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2014年04月28日

【勉強法】『実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~』竹内龍人


実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~
実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、装丁を見る限りでは、ちょっと変化球気味(?)の勉強本。

ただし、著者の竹内龍人さんは、京大文学部心理学専攻で、東大大学院卒ということもあってか、内容的にはかなり「ロジカル」でした。

アマゾンの内容紹介から。
アドバイスはすべて学生で実験済み。すぐに結果を出したい人に実験で裏付けされた超効率的な勉強法をお届けします。「テクニック編」では復習のタイミングや学習する順番など、誰もが知りたい具体的な勉強テクニックを紹介。「メンタル編」では、本番を迎えるために欠かせないメンタルコントロールの極意が満載です。

「勉強本オタク」の私さえ知らなかった、勉強に関する「真実」がここに!





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【ポイント】

■1.復習は1:5のタイミングで行なう
 テストの得点が一番高くなる、ベストな復習のタイミング(間隔1)はいつでしょうか? その答えは、よい得点が得られる「間隔1」と「間隔2」は互いに関連し合っている、ということです。
 つまり、復習とテストとの間隔(間隔2)が変われば、学習と復習との間隔(間隔1)も変わります。結果のグラフから、間隔1と間隔2の割合を1:5程度にするとよいことがわかります。

(詳細は本書を)


■2.テスト形式の復習が効果的なわけ
 現在では、小テストによる復習を繰り返すことにより、蓄えられた記憶が「思い出しやすい」形に変形されるのではないかと考えられています。ある事柄を事前に覚えたとしても、それが本番の試験中に出てこないとあまり意味はありません。テスト形式の勉強法は、覚えた事柄を記憶の貯蔵庫から出しやすくしているのです。事前にはちゃんと覚えていたはずなのに試験本番ではそれが思い出せず、試験が終わったその帰り道に思い出してくやしかった、といった経験はありませんか? こんな経験は、実は不思議なことではありません。覚えることと思い出すことは、脳にとって別のことだからなのです。


■3.テストの後に勉強すると、違う内容でも効果がある
つい最近の研究で、このテスト効果に関連して面白い事実が発見されました。その名も「中間テスト効果」。ある題材1を勉強し、そのあとで別の題材2を勉強するとします。このときに、題材1について小テスト形式の復習を行うと、不思議なことに、題材2のテスト結果が向上するのです。このテスト形式の復習は題材1と題材2の勉強の合間に行われますので、中間テストと呼んでいます。(中略)
なぜ中間テスト効果が生じるのか、その理由はまだわかっていません。中間テストを行うことにより、脳の中で、学習により刻まれた記憶を読み出してくる仕組みが、よりよく働くようになったからではないか、という説があります。


■4.数学はパターンを分類して記憶する
数学の試験でよい点数がとれる人は、何が得意なのでしょうか。最近の研究から、その答えは「パターンの記憶」だということがわかってきました。数学が得意な人は、(たとえ自分では気づいていなくても)チェスの名人のように、数学の問題におけるいろいろな場面、つまりパターンを記憶しているために、テストのときに問題をスラスラ解くことができる、ということなのです。(中略)
 私たちは、数学では順を追って論理的に考えることが重要だと教えられてきましたから、パターンを覚えると目の前に答えが浮かぶといった考え方は画期的です。例えば補助線を使うタイプの問題の場合、引くべき補助線が自然に頭に浮かんでくるような人は、いろいろなパターンをより多く記憶しているというのです。


■5.テスト前に不安感を書きだす
実験参加者はまずプレッシャーのない数学のテスト、続いてプレッシャーのかかる数学のテストを受けました。ある実験参加者のグループには、プレッシャーのかかる数学のテスト開始10分前に、テストに関して感じている不安な事柄について書き出してもらいました。別のグループには、テストとは何の関係もない日常の事柄などについて書き出してもらいました。さらに別のグループはこういった書き出しは行いませんでした。
 実験の結果、プレッシャーのかかるテスト前に不安について書き出しを行ったグループの得点は上昇し、書き出しを行わなかったグループよりもよい結果を出すことができました。またこの方法は、テストに対して強く不安を感じる参加者に対してより効果がありました。


■6.「マシュマロテスト」の結果は、どこに注意を向けるかで変わる
 我慢できない子供は、目の前にあるお菓子の「甘さ」や「おいしさ」に注意を向けていました。こういったお菓子本来の性質を、「ホット」な特徴といいます。一方で長い時間我慢できた子供は、お菓子の形や色に注目していました。例えばマシュマロを「雲」に見立てて想像遊びをしながら我慢するのです。形や色といったお菓子本来の性質(甘さ、おいしさ)とは直接関係ない特徴を、「クール」な特徴と呼びます。つまり、我慢できない子供はホットな特徴に注意を向けてしまう一方で、我慢できる子供は自分で見つけ出したクールな特徴に注意を向けることができるのです。こういった方略は、教えればできるものでしょうか? つまり、クールな特徴に注目してやるように教えれば、我慢できる時間は延びるでしょうか? 答えはイエス、です。


