スポンサーリンク

       

2014年05月27日

【サッカー】『信じよ! 日本が世界一になるために必要なこと』イビチャ・オシム


信じよ!  日本が世界一になるために必要なこと (角川oneテーマ21)
信じよ! 日本が世界一になるために必要なこと (角川oneテーマ21)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、元サッカー日本代表監督でもあったイビチャ・オシム氏の最新作。

ワールドカップ直前ということで、今回の対戦国ごとの戦略にまで踏み込まれています。

アマゾンの内容紹介から。
かつて日本代表監督を務め、健康問題で志半ばにして日本を後にすることになったオシム。サッカーへの情熱と日本への愛は冷めず、日本サッカーを応援しつづけている。ブラジルW杯へ向けて、日本代表への貴重な提言。

これはもう、サッカー日本代表ファンなら見逃せませぬ!





Ivica Osim - SK Sturm (1999) / radiofabrik


【ポイント】

■1.平常心を保つ
 この4年間、私は日本代表チームを見てきたが、日本人が抱えてきたメンタルの弱さは改善されつつあるようにも思える。この試合を通常の試合として受け止め、平常心を保つのだ。
 平常心を保つことは自分を信じることから始まる。
「自分たちは何かを成し遂げることができる」というポジティブシンキングに客観性が加わるとき、平常心が生まれる。フィールドに立てば、落ち着き、自分たちのぺースを守り、ボールを動かし、相手より走り、相手のフィジカルに対応する。心は冷静だ。そして勇気。それらを持って試合に臨むことができれば、日本は勝利の扉を開ける鍵を手にする。


■2.対コートジボアール戦について
南アフリカでのワールドカップ直前の試合では敗れているが、ブラックアフリカ系のチームは、日本のように規律を持ち、走るチームを苦手としている。日本は、その走力で圧倒しなければならない。相手より走れば、数的優位な局面を何度か創出することができる。守備でも相手が根負けするほど走って、走ってプレスをかけていく。そして、0-0で試合を終えるようなイメージでゲームを組み立てるべきだ。そうすれば、1-0で勝つことも可能だろう。


■3.対ギリシャ戦について
 ギリシャは難しいチームだが、客観的に見れば、グループリーグの3つの試合の中では、日本にとっては最も与し易いとも言える。日本のように機敏で攻撃的なチームは、ギリシャが苦手とするスタイルだろう。(中略)
 日本は、<走れる>という点では、間違いなくギリシャより優れている。運動量では決して負けない。これは、ギリシャ側から見れば大きなハンディとなる。ギリシャというチームは、クレバーさを持っていて、チームとしてのまとまりもあるが<走ること>の得意な選手がいない。速いリズムにはついていけない。


■4.対コロンビア戦について
 日本は何も失うものはない。プレッシャーを感じず自分たちのプレースタイルを押し通せばいい。そして、勝利するためには、チーム内に前向きな雰囲気を作り、相手の弱点を見つけておくことが重要だ。
 日本には、コロンビアと互角に渡り合う力がある。日本には世界で通用する走力がある。相手に迫い越されることを恐れる必要はない。機敏に動くこともでき、スムーズなパスサッカーを得意としている。日本チームは、ここ数年の試合のように自分たちが確立した日本らしい試合をすべきなのだ。日本に長時間ボールをキープされたら、どんなチームでも苦戦する。走り回ってボールを取り合いしなければならないのでエネルギーを消耗することになる。


■5.危険因子となるミッドフィルダーがいない
 日本代表チームの問題の1つは、対戦チームにとって危険因子となる優秀なミッドフィルダーがいないことである。本田は優れたシューターではない。香川がいるが、彼は、ストライカーにすぎない。攻撃にもディフェンスにも優れた複数のポジションをこなせるポリバレントな選手が日本には見当たらない。敵のゴールに近づいて危険な存在になれる選手が必要なのだ。(中略)
 ゴール前のゾーンでの戦いに勝利するためには、リスクを恐れずバイタルエリアにスプリントすることである。中盤の選手はパスをすると同時に、走りこむことだ。バイタルエリアの手前までボールを運んだならば、横にパスをするのではなく、勇敢にゴール前にスプリントを仕掛ける。その行為がなければスペースは作れない。サイドの攻撃を有効にするためにも、スプリントが必要になってくる。しかし、日本には、才能のあるミッドフイルダーが揃っているというのに攻撃参加への適応力と勇気と意志がない。


【感想】

◆付箋自体は、これまた異様に貼りまくったのですが、ボリューム的にこんなところで。

W杯直前のオシム氏の日本代表本というのは、もはや恒例(?)であり、前回はこの本が出版されています。

考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114)
考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? (角川oneテーマ21 A 114)

参考記事:【オシムの言葉】「考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? 」イビチャ・オシム(2010年04月13日)

今改めてこの本の目次を見たら、今回の作品と極めて近いものになっており、ちょっとワロタw

ちなみに前回は第1章が「第1章 日本はW杯グループリーグを突破できる」となっており、今回は「日本はグループリーグを勝ち抜ける」。

前回の出版当時(2010年4月)を思い出して頂きたいのですが、あの頃の日本代表は戦歴的にもかなりボロボロであり、日本の世論として「グループリーグを突破できる」なんて思っていた人は、どう考えても少なかったでしょう。

それを見事予言していたのですから、「さすがオシム!」と言わざるを得ません。


◆さて、今回の戦略については、上記ポイントの2〜4番目にある通りで、要は「走れ!」とw

何か、オシム氏ってジェフの監督時代から、やたらと「走れ」と言ってる気がしますが、それが日本の特長というか、ストロングポイントなのですからしょうがありませぬ。

上記ポイントではサラッと書いているものの、実際には各国ごと8〜9ページも割いており、かなり踏み込んだ内容。

ここは、実際の観戦前にぜひ再度チェックしておきたいところです。

さらには、「1次リーグを突破した後の決勝トーナメントの対戦相手のことも考えておくべき」とも言われているんですが、日本代表の場合、コンディションのピークは、さすがに1次リーグに合わせてくるんじゃないかと。

もし勝ち抜けても、ベスト16の最初の試合の相手は、D組の「ウルグアイ、イタリア、イングランド」と、結構ガチな国ばかりですし(そう考えると、前回のパラグアイというのはチャンスだったとオシム氏も言われてます)。


◆続く第2章は、前回同様、ワールドカップのトレンド等についてなので割愛するとして、第3章は、前回が「日本代表への提言」で、今回が「ザッケローニへの提言」と、これまたまったく同じ。

ここでは、攻撃・守備両面の問題点について言及しています。

守備に関しては、もう言わずもがなで、高さがないことと、スピードがないこと。

ただ、スピードについては、「判断するスピード」を上げることで、改善が望める、とのことなんですが、中心となる「某センターバック」は「やらかし」が多いですしね……。

一方で、攻撃面に関しては、上記ポイントの5番目の通り。

日本は優秀なミッドフィルダーが多い(他のポジションに比べて)と思っていましたが、1人で試合を変えられる程の危険な選手はいないわけです。

かといって、リスクを冒して、スペースに走り込む選手も少ない、と。

この辺は、これから本番までの間に、ザックがどう仕上げてくるかにもよると思いますが。


◆なお今回バッサリ割愛してしまった第4章では、個人名を挙げて、アドバイスというか提言をしています。

ホントはここを抜き出そうと思ったのですが、キモかもしれないので自重したと言う。

特に本田と香川については、それぞれ7ページ程割かれているので、ファンの方は要チェックで!

詳しくは本書を読んで頂きたいのですが、個人的には「激しく同意」致しました。

……膨大に走りまくる長友のランニング量が、結果的にあまり効果的と言えない、というクダリには泣きましたがw


◆ただ若干気になったのが、日本代表のキープレーヤーの何人かに関する情報を、オシム氏が持ち得ていなかったのではないか、ということ。

まだ23人が決まる前とはいえ、大迫や山口蛍の名前が全然出てきません。

その一方で、「W杯期間中に誕生する新しいスター」というところで「日本からも生まれるかもしれない」として、内田や長友、本田、香川と並んで、細貝の名前が真っ先に出てきて泣けた……。

いかにも「水を運ぶ人」が好きな、オシム氏らしいな、と思った次第です(じゃあ、なんで山口蛍の名前が出てこないのか、小一時間w)。

ちなみに、GKの川島への評価がかなり低かったのが、個人的には一番意外でした。

その割にはJリーグの試合まではチェックされていないようで、西川と権田については言及されていなかったのですが。


◆最近はW杯前ということで、色々な観戦本や、関係書籍が出版されています。

その中でも本書は、「元日本代表監督」であり、世界各国のサッカー事情に詳しい名伯楽であるオシム氏の書き下ろしということで、一読の価値アリ。

というか、W杯前のサッカー本としては、前回同様これ1冊で済ませてしまいそうな予感。

おそらく終わってからは、前回のように反省本が出るのだと思いますがw


日本代表ファンなら要チェックで!

信じよ!  日本が世界一になるために必要なこと (角川oneテーマ21)
信じよ! 日本が世界一になるために必要なこと (角川oneテーマ21)
まえがき
第1章 日本はグループリーグを勝ち抜ける
第2章 サッカー界の近未来を指し示すW杯
第3章 ザッケローニへの提言
第4章 キープレーヤーの葛藤
第5章 日本が進むべき道


【関連記事】

【オシムの言葉】「考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? 」イビチャ・オシム(2010年04月13日)

【ザックジャパンに告ぐ!】『恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか?』イビチャ・オシム:マインドマップ的読書感想文(2010年10月11日)

【サッカーファン必読!?】『日本サッカースカウティング127選手』ミケル・エチャリ,小宮良之(2013年08月07日)

【オシム激白】「日本人よ!」イビチャ・オシム(2007年07月20日)

「イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く」西部謙司(2007年05月22日)


【編集後記】

◆上記でオシム氏が「日本の選手を知らない」と申し上げましたが、逆にこちらでは登場しまくり。

日本サッカースカウティング127選手
日本サッカースカウティング127選手

この本も代表ファンならオススメです!

レビューは上記関連記事にてご確認を。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「サッカー」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
Posted by smoothfoxxx at 09:00
TrackBack(0)サッカーこのエントリーを含むはてなブックマーク

スポンサーリンク




               

この記事へのトラックバックURL


●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。