2014年06月25日
【読書】『ビジネスパーソンのための「最強の教養書」100』

ビジネスパーソンのための「最強の教養書」100 (日経ムック)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、ムックスタイルによる「教養書」のガイドブック。日経さんということで、てっきりアソシエの記事をまとめたムックなのかと思いきや、どうも書き下ろしのようです。
アマゾンに情報がないので版元サイトから。
この1冊で「読書の質」が上がる! ―池谷裕二、安田洋祐、西内啓など人気の若手研究者が、自らの本棚から、ビジネスパーソンの武器となる1冊を紹介。マクロ経済学、ミクロ経済学、経営学、社会学、法学など、エッセンスが身につくムック。
ここには名前が出てきていませんが、お馴染み土井英司さんが7ページもフィーチャーされてる時点で、ビジネス書オタクなら「買い」でしょう!

Bedtime Reading / Rob Boudon
【ポイント】
■1.安田洋祐さん◆本書の第1章は「若手研究者の本棚から」ということで、各分野のオーソリティの皆さんからのアドバイスと選書が。
まずは「ミクロ経済学」の安田洋祐さんのお言葉を。
経済を学ぼうとするのであれば、定評のある最新の本を読み、今生き残っているもっともスタンダードな方法論を身に付けることが重要です。なるほど、そういうものなんですね。
世間には現下の経済情勢について書かれた本が多数出ていますが、「日本経済はこうすれば再浮上する」式の断定的論調は、多分に主観に基づいた浅い分析しかできていないものがほとんどです。
なお、安田先生は10冊ほどお薦め本を紹介されているのですが、唯一読んだことがあるのがこちらでした。

経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには (中公新書)
参考記事:「経済学的思考のセンス」大竹文雄(著)(2006年06月27日)
■2.入山章栄さん
◆「経営学」からは、『世界の経営学者はいま何を考えているのか』が高評だった入山章栄さんが。
経営学の本を選ぶときの基準として注目していただきたいのは、タイトルや内容紹介よりも著者の略歴です。一般に本のそで(カバーの裏表紙)に著者の紹介が載っていますよね。著者がどこで学び、どんな経歴を持っているのか、どんな研究業績があるかなど著者がどんな立ち位置にいるのかを知った上で読むことで、論旨をより深く理解できるでしょう。入山さんは、6冊セレクトされていて、その中の1冊がこちらでした。

ヤバい経営学: 世界のビジネスで行われている不都合な真実
参考記事:お前らもっと『ヤバい経営学』の凄さを知るべき(2013年03月03日)
……ちょっとこの本は「経営学」としては、変化球過ぎる気もしますがw
■3.西内 啓さん
◆『統計学が最強の学問である』でお馴染みの西内 啓さんは、当然「統計学」のカテゴリから登場。
日本の企業には優れた勘と経験を持つ現場のプロが数多くおり、彼らは必ず「こうすれば売れる」という仮説を持っているはずです。ただ、それらのうち「売るための戦略としてどれが最も効果があるのか」ということは経験と勘だけでは比較できませんでした。ここで、仮説をデータ化して分析することができれば、各仮説の効果を検証し、最も効果的な手段を選ぶということが可能になります。今後はますます統計学の重要性は高まりそうな。
そして西内さんのセレクトは4冊で、いずれも書名を聞いたことすらなかったのですが、これはコトラーなので「アリ」かと。

マーケティング原理 第9版―基礎理論から実践戦略まで
西内さん曰く「この本は文句なくお勧めできます」とのこと。
もちろん、ちゃんと統計学の本も掲載されていましたので、気になる方は本書にてご確認下さい。
■4.池谷裕二さん
◆脳ネタ系の勉強本を、当ブログでも何冊かご紹介している池谷裕二さんは、今回「サイエンスを扱いながらも、まるでエンターテイメントのように読者をひきつけ、最後までページを操る手を止めさせない本ばかり」を4冊紹介しています。
その中から今回は、個人的に一番気になったこちらを。

遺伝子の不都合な真実: すべての能力は遺伝である (ちくま新書)
以下、池谷先生の推薦のお言葉を。
現在私たちは、人はみな平等であって、誰でも努力すればできるようになるということを前提に教育を行っています。けれども、このやり方は実はロスが多いのではないか。僕は実際に教育現場に立っているので、特にそう考えてしまいます。これはなかなか面白そうな。
たとえば、世の中のおよそ2割の人が算数の遺伝子を持っていないと言われています。その人たちに対して、「努力すればかなう」という理念を持ちこむと、できないのはその人の努力不足ということになる。でも、実際はそうではないわけです。
遺伝子には人それぞれ違いがある。だから誰もを平等に扱うと、余計にその遣伝子の差異が顕著になってしまう。したがって、環境を均一にすることが、逆に不平等になることになる。この本はそういう理論を展開していきます。
池谷先生は、他にもサイモン・シンの『暗号解読』のようなエンターテイメント性の高い作品を推していて、結構意外でした。
■5.土井英司さん
◆ビジネス書好きにはお馴染みの土井英司さんが、いよいよ登場。
基本的には全文引用してもいいくらいの濃密度でしたが、お話の一番最後の辺りを。
読後に「いい本だった」と言う人がよくいますが、そういう感想を述べるかぎりあくまで"ただの本好き"の域を超えることはできないと私は常々思っています。まさにこれこそが、私に欠けている部分だと思いつつ、今日もまた新しい本に手を伸ばしてしまうという……。
なぜなら、読むこと自体に読書の目的があるのではなく、本当の目的は、そこから得たものを「使う」ことにあるからです。私が本を読むときは、ぺージの所どころに赤線を引きますが、それは自分がその後、「何かのときに使いたい」と思った箇所に他なりません。「いい本」になるかどうかは、読んだ人がそこから得たものをどう使うかにかかっています。
これに先立つ「
土井さんセレクトの中からは、当ブログでレビューしたものを差し置いて、あえて未読のこちらを。

