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2014年04月15日

【文章術】『書く技術・伝える技術』倉島保美


書く技術・伝える技術 (スーパー・ラーニング 1)
書く技術・伝える技術 (スーパー・ラーニング 1)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気を集めていた1冊。

著者の倉島保美さん(男性です)は、「英語、日本語のライティング、プレゼンテーション、ディベート、論理的思考法についての指導を企業や自治体、大学などで年間150回以上行っている」という方です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
ビジネスの文章は、できるだけ読み手に文章を“読ませずに"、それでいて、必要な情報を伝達できるものでなくてはいけません。
さらに、
・内容を一読して理解してもらえる
・重要な情報を記憶に残せる
という点も重要です。
本書を読めば、上記の条件をすべて満たすライティング術がマスターできます。
仕事の効率を飛躍的に上げるためにも、ぜひご一読ください。

なるほどこれが、「欧米では常識」の文章術なのだな、と。





Manuscript / Gamma-Ray Productions


【ポイント】

■1.読者に不要な情報を読ませないよう工夫する
 たとえどんなに有益な文章であっても、文章の中には、必要な情報と不要な情報が混在しています。なぜなら、必要な情報とは、読み手によって変わるからです。(中略)
 したがって、ビジネス文章では、不要な情報を読ませないテクニックが必要です。同時に、必要な情報を読ませるテクニックが必要なのはいうまでもありません。読み手が文書中のどの情報を必要としたとしても、その必要な情報だけを読め、不要な情報を読まなくて済むようにしておけば、読み手の負担を減らせます。その結果、ビジネスの生産性が上がります。


■2.読み手のメンタルモデルに配慮する
 メンタルモデルとは、入力情報に対する、読み手なりの理解のことです。人はある情報が入ってくると、その情報を自分なりに消化しようとします。そのために「これはこういうことだろう」と、心の中で自分なりの世界を作ります。これがメンタルモデルです。(中略)
 情報が、読み手のメンタルモデルの予測通りに入力されないと、読み手はわかりにくいと感じます。(中略)
 例えば、先の例で、「第1の原因は、」の直後に原因が説明されなければ、読み手はその文章をわかりにくいと感じます。なぜなら、読み手のメンタルモデルが崩れるからです。


■3.文章の冒頭の総論は簡潔に書く
 総論では、重要な情報だけを簡潔にまとめます。正式なレポートや長い文章の場合、総論は7文前後で構成します。7文前後なら、おおむね30秒で読み切れます。30秒で重要な情報を伝達することは、ビジネス文章ではとても大事なことです。(中略)
電子メールのような簡易な文章の総論や、章や節の総論なら、1〜4文を目安とします。重要な情報だけを簡潔に述べるので、重要な情報が記憶として残るのです。総論をだらだら書くと、不要な情報で重要な情報がぼけてしまいます。


■4.パラグラフは縦と横で接続する
 縦につながるとは、トピック同士が論理的に接続し合っている場合です。例えば、問題と原因とか、原因と対策とか、対策と効果などです。(中略)
 一方、横に並ぶとは、トピック同士が同じ種類に属するだけで論理的に接続し合っていない場合です。例えば、問題1と問題2とか、原因1と原因2とか、対策1と対策2などです。(中略)
 各論のパラグラフの関係は、この縦つながりと横並びしかありません。縦つながりと横並びをしっかり意識すると、情報がしっかり接続されるので、論理的な構成となります。縦でも横でもないなら、無関係です。他と無関係なパラグラフを使って論理構成してはいけません。


■5.前のパラグラフの要約文とつながるように書く
 各パラグラフの要約文だけを拾い読みしても意味が通るよう、要約文同士をつなげて書きます。したがって、あるパラグラフの要約文を書くときは、前のパラグラフの要約文を意識しなければなりません。文章をパラグラフで構成できているなら、各パラグラフ要約文だけで意味が通るはずです。もし、あるパラグラフの要約文が、前のパラグラフの要約文とどうしてもつながらないなら、そのパラグラフで2つのトピックを述べてしまったのかもしれません。2つのトピックを述べてしまうと、要約文がそのパラグラフのトピックをまとめきれません。その結果、要約文だけでは意味が通らなくなります。


■6.ひとつの文には、ひとつのポイントだけを書く
 ひとつの文でひとつのポイントだけを書けば、ポイントか強調されるので、重要な情報を強く記憶に残せます。複数の文を、「〜て、」や「〜り、」などの等位接続助詞を使って羅列してはいけません。等位接続すると、接続された文はすべて等価です。同じ重要性の文がひとつの文に含まれていれば、すべての文がぼけてしまいます。ひとつのポイントだけを見せるから、文のポイントが強調できるのです。


【感想】

◆確か「未読本・気になる本」の記事を書いた際には、本書の内容説明はアマゾンにありませんでした。

ゆえに気づかなかったのですが、本書は、15年前に書かれたこの本の全面改訂版である、とのこと。

書く技術・伝える技術―一読理解、誤解なし!仕事の効率がぐんぐん上がる!! (1発でできるSUPERラーニング)
書く技術・伝える技術―一読理解、誤解なし!仕事の効率がぐんぐん上がる!! (1発でできるSUPERラーニング)

ちなみに、ほぼ同じタイトルで2008年にこういう本が出ているのですが、そちらとの関係は不明です。

書く技術・伝える技術―目からウロコのビジネス・ライティング (スーパー・ラーニング 7)
書く技術・伝える技術―目からウロコのビジネス・ライティング (スーパー・ラーニング 7)

