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2014年05月05日

【心理術】『仕事もプライベートも 「思い通りにならない相手」を動かす心理術』水島広子


仕事もプライベートも 「思い通りにならない相手」を動かす心理術
仕事もプライベートも 「思い通りにならない相手」を動かす心理術


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、精神科医・水島広子さんによる、「人を動かす」ための本。

しかも、私は存じなかったのですが、著者略歴によると「衆議院議員として児童虐待防止法の抜本的改正をはじめ、数々の法案の修正に力を尽くし実現させた」方なのだそう。

アマゾンの内容紹介から。
人は変えられないけれど、動かせる!企画が通る、営業がうまくいく、上司が折れる、夫・妻が変わる。対人関係療法の第一人者が明かすスゴイ方法。

頑固な国会議員も動かしたそのテクニックとは!?





Smart Spaces Symposium / Cea.


【ポイント】

■1.自分の領域から出ない
「困っているから、助けてください」「楽しいから一緒にやりませんか?」……これら以外の「動かし方」は、実は「相手を変えようとする不毛で暴力的な試み」にすぎず、トラブルや関係性の悪化につながることが多いのです。
 ですから、自分も相手も幸せになる「動かし方」を目指すのであれば、「自分の領域から出ない」(まさに、「出過ぎた真似」をしない)ということを、とくに意識しておく必要があります。


■2.「対立構造」を作らない
 嫁・姑関係の難しさは、「対立構造」の典型的なもの。夫が姑の肩を持つのは、必ずしも姑贔屓だからというわけではないはずです。単に「対立構造」から逃げたい一心で、「まあ、お袋に悪気はないのだから、うまくやってくれよ」と言っているだけ、という可能性が高いでしょう。
 ですから、ここでの「夫を動かす」ポイントは、「対立構造」を作らないこと。
 姑の悪口を言えば言うほど、「嫁VS姑」の対立構造ははっきりしてしまいます。
「お義母さんに○○と頼んでおいてもらえる? あなたの言うことはすぐに聞いてくれるから」というような頼み方をしたほうが、事態はうまく進むはずです。


■3.相手が重視するものに合わせて話しかける
 例えば、転職後の給料が思ったよりも少なくて、それをも上司に訴える場合。
「この額面では、ちょっと生活が難しいんです。子どももちょうど教育費がかかる年頃で……なんとかならないものでしょうか」というのは「情」に訴える話し方です。
 一方、「転職してきたときの条件はこうだった。それなのに実際に支給されたのはこれだけだった。株式の影響を考えても、これではどうしても理屈が通らない」という言い方は、「理」タイプの上司に有効だと思います。


■4.相手の「文脈」を理解する
 例えば、友人から遊びに誘われて、それを断ってしまった場合。
 その友人が愛情のあふれた環境で、とても大切に育てられた人であれば、自分の誘いを断られたとしてもとくに悪くとらえずに、「単に、都合が悪いんだろうな」と思えるかもしれませんが、虐待されるなど、大切に育てられなかった人は、断られると「自分が拒絶された」「自分と出かけたりしたい人なんて、誰もいないんだ」などと受けとめるかもしれません。
 これらも、相手の「文脈」を知らないと、「なぜそんなに極端な反応をするのだろう」と不思議に思うと思います。
 こうした相手の「文脈」を理解しようとする気持ちは、「人を動かす」際にとても重要なものなのです。


■5.自己評価の低い人の方が動いてくれにくい
 例えば、子どもが大人に「遊んで」と頼むと、子ども慣れしていて余裕のある大人は遊んでくれるものです。このとき、幼児は大人を「動かしている」と言えます。
 大人の側はなぜ動くのでしょうか。それは、余裕があるから。
 実は、動かない人は、「自分にはでぎない」と思っていたり、「ここで動くと自分の価値が下がる」と思っていたりするものなのです。あるいは、「いつも自分ばかり搾取される」という被害者意識がある人もいるでしょう。
 つまりは自己評価の低い人たちのほうが動いてくれにくい、という側面があるのです。


■6.「自分の企画」は「みんなの企画」にする
ストレートに、「この企画に協力していただけますか?」だけでは、どうしても「企画者と協力者」という構図が生まれてしまいます。
「これがたたき台なのですが、どんなふうにするとよりよくなると思われますか?」
 などと尋ねて、あくまでもその人の主体的な意見を引き出せれば、だんだんと「みんなの企画」になってきます。また、得意分野がある人には、「○○さんでないとここはうまくいきませんから」などと伝えて、責任を分担してもらってもよいでしょう。


