2014年06月30日
【CIA流?】『CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる』J.C.カールソン

CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、リアル書店で発見した「少々変化球気味」のビジネス書。アマゾンの書影には載っていませんが、実際の帯では解説の佐藤 優氏が、顔写真付きで激プッシュしています。
アマゾンの内容紹介からその部分を一部引用。
インテリジェンスの技法をビジネスマン向けに解説した「最高のビジネス実用書」がついに日本初上陸!
インテリジェンスのプロ中のプロである佐藤優氏がここまで絶賛した本はかつてなかった!「こんな本は今までなかった。日本語で読める最高の1冊だ」
ネタ的に、HONZや土井英司さんあたりが取り上げそうなので(?)、一足先にレビューしてみますw

detective / olarte.ollie
【ポイント】
■1.自分の強みが狙われることを理解するたとえば、顧客に対するきめ細かい配慮が何よりの強みになっている企業があるとする。それは逆にいえば、顧客対応に関して悪い評判が立つことは、その企業にとって命取りになりかねないということである。競合企業はその弱点を突き、わざと悪い評判を立てようとするかもしれない。
また、業界でもトップクラスの才能を集めているのが強みの企業があったとする。その場合、競合企業はへッドハンターを雇って、有能な人材をいっせいに奪い取ろうとするかもしれない。(中略)
こういうことを知っていれば、競合企業が何を狙ってくるか事前に予測できるだろう。
自分がもっていて、相手がもっていないもの――狙われるのはそれだ。
■2.履歴書に書いてある「事実」の裏をとる
CIAでは身元調査の際、応募者に紹介された身元保証人に連絡をとるだけではなく、その身元保証人にも応募者を知る別の人を紹介してもらう。また、その人にも別の人を紹介してもらい、その人にもさらに別の人を、という具合に、十分な情報が得られたと判断するまで繰り返していく。民間企業の採用でも同じようなことはできるはずだ。
知り合いの知り合いをたどっていけば、より多くの情報を得ることができる。CIAでは、こうして得られる情報のことを「ホール(廊下)・ファイル」と呼んでいる。廊下で小声で交わされる噂話を聞くようなものだからだ。公式の人事ファイルには載らない情報である。
■3.CIAの5つの人事戦略
(1)次々に新しい仕事を与える――便秀な人材は停滞を嫌う
(2)社員の履歴書が充実するような肩書きや地位を会社に用意する
(3)重要な仕事ほど、任せる人は純粋に能力と人間性だけで決める
(4)部門横断的なチームを編成し、退屈な仕事にもやりがいをもたせる
(5)一匹狼にも居場所をつくる――無理にマネージャーにもチームのメンバーにもしないほうが組織にとっても本人にとってもプラス
(詳細は本書を)
■4.利益がリスクを上回るのなら、注意しながら敵とも手を組む
世界には、アメリカと敵対しているが、その一方で国境地帯に存在するテロリストのトレーニングキャンプも敵視しているという国がいくつもある。CIAはテロの容疑者を確保、拘束し、アメリカに移送する際などに、そうしたいわば「敵国」と限定的な同盟関係を結ぶことがある。表面的には敵対する国同士が、状況によって手を結ぶことは珍しくない。
国と国の間でもこうなのだから、民間企業の場合なら、敵と手を組むことはおそらくもっと簡単だ。激しく競争している競合企業と、あるいは好感のもてない元社員と、あれこれ口を出してくるうるさい監督官庁と。どういう相手とも、もし利益がリスクを上回るのなら、協力し合う価値はあるだろう。身を守ることも大切だが、時には冒険も必要である。
■5.情報を素早く入手し、それに対応する
最新のニュース、とくに地元や業界に関するニュースには目を光らせておくべきだ。そのニュースに関連して起きる状況変化をうまく利用すれば、自分や自社に利益をもたらすことができる。
業界内に幅広い人脈があれば、新聞やテレビとは違った情報が得られることもある。これから起きる変化を早く察知するほど、早く行動を起こすことができる。競合企業の幹部の動向、新たな法規制の導入、市場環境の急激な変化といったことに関する情報は、できるだけ早く得るべきだ。そのほか、競合企業の供給業者や重要な顧客に何か変化があった場合もチャンスといえるかもしれない。
これは卑劣なやり方だろうか。たしかに少し卑劣だろうが、状況が逆ならば競合企業も同じことをしてくるはずである。
■6.話すときには相手の反応に注意し、必要なら軌道修正する
話をするときは話をするだけ、聞くときは聞くだけになってしまう人は多い。同時に両方ができる人は少ない。しかし人を説得するとき、何かを売り込むときには、常に神経質なくらい相手の反応を見ている必要がある。
話のうまい人、売り込みのうまい人は皆、同じ能力をもっている。聞き手が自分の話に興味を失ったことを察知する能力だ。話をしながら「聞いていないな」と思えば、すぐに軌道修正ができる。
【感想】
◆今まで、当ブログでもアメリカの政府(?)関係出身者の書籍を何冊かご紹介したことがありますが、思い返してみると、それらはほぼすべてFBIでした。たとえばこんなのとか。

