2014年03月25日
知らないと損する『無意識に買わせる心理戦略』活用法
無意識に買わせる心理戦略
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、今月初旬の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げていた1冊。一足先に土井英司さんのメルマガで紹介されたため、在庫切れになってしまった「問題作」です。
アマゾンの内容紹介から。
買い物客の行動パターンには法則があった!コカ・コーラ、ユニリーバ、P&Gなど大手企業のマーケティング・コンサルタントが、世界初の実験で買い物客の行動実態と売上増進の秘策を解明。
なお、タイトルは久しぶりに「ホッテントリメーカー」のお世話になりましたw
Costco on a Saturday / miamism
【ポイント】
■1.店を選ぶ1番の決め手は「場所」じつは店を選ぶときのいちばんの決め手になっているのは、場所だ。例えば、自宅や通勤路に近い店ほど利用されやすい。また、場所で店を選ぶ場合には、その人にとって買い物に行くことがどういう意味を持つか、買い物が生活のなかにどう組み込まれているかも関係してくる。買い物にかかるお金(安さ)と時間(早さ)のどちらを優先するかで、選ぶ店は変わる。
■2.店内のレイアウト変更は逆効果
買い物でいらいらさせられることは何かと尋ねると、きまって「店内の商品の場所が変わること」という答えが返ってくる。このいらいらが生じるのも、認知地図が形成されて、無意識的に行動できるがゆえだ。
なぜかというと、わたしたちは週1回の買い物のためにスーパーに行くとき(そして列に並ぶとき)には、できるだけ頭を使いたくないと思っているからだ。小売り店はこれまで、客の注意を棚に向けさせて、じっくりと商品を選ばせるためには、商品の位置を定期的に変えるのがいいと、考えてきた。しかしこれはまったくの逆効果だった。そのようにして認知地図を壊された客は、いら立ち、買い物のじゃまをされたと感じていた。
■3.商品によって提供の仕方を変える
牛乳などのカテゴリでは、買い物客はほぽいつも同じ商品を買うので、簡単な視覚的な手がかりしか探そうとしない。したがって、このタイプのカテゴリにおいては、シンプルさが第一に求められる。できるだけすみやかに商品が見つかるよう工夫することが肝心だ。余計なPOPを設置したり、選択肢をむやみに増やしたりして、買い物客を戸惑わせてはいけない。一方、シャンパンなどのカテゴリでは、時間をかけて、商品が選ばれる。したがってこちらの場合には、参考になる情報を提供したり、変則的な並べかたをしたり、あるいはどれを買うべきかを教えてあげたりするほうが、買い物客のニーズに適う。
■4.買い物の計画性は国によって違う
欧米の国々では、全カテゴリの60パーセントから95パーセントが計画的に購入されている。一方、毎日買い物するスタイルから欧米型の週1回や月1回などのスタイルに移行しつつある国々では、買い物の計画性は低い。例えば、ロシアでは、計画的に購入されているカテゴリは20パーセントもない。
■5.「分析的」と「知覚的」の両方の記憶に訴えかけた「ジレット」
「ジレット」の広告では、おなじみの視覚的なイメージ――カミソリの刃、ひげ剃りを手にした男前のモデル、研究にいそしむ科学者――のほかに、青とオレンジという色もあらゆる場面で使われている。分析的な記憶によって、刃の数が多いことや、科学者が商品の開発に携わっていることを覚えてもらうだけでなく、概念的な記憶によってブランドのイメージカラーも覚えてもらうためだ。前に説明したように、店内で商品を探すときには色が強力な手がかりになる。したがって、色を覚えてもらうことはたいへん重要だ。
■6.選択肢を減らして売上をのばした「ダノン」
イタリアの小売り店で、すべてのヨーグルト製品の売れ行きを調べた<ダノン>は、小売り店に自社製品の品揃えを40パーセント減らすことを提案した。提案は受け入れられ、買い物客の反応が調べられることになった。結果はどうだったか? 半数近くの商品が撤去されたにもかかわらず、売り場の品揃えの変化に気づいた買い物客は、わずか15パーセントしかいなかった。しかも変化に気づいたと答えた人の大半は、品揃えが増えたと錯覚していた。売り上げは商品を減らす前に比べ、20パーセン卜以上の増加となった。この結果は、品数を増やしすぎると、かえって商品が見えにくくなり、逆効果であることを示している。品数を適度に少なくしたほうが、ひとつひとつの商品が目立つので、買い物客にとっての実際の選択肢は増えるのだ。
■7.買い物客を誘導する案内表示での効果
わたしたちは以前、アメリカのある小売り店で、「人気商品!」という表示の効果を調べる実験を行なった。店内のすべてのカテゴリで、棚に「人気商品!」と記した黄色いラべルを貼って、それぞれの売り上げを調べる実験だ。カテゴリごとに差はあったが、全体的にはみごとな効果が見られた。売り上げが10パーセントから15パーセント増えたカテゴリもあれば、なんと百パーセント以上伸びたカテゴリもあった。不況下だったにもかかわらず、店全体では4パーセントの売り上げの増加となった。
【感想】
◆冒頭の土井さんの記事でも触れられているように、本書はあの名著『なぜこの店で買ってしまうのか』を彷彿とさせます。なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
参考記事(旧版の単行本ですが):【スゴ本!】「なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学」パコ・アンダーヒル(2007年10月09日)
本の出た時期的に考えて、著者のサイモン・スキャメル=カッツは、てっきりパコ・アンダーヒルの後継的な存在かと思いきや、本書の序章によると、実は同じころ、すでに「買い物客の研究」を始めていたとのこと。
そしてその手法は、パコ同様、徹底的に買い物客の動向を記録するというものです。
当初はメーカーからの依頼に応えていましたが、カッツはやがて、大型スーパー等での分析に移行。
そこで明らかになってきた事実は、今までの常識に反するものでした。
◆まず、かなりの買い物客が、あらかじめ買うものを決めている、ということ。
電気製品等の高額商品なら当然でしょうが、日常品であっても「定期的に同じもの」を購入する割合が非常に多いのだそう。
たとえば、衝動買いが多そうな「ソフトドリンク」も、実は買い置きの品を補充するために買われていることが多いとのこと。
しかも上記ポイントの2番目にあるように「できるだけ頭を使いたくない」と思っているわけですから、分かりやすく展示しておくことが一番。
むしろ下手に「パッケージデザインを一新」しようものなら、他の製品にスイッチされてしまう可能性もあるわけです。
◆また「買うものが決まっている」のであれば、基本的に余計な売り場には足を運びません。
お店の中には「合理的な道順」に沿ってレイアウトを決定しているところもありますが、客の方はショートカットするので、実はほとんど意味がないという。
意味がないと言えば、実は「店頭のショーウィンドウもほとんど見られていない」というお話にもちょっとビックリ。
カッツが行った調査によると、「3週間で、9108人がビデオに収められた」ものの、店に目を向けたのは、全体の8〜10%で、それも大多数は「店の様子を覗いた」ものだったとか。
ただし、興味深いことに、出口で質問を受けると、1/3の人が「ショーウィンドウをしばらく見てから店に入った」と回答。
これは、買い物客が「期待されている答え」をしてしまうからであり、小売にまつわる「俗説」にはこの手の「していると言っていること」によるものが多いのだそうです。
◆本書はそのテーマからして、小売りやメーカー関係の方なら、一読の価値アリ。
もちろん、広告代理店やマーケティング関係の仕事に携わる方にもお勧めしたいところです。
そのいずれでもない私が、こうしてプッシュするのもアレですが、行動経済学や、この手の顧客心理に関する本は、知的好奇心が刺激されるものでしてw
直接的に役に立つわけではないものの、いつか役立つことがあると期待しながら、これからも読んでいくつもりです。
売り上げを伸ばしたい方ならぜひ!
無意識に買わせる心理戦略
第1章 なぜ買い物客に注目するべきか
第2章 買い物客はどういう目的で店に来るか
第3章 ウィンドウディスプレイに効果はあるか
第4章 買い物客は店内でどのように目当ての商品を探すか
第5章 買い物客は店内で何を見ているか
第6章 買い物客はどのように商品を選ぶか――「カテゴリ」の影響について
第7章 買い物客はどのように商品を選ぶか――「習慣化」の影響について
第8章 買い物客はどのように商品を選ぶか――「感情や感覚」の影響について
第9章 ふだん買わないものを買うとき、買い物客はどのように選ぶか
第10章 買い物客はどのように商品を記憶するのか
第11章 これからの買い物はどうなるか
【関連記事】
【スゴ本!】「なぜこの店で買ってしまうのか―ショッピングの科学」パコ・アンダーヒル(2007年10月09日)【オススメ!】『ビジネスマンのための「行動観察」入門』松波晴人(2011年10月20日)
【好意のヒミツ?】『なぜ、それを好きになるのか?脳をその気にさせる錯覚の心理学』竹内龍人(2014年03月13日)
【ヒットの秘密】『遠足型消費の時代 なぜ妻はコストコに行きたがるのか?』中沢明子,古市憲寿(2011年03月26日)
【スゴ本】『売り方は類人猿が知っている』ルディー和子(2010年08月27日)
【編集後記】
◆ちょっと気になる本。高城 剛と考える 21世紀、10の転換点
アマゾンランキングにも入ってきていますし、これは読んでみたいな、と。
ご声援ありがとうございました!
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