2014年05月14日
【W杯日本代表発表記念!】『セレッソ・アイデンティティ 育成型クラブが歩んできた20年』横井素子
セレッソ・アイデンティティ 育成型クラブが歩んできた20年
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、サッカーJ1クラブ・セレッソ大阪について掘り下げた1冊。本自体は昨年12月に出ていたのですが、12日の代表選手、ならびに昨日の予備登録メンバーの中に、現セレッソ並びに元セレッソの選手が多数含まれていたため、改めて読み直してみた次第です。
アマゾンの内容紹介から。
セレッソから日本屈指のタレントが続々と輩出されている。セレッソのスタッフを務めること20年以上の著者が、知られざるセレッソ大阪を書き記す!
代表でも存在感を増しつつあるセレッソのヒミツがここに!
Cherry Blossom / Javierosh
【ポイント】
◆本書は選手本人のインタビューも多数収録されていますが、今回は特に、特に代表並びに予備登録メンバーについて「他の方の目」から見たその選手についてご紹介してみます。なお、皆さんの肩書きは、本書の執筆当時のものとなります。
■1.香川真司選手
◆まず第1章は香川選手。
ここでは、かつての恩師であったクルピ監督が、ボランチから2列目に抜擢した経緯についてご紹介してみます。
「シンジの技術のクオリティの高さはすぐにわかりました。あとはフィジカルの強さも。初めて見たときに、いろんな長所が目についたのですが、ひとつだけ、不思議だったのは彼のポジションがボランチだということです。とても違和感がありました。すごい運動量があって、ゴールに結びつく飛び出しもある。ゴールへの意識も高い選手なのに、なぜ? と思いました。体格的にも大きくはなかったので、もうひとつ前のプレーヤーであるべきだ、と思いました」先日、マンチェスターUでボランチ起用されて「何で?」という意見も散見されましたが、元々香川選手はボランチが大好きで、コンバート当初は「試合に出られるため、しぶしぶやっていた」ようですね。
■2.清武弘嗣選手
◆第2章では清武選手が。
同じくクルピ監督の清武選手評を。
「ワールドカップ以降、後半戦は、シンジの代わりにおそらく清武がプレーすることになると思います。清武もシンジに劣らない、若くして非常に高い技術を持った選手なので、チームの総合力は決して落ちるものではないと思っています。シンジほどの決定力のある選手の代わりをするというのは本当に難しいと思いますが、彼には絶対にその能力とチャンスはあると思います」また、清武選手は大分トリニータから移籍してきたのですが、その際の大分の広報担当の方曰く「大分ユースの最高傑作といわれた選手です」とのこと。
なお、この第2章は下記目次にもあるように、乾貴士選手も大々的に取り上げられているのですが、今回の代表では残念な結果に終わったので割愛しました……。
■3.山口蛍選手
◆第3章では、セレッソの育成組織・「ハナサカクラブ」について言及されています。
そして、その栄えある第1期生である山口蛍選手について、小菊コーチから。
「蛍は、とにかくまじめ、そして本当に負けず嫌い。そしてサッカーが大好き、セレッソが大好きなんです。だから、自分が休みでも、サテライトやレディースの試合を見に行くんでしょうね。(中略)いや、ホント真面目なんですね〜。
サッカーのためなら、いろんなことを犠牲にしてでも、コツコツと努力できる、数少ない選手なんです。口で言うのは簡単なんですが、それは本当に強い人間しかできない。でも、蛍はそういう選手です。本当にサッカーで成功したい、という野心を持っている。つかんでもつかんでも、まだ上をつかみに行ける。だから可能性はまだまだあるんです。より経験を積んで、確たる自信がついたときは、日本のトップの、日本代表のなかでも中心選手になれる。(中略)
さらにプレーの質を上げていくことができれば、もっとよくなる。セレッソだけじゃなくて、日本を代表するボランチ、ナンバーワンのポランチになる」
かつて、セレッソの若手選手が、某アイドルタレントさんたちと合コンした、という出来事がありましたが、その頃山口選手は、自室でサッカーを観ていたというウワサもさもありなん……。
■4.南野拓実選手
◆今回、惜しくも代表からは漏れたものの、予備登録メンバーに含まれたのが南野選手。
同じく小菊コーチの南野選手評を。
「技術的にいうと、真司や曜一朗の18歳のときのほうが上だし、繊細なボールタッチやパスの精度などを比較したら、彼らのほうが優れているといえることはたくさんある。でも、例えばゴールに向かう姿勢、シュートテクニック、シュートを決めるセンスを含めたトータルでとなると、一番怖い選手は拓実なんです。うまいとか速いじゃなくて、怖いという点で比較すると、断然拓実のほう。ゴールを常に意識していて、ランニング、ファーストタッチ、攻守の切り替えもそうです。技術、判断のところで課題はあるかもしれないけれど、それが伴ってきたときには、彼らより結果を残す可能性はあります。(中略)私は本書のこの部分を読んでいたので、サプライズ選出があるとすれば、南野選手かな、と思っていました。
加えて、勝気。それもプロの選手として持っていなければいけない要素です。意外と持っていない選手が多いんですけどね。今まで海外に旅立った若い選手たち、真司、貴士、キヨ、みんな勝気だったけど、一番エゴイストなのは、拓実かなという感じがします。それだけ自信があるということでしょう」
