2014年04月10日
『ツカむ! 話術』が想像以上に凄い件について
ツカむ! 話術 (角川oneテーマ21)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、ハーバード大卒の芸人である、パトリック・ハーランさんのトーク術の指南本。東京工業大学での人気講義の書籍化ということで、なかなか分かりやすかったです。
アマゾンの内容紹介から。
ハーバード大卒芸人のパックンが、米国大統領のスピーチや芸人の笑いのテクニックを解説しながら、日本人にも外国人にも通じる相手のハートをつかんで離さないトーク術を披露! 池上彰氏との「伝え方」対談も収録!
なお、書名が短すぎるので、「ホッテントリメーカー」のお世話になってみたのですが、確かにタイトル通り「想像以上な1冊」でした!
Ronald Reagan / Jay Phagan
【ポイント】
■1.話術は性格ではなく磨くもの話術は磨くもの。生まれつき言葉をしゃべれる人間がいないように、生まれつき話がうまい人なんていません。
「話すこともスキルの集積」と考えましょう。どれだけたくさんのスキルを学んで、どれだけ自分でその技術を磨いてきたか。大事なのはそこなんです。
アメリカの社会では、話術のトレーニングをしていない人は、社会生活を営む上で明らかに不利になります。自分の性格がどうあれ、サバイバルのためには自分らしく話す技法を身につけるしかない。そう割り切って、スキルを磨くものなんです。
■2.ディテールとストーリー展開を意識する
まずはディテール、つまり、具体的かつ細かい描写。「男が缶を置いた」より、「中年の長身の男が、へルシアコーヒーを美味しそうに飲み干してから、空き缶を社長の机の上に置いた」のように状況を細かく描写したほうが、面白さも信憑性も増します。(中略)
次はストーリー性、つまり物語の要素。話全体にも、細かいところにもエピソードを盛り込んだり、起承転結の流れをつけたりするよう注意します。同じ情報でも、要点だけではなく、その前後に展開があると聞きやすいし、印象に残りやすいんです。
■3.謙遜自慢を活用する
自分をアピールする必要があるとき、直接的に自慢するよりも、謙遜してちょっと自虐的なスタンスのなかで間接的に伝えるモデストブラッグの手法は、日本人のメンタリティにしっくりくるように思います。
例を挙げましょう。
「うちの奥さん料理上手なんだけど、いつも野菜中心だし、お酒もあまり飲ませてくれない。いや〜大変だよ、モデルと結婚していると」
「うちの奥さん、モデルなんだ」と言うと自慢しているように聞こえますが、「大変なんだ」と自虐を入れることで、相手の反感を買いにくくしているわけですね。
謙遜自慢がうまく使えると、アメリカはともかく日本の社会ではとても便利です。
■4.ロゴステクニックの要点(抜粋)
・簡潔な言葉で言い切る
・3の法則を使う
・韻を踏む。対比する。5・7・5調などでリズムを作り出す
・常識、固定観念をひっくり返す
・大事なところを際立たせるために「比較」をする
・理解を深めるために、別のものごとに置き換える「比喩」を使う
(詳しくは本書を)
■5.フレーミングで自分の論旨を有利な方向に促す
フレーミングとは、物事の切り取り方を変えて、相手に与える印象を変えること。言葉や角度を意識するロゴステクニックの1つです。(中略)
ある工場で不良品の発生率が変化しました。
「不良品発生率が10パーセントから5パーセントになりました」
「不良品発生率が50パーセント滅りました」
どうですか。大きく変わったと感じてほしいなら、50パーセント減りました、と言ったほうが効果的ですね。
■6.表現に意図的な策略を含ませる
「最近、浮気した?」、こう質問されたとします。
「いや、してないです」、とあなたは答えます。
そこで「ああ、してないんですね、最近は」と言われたらどうですか。
あなたは「してない」と否定しているのに、このやりとりを聞いた人は、以前はしていたかのような印象を持ちます。質問の仕方、選択肢の選ばせ方にバイアスがかかっています。質問した相手は、「あなたは浮気をした」という、結論がすでに入った質問を投げかけています。
【感想】
◆お笑いに疎い私は、本書の著者であるパトリック・ハーランさん(パックン)のことは全然知りませんでした。パックンマックン - Wikipedia
