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2014年05月26日

【観察眼】『警視庁捜査一課長の「人を見抜く」極意』久保正行


警視庁捜査一課長の「人を見抜く」極意 (光文社新書)
警視庁捜査一課長の「人を見抜く」極意 (光文社新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのも、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。

本書における観察対象は「犯罪者」なのですが、特に「嘘を見抜く技術」に関しては、私たちでも応用可能ではないか、と。

アマゾンの内容紹介から、一部引用。
本書では、私が捜査一課長時代に関わったものに加え、41年にわたる警察官生活の中で担当した事件などを通して、人や物事をどう観察してきたか、その観察を通して、どのように刑事のカンを養ってきたかということを中心に述べていきたいと思います。 それに加えて、犯罪者になるのはどのような人間か、人が罪を犯したらどのような行動をとるのか、どうすれば犯罪者に自らの罪を認めさせることができるのか、といったことを経験に即して炙りだしていきます。

こういう本からも実生活に応用できるTIPSを学びたいものです。






Wanted: Charlie Brown / kevin dooley


【ポイント】

■1.刑事のカンとは?
 刑事になろうという者は、もともと「カン」の鋭いところがあります。それが犯人逮捕という使命の下にカンを働かせることで、いっそう研ぎ澄まされていくのです。
 では、「刑事のカン」とは具体的にどんなものでしょうか?
 それを構成するのは、人間の五感、すなわち、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚です。
 街を歩いている大勢の人の中から、人相や特徴によってホシ(犯人)を割り出す視覚。張り込み中、藪蚊に血を吸われながらも微かな物音から犯人が近づいてくるのを探知する聴覚。(中略)
これらが合わさってカンとなり、現場で重要な事実を発見する際の、大きな力になってくれるのです。


■2.殺人事件の犯人は、人の死を深く考えない
 今まで担当してきた殺人事件の犯人に共通点があるのか、と聞かれたら、「あります」と、自信をもって答えられます。
 それは、「人の死について深く考えていない」ということです。私は人の死について真剣に考えている犯人に出会ったことがありません。少なくとも犯行前には「死とは何か」「人が死んだらどうなるのか」「残された家族はどのような気持ちになるのか」ということについて考えたことはなかったと思います。
 それでも逮捕された直後は、自らの犯行を認めて、反省の意や改悛の情を示すようなこともあります。しかし、捜査員が追求の手を少しでも緩めようものなら、「俺は殺していない」「私はやってません」と態度を豹変させます。


■3.ウソつきは治らない
 大勢の犯罪者に接してきた私の経験から言えることですが、ウソをつくという傾向はなかなか直らないと思っています。
 ウソをつくのが平気な人は、ウソが発覚してもシラを切り、突拍子もない理屈をこねて反論します。真剣な表情で怒るのです。そして、そのうちボロが出そうになると、「違うウソ」をつき始めます。こうして次から次へとウソをつくものですから、やがてどれがウソで、どれが本当のことか、自分でも分からなくなるのです。困ったものです。


■4.容疑者がウソをついている時の兆候(抜粋)
・目を逸らす。視点が定まらずうつろ。時に目を瞑ったりする。
・鼻をぴくぴくさせたり、鼻に汗をかいたり、鼻汁を垂らしたりする。
・唇がが乾きはじめ、舌で唇を舐めはじめたり、呼吸が荒くなったりする。中には口笛を吹く者、水を要求する者もいる。
・顔が青白くなる。耳はややピンクに変色する。耳を動かす者もいる。顎をピクピクさせる。
・ふだんよりも声のトーンが高かったり、低かったりする。話す速度も速かったり遅かったりする。

(詳細は本書を)


■5.事件現場の近くで、集団と逆方向に向かう者に注意
 たとえば事件が起きた直後の現場付近で、大勢の人が一方に向かって移動しているときその流れに逆行する者が交じっていることがあります。殺人事件の発生現場に、パトカーがサイレンを鳴らしながら向かっていたり、交番勤務の警察官が走って向かっているような時は、野次馬的な興味でその後を追う人は結構いるのですが、そんな中で、現場とは逆方向に向かっている人はとても目立ちます。そのような人に対して、警察官は少なくとも声をかけるべきでしょう。もし、不審な点がある場合は、その理由を訊ねる必要もあります。


■6.悪事を働いた人間には必ず事後変化がある
人は罪を犯すと、その後の行動に変化(事後変化)が現れます。自分に嫌疑がかけられないように装うのです。
 それを見破るために、私は、捜査対象者の犯行後の変化を注意深く観察します。主に心理面における変化で、たとえば「ことさら平静を装うようになった」「文字を丁寧に書くようになった」「気分が落ち込んでいる」「人の話を上の空で聞いている」「うっかりミスが増えた」「誤字脱字が多くなった」というのが典型的な例です。捜査対象者を観察するだけでなく、対象者に近い人物に聞き込みをすることによって、そんな変化をしっかりつかんでいくのです。


