2014年04月03日
本当は残酷な『年収700万円のリアル』の話
年収700万円のリアル
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、なかなかに「リアル」な年収に関わるお話の本。『28歳からのリアル』シリーズでお馴染みの人生戦略会議さんの最新作です。
アマゾンの内容紹介から。
高年収ビンボーにならないために!年収700万円(以上)めざしたい人、必読!
なお、タイトルは、お馴染み「ホッテントリメーカー」作でございますw
Money - Savings / 401(K) 2013
【ポイント】
■1.ポテンシャルとパフォーマンスをバランスよく備えるポテンシャルは、その人が将来的に「何ができそうか」という予測で値づけされます。やる気、積極性、自主性、センス、若さなどがその材料になるでしょう。(中略)
では、パフォーマンスとは何なのかというと、こちらは、売上げ、集客率、勤続年数といった目に見えるものによって値づけされるものです。実績を見れば、その人が「何ができるか」がわかります。(中略)
ようするに、ポテンシャルだけでもだめだし、パフォーマンスだけでもだめだということです。このふたつをバランスよく備えている人が、たとえば年収700万円というお金をもらえるわけです。
■2.意見と事実を分ける
「今週はがんばったから高いランチを食ってよし」というのは「意見」です。それよりも目を向けなければならないのは、昼飯に1500円使ったことによってキャッシュが1500円減ったという「事実」でしょう。
同様に「来月がんばるから」も「意見」です。がんばる気があっても、実際にがんばるかどうかはわからないわけですから、結局のところは企業会計の「利益」と同じで、現時点では「絵に描いた餅」に過ぎません。
それよりも目を向けたほうがよいのは、洋服を買うことによってキャッシュが減り、お金持ちになる道が遠ざかったという「事実」なのです。
■3.「どこに住むか」が「いくらかかるか」に大きく影響する
単純に距離で見ると、東京駅から30分弱の埼玉県川口市民の平均支出は27万1185円ですが、ほぼ同じ距離にある浦安市民が34万9193円で月7万8000円もの差があったり、都心に近い立川市民の支出が29万168円であるのに対して、八王子市民が34万6226円で、遠いのに月5万6000円ほど高いという差も見られます。
浦安が高いのはディズニーリゾートが近いブランド地だからでしょう。八王子が立川より高い理由はわかりません。
いずれにしても、「どこに住むか」が「いくらかかるか」に大きく影響することは事実です。「なんとなく」お金が貯まっていくのが理想ではあっても、なんとなくいまの場所に住み続けることはおそらく得策ではないはずです。
■4.ムダな努力をしない
大切なことは「効果がないことを一生懸命やるのをやめる」こと。そして、「いまの年収にふさわしい貯め方に変えていく」ことです。ムダ遣いはよくありませんが、ムダな努力はもっといけません。年収が低かったころに覚えたテクニックなどはその典型的なものです。年収400万円だったときと700万円以上のいまとでは、テクニックはもちろん、基本的な考え方から自分を取り巻く環境にいたるまで、あらゆる面を成長に合わせて変えなければならないのです。
■5.基礎的生活レベルを上げない
一度でも「ちょいリッチ」な生活を経験してしまうと、収入が減ったという事実を素直に受け入れることができなくなります。「収入に合った暮らし方をする」という合理的な考えよりも「いままで通りに暮らしたい」という感情が勝ってしまい、月32万円使う年収700万円前後の暮らしを、年収が500万円や300万円になっても続けようとしてしまうのです。家賃や住宅ローンなどのように、下げたくてもすぐには下げられないものもあります。
その先に待っているのは「借金」の二文字であり、アンハッピーな生活であることは多くの人が予想できるでしょう。
■6.賃貸と持家の比較は意味がない
住宅を買うべきか借りるべきかの「べき論」は、長いこと、ライフプランを語るときの中心的な論点でした。そして、今日、その結論はほぼ集約されたといっていいでしょう。すなわち、「前提条件によっても異なるが」「生涯に支払う総額は購入も賃貸もほとんど変わらず」「購入は資産が残るがリスクも大きく」「賃貸はリスクが小さいが資産が残らない」という、「で、結局はどっちがトクなの」的なものでした。(中略)
という前フリをしたところで、早めに結論を提示します。購入と賃貸をソンかトクかの二元論で語ることにあまり意味はない、ということです。ソンをしたくないのはだれでも同じことですが、トクをするために住まい選びをするわけではありません。購入派は「お金」を借り、賃貸派は「部屋」を借りる。どちらも借りるのです。
【感想】
◆今まで当ブログで年収の話が出た場合、下記参考記事にもあるように、「その年収を稼ぐためのTIPS」を語る本が中心でした。それに対して本書は「稼ぐ」ためのハウツウは控えめ。
というより、下記目次の通り、「全体の中の一部分」という扱いになっています。
確かに何百万円稼ごうとも、「貯め方」「使い方」に問題があれば、資産として残せません。
たとえば上記ポイントの3番目にもあるように、「どこに住むか」によって、月額単位で大きな差があるわけですから……。
◆ちなみに今回、丸ごと割愛したのが、第4章の「殖やす」。
ここでは見出しの通り「投資」を推奨しています。
ただし「消極的な姿勢で取り組むならうまくいかないからやめましょう」とのこと。
当ブログでは、基本的に金融・投資関係の本はご紹介しないスタンスなので、詳細は本書をお読みください。
ただ、「リスクを負う」という意味では、不動産を買う事や、自己投資を行うことも同じ、という指摘はなるほど確かに。
本を読んでも、実践しなかったら、それは株で損を出すのと変わらないですもんね……って、それ、なんて私(ry
◆なお、最後の第6章の「失う」で扱っているのは、事故や盗難等ではなく、主に税金や社会保険料のこと。
お給料の額面金額から手取りにかけて、「ざっくり持っていかれる」仕組みを理解されていない方は、ここは要チェックかと。
またこの章では、「寄付」や「贈与」といった、日頃なじみのないものにも言及しています。
そして「寄付」の中には、「赤い羽根募金」のような分かりやすい(?)ものだけでなく、「ふるさと納税」もアリ。
総務省|自治税務局|ふるさと納税など個人住民税の寄附金税制
「特産品目当て」という立場をとっていなかった点が、好印象でした。
◆本書は1つの「基準点」として「年収700万円」を設定しています。
ですから当然、この金額を余裕で超えている人や、どう考えてもまだ無理な方には、役立たない点もちらほら。
ただ、「無理な方」の場合であっても、「稼ぐ」のは無理でも「貯める」「使う」あたりは実践できるハズ。
また、語り口が妙にフランク(これがこのシリーズのウリなのかもしれませんが)なのも、気になる人はいそうな感じです。
その辺を踏まえた上で、「年収700万円の現実」を素直に俯瞰できるのが、本書の特長ではないか、と。
日頃見落としがちな「お金」の気づきを得られました!
年収700万円のリアル
第1章 稼ぐ
第2章 貯める
第3章 使う
第4章 殖やす
第5章 借りる
第6章 失う
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「あなたが年収1000万円稼げない理由」田中和彦(2007年02月20日)
【編集後記】
◆似た感じのジャンルで気になった本。いわゆる「当たり前の幸せ」を愚直に追い求めてしまうと、30歳サラリーマンは、年収1000万円でも破産します。
こちらも結構シビアな話のようです。
ご声援ありがとうございました!
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