか。

特に「値引き」の場面では、過半数が「100人に1人がタダ」を選んだそうです。

なるほど、何かしらのキャンペーンをやる場合には、その設定金額によって、「確実」か「不確実」かを考えた方が良い、ということで。


◆一方、割愛した中では、「第3の選択肢」を与えることによって、消費行動に影響を与えるお話もありました。

 (A)抜群に美味しいけれど、栄養価はあまりない食品

 (B)味は並みだが、栄養豊富な食品


これを検討しているところに、「第3の選択肢」を提示します。

 (C)とても美味しいが(A)ほどではなく、栄養価は(A)とあまり変わらない食品

これは以前「おとり戦略」として、この本でも触れられていましたね。

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価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?

参考記事:【スゴ本】『価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?』リー・コールドウェル(2013年02月17日)

ただし本書は、これを「大学の単位取得」という問題も併せて、高齢者と学生のそれぞれで実施。

果たして、その結果は?(ネタバレ自重)


◆なお、本書の巻末には、多数の参考文献が収録されていました。

その中には、下記関連記事にもある『予想どおりに不合理』『ファスト&スロー』、さらには『思い違いの法則』等も。

そんなワケで、本書も「行動経済学」がテーマといって良いとも思うのですが、著者の加藤さんは、学者さんとは違います。

逆に、本業でマーケティング・サポートを行ってらっしゃるだけあって、実際に「希少=価値」を極めるような商品を作られたことがあり、その模様は本書のコラムにて掲載。

これがその商品なのですが。

ニュース | 日本カシス協会 [JAPAN CASSIS ASSOCIATION]

どうです?飲んでみたくなりませんか?

    (ФωФ)フッフッフ


行動経済学好きなら、一読の価値アリです!

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なぜ、それを買ってしまうのか (祥伝社新書)
第1章 買い物を巡る物語のはじまり

第2章 数字は甘くささやく

第3章 「稀少=価値」「自然=純粋」の法則

第4章 買い物行動はどう変わる


【関連記事】

【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

【速報!】プレミア付きの名著『ファスト&スロー』がいよいよ文庫化!(2014年06月17日)

【ヒューリスティック】『思い違いの法則: じぶんの脳にだまされない20の法則』レイ・ハーバート(2012年04月24日)

【スゴ本】『価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?』リー・コールドウェル(2013年02月17日)

【スゴ本!】『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』イアン・エアーズ(2012年10月30日)


【編集後記】

◆その「未読本」記事で、取り上げそこなったのがこちら!

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お金と感情と意思決定の白熱教室: 楽しい行動経済学

大昔の記事の編集後記で取り扱ったきり、すっかり失念していましたよ……。

これも「アリエリー好き」としては、読んでおかねば!


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