【感想】

◆実は、本エントリーでは一切触れていないものの、本書には、各「極意」ごとに事例が豊富に付されています。

ただし、その事例自体は、なまじ著者の久保さんの扱われてきた案件が「殺人事件」中心なため、少々微妙なことにw

冒頭で「実生活に応用できるTIPSを学びたい」と書きましたが、果たして私たちが殺人者と接することがあるかというと、まずないでしょう。

とはいえ、上記ポイントの2番目にあった「人の死を深く考えない」というのはなるほど納得。

一度は反省しても、「刑務所に入りたくない」という自分の気持ちを優先させるあまり、罪を償う気持ちが消えてしまうのだとか。

いったん自供した容疑者が、それを覆すというのは、どうもそのせいのようです。


◆ただし、「殺人事件の犯人」に限らないで、幅広い意味で「犯罪者」として捉えるのなら、「ウソを見抜く技術」は使えるハズ。

例えば、上記ポイントの3,4番目あたりは、一般的な「ウソつき」にも当てはまりそうです。

特にポイントの4番目の「兆候」に関しては、本書の解説を書かれている元警察庁科学警察研究所犯罪予防研究室長・清永賢二氏曰く『警察の捜査関係者は、「心理」などという見えない対象物からではなく、 「見える身体」から「心」を読みとるのである』と感服。

これらの兆候は、抑えようとしても、身体反応として出てしまうものが多いですから、知っておくと「もしも」の時に役立つのではないか、と。


◆ただ、こうした「ウソつき本」(?)に関しては、海外の方が豊富に作品があるようで、例えば当ブログでは、このような本を今まで紹介してきました。

FBIトレーナーが教える 相手の嘘を99%見抜く方法
FBIトレーナーが教える 相手の嘘を99%見抜く方法

参考記事:【99%?】『FBIトレーナーが教える 相手の嘘を99%見抜く方法』から選んだ嘘つき の7つの特徴(2012年09月09日)

とっても恐い心理学 相手の隠しごとを丸ハダカにする方法
とっても恐い心理学 相手の隠しごとを丸ハダカにする方法

参考記事:【ウソ看破?】「相手の隠しごとを丸ハダカにする方法」デビッド・J・リーバーマン(2010年04月02日)

心を上手に透視する方法
心を上手に透視する方法

参考記事:【読心術】『心を上手に透視する方法』トルステン・ハーフェナー(2011年09月05日)

やっとわが国でも、この手の本が増えてきたようで、嬉しい限り……って、ウソつきには増えて欲しくないですがw


◆また本書には、盗強姦事件の犯人が供述した事項として「性犯罪者がどのように若い女性を物色しているか」の項目が列挙されていたのですが、これがなかなかに秀逸でした。

もっとも、ここで列挙してしまうと、それらの犯罪を助長しかねない(?)ので割愛。

   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |   ( ●)(●)    <それ言ったらまずいだろう、JK…
. |     (__人__)____
  |     ` ⌒/ ─' 'ー\
.  |       /( ○)  (○)\
.  ヽ     /  ⌒(n_人__)⌒ \  
   ヽ   |、    (  ヨ     | カーテンの色・柄や洗濯物…
   /    `ー─−  厂   /
   |   、 _   __,,/     \


若い女性で一人住いの方は、この部分だけでも一読をオススメしたいところです。

もちろん、普通に推理物やサスペンス物の作品をお好きな方なら、操作や取り調べの舞台裏が垣間見れる、という意味でも本書は楽しめるかと。

たとえば、遺体(本書では「ご遺体」と呼んでいます)から、こんなことまで読み取れるのか、と個人的に勉強になりました。


あまり使いたくない(?)豆知識が多々!

警視庁捜査一課長の「人を見抜く」極意 (光文社新書)
警視庁捜査一課長の「人を見抜く」極意 (光文社新書)
序章 捜査一課長の仕事
第1章 ウソを見抜く極意
第2章 真実を聞き出す極意
第3章 怪しい者を見抜く極意
第4章 人間の本性を見抜く極意
第5章 遺体から真実を見抜く極意
第6章 凶悪犯を見抜く極意
解説――久保正行氏と著書への思い 元警察庁科学警察研究所犯罪予防研究室長・清永賢二


【関連記事】

【99%?】『FBIトレーナーが教える 相手の嘘を99%見抜く方法』から選んだ嘘つき の7つの特徴(2012年09月09日)

【ウソ看破?】「相手の隠しごとを丸ハダカにする方法」デビッド・J・リーバーマン(2010年04月02日)

絶対に公開してはいけない『心を上手に操作する方法』(2012年06月29日)

【読心術】『心を上手に透視する方法』トルステン・ハーフェナー(2011年09月05日)

知らないと損する『嘘の見抜き方』(2013年05月17日)


【編集後記】

◆すいません、上記で「やっとわが国でも、この手の本が増えてきた」と書きましたが、この本を忘れていました。

嘘の見抜き方 (新潮新書)
嘘の見抜き方 (新潮新書)

レビューは上記関連記事の最後にて。


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