2014年04月08日
【読書術?】『乱読のセレンディピティ』外山滋比古
乱読のセレンディピティ
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、あの『思考の整理学』でお馴染みの外山滋比古先生の最新刊。ただし、サブタイトルに「思いがけないことを発見するための読書術」とあるように、ただの読書術の指南本ではありませぬ。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
東大・京大で5年連続販売冊数第1位の大ベストセラー『思考の整理学』の読書版 !(中略)
「本は身ゼニを切って買うべし」「知識と思考」など、「知の巨人」が思考を養い人生が変わる読み方を伝授 !
今まで読んできた読書術の本とは、ひと味違う内容でした!
Mr. Potato Head Has His Nose in a Book / Enokson
【ポイント】
■1.本は読み捨てでかまわない本に執着するのは知的ではない。ノートをとるのも、一般に考えられているほどの価値はない。
本を読んだら、忘れるにまかせる。大事なことをノートしておこう、というのは欲張りである。心に刻まれないことをいくら記録しておいても何の足しにもならない。(中略)
本についても、過食は有害である。知的メタボリックになる読書があり得る。同じ本を何回も読むなどということは、考えただけでも不健康である。
■2.知識と思考は二者択一の関係になる
読書家は、知識と思考が相反する関係にあることに気がつくゆとりもなく、多忙である。知識の方が思考より体裁がいいから、もの知りになって、思考を圧倒する。知識をふりまわして知的活動をしているように誤解する。
本当にものを考える人は、いずれ、知識と思考が二者択一の関係になることを知る。つまり、もの知りは考えず、思考をするものは知識に弱い、ということに思い至るだろう。
■3.読むスピードをあげないと、本当の読みにはならない
必要以上に、慎重に、ということは、ゆっくり、丁寧に読むべきものという意識にとりつかれる。つまり、読む速度がおそすぎることになるのである。おそいのが丁寧なのではなく、ことばに底流する意味の流れをとめてしまい、意味を殺して、わかりにくく、おもしろくないものにしてしまう、ということがわからないことが多い。
したがって、スピードをあげないと、本当の読みにはならない。10分間で1冊を読了という電光石火の読みは論外だとしても、いま考えられている読書のスピードでは、ことばの生命を殺しかねない。
■4.新聞は乱読の入門テキストにうってつけ
短い時間で、新聞を読むには、見出し読者になるほかない。見出しだけなら1ぺージを読むのに1分とかからない。これはと思うのがあったら、リードのところを読む。それがおもしろければ、終りまで行く。そんなおもしろい記事が2つも3つもあったらうれしい悲鳴をあげる。
見出しで、記事内容を推測するのはかなりの知的作業であるが、頭のはたらきをよくする効果は小さくない。
■5.失敗をおそれない
いくら賢い人でも、乱読すれば、失敗は避けられない。しかし、読めないで投げ出した本は、完読した本とはちがったことを教えてくれていることが多い。失敗をおそれない――それが乱読に必要な覚悟である。
これまで乱読がきらわれてきたのも、ひとつには乱読では失敗が多いからであろう。きわめつけの名著を読むのに比べれば、失敗ははるかに多いであろう。失敗はいけない、失敗するな、という常識からすれば、乱読は賢明ではないとなる。
人間は失敗によって多くのものを学ぶ。ときとして成功より大きなものが得られることもある。そう考えると、乱読が、指定参考書などより実り多きものであることがわかる。
■6.乱読でセレンディピティは起こる
専門の本をいくら読んでも、知識は増すけれども、心をゆさぶられるような感動はまずない、といってよい。それに対して、何気なく読んだ本につよく動かされるということもある。(中略)
どうも、人間は、少しあまのじゃくに出来ているらしい。一生懸命ですることより、軽い気持ちですることの方が、うまく行くことがある。なによりおもしろい。このおもしろさというのが、化学的反応である。真剣に立ち向かっていくのが、物理的であるのと対照的であるといってよい。