外人さんの芸人で、しかもピンではなくてコンビで漫才というのは、ある程度日本語が達者でないとできないもの。
その点、パックンは在日10年以上(93年来日)ということで、まったく問題ない模様。
むしろ、喋ってウケる必要のあるお笑いに比べたら、本の中でのユーモアのある表現なんてお手の物なのでしょう。
真面目なTIPSの中に、何気に「ボケ」がカマされていたりして、油断も隙もありません。←褒めていますw
◆そのTIPSの方も、さすが「ハーバード大卒」だけあって、きわめて真っ当なモノ。
その中心をなすのは、お馴染みアリストテレスの説得手段である「エトス」「パトス」「ロゴス」です。
・logos(ロゴス、言論) - 理屈による説得一応、それぞれが何かということは知っていたものの、ここまで掘り下げてもらったのは、意外な事に実は初めてでした。
・pathos(パトス、感情)- 聞き手の感情への訴えかけによる説得
・ethos(エートス、人柄)- 話し手の人柄による説得
弁論術 (アリストテレス) - Wikipedia
本書では第2〜4章にかけて言及していますので、詳細はこちらにてご確認を。
◆ちなみに、上記ポイントの5番目の「フレーミング」に関連して、興味深かったのが、「フレーミング王」ことフランク・ランツ。
どこかで聞いたことがあったような、と思って、自分のブログ内を検索してみたら、この本の記事で登場していました。
心脳コントロール社会 (ちくま新書)
参考記事:「心脳コントロール社会」小森陽一(著)(2006年08月03日)
上記記事でも触れているように、この人が得意なのは、「言い換えによる印象操作」。
例えば「金持ち(rich people)」のことを、「雇用を作る人(job Creators)」と言い換えてみたり。
また、共和党の反対する「相続税」を「estate tax(遺産税)」から、「death tax(死の税金)」に言い換えたのだそう。
……これはイヤだわ。
◆なお、「あの」池上彰さんとの対談(これも意外に面白かったですw)を挟んだ後半は、「実践編」と題して、スピーチやプレゼン、ディベート等でのテクニックを解説。
これがまた、前半の「理論編」以上に具体的なTIPSが散りばめられていて、付箋貼りまくりました。
・ツカむ秘訣 スピーチ
・話し合い方の3つのスタイル
・交渉の5段階プロセス
・思考の4タイプ……etc
さらに第8章の「騙す技術の見抜き方」は、相手に使われないよう、事前に知っておくことが重要かと。
今回は上記ポイントの6番目がそれに該当しますが、他にも見逃せない「論理的誤謬」が目白押しでした。
想定外に深くて、思わずビックリの1冊!
ツカむ! 話術 (角川oneテーマ21)
第1幕 理論編 話術の基本テクニック
第1章 話術は「習って慣れろ!」
第2章 あなた自身でツカむ「エトス」
第3章 「感情」によってツカむ「パトス」
第4章 「言葉の力」でツカむ「ロゴス」
第5章 相手の懐に入り込むには
幕間 対談 パックン×池上彰 対話で学ぶ「ツカみ」の極意
第2幕 実践編 現場で使える「ツカむ!話術」
第6章 心を打つスピーチ、プレゼンの技術
第7章 話し合いの場での話術
第8章 騙す話術の見抜き方
第9章 これが「ツカむ!話術」だ
付録 「ハーバード流」自己紹介
【関連記事】
お前らもっと『30秒で話を伝える技術』の凄さを知るべき(2013年10月06日)【話し方】『言いたいことは1分で! 10倍伝わる話し方』渡辺美紀(2013年01月05日)
【ハーバード流?】『一瞬で人を動かすハーバードの技術』ミミ・ゴッス(2012年08月02日)
【元ネタ本?】「なぜ、この話し方だと成功するのか」アーチ・ラストバーグ(2010年06月14日)
【話し方】「たった1分間で相手を引きつける話し方13のテクニック」アラン・ガーナー(2010年06月06日)
【編集後記】
◆こんな本があるらしいのですが。焼き肉屋で最初にタンを注文する女は合コンでモテる!―ディグラム分析でわかる恋愛・結婚の法則
モテ本マスターとしては、チェックしておかねばw
ご声援ありがとうございました!
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