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2014年02月18日

【資格の真実?】『資格を取ると貧乏になります』佐藤留美


資格を取ると貧乏になります (新潮新書)
資格を取ると貧乏になります (新潮新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、かつて『なぜ、勉強しても出世できないのか?』で、「スキルアップ族」に喧嘩を売った(?)佐藤留美さんの新作。

今回は弁護士ほか、「大型資格」取得者の悲哀について述べられてます。

アマゾンの内容紹介から。
過当競争とダンピングで「資格貧乏」続出! 弁護士や公認会計士など、一流の資格を持っていたら食いっぱぐれないなんて大間違い! 資格ビジネスの知られざる裏事情を解説し、「資格の賢い活かし方」も伝授。

すでに資格に挑戦中の方、これから取ろうと考えてらっしゃる方なら必読です!






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【ポイント】

■1.弁護士の5人に1人は「生活保護受給者並み」の所得
 長年、文系資格の最難関として、その名を轟かせてきた弁護士。だが今、その地位が脅かされている。
 国税庁の調査によると(2011年)、「所得100万円以下の弁護士」は、登録弁護士の8割を超える2万7094人のうち実に22%にも及んだ。(中略)
 さらに驚かされるのが、「所得100万円超500万円以下」の弁護士も19%に達し(11年)、全体の約4割が所得500万円以下だというシビアな現実だ。


■2.日本の法科大学院構想がうまくいかなかったワケ
(1)既に大学に「法学部」がある日本に、ロースクールを作ってしまった。

(2)司