2014年02月24日
【オススメ!】『これだけ! プレゼンの本質』野村尚義
これだけ! プレゼンの本質
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、一昨日に引き続き「未読本・気になる本」の記事で取り上げていたプレゼン本。ただしこちらは、より本質的と言うか、「マーケティング的思考」に則った作品になっています。
アマゾンの内容紹介から。
プレゼンテーションでは、「話し方」や「資料の作り方」のような〈テクニック〉よりもはるかに大事なことがあります。それが〈戦略〉。
目の前の相手に求められ、選ばれるための戦略が明確でなければ、いかにテクニックに長けていたところで相手に選ばれることはありません。
相手に選ばれる思考法、プレゼンの本質がわかる一冊です。
もし、プレゼンで「話すのうまいですね!」と言われたら要注意なんだとか!?
Earth Day Presentation / NASA Goddard Photo and Video
【ポイント】
■1.受け手のフォーカスを受け手自身に向けるプレゼンでは、受け手の意識が自分自身のことにフォーカスし、自分にとって価値のある選択をすることに夢中になるような状態をつくらなければならない。「話がうまいですね」という感想が出るのは、受け手のフォーカスが受け手自身でなくあなたに向いているということです。これではいけませんね。
では、プレゼン後の理想的な感想とは何でしょうか?
「あなたのおっしゃるとおりにするのが、一番の選択だと気付かされました」の一言です。
■2.「価値の三次元分析法」で視点をコントロールする
一般論で言うと、機能レべルのプレゼンだけでは受け手には選んでもらいにくい。最低でもその先の効用レべルが求められます。なぜならば、機能レべルはあくまで商品アピールであり、受け手が得られるものに意識を向けられていないからです。
一方、効用レべルのプレゼンでは、受け手が得られるものを中心に据え、受け手のメリットに照準を合わせている。(中略)
そして、さらにその先にあるのが未来レべルのプレゼン。
未来に目を向けるということはより遠くを見るということ。視界は広がり、より大きなものを見せることができます。
■3.ウィッシュに思いを巡らせ、未来を語る
重要だからこそ、あえて名前をつけます。
目の前の人特有のニーズで、かつ未来レべルのニーズを"wish(ウィッシュ)"と呼びます。(中略)【受け手のウィッシュに思いを巡らせ、それを叶えるための未来価値を語る】本書最大の私の主張がこれです。
これができると、受け手はあなたのプレゼンテーションに抗えなくなる。なぜならば、受け手の頭のなかで、あなたのプレゼン提案と自分が叶えたいウィッシュが繋ぎ合わさるから。あなたのプレゼン提案を受け入れることこそが、自分が叶えたいウィッシュを実現する方法だと思えたならば、その提案を選ばないわけはないのです。
■4.ターゲットを絞り込む
ここで、あなたに質問をします。Q1 あなたのプレゼンを聞いたほうが良い、ターゲットはどんな人ですか?(中略)Q2 あなたのプレゼンを絶対に、死んでも聞かなけれぱならないのはどんな人ですか?(中略)Q1のターゲットよりも、Q2のターゲットのほうが絞られたはずです。そして、Q2の答えこそが、あなたの真のターゲット。言い換えれば、Q1の答えはターゲティングとしてまだまだ甘いのです。
■5.優先順位上位以外は、バッサリ切り捨てる
プレゼンは「広く浅く」か「狭く深く」しかありません。話題を捨てられず、広く話そうとすれば、ひとつずつの話は浅くならざるを得ない。深く話そうと思うのならば、語る要素を削り、狭く話すことが必須なのです。(中略)聴き手に、原稿用紙1枚分しか印象に残せないとしたら、何を話し、何を捨てるか?こう自問することで、「ここのパートは、ものすごく大切だから、じっくりと話す必要があるな」とか「ほかで時間をかけるためには、ここのパートは切り捨てざるを得ないな」などと判断がつくようになっていきます。
■6.受け手にイメージ化作業を担ってもらう
たとえば、オリンピック東京招致のプレゼンテーション。フェンシング銀メダリストの太田雄貴選手は言いました。「想像してみてください。東京という都市のまさに中心で生活することを。目覚めれば素晴らしい水辺の景色があることを。すぐ近くの競技会場で競技することを」ありありと、その情景を言葉で説明する必要はなく、それは受け手が想像してくれるのです。それを話し手がいちいち細かく説明しても鬱陶しいだけです。
■7.受け手が痛みを感じる部分の提案をする
虫歯が痛くなると歯医者に行きますが、痛くなる前から予防で通う方はぐっと少ない。
だから、私たちが受け手のためになる提案をしたとしても、受け手がそこに痛みを感じていなければ、プレゼンに価値を感じて行動してくれる可能性は低くなります。
プレゼンの現場で、よく見ます。受け手が痛みを感じていないポイントに対して、むりやり解決策を語っているシーン。しかし、これでは受け手は前のめりになって聞いてはくれません。だから、確認してください。自分は、受け手の痛くもないツボを必死に押してはいないかと。