FBIトレーナーが教える 相手の嘘を99%見抜く方法
参考記事:【99%?】『FBIトレーナーが教える 相手の嘘を99%見抜く方法』から選んだ嘘つき の7つの特徴(2012年09月09日)
そもそもFBIとは「アメリカ合衆国連邦捜査局」であり、「犯罪者の対応」にあたる組織です。
アメリカ合衆国連邦捜査局
その結果、下記関連記事でレビューした作品も、テーマはすべて「対人スキル」「コミュニケーション」に関するもの。
それに対し、CIAとは「アメリカ合衆国中央情報局」であり、「対外諜報活動を行う」組織です。
中央情報局 - Wikipedia
「諜報活動」とは、まさに「インテリジェンス」そのものであり、佐藤 優氏が推奨するのも納得。
その佐藤氏は、冒頭の「本書を推薦する」と題されたまえがきにて、本書について「インテリジェンスの技法をビジネスに活かすという触れ込みの本はいくつもあるが、間違いなく日本語で読める最高の1冊だ」と言われています。
◆さて、その「諜報活動」ですが、てっきり相手国の重要な情報を、建物に忍び込んで盗み出したり、変装したり身分を偽って、重要人物から情報を訊き出したりするのかと思っていました(テレビの観すぎ)が、あにはからんやw
メインとなるのは、敵側の関係者の中で、自分の代わりに諜報活動をしてくれる「協力者」を得ることなのだそう。
つまり「協力者」になるということは、誓約や義務、法律を破り、友人、同僚、家族を裏切ることにもなるワケで、場合によっては終身刑や死刑になったりします。
「諜報員はいわば『危険な仕事』という商品を相手に売り込む名手なのだ」という著者の主張にも、思わず納得。
本書にも、情報の分析や、対人スキル、マネジメントや組織のあり方まで、参考にできる点が多々ありました。
◆また本書では、自分が仕掛けるだけでなく、上記ポイントの1番目のように、「自分が防ぐ場合」についても言及されています。
特に昨今問題となっているのが、情報の漏えいで、丸々そのテーマを扱っているのが、第3章の「内外の敵から情報を守る技術」。
本エントリーでは割愛しましたが、「産業スパイが駆使する合法・非合法テクニック一覧」というのには、とりあえず目を通して頂きたいところです。
当事務所でも、吉澤大先生に教えてもらった、「機密文書リサイクルサービス」を活用していますが、このくらいは最低限やっておかねばならないかと。
もっとも、ウチで利用しているのは、自分の所の情報よりも決算データ等の顧客情報のためなのですがw
◆なお、CIAの報酬と言うのは、「政府機関でも最低レベルの給与」なのだそう。
著者の同僚には、それまで一般企業で巨額の報酬で働いていた人や、企業の顧問弁護士、アイビーリーグ出身で博士号を取得し5ヶ国語を話せる人もいたとのこと。
そんな人々が、なぜCIAで働くに至ったのか?
ざっくり言うと上記ポイントの3番目になるのですが、これは報酬以外で優秀な人材を集める場合に参考になりそうです。
ちなみに、著者は1年に渡る研修を経た上での、最初の任務が「9・11テロ」直後のアフガンへの赴任で、防弾チョッキを着て銃を身に付け、スティンガーミサイルと一緒にジープに乗っていたのだとか。
……うん、たしかに「勤務初日から大きな仕事を任せてもらえて」ますね(棒読み)。
◆上記では佐藤氏の「まえがき」の推薦文に触れましたが、本書の巻末には、同じく佐藤氏の解説が20ページ弱収録されています。
そこで佐藤氏は、本書における対人技法のうち、「特に有用だと思った」10項目について言及。
推薦文と合わせて30ページ近くにものぼる力の入れ具合からも、佐藤氏がいかに本書を気に入ったのかがわかります。
その解説の最後で、佐藤氏は本書について「『アート』ではなく『技術』だからこそ、読者にとって『再現可能性』がある」と断言。
全部が全部実践できる内容ではないものの、活かせるところは活かしたいものですね。
CIAの「技術」を学ぶ1冊!

CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる
【第I部 CIA諜報員の基本テクニックを身につける】
第1章 CIA諜報員のテクニックはビジネスに活かせる
第2章 CIA諜報員が身につけている基本テクニック───話の聞き出し方、人物の見抜き方、信頼関係の築き方
第3章 内外の敵から情報を守る技術───スパイ行為にどう対抗するか
【第II部 CIAの組織能力に学ぶ】
第4章 CIAが実践している採用・人事戦略───なぜCIAは優秀な人を安い報酬で雇えるのか?
第5章 CIA諜報員が不要なウソをつかない理由───倫理的にふるまうことは自分に利益をもたらす
第6章 CIAが実践している危機管理術───なぜCIAは9・11直後から素早く、また柔軟かつ前向きに危機対応ができたのか?
【第III部 CIA諜報員のテクニックを応用する】
第7章 CIA諜報員が実践している説得術───人脈構築術から交渉術まで
第8章 業者に不祥事を起こさせないために───サプライチェーンでの諜報活動
第9章 敵と関わる技術、敵を味方にする技術───社内での競争、他社との競争にどう勝つか
【関連記事】
【99%?】『FBIトレーナーが教える 相手の嘘を99%見抜く方法』から選んだ嘘つき の7つの特徴(2012年09月09日)【モテ?】『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』ジョー・ナヴァロ,マーヴィン・カーリンズ(2014年02月19日)
【必読】『FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学』緊急レポート(2011年01月29日)
中間管理職なら知っておくべき『FBIアカデミーで教える心理交渉術』の5つの法則(2012年06月03日)
アルファギークもびっくり 驚愕の「FBI式 人の心を操る技術」(2010年06月28日)
【編集後記】
◆同じく佐藤氏のインテリジェンス本を。
新・帝国主義時代を生き抜くインテリジェンス勉強法
アマゾンでの評価も上々です!

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