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2014年05月02日

【文房具】『雑学科学読本 文房具のスゴい技術』涌井良幸,涌井貞美


雑学科学読本 文房具のスゴい技術 (中経の文庫)
雑学科学読本 文房具のスゴい技術 (中経の文庫)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、私のような「文房具ヲタ」なら必読の1冊。

文庫本の書き下ろしシリーズである「雑学科学読本」に、いよいよ「文房具」が登場であります!

現時点でアマゾンに詳細がないので、版元さんのページから。
洋の東西、そして老若男女を問わず、「文房具好き」は潜在的にもかなりいると言われます。本書は各項目に図解を使いながら、文房具好きにはたまらない文房具のヒミツをわかりやすく解説しています。

上記のアマゾンのページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」に掲載されているのが、見事に「文房具本」ばかりでワロタww




【ポイント】

■1.鉛筆に六角形が多いワケ


Reason / Capture Queen ™

 鉛筆に六角形が多い理由のひとつは、転がらない」ため。また、握ったときに必ず3点(親指、人差し指、中指)で押さえるので、3の倍数だと持ちやすいという理由もある。ちなみに、三角形の鉛筆も販売されている。六角形よりも三角形のほうが手にフィットするという人も多いからだ。


■2.振り子式多機能ペンが色を選択できる仕組み

ラミー LAMY 2000 4色油性ボールペン L401 [並行輸入品]

多色ボールぺンで色を選択する方法に、振り子式あるいは分銅式と呼ばれるものがある。軸に記された赤、青、緑をどのカラー表示が上に向くように軸を傾けてノックすると、出したい色の芯が出るボールぺンだ。軸を上に向けると、内部の分銅が重さで下に位置を変え、出したい色のカラー芯を選択できる構造である。


■3.フリクションインクが消えるワケ

フリクションボール ブラック

 このインクの顔料の正体は、ロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤の3種が入ったマイクロカプセルである。そのカプセル内で、本来無色のロイコ染料は顕色剤と結合することで発色している。ところが、摩擦で温度が60度以上に上がると、変色温度調整剤が働いてその結合が切られる。するとロイコ染料は元の無色に戻るのだ。これが消えるインクのしくみである。


■4.瞬間接着剤が瞬時に固まる仕組み

タミヤ瞬間接着剤(ゼリータイプ)

 接着の時間を大きく決定するのは液体の固化である。瞬間接着剤はこの「固まる」動作が一瞬の接着剤なのだ。では、どうやって一瞬に固化するのか。秘密は空気中の水分にある。空気中の水分に触れると瞬間的に固まる物質を、瞬間接着剤は利用しているのだ。
 普通の生活の環境では、常に空気中に湿気があり、モノの表面はわずかながら湿っている。瞬間接着剤はそのわずかな水分をきっかけとして、一瞬にして固まってしまうのだ。


■5.「フィットカットカーブ」がよく切れる秘密

【セール/SALE】プラス フィットカットカーブ/フッ素コートはさみ ホワイト/イエロー SF-175SF/34−546 ぴったりフィット切れ味シャープ! 【びっくり大バーゲン】【メーカー希望小売価格の40%OFF】

プラスはハサミの2枚の刃が30度で交わるとき、いちばん切れ味がいいことを発見した。そこで、切断に最適なこの角度を常にキープしながら切れるハサミの開発を始めたのである。そこでたどり着いたのがべルヌーイカーブという曲線。このカーブを利用すると、切断中に刃の角度が常に約30度と一定になる。こうして、刃の根元から刃先までしっかりした切れ味が保たれるのだ。
 刃の名につけられたべルヌーイとは、有名な数学者ヤコブ・べルヌーイの名である。


■6.磁気式メモボードの原理

せんせい おえかきせんせい SH-01

 磁気式メモボードのしくみは単純だ。ボードの下には幅3ミリメートル程度のセルが敷き詰められていて、その中に白い液と微小な黒色の磁石片が封入されている。字を書くとき、ぺン先に磁石のついた専用ぺン(マグネットぺン)で表面をなぞると、セルの中の磁石片が表面に吸い寄せられ、黒文字が現れる。消したいときには裏面に磁石を当てればいい。磁力に引かれてセルの中の磁石片が下に移動して字が消え、白色液が表面になり元の白地が現れる。


