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2014年03月19日

【文章術】『誰にもすぐ役に立つビジネス日本語・文書の本 正確に・洩れなく・速く』神谷洋平


誰にもすぐ役に立つビジネス日本語・文書の本 正確に・洩れなく・速く
誰にもすぐ役に立つビジネス日本語・文書の本 正確に・洩れなく・速く


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、"「ビジネス文書の書き方研修」の第一人者"である神谷洋平さんの文章術の本。

タイトルにもあるように「ビジネス文書」に特化しており、かなり実務的な内容でした。

アマゾンの内容紹介から。
書くのは「どうも」という人も、たちまちスラスラ書ける!基本とコツとルールを押さえれば、悩むことも恥かきも解消!

これだけ文章術の本をご紹介してきた私でも、未だ知らないことがありました!





Мече във влака Дъблин—Лърган / Михал Орела


【ポイント】

■1.「様」と「殿」の使い分け
役職名には「殿」
個人名には「様」
 こう割り切ってしまえば話は簡単です。
 すなわち、
A ××部長○山○男様……役職名+個人名には様でOK
B ○山○男××部長様……個人名+役職名に様は×
C ○山○男××部長殿……個人名+役職名には殿でOK
D ××部長○山○男殿……役職名+個人名に殿は×
 なぜか? 個人は世間的な地位や役職と関係なく敬うべきであり、偉いひとも偉くないひとも、社長でも主任でも新入社員であっても、丁寧に「様」を使い、役職には「殿は様よりも敬意が軽く、より公的な用語」(広辞苑の定義)として「殿」を使うとよいと考えられます。


■2.「こんにちは」の仮名遣い
「こんにちは」ですが、「こんにちわ」と書くひとは珍しくありません。上記告示(『「現代仮名遣い」に関する内閣告示』)では『助詞の「は」は「は」と書く』と明記していますから、「わ」と書けば明らかに誤用です。「こんにちは」とは、「今日は良いお天気ですね」とか、「今日はお出かけですか」というときの後の部分を省略した表現ですから、本来「わ」でなく「は」でなければならないのです。
 ただ、「コンニチワ」とか「コンチワ」などとカタカナ表記する場合には、どういうわけか「ワ」と書くことが多く、広く一般化しています。それが本家返りのような現象として仮名遣いに反映して「こんにちわ」となっているといえるかもしれません。識者のなかには、いずれ「こんにちわ」も公的に認知されるときが来るだろうというひとさえいますが、現時点では間違いです。


■3.店頭や駅のポスター、掲示板などで見かける「お客様各位」
 本来的に考えると正しい用法とはいえず、むしろ明らかな間違いというべきです。
 先に述べたとおり、「各位」とは「皆々様」という意味ですから、「先生様」が繰り返しであるように、「お客様皆々様」ということなり、敬称を2度繰り返すことになってしまうからです。
 したがって、「顧客各位」とか「来店客各位」、「取引先各位」とすべきでしょう。用途や目的にもよりますが、お店の掲示物やポスターなら「お客様へ」とするのもよいでしょうし、単に「各位」で構いません。かえって端的、適切です。


■4.短文の具体的な目安
●一文の長さは新聞記事がお手本……論説ではなく記事をお手本に

●1行ないし1行半に句点(マル)……A4フルサイズ横書きの場合

●1行に少なくともひとつの読点(テン)……同上

●声に出して読んだときに息継ぎする箇所に読点……読みやすさ重視の方法


■5.「声に出して読む」自己トレーニング
 推敲を含め書き終えた後、ひとりで声に出して読んでみることは「もうワンランクァップ」に大変有効な方法です。
 職場でお腹から大きな声を出して読むことはできないでしょうが、自分の書いた文章が声に出して読んでもわかる、耐えられるものかどうか、確かめてみることはおすすめです。(中略)
 声に出したときに「つっかえる」「引っかかる」「読みにくい」感覚を覚えたら、どこかに問題があると考えてください。
 句読点の位置、行替え、言い回しの修正、前後の文脈の見直しなど、音読の効果は絶大です。


■6.縮約のすすめ
 大野晋は、「表現学」講義の中で、学習院大学文学部の学生に「縮約」を課したそうですが、卒業生から「あれがいちばん役に立った」と聞かされ、おおいに喜んだと同書で紹介しています。
 具体的には、新聞の社説1,400字を約30%に縮約し、400字にするというものです。
 大野晋は、これを1年間におよそ30回繰り返すと有効だといっています。やってみればわかりますが、なかなか難しく、じっくり読む、残す部分とカットする部分を分ける、文章のリズムを壊さない、論旨を歪めない、文字数を改めて数えるなど、おおいに悩むはずです。


【感想】

◆少々引用量が多くなってしまったので、この辺で。

冒頭で「未だ知らないことがありました」と書きましたが、まさに初っ端の「様」と「殿」の使い分けはそうでした。

ただ、前提として「どれも間違いではない」というのが著者の神谷さんのスタンス。

その上で「より違和感がないのはどれか」という観点から、上記のような結論となっています。

私は「部長様」「社長様」という言い方に抵抗があったので、上記ポイントの1番目の「A」を主に用いていましたが、「C」でも良かったとは。


◆と言うより、むしろ「部長」や「社長」に「様」「殿」を付けない方が問題である、と。

というのもこれら(「係長」や「主任」も同様)は、役職や官職の「名称」に過ぎず、敬意は込められていないから。

一方「先生」という言葉には、もともと敬意が込められているため「先生様」という言い方はしません。

私あてのメールで、たまに「●●先生様」となっていることがあるのですが、これは一応間違いということで。


◆ポイントの2番目の「こんにちは」「こんにちわ」については、なまじ「こんにちは」が正しいと知っていたため、ネットの書き込み等で「こんにちわ」とあるのを見ると違和感を覚えていたワタクシ。

上記にあるように「わ」は誤用なんですけど、カタカナ表記のことまでは考えたことがありませんでした。

確かに「コンニチハ」というのは、あまり見たことがないような?

結局「こんにちわ」も、いずれ「公的に認知」されるかも……というお話と同様なのが、それに続くポイントの3番目の「お客様各位」です。

こちらも本来は間違いでありながら、あまりに多く使われていると「読み手にも違和感がなくなり、いつの間にかそれが正となって社会的に定着する」とのこと。

私も実は、「お客様各位」で問題ないのだと思っていたという……(恥)。


◆なお、一番最後のポイントにあった「縮約」という言葉は、今回初めて知りました。

大野晋さんの『日本語練習帳』によると、縮約とは「要約することや要点を取ることではなく、地図で縮尺というように、文章全体を縮尺してまとめること」なのだとか。

なるほど、元からある表現をできるだけ活かす以上、要約よりは難しそうです。

ちなみにこの「縮約」は、神谷さんの『ビジネス文書の書き方研修』でも「受講生に最も好評」とのこと。

また、あの公文教育研究会の国語教育にも取り入れられているそうですから、スキルアップに役立ちそうです。


◆なお上記ポイントの1〜3番目は下記目次のPART1から。

4番目はPART3、5、6番目はPART4からになっています。

割愛したPART2はユニークではあるものの、タイトル通り「書くこと」以外にもページが費やされているので、個人的にはちと微妙かな、と。

また、英文や数式がないのに、横書き左開きなのも、速読派には少々辛いかもしれませぬ。

まぁ、私のように「様」と「殿」の使い分けすら怪しかった人間には、PART1だけでも元は取れたのですがw


正しいビジネス文書を書きたい方に!

誰にもすぐ役に立つビジネス日本語・文書の本 正確に・洩れなく・速く
誰にもすぐ役に立つビジネス日本語・文書の本 正確に・洩れなく・速く
PART1 ビジネス日本語・文書練習問題 35
PART2 聴く力・話す力・読む力・書く力 29
PART3 ビジネス文書のコツとルール 33
PART4 ビジネス日本語・文書スキルアップ 17


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【編集後記】

◆昨日の土井英司さんのメルマガで紹介されてしまった1冊。

無意識に買わせる心理戦略
無意識に買わせる心理戦略

既に購入済みで、読む気マンマンでいたのに、土井さんのおかげでいきなり在庫が切れてしまってショボーンの巻……。


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