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2014年04月22日

【権力を握る秘密】『独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門』木谷哲夫


独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門 (ディスカヴァー・レボリューションズ)
独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門 (ディスカヴァー・レボリューションズ)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、マッキンゼー出身である木谷哲夫さんの、「権力」について解説した1冊。

「独裁力」という言葉からは、正直あまり良い印象は持てなかったのですが、実は組織を運営する上で、非常に大事な能力であることが分かりました。

アマゾンの内容紹介から。
権力アレルギーから脱皮せよ。そして、世界で闘おう。変化に迅速に適応し、組織が望む結果を得るために。リーダーもフォロワーも、すべてが知っておくべき「権力」のエンジニアリング。

世の中における様々な人事や企業合併等について、「そういう事だったのか!」と目からウロコが落ちること必至です!!

追記:今朝の日経2面にパナソニックの津賀社長が登場していますが、本書には、その「権力基盤を構築した方法」が紹介されていますので、こちらもぜひご確認を。





Global Influence / art makes me smile


【ポイント】

■1.独裁力とは、コンセプトを現実にする能力
 良いコンセプトを持っている人がいて、カネも、人もいる大きな組織であっても、コンセプトを現実世界に投射することができなけれぱ何の意味もありません。
 現実世界に「投射」する際に必要となるのが、権力を掌握し、組繊の持てる戦力をフル動員することです。
 これが独裁力です。

 言い換えると、あるべき姿を頭の中に構築できるだけではなく、組織を使って実現する能力、ということです。次のように考えると簡単です。
リーダー力=コンセプト力(構想力)+独裁力(組繊を動かす力)


■2.マッキンゼーが日本でマイナーであり続ける理由
 戦略コンサルタントの役割は、戦略のシナリオをつくり、トップが意思決定することをサポートすることです。このため、トップマネシメント・コンサルタントと呼ばれます。あくまで意思決定権者である社長(あるいは1人で決められる事業部のへッドなど)が顧客なのです。
 日本に赴任してきた外国人コンサルタントは、すぐ社長に会いに行こうとしますが、欧米と違って、トップダウンでプロジェクトが始まることはほぼありません。
 みな、契約がとれないことに困惑し、しばらくすると、トップダウンで意思決定できる外資系のみを相手にするようになります。
 日本の大企業とプロジェクトを始めるには、中間管理職とのはてしない討議が必要だということが、外国人はどうしても理解できません。
 組織の権力が事実上非常に分散し、真ん中は空洞化しており、組織のあちこちに声の大きい権力者が割拠している、というような実態は想像できないのです。


■3.「強みを生かす」のは手段にすぎない
「当グループの総力を結集する」というお題目には、特に要注意です。外部の企業と協業したほうがはるかに早くマーケットに浸透できるかもしれないのに、自社内で調整している間に身軽な競争相手に抜かれてしまいます。
 そもそも、多角化した事業を正当化するためにこれほど便利な言葉はありません。(中略)
 プロの経営者にとっては、あくまで勝つことが目的で、強みを生かすのは手段にすぎません。
 強みを生かすなどのキーワードで現状維持が正当化されている会社は、トップが組織に負けているのかもしれません。


■4.部下の代わりはいくらでもいるという状況をつくり出す
 政治家は、大臣や、市長や知事などの地方の首長になったときに、部下になる官僚機構の大事なポストに民間から人材を登用したりすることがあります。
 これには、人材の登用のルートを、官僚組織の中からだけではなく、外の人材プールも含めることにより、「代わりがいくらでもいる状態をつくり出す」意味があります。(中略)
 どんなポストでも、能力だけで侯補者を合理的に考えると、組織内に限定する必要は特にありません。役人にとっては外部に代わりがいると大いに自分の権力が削がれるわけですから、役人が最も嫌うのは、「幹部ポストの公募」になります。


■5.HPのフィオリーナ氏がコンパックとの合併を強行したワケ
 合併を検討する事前準備段階から、創業者一族はコンパックとの合併に疑問を唱えていました。
 なぜ強行したのか。客観的に見て、権力基盤の弱いフィオリーナにとって、コンパックとの合併は取締役会メンバーを自分の意のままに入れ替え、彼女に反対する勢力の力を削ぐ絶好の機会でした。コンパックとの合併を通じて新たに選任される取締役が彼女の新たなコア支持層になる、という目論見だったのです。
 しかし、合併は株主価値的には見通しが暗く、HPウェイの行き先にも暗雲を感じさせるものだったので、創業家が反撃に出て、経営陣と創業者一族の間のバトルに発展したのです。