今回は予備登録メンバーですが、次回のW杯ではきっと主役の一人になってくれるかと……。
■5.柿谷曜一朗選手
◆今や日本代表でも欠かすことのできない存在となった柿谷選手については、第4章にて言及。
ご存知の方も多いように、「天才」と呼ばれながらも、一度は徳島に放出された柿谷選手。
再度セレッソに戻ってきてからは大活躍し、海外移籍が実現化したものの思い直して……と波乱万丈のお話の中から、これまた小菊コーチのお言葉を。
「ようやくこの1年で、サッカーの本質というものがわかったんじゃないかと思います。いいサッカー選手とは、評価されるサッカー選手とは、ということがちゃんと彼のなかで理解できたのが、この1年のような気がします。ただうまい選手というのではなくて、評価される選手にという方向転換ができたのは大きかったです。あとは環境ですね。8番をつけたという。今の曜一朗は楽しむのではなく、チームを勝たせるためにサッカーをしている。だから守備もするし、頑張って切り替えるし、アシストやらテクニックに走りがちだったのがチームを勝たせるためにゴールにこだわるようになった。もともと持っている天才が、そっちに向けば誰にも止められない。そりゃいろんな人から評価されますよ。これからの曜一朗はすごいと思います。セレッソの将来とともに、日本の将来が楽しみです。本気を出した曜一朗のプレーを考えると」チームプレイができるようになったとはいえ、「天才」と呼ばれていた「本能的なテクニック」は未だ健在ですから、W杯での活躍が楽しみです。
【感想】
◆今回上記で5人ご紹介してきて「あれ?"元セレッソ"も含めるなら、何であの人が?」と思われた方もいらっしゃるハズ。そうなんです、今回の選出で一番話題となった、大久保嘉人選手が漏れてるんですよね……。
一応、本書の中では登場しています。
ただし、第5章の森島選手のパートで、「森島選手について語っている」だけで、本人についての描写はナシ。
大久保選手の経歴を見ても、そもそもプロとしてスタートしたのはセレッソですし、在籍期間も、現時点ではセレッソが一番長いんですけどね。
大久保嘉人 - Wikipedia
むしろ、ページ数で言ったら、1年だけ在籍した広島の佐藤寿人選手の方が大久保選手より多いくらいw
……てか、私は佐藤選手がセレッソにいたことを知らなかったのですが。
◆その点を除けば、本書はセレッソファンの欲求を概ねカバーしているかと。
第3章の「ハナサカクラブ」のパートでは、「セレ女」に大人気の扇原選手も登場しますし、私のようなオサーンファンには、第5章の森島寛晃選手とそのよき相棒であった西澤明訓選手のクダリで、ご飯3杯はいけますw
上記でも触れたように、今回は残念だった乾選手も第2章でかなり取りあげられているのですが、「日本に戻るならセレッソ」というのを見て、もう帰っておいでと言いたくなったのは、私だけではありますまい。
ドメサカブログ : セレッソの練習試合に謎の練習生が飛び入り参加
……乾はん、なにしてはるんですかww
◆また、本書を読んで初めて知ったのが、森島選手の引退のくだり。
森島選手に誰よりも憧れていた柿谷選手(ゴール後の飛行機ポーズは、森島選手の真似w)は、U-19日本代表としてサウジアラビアに遠征中に、森島選手の引退を知り号泣します。
しかしそれ以上にショックだったのが、セレッソの選手にとって特別な番号である「背番号8」を引き継ぐのが自分ではなく同期の香川選手だったこと。
同じく遠征中だった香川選手には、森島選手は出発前に引退を告げており、そのことも柿谷選手には非常に悔しかったワケです。
さらに終盤の試合では、ピッチに立てない森島選手の代わりに、香川選手が8番のユニフォームを下に着て、ゴールのたびにめくってアピールする姿を、柿谷選手はどんな気持ちで見ていたのか……。
決してプロとして良いことではないですが、森島選手引退後の柿谷選手の態度に問題があったのは、こういう理由もあったのか、と思わせられました。
◆さて、もうすぐW杯ですが、彼らセレッソのメンバーは、果たして活躍できるのか?
場合によっては、大久保選手、香川選手、清武選手、柿谷選手、山口選手と全員同時にピッチに立つ可能性も否定できません……って、さすがにそれはないかw
最近所属チームでは不振気味の香川選手や清武選手も、代表でならきっと輝けるハズ。
セレッソファンならずとも、サッカー好きの方なら、W杯前に一読することをオススメしたいです。
にわかセレッソファンの私でも楽しめました!
セレッソ・アイデンティティ 育成型クラブが歩んできた20年
第1章 香川真司との邂逅
第2章 大阪発欧州行き―乾貴士と清武弘嗣―
第3章 「ハナサカクラブ」はなぜ成功したのか
第4章 ジーニアス・柿谷曜一朗
第5章 レジェンド・森島寛晃
第6章 セレッソ・アイデンティティ
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【編集後記】
◆本書とほぼ同時に出ていたのがこちら。フットボールサミット第17回 セレッソ大阪 咲き誇る桜の才能たち
こちらでは、さらに様々なセレッソの選手を取り上げていて、ファンの方なら、さらに満足できることウケアイです。
個人的には、GKのキム・ジンヒョンのインタビューが非常に興味深かった(かなり変わった人だな、と)です。
ご声援ありがとうございました!
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