この本の方が、やたらとレビューの評価が高いのと、マーケットプレイスでも高値が付いているので、ちょっと気になるのですがw


◆そして、15年前の本との違いは、まずは例文や演習問題を差し換えたこと。

例文は、新聞やウェブ上で読める文章なので、書かれた時期が分かるのですが、そのほとんどが最近のものになっています。

また、メインテーマである「7つのポイント」や注意点も見直した、とのこと。

特に間違っていたわけではないものの、前版出版後、15年に渡るライティング研修を行った結果、より効果的なポイントや注意点があると感じたのだそう。

さらには、本文である説明の文章も、全面的に見直したのだとか。

実は、この本自体が、本書で解説されている「決まりごと」に従って書かれており、それを「より完璧に守った文章」にしたとのことです。


◆例えば、上記ポイントの5番目の「前のパラグラフの要約文とつながるように書く」。

本書では、要約文は必ずパラグラフの先頭にあって、太字で強調されているので目に付きやすいのですが、そこだけ続けて読んでも、確かに意味がつながります。

それも1か所2か所ではなく、「全てのパラグラフ」がそういう仕様になっているという徹底ぶり。

とはいえ、このようにパラグラフの先頭文だけで意味が通じる文章というのは、日本ではまずないのだそうです。

数少ない「各パラグラフの先頭に要約文がある」例として挙がっていたのが、この本における阿川尚之さんの「AO入学者が一般入試の入学者より学業成績優秀。この傾向が何を語るか」という文章でした。

日本の論点 (2009) (文春ムック)
日本の論点 (2009) (文春ムック)

まぁ、この本を読むまでもなく、本書自体が、すべてそのように書かれているのですがw


◆なお、本書のあとがきでは、2つの「よくある疑問」について答えています。

1つは「理論に目新しさがない」。

これに関しては、そもそも欧米では常識的に学習する内容なので、「当たり前」な部分があるのですが(というか、倉島さんの本『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』もほぼ同じ内容です)。

また、「知ってることと、できることは別なので、できるようになるためにこの本がある」のだそう。

確かに、今回は割愛しましたが、実践編の各文章形式ごとの指導は、かなり役立ちそうな感じです。


◆もう1つは「他人の文章を批判していいのか」というもの。

これはもう本当に、「メッタ斬り」とまでは言わないものの、名指しで挙げられた人にしてみれば「カチン」ときても当然なくらいですから、そういう声があっても不思議ではありません。

ただ、これに関しても、あくまで「ビジネス文章として見たとき、改善の余地がある」ということ。

特に数多く挙げられている「新聞の社説」は、論理的であると当時に、「読み物としての価値」もあるわけで、本書の指摘だけをもってその価値が下がるのではない、と。


◆ちなみに、当ブログのビジネス書に対するスタンスとしては、「使えるTIPSが1つでも2つでもあればいい」というものなのですが、本書の場合、断片的に実践しても、あまり効果的ではない気がします。

もちろん「総論は簡潔に」ですとか、「要約文はつながるように書く」というテクニックは大事ですけど、それよりも、下記目次の理論編の「7つの法則」を意識して頂きたく。

そして機会があれば、本書のパラグラフの先頭文だけを読んでみて下さい。

恐ろしく短時間で、本書のエッセンスが把握できることウケアイですから。


欧米の学生に負けないために!

書く技術・伝える技術 (スーパー・ラーニング 1)
書く技術・伝える技術 (スーパー・ラーニング 1)
基礎編 「書く技術」が身につけば、仕事の効率はもっと上がる!
 基礎1 「読ませない」文章を書こう
 基礎2 文章の良し悪しがビジネスの成否を分ける
 基礎3 「書く技術」は経験では身につかない
 基礎4 文章を構成するには読み手のメンタルモデルに配慮しよう 
 基礎5 負担をかける文章とかけない文章、どこに差があるの?

理論編 「書く技術」が驚くほどアップする ビジネス・ライティング7つの法則
 法則1 文章の冒頭には重要な情報をまとめて書く
 法則2 詳細はパラグラフを使って書く
 法則3 パラグラフの冒頭には要約文を書く
 法則4 文頭にはすでに述べた情報を書く
 法則5 並列する情報は同じ構成、同じ表現で書く
 法則6 ひとつの文には、ひとつのポイントだけを書く
 法則7 無駄なく、簡潔に書く

実践編  パターンと手順を覚えて、実務の文章作りにトライしよう
 実践1 ビジネス文章は、この型を覚えよう
 実践2 ビジネス文章は、この手順で書き上げよう
 実践3 提案書を作ってみよう
 実践4 調査報告書を作ってみよう
 実践5 技術報告書を作ってみよう
 実践6 回答書を作ってみよう
 実践7 作業指示書を作ってみよう


【関連記事】

【文章術】『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』倉島保美(2012年12月04日)

【スライド作成術】『論理が伝わる 世界標準の「プレゼン術」』倉島保美(2014年01月23日)

【文章術】『30分で完成する全自動文章法―これ1冊で全部うまくいく!』今井健仁(2014年04月07日)

【文章術】『誰にもすぐ役に立つビジネス日本語・文書の本 正確に・洩れなく・速く』神谷洋平(2014年03月19日)

【オススメ】『ロジカル・ライティング』清水久三子(2013年10月17日)

【文章術】『100ページの文章術 -わかりやすい文章の書き方のすべてがここに』酒井聡樹(2011年03月24日)


【編集後記】

◆上記でちょっとだけ触れた倉島さんの作品(レビューは上記関連記事にあります)。

論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)
論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)

主張していることはほぼ同じなのですが、横書きなのがちと残念……。


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