■6.人事権を主張した橋下氏
 大阪府知事になった橋下徹氏は、2008年に着任した直後に府の幹部人事の件で役人と対決しました。
 幹部人事について、某氏が内定しているので、知事の決裁がほしいと、役人が任命権者である知事のハンコを求めにやってきました。橋下氏がまずは本人と面談したいと伝えたところ、知事が人事異動の件で個人面談をした先例はない、と拒否されました。
 幹部ポストの候補者と面談するのは組織のトップであれば当然のことですが、これまでの大阪府では、トップが役人に人事を丸投げしていた、ということです。
 結局、権力センスに優れる橋下氏は、ここが肝心とばかりに粘った末に面談を実現し、幹部人事を自分で見ることにして、権力基盤を固める第一歩にしたわけです。


【感想】

◆冒頭でも触れたように、企業人事やM&A等について、新たな知見を得ることが出来ました。

まずは、上記ポイントの5番目のヒューレット&パッカードの、カーリー・フィオリーナ氏のコンパック買収の件。

この件については、本書曰く「純粋に企業戦略上のロジカルなものだと考えると読み誤る」とのこと。

つまり「外様」のCEOであったフィオリーナ氏にとっては、合併によってコンパックの取締役を取締役会に入れることにより、HPのもともとの取締役を減らす、という意図があったわけです。

もちろん、HPの生き残りのために、戦略的に正しかったとする評価も存在するのですが、合併後の業績がパッとせず、株価が上がらないのに、取締役報酬を倍にしている点等を踏まえると、権力掌握が主たる目的といって良いかと。


◆また、上記2番目のマッキンゼーの件については、最初「これだけ有名でどこがマイナーなの?」と思ったワタクシ。

しかし東京事務所の人数は200人に過ぎず、GDPが日本の6割ほどのドイツでさえ1000人以上いるのに比較すると、かなり少ないのだそう。

そしてマッキンゼーでは社内失業者はいないので、コンサルタントの数は仕事の量に比例します。

要は、日本において戦略コンサルティングは必要とされていないということ。

その理由が上記のポイントの通りであり、そう言えば、この本では、トップと癒着して、会社をぐちゃぐちゃにしたコンサルタントの例が多数紹介されていましたっけ。

コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る
コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る

参考記事:【衝撃!?】『コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る』デイヴィド・クレイグ(2014年01月20日)


◆それならば、やはり日本式の「トップだけに権力を集中させないスタイル」がいいかというと、決してそうではありません。

上記ポイントの1番目にあるように、「コンセプトを現実にする」ためには、独裁力が必要になってきます。

何せ、意思決定のスピードが必要とされる現在において、関係者との調整に時間がかかる「日本式」では圧倒的に不利。

対照的なのが、故スティーブ・ジョブズ氏で、まさに「独裁力」の権化と言えるわけですし。

本書の第5章では「日本企業の生き残り策」と題して、日本企業に必要な方策を検討していますので、詳細はこちらでご確認を。


◆一方、具体的な「独裁スキル」について学びたい方は、本書の第4章「独裁者の裏ワザ」を要チェック!

ここでは過去の独裁者を題材に、裏ワザやべからず集を7つ紹介しています。

スターリン、ヒトラー、カダフィ大佐といった、悪名高い(?)面子の所業も、「独裁力」という観点からは正しいものなのだな、と。

ここで違和感を感じているようでは、組織は掌握できませぬ!


トップを目指す方なら、読むべし!

独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門 (ディスカヴァー・レボリューションズ)
独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門 (ディスカヴァー・レボリューションズ)
第1章 内なる敵を知る 独裁力を阻むイデオロギー
第2章 権力基盤を構築する
第3章 動員力を高める
第4章 権力ゲームで失敗しないための裏ワザ
第5章 日本企業の生き残り策


【関連記事】

本当は残酷な『「権力」を握る人の法則』 の話(2011年07月23日)

【出世の心得?】『権力(パワー)に翻弄されないための48の法則〈上〉』が予想通り濃厚だった件(2011年05月24日)

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【成毛流】『成毛眞の超訳・君主論』(2012年01月06日)

リア充がひた隠しにしていた『敵を味方にする19のテクニック』(2011年10月05日)


【編集後記】

◆本書の中で、何度も紹介されていた1冊。

独裁者のためのハンドブック
独裁者のためのハンドブック
独裁と民主主義に境界はない!カエサル、ルイ14世、ヒトラー、スターリン、毛沢東、カダフィ、金正日、プーチン、さらにはIOCやマフィア、実業家まで。古今東西の100を超える独裁者と組織をケーススタディとして取り上げ、カネとヒトを支配する権力構造を解き明かした、新視点の政治論。世界独裁者マップ付き!
こ、これは面白そうな(ジュルリ)。


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