【感想】
◆本書のような本は、一般的には「プレゼン本」と呼ばれていますが、内容はざっくり言って2つに分けられると思います。それは「何を言うか」と「どのように言うか」。
スライドの作り方や、喋り方、場合によっては「壇上のどちら側に立つか」みたいな話が「どのように言うか」だとすると、プレゼン本の多くは、こちら側に含まれるかな、と。
一方、もっと本質的な話になるのが「何を言うか」であり、本書はまさにそう。
ここをどんどん掘り下げていくと、むしろ「マーケティング」の領域となるワケで、実際、著者の野村さんは、指導したエグゼクティブから、度々「あなたのプレゼンテーション指導は、まるでマーケティングコンサルタントのようですね」と言われるのだとか。
本書では「ダイヤモンド3ステップ」と称して、「コンセプト設計――価値を深堀りする」「シナリオ設計――表現を磨く」「スタイル設計――メッセージを届ける」と3つの段階を踏んでおり、それぞれ第3章〜第5章までが充てられているのですが、確かに第3章の「コンセプト設計」だけ、極端にページ数が多くなっております。
◆その「コンセプト」の話で、まず興味深かったのが、「未来レベルのプレゼン」まで志すということ。
「機能」レベルだけではダメで、それによって「どんな効用が得られるか」まで触れることまでは、類書でもよく触れられています。
ただ本書では「その先」の「未来」まで重視しているのがキモ。
「機能」と「効用」を踏まえた上で、「どんな未来が望めるか」まで主張してこそ、受け手から選ばれる、と。
ただし、「未来だけ」だと単なる「夢物語」を語っているように聞こえてしまうので、要注意なんだとか。
◆さらには、その「機能」「効用」「未来」も、一般的なニーズと受け手特有のニーズとに分けることができます。
例えばシステムの売り込み等でも、どの会社にも言える話と、受け手の会社だからこその話があれば、後者の方が響いて当然のこと。
さらにその中でも「未来」に関するものこそが、上記ポイントの3番目の「ウィッシュ」であり、プレゼンとはそれを叶えるための提案をするワケです。
本書では、実際にウィッシュを語って大型契約を決めたプレゼンの事例が出てくるのですが、そのプレゼンターとは、当ブログでも何冊もご本を紹介している金田博之さん。
結果は「行動する前」に8割決まる 世界上位2%だけが知っている「達成思考」仕事術
参考記事:【仕事術】『結果は「行動する前」に8割決まる 世界上位2%だけが知っている「達成思考」仕事術』金田博之 (2012年12月05日)
具体的にどんなプレゼンをされたのかは本書をご覧頂くとして、なるほど、こういう提案の仕方があるのだな、と。
◆ちなみに、今回第5章の「スタイル設計」からは、ページ数が少ないこともあって、上記ポイントでは何もご紹介しておりません。
そこで、ここで1つだけ触れておくと、プレゼン時の話し方のスタイルとして、野村さん曰く「4つのタイプ」がある、とのこと。
これが「プレゼンテーション・パーソナリティタイプ・マトリックス」で、縦軸にライトとヘビー、横軸にカーム(Calm)とインテンス(Intense)を配したものになります。
そして実は、自分のこのパーソナリティタイプを意識することで、自分らしいメッセージを打ち出していくヒントにもなるのだそう。
個々のタイプについては、ボリューム的に解説できませんので、こちらもぜひ本書で詳細をご覧頂きたく。
◆なお、本書の「はじめに」によると、野村さんは本書の特徴として「プレゼンを話し方のテクニックではなく、"戦略"として捉えている」ことを挙げています。
そして、その戦略のゴールは、「受け手から選ばれること」。
その言葉は、過去10年間にわたり、12000人以上にプレゼンの指導をされてきた野村さんだけあって、非常に説得力がありました。
また、その中でも特に大きな成果を出している「トップ1%のプレゼンター」を分析してできたのが、本書だそうですから、これはプレゼンのみならず、仕事で何かしらの「提案」をする必要のある方なら、一読の価値アリ!
トップ1%のカリスマの秘密がここに!
これだけ! プレゼンの本質
序 章 選ばれるプレゼンターへの道
第1章 ダイヤモンド・プレゼンテーション戦略とは
第2章 選ばれないプレゼン 4つの間違い
第3章 ステップ1 コンセプト設計
第4章 ステップ2 シナリオ設計
第5章 ステップ3 スタイル設計
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【編集後記】
◆本書のように「マーケティング思考」で書かれたプレゼン本なのがこちら。「プライスレス」な成功法則 クライアントの落とし方、マーケットの動かし方
レビューは上記関連記事にございます。
ご声援ありがとうございました!
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