【感想】

◆冒頭で申しあげた水島さんの国会議員時代のエピソード。

これが本書の「序章」の初っ端で紹介されており、なかなか興味深いものでした。

何でも、水島さんが野党(本書では明記されていませんが、民主党)議員として、超党派で重要な法律の改正作業に取り組んでいた時のこと。

水島さんはその法律に、「子どもの権利」という言葉をどうしても入れたかったものの、与党の重鎮議員達は賛成してくれなかったのだそう。

もちろんここで、「国際的に恥ずかしい」とか「時代遅れ」と主張して争うこともできました。

ただ、水島さんはそうはせず、「○○議員ほどの物のわかった方が賛成できないのなら、何か理由があると思います。なぜ賛成できないのか、何がご心配なのかを教えてください」と穏やかに尋ねたのだとか。


◆その重鎮議員の具体的な反対理由や、その後のやり取りは本書を読んで頂くとして、いずれにせよ水島さんは見事「人を動かす」ことに成功。

さらにこのエピソードをご自身のホームページで「理解ある与党の皆さんに恵まれて感謝しています」と書いたところ、その重鎮議員がわざわざお礼を言いに来てくれたのだそう。

その後も別の与党議員が「水島議員と一緒に仕事をしたが、とても公平な人柄だった」と評価したり、違う大物議員からは助言をもらったりと、大人気!?

それもこれも、本書で紹介されているようなTIPSを水島さんが実践していたからにほかなりません。

ただし、水島さんはご自身のことを「地盤、カバン、看板」のない、「公募に応募して当選しただけの若い議員(当時32歳)」と言われてますけど、お父さんは元参議院議員の水島裕さんみたいですね。

水島広子 - Wikipedia


◆ちなみに、上記Wikipediaによると、水島さんは米国から「対人関係療法」を導入した第一人者とのこと。

対人関係療法 - Wikipedia

本書においてもベースとなっているのは、この「対人関係療法」です。

水島さんいわく、対人関係療法では、相手を動かしたいと思うとき、まずは「相手に期待する役割」を整理して、それをお願いする形をとるのだとか。

そして、「思い通りに動いてくれない相手」に対しては、「自分の期待が相手にとって適切であるかどうか」「それが正確に伝わっているか」を見ていくのだそう。

上記ポイントの4番目、5番目辺りは、まさにそういったニュアンスが伺えますね。


◆なお、割愛した中で考えさせられたのが、「相手が『何を恐れているのか』を探る」というお話でした。

例えば「靴下を洗濯機に入れてくれない」「話をしてもろくに返事してくれない」といった「妻の小言」の裏に、「怖れ」があるかもなんて、思いもよりませんよね?

この場合、「自分という存在がないがしろにされているのではないか」「自分は十分に愛されていないのではないか」という「怖れ」がある可能性が考えられる、とのこと。

ただし妻本人は「怖れ」として自覚できず、単なる「小言」になっているという……。

ところがこれに対して、「小言ばかりの君といても幸せでない」などと言ってしまったら、まさに「愛されていないかも」という「妻の怖れ」を直撃してしまいます。

じゃあ、どうすればいいか……については本書にてご確認を(スイマセン)。


人は変えられませんが、動かせます!

仕事もプライベートも 「思い通りにならない相手」を動かす心理術
仕事もプライベートも 「思い通りにならない相手」を動かす心理術
序章 「人を動かす」って、どういうこと?
1章 「人を動かす」心理術1 「敵・味方」の関係に陥らないコツ
2章 「人を動かす」心理術2 「安心させること」で、相手の言動は変わる
3章 「人を動かす」心理術3 お互いに気持ちよく動ける「大目標」の見つけ方
4章 「人を動かす」行動術1 「困った状況」をなんとかしたい!
5章 「人を動かす」行動術2 どうする?「それでも動いてくれない人」
6章 「人を動かす」行動術3 多くの人を「巻き込む」方法


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【編集後記】

◆当ブログが激プッシュしている、伊東明先生のご本がいつの間にか出ていました(しかも1ヶ月以上前に!)。

「中途ハンパ」は必ず直る!
「中途ハンパ」は必ず直る!

ファンとしてお恥ずかしい限りです……。


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