【感想】

◆なかなかに興味深い本でした。

そもそもサブタイトルで「復習はすぐやるな!」なんてあるわけですから、どんだけ類書と違うのかと、思われた方も多いのではないかと。

それに関する実験の結果に触れているのが上記ポイントの1番目になります。

ここでは、「勉強から復習まで」を「間隔1」とし、「0日〜105日」まで設定。

また、「その復習からテスト」までを「間隔2」とし、こちらを「7日」と「35日」の2つにして、総勢1354名が受験。

本書ではその結果のグラフが掲載されているのですが、上記でも触れられているように「1:5」ぐらいがベストであるとのこと。

そして、間隔1が0日、つまり学習と復習を続けて行う学習をした場合に、復習の効果が一番少ないのだそうです。


◆……と言われてしまうと、「『授業の後、5分間復習しろ』と言ったのは、間違いだったのか?」となってしまいそうですが、1点大事な前提がありまして。

少なくとも実験方法を読む限り、テスト前の復習は「1回限り」になっています。

つまりこの実験結果は、「試験前に『1回だけ』復習をするなら、いつするのがいいか」という風に読めるのではないか、と。

普通、大事な試験の前に1回しか復習しない、ということはないでしょうから、やはり授業の後には、即復習し、その後「1:5」の間隔を意識すればよいと思います。

ちなみに、このTIPSより後に「よくわかってない部分については、学習後すぐに復習すべき」というお話があるのですが、もしそうなら「復習はすぐやるな!」なんてサブタイトル付けるべきじゃないと思うんですけどね……。

ただし、その「授業の後の復習」1回きりで満足してしまって、その後復習しないのは、まさに「やらないのと同じ」とは言えそうです。


◆さらにポイントの3番目の「中間テスト効果」は、私にとっても初耳でした。

実験内容について言及しているページを見る(本書ではすべての実験についてエビデンスが書かれているので)と、実験が行われたのは2011年で、確かに「つい最近」です罠。

一応「参考文献」として記されているタイトルでググったら、どうもこれらしく。

The interim test effect: testing prior mate... [Psychon Bull Rev. 2011] - PubMed - NCBI

Google翻訳で訳したのですが、いまいちよく分かりませんでした。

本書では、実験の手続き(4つのパターン)や具体的な結果のグラフも収録されていますので、気になる方は、やはり本書にてご確認下さい。


◆また、最後の「マシュマロテスト」のお話も、興味深いところです。

上記リンク先にもあるように、我慢できた子は「マシュマロから注意を逸らそうとした」ものとばかり思っていましたが、正しくは「色や形」といった「クールな特徴」にフォーカスしていたのだとは。

こちらも参考文献を。

Delay of gratification in children

いずれにせよ、こうした「自制心」が、学業の成績ともっとも関係が深く、かつ、鍛えることができる、というのは類書でも述べられている通りです。

ただ、本書では、上記「マシュマロテスト」の実験結果から、その自制心の訓練の訓練の結果までグラフ付きで解説されており、より深く知りたい方にはうってつけ。

一応、自制心の訓練実験のエビデンスも参考までに。

Longitudinal Improvement of Self-Regulation Through Practice: Building Self-Control Strength Through Repeated Exercise

こちらも2011年の実験ですから、やはり「つい最近」わかったことなんですね。


◆こんな感じで、本書はその主張のほぼ全てが実験ないしは研究結果に基づくものであり、説得力はあります。

ただし、それが具体的に、小中高校ないしは大学受験、もしくは資格試験で「こういう成果があった」というレベルでの成果を挙げたわけではない点にも留意すべきかと。

そして、内容があまりに「硬い」せいか、挿入されたイラストが「柔らかすぎ」て、違和感があるのも、アマゾンレビューにある通りです(私もこのイラストは本の内容に合ってないと思います)。

もっとも、最近ブーム(特に私の中でw)の「科学的自己啓発書」のテイストもあり、個人的には「買って悔いなし」であることは間違いありませんでした。


「勉強本オタク」なら、必読の1冊!

実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~
実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~
Part1 テクニック編
 復習の技術
 テストの技術
 ひらめきの技術

Part2 メンタル編
 ネガティブな気持ちをコントロールする
 ポジティブな気持ちを利用する
 成績アップに一番効く心の強さを育てる


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【編集後記】

◆あの「現役東大生がこっそりやっている」シリーズ(?)の新刊が登場!

現役東大生がこっそりやっている、すごい! 勉強のやり方
現役東大生がこっそりやっている、すごい! 勉強のやり方

4月は新学期のせいか、勉強本がラッシュですね。


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