良い戦略、悪い戦略
■6.小宮一慶さん
◆売れっ子コンサルタントの小宮一慶さんは、古典を3冊選ばれています。
そして、「愛読書は、仕事のスイングチェッカーである」と言う事で、次のようなお話が。
私はコンサルタントであり、10社近くの企業の社外取締役も務めています。コンサルタントとしての私に判断を委ねられたこと、あるいは社外取締役として役員会で発言したことが、相手の会社に多大な影響を及ぼす場面も少なからずあります。その局面で自分の考えが絶対に正しいかどうかはわかりません。けれども、『論語』に照らせばこうだろう、松下幸之助さんならこう判断するだろうというバックボーンがあれば、自分の考えにブレがなくなります。自分自身の中に、自分が信じるに足るバックボーンを持っているかどうかは、決定的な違いだと思うのです。やや軽い表現ですが、『論語の活学』も『道をひらく』も、私にとっては正しいスイングをしているかどうかを判定してくれるスイングチェッカーのような存在なのです。また読み方についても、「反速読派」であり、「難しいと感じるぐらいのものをきっちり読むこと」が本の読み方である、とのこと。
ということで、繰り返しになりますが、小宮先生の「スイングチェッカー」をここで挙げておきます。

道をひらく
【感想】
◆簡単ですが、6名の方のお話を抜き出してみました。下記目次をご覧頂ければ、今回登場する方々の全員のお名前が分かるのですが、割愛せざるをえなかった方の多いこと。
それもあって、最初はもう単純に「1人1冊本を挙げる」だけで済ませてしまおうかと思ったものの、さすがに自重。
やはり、読んでない本/ジャンルが多い場合、選書メインでやってしまうと、構成的にキツいものがあります。
◆なお、10ページも費やしていながらカットしてしまった、三谷宏治さんと守屋 淳さんの対談では、「仕事に生かせる『名著』を考える」と題して、「非ビジネス書」を中心にオススメ本をセレクト。
中国古典やSF、コミックから、「ビジネス力」や「人間関係」について学んでいます。
……ページの端に、さらっとこの本の広告が載っていたのですが、違和感のないことw

最高の戦略教科書 孫子
また、個人的には、三谷さんご推薦のこの本が面白そうでした。

棟梁―技を伝え、人を育てる (文春文庫)
アマゾンレビューも高評価のみという。
◆そして、何気にチカラが入っていたのが、巻末の「ビジネスパーソンのための仕事に役立つ小説」。
東京経済大学学長の堺 憲一さんが、16ページに渡って「経済小説」(世の中と仕事とお金と暮しに関わる小説の総称)を解説して下さっています。
当ブログでは、どちらかというと物語形式は避ける傾向があるため、セレクト本を1冊も読んだことがありませんでしたが、堺さん曰く、経済小説は「一粒で三度おいしい」のだそう。
もとから小説をも読まれる方には、お役立ちの選書だと思いますので、こちらも要チェックで。
「いま本当に読むべき本」がここに!

ビジネスパーソンのための「最強の教養書」100 (日経ムック)
Part1 最強の教養書 若手研究者の本棚から
ミクロ経済学 安田洋祐
マクロ経済学 飯田泰之
経営学 入山章栄
統計学 西内 啓
脳科学 池谷裕二
法学 木村草太
社会学 阿部真大
対談 三谷宏治×守屋 淳
コラム 山崎将志
岩瀬大輔
Part2 あの人は何を読んでいるのか
土井英司
小宮一慶
田中裕輔
ビジネスパーソンのための仕事に役立つ小説
堺 憲一
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【HONZ本】『ノンフィクションはこれを読め! 2013 - HONZが選んだ110冊』成毛 眞 編著(2013年10月25日)
【本好き必読!】『ノンフィクションはこれを読め! - HONZが選んだ150冊』(2012年10月25日)
【編集後記】
◆ちょっと気になる本。
頭が鋭くなる齋藤レッスン
勉強本とは違いますが、なかなか面白そうです。
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