化学的なことは、失敗が多い。しかし、その失敗の中に新しいことがひそんでいることがあって、それがセレンディピティにつながることがある。昔からケガの功名、というが、セレンディピティは失敗、間違いの功名である。
【感想】
◆冒頭でも申しあげましたように、本書は類書とは「ちょっと違った」読書術の本でした。まず、「具体的にどのように読むのか」、というテクニカルなお話はほとんどありません。
厳密には、上記ポイントの3番目にあるように「速く読め」という指摘はあるものの、どのくらいのスピードか、という点についてはスルー。
ただ、一般的に「速読派」というのは、多少の理解を犠牲にしても、読破量を重視するものですが、本書では「速く読まないと読み取れない意味がある」とまで指摘しています。
曰く「辞書をひいたりして、流れをとめてしまい、むやみと時間をかけると、ことばをつないで意味を成立させている残曵(ざんえい)が消えて、わかるものがわからなくなってしまうのである」とのこと。
この辺について、詳しく理解されたい方は、本書にてご確認を。
◆さらに、ポイントの1番目では、「本は読み捨てよ」「ノートはとらない」と、一部の読書好きの神経を逆なでしそうな発言もアリw
それに続けて、「同じ本を何回も読むなどということは、考えただけでも不健康」だなんて、「"良書を精読する主義"の方にケンカ売ってるのか?」と思ってしまいましたよ。
とはいえ、それもこれも、結局は「読書」に求めるモノが違うから、しょうがないのも事実。
たとえば、類書においては読書によって「知識」を求めることが多いですが、本書は「セレンディピティ」を求めています。
セレンディピティ - Wikipedia
◆ただ、当ブログでも、今まで何冊かセレンディピティを扱った作品を紹介していますが、そのきっかけが「読書」というケースはあまりなかった気が。
一方、外山先生は、ご自身の経験や過去の発見等の事例から「読書」、特に「乱読」の存在を指摘しています。
たとえば、雑誌「英語青年」の編集主任時には、たまたま読んだ食べものの本(英語と関係ないじゃん、というw)がヒントになって「編集は料理に似た加工である」というアイデアがひらめいたり。
また、湯川秀樹博士がノーベル賞を受けた「中間子理論」を思いついたのは、博士が幼いころから親しんだと言われる中国古典の影響と考える人が多かったのだそう。
確かに、どちらも「本来のテーマ」とはまったく違うジャンルの本を読んでいますよね。
ちなみに、「中間子理論」が何たるかを知らなかった私は、こんな動画を観て勉強したのですがw
注:動画削除されました💦
◆上でも書いたように、本書は読書術にテクニカルなものを求める方には、少々マッチしていないかと。
その代り外山先生は、さすが「ダブルミリオン寸前(184万部)」である『思考の整理術』の著者なだけあって、おっしゃることに説得力アリ(名前負けしてるかもしれませんがw)。
今回は割愛しましたが、「知識ばかり詰め込む」人に対して「知的メタボリック・シンドローム」と看過されているのにも、思わず納得しました。
なお、その症状になった場合に必要なのは「忘却」とのこと。
……私も確かにこのブログにいったん書いてしまうと、きれいさっぱり忘れてしまいますしw
読書好きなら、押さえておきたい1冊!
乱読のセレンディピティ
1.本はやらない
2.悪書が良書を駆逐する?
3.読書百遍神話
4.読むべし、読まれるべからず
5.風のごとく…
6.乱読の意義
7.セレンディピティ
8.『修辞的残像』まで
9.読者の存在
10.エディターシップ
11.母国語発見
12.古典の誕生
13.乱談の活力
14.忘却の美学
15.散歩開眼
16.朝の思想
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【編集後記】
◆個人的にハゲシク気になる本。HAIR DESIGN BOOK for men (えるまがMOOK)
「薄毛&白髪を活かしたスタイルを提案する、新しいヘアカタログ」とのことなので、今までのヘアカタログでは「完全対象外」だった私でも活用できそうなw
ご声援ありがとうございました!
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