【感想】

◆「文具ヲタ」としては、なかなかに満足な1冊でした。

本エントリーでは、引用はテキストオンリーですけど、実際は見開きの左ページではこれらの仕組みを分かりやすく図解。

それもよくある「図解不要なものを無理やり図解した」ものなどではなく、テクニカルな解説としての図解ですから、当然「必要不可欠」なワケです。

逆に、その図解がないと「何がなんだか……」なグッズは今回泣く泣く割愛せざるを得ず。

たとえばシャープペンなどは、「100円程度の製品で、これだけ複雑な仕組みなのか」というのも、図解を見て初めて理解できたくらいですから。


◆また、同じく割愛したネタとしては、「知っておいた方が良い」であろう「文房具のマメ知識」的なものがいくつか。

たとえばプラスチック消しゴムは、紙のケースに入っていることが多いですが、その理由は、消しゴムのプラスチックは接触すると再結合してしまうから。

子供は、破いたり、いたずら書きしたりして、何の気なしにケースから出しちゃいしがちですけど、下手にそのまま引き出しに入れておくと、くっついてしまうみたいですね。

これは消しゴム同士でなくても、プラスチックのものなら何でも起こる模様。

何年も使ってないペンケースの中の、消しゴムと定規がくっついていました。 - Yahoo!知恵袋


◆もう1つ、カッターで紙を切る時に下に敷くカッターマット。

これを使わずに雑誌や新聞紙で代用するケースが散見されますが、結局紙を何枚も1度に切っているのと変わらず、刃がこぼれるのだそう。

実はカッターマットは、ただの下敷きではなく、硬い塩化ビニル樹脂の層の上に柔らかい塩化ビニル樹脂の層を貼り合わせた構造をしており、柔らかい層がカッターの刃を守ってくれるのだとか。

私は本業で、カッターを使って紙を切る機会が結構あるため、こんなカッターマットを持っておりまして。

OLFA カッターマット A4 134B
OLFA カッターマット A4 134B

ただ、見当たらない時等、ちょくちょく裏紙で代用していました。

……ちゃんとカッターマット使わねばw


◆こうした「文房具の仕組みネタ」の本としては、以前「文具王」高畑さんのこちらの本をご紹介したことがありました。

究極の文房具カタログ【マストアイテム編】
究極の文房具カタログ【マストアイテム編】

参考記事:【文具王流】『究極の文房具ハック』高畑正幸(2010年09月17日)

ただ、こちらは高畑さんの精密なイラスト(上記記事参照の事)がさく裂している、どちらかというと「物理チック」な本です。

一方本書は、こうした「物理チック」な要素に加えて、分子式(?)のような「化学チック」な要素も含むモノ。

メカニック好きな方は、高畑さんの本の方がツボでしょうけど、幅広く文房具が好きな方なら、本書はきっと楽しめるハズ。


「文房具ヲタ」なら必読デス!

雑学科学読本 文房具のスゴい技術 (中経の文庫)
雑学科学読本 文房具のスゴい技術 (中経の文庫)
第1章 筆記用具のスゴい技術
第2章 修正・接着用具のスゴい技術 
第3章 切断・綴じ用具のスゴい技術
第4章 計測器具・便利グッズのスゴい技術  
第5章 記録用具のスゴい技術


【関連記事】

【プロファイル】『文具王 高畑正幸の最強アイテム完全批評』(2011年03月19日)

【文具王流】『究極の文房具ハック』高畑正幸(2010年09月17日)

【文房具】文具王の「究極の文房具カタログ」から選んだ定番文具8品(2009年11月12日)

【超速算術?】『数的センスを磨く超速算術』涌井良幸,涌井貞美(2014年02月06日)


【編集後記】

◆今日のご本の著者のお二人、どこかで名前を拝見した記憶が……と思ったら、この本でした。

数的センスを磨く超速算術
数的センスを磨く超速算術

ちなみに、貞美サンは良幸サンの奥さんではなく、「実弟」なのだそう(記事冒頭の版元サイトの著者紹介より)。

レビューは上記関連記事の最後をご覧ください。


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