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2014年03月10日

【学歴】『食える学歴』中野雅至


食える学歴 (扶桑社新書)
食える学歴 (扶桑社新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、元厚生労働省官僚で、現兵庫県立大学大学院准教授である、中野雅至さんの最新刊。

テーマ的に当ブログではどうかな、と思っていたのですが、先日の「未読本・気になる本の記事」で意外と反応が良かったので、取り上げてみることにしました。

アマゾンの内容紹介から。
東大より医学部狙い、国際バカロレア資格、学歴ロンダリング、六極化する大学……。
学歴の象徴的価値が下がり、実質的価値が問われるこれからの時代を生き抜くための戦略的な教育投資とは何か。学歴社会の現状とその行方を占う、受験生の親も必読の新学歴論。

私も二児の父として、思わず読み込んでしまいましたよ……。





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【ポイント】

■1.混沌とした学歴社会
まとめると、以下のようになる。
 学歴で人生は保証されなくなっている。その意味で、学歴や学校歴の価値は落ちている。その一方で、学歴・学校歴の格差が広がっているということだ。言い換えると、「上昇保険」としての価値がなくなる一方で、「下落防止保険」としての価値が上昇しているということだ。


■2.中学受験は親の態度が鍵を握る
 何もしなくても勉強ができるという地頭の良い子供の親はいい。モチべーションの高い子供の親も苦労しない。しかし、そうでない普通の子供の場合には、強制的に勉強をやらせた方がいい。実際、超有名中学に入学するような小学生の親の多くは、私が知る限りでは、日常生活や勉強時間にものすごく厳格だ。子供の教育に熱心なだけでなく、「勉強時間は何時問」「いつからいつまで遊ぶか」など、厳格に子供を管理している。


■3.文科系の大卒者が今後分類される6タイプ
(1)サバイバル能力のある東大出身者
(2)サバイバル能力のある上位グループ出身者
(3)学歴ロンダリング実践者
(4)単なる東大卒業者
(5)単なる上位・中位グループ出身者
(6)下位グループ出身者

(詳細は本書を)


■4.今後必要とされるサバイバル能力とは何か?
 組織内遊泳力。ゴマすりでも何でも使って、とにかく会社という組織を上手く泳ぐ力だ。リセット力。競争の激しい社会では、いつ何時、自分に不幸が訪れるかわからない。そのため、万が一、そういう事態になった時、挫けることなく自分の人生をリセットできるかどうかは非常に重要だ。
 あえて大きく括れば、この2つの力がサバイバル力ということになるが、この2つをさらに細かく分類すれば、(1)メンタルの強さ、(2)市場で戦うことのできる武器(語学・資格[特に業務独占資格])、(3)プレゼンを含めた広い意味でのコミュニケーション力、(4)人脈、(5)経験の5つだろう。これらの能力は組織内遊泳にも人生のリセットにも最大限の効果を発揮する。


■5.大学は学部で選ぶようになる
 大学名ではなく学部で学ぶのだ。「○学部なら△という資格が取れる」という視点で選ぶわけだ。こういう大学選びが今後増える。
 なぜなら、「メシが食えるかどうか」という観点からの大学選びの比重が圧倒的に高くなるからだ。(中略)
偏差値70をたたき出して超一流大に入ったとしても、法学部・経済学部・文学部など既存の学部では満足のいく就職ができないということであれば、大学名で進路を決めるのではなく、医歯薬系や福祉系の学部を選択する人が増えるということだ。


■6.グローバル対応の学歴の特徴
(1) 最終学歴を英語圏など海外の大学にすること。高校時代に短期留学で1年ホームステイしたが、帰国して日本の大学に入学したのではなく、最初から欧米の大学に入学して卒業するような学歴。
(2) 欧米の大学に入学するため、高校までの教育も英語を中心に置く学校選択。日本語で授業を受けるのではなく、英語で授業を受けるような学校に行く(例えば、インターナショナルスクールやボーディングスクールなど)ことを指す。
(3) 欧米の超一流大学に入学したものの、決して最初からそのような路線を目指したわけではなく、結果的に欧米の一流大学を選択するケース。超進学校で周りの同級生の多くは東大に行く。自分自身も東大に受かったが、様々な考えからハーバードやイェールを選択するなどである。


■7.米国一流大学のオンライン授業の真意
 今やアメリカの一流大学では、オンラインで授業を公開している。ハーバード大学、MIT、スタンフォード大学などは、全世界の若者に向けてトップレべルの授業を無料で流している。その目的は、開発途上国にいる若者や大学に行くことができない貧しい若者に、高等教育を提供することとされている。しかし、これは表向きの理由だ。
 というのは、オンライン授業で宿題や課題を出し、それを集めれば、全世界にいる優秀な学生を選別できる。そうして、彼らに奨学金を出して入学させれぱ、世界中からトップの人材を集められるからである。


【感想】

◆冒頭でも書いたように、私自身が今春から小学生2人の父親であるため、本書の内容、特に中学受験部分については、かなり興味深く読みました。

実は先日、ムスコが小学校に入るにあたって、その学童保育の説明会に参加したのですが、児童の名簿に記された小学校の中に、あの「某有名私立小学校」を発見w

また、保育園の同級生の何人かは、同じ区内の公立小学校でも「有名な」ところに通うようです。

ウチなんぞ、「近くていいじゃん」とばかりに、小学校の受験をスルーし、一番近いところに決めたのに、意識の高い親御さんは、違うものだな、と。

とはいえ、これも地域差的なものや、通う幼稚園・保育園によっても異なるハズで、たとえば以前住んでいた地域のムスメの通った保育園(認可ではなく認証)の同級生たちは、そのほとんど全員が小学校を受験しています。

もっともその保育園は、毎月7〜8万円かかるだけあって、お父さんのみならず、お母さん方も弁護士や医者だったり、広告代理店勤務等のハイソなところなので、レアなのかもしれませんが。


◆一方、本書で触れられているのは、中学受験以降のお話。

小学校高学年になるウチのムスメは、「地頭」も「モチベーション」も今イチなので、上記ポイントの2番目で言われているように、かなり厳しめに管理しております。

ただ、ウチは夫婦そろって働いているため、1人の時に自分を律することができないと、そこでダラけてしまうわけで。

ところが彼女は、ダラけまくった上に、目の前の追及を逃れるために「宿題は終わった」「先生に言われていない」と「すぐばれるウソをつく」という日々が続いているという……。

なお、これに関連して本書では、「"超のつかない"進学校」で自由な校風のところは、失敗しているところが沢山ある、というお話がありました。

なんでもそういう学校は、中高一貫で東大入学者がいる一方で、三流ランクの大学に入学した学生も多いのだとか。

この辺は、上位の進学校だけチェックしていると、見落としてしまいそうですが。


◆さて、そうまでして入った「一流大学」が、これからどうなるのか、というお話が本書の第4章で語られています。

今までは、東大を頂点にピラミッド型だったものが、「東大など旧帝大+早稲田・慶應」という上位グループ、「その他国公立・有名私大」という中位グループ、「偏差値の低い私大」という下位グループの3つに移行。

それをさらに細かく分類すると、上記ポイントの3番目のようになります。

ちなみに、そこで言われている「サバイバル能力」については、続くポイントの4番目にありますので、ご確認を(何と言うか、それって就職・転職にもに必要なスキルのような気もしますが)。

こうしたサバイバル能力のある人物がのし上がるのに対して、単に「偏差値の高い大学を卒業できれば何とかなる」と考えている層は苦労するようです。


◆そこで、「じゃあ特定の学部を狙おう」というお話は、第5章にて。

ただ、残念ながら、「こういう風に考えよう」という指摘はあれど、具体的に「何大学の何学部」といった細かい話は、本書では触れられていません。

もっとも、これらは本書で言われているように「社会状況の変化」によって簡単に変わるもの。

たとえば、今現在は、薬剤師が引く手あまたの状態なのですが、今後の法改正(たとえばネット販売のさらなる解禁等)によっては、いきなり人余りになる可能性もあります。

既得権益者の抵抗によって、すぐには変わるものではないにせよ、こういったリスクは考えておかねばなりません。


◆なお、富裕層でよく見かける(?)、留学等の「グローバル対応学歴」については、上記ポイントの6番目の通りです。

実際、上記のムスメのいた保育園のあった地域には、英語で対応する保育園がありました。

ただし、「お金さえあれば何とかなる」というイメージとは裏腹に、実際はかなりシビアなもののよう。

もし、こうした留学に興味のある方は、本書の第6章でかなり掘り下げていますので、ご確認を。


お子さんをお持ちの方なら、要チェックで!

食える学歴 (扶桑社新書)
食える学歴 (扶桑社新書)
はじめに 大学教授の給料は私立の中高一貫校に子供を通わせるのに十分か?
第1章 これからの学歴社会の見取り図
第2章 超一流大学を目指すのはどこまで得なのか?
第3章 子供の学歴に最も影響を与えるのは塾ではなく親
第4章 サバイバル能力をどうやって身につけさせるか?
第5章 偏差値から専門能力重視に変わる教育業界
第6章 グローバル化を目指した教育
第7章 グルーバルな専門教育というタフだけど夢のある教育投資
―フランスのバレエ学校の事例から―
終章 21世紀の学歴戦略


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【必読!】『10年後に食える仕事、食えない仕事』渡邉正裕(2012年02月04日)


【編集後記】

◆本書で紹介されていたのが、『週刊東洋経済』のこの号。

週刊 東洋経済 2013年 7/6号 [雑誌]
週刊 東洋経済 2013年 7/6号 [雑誌]

Kindle版もありますので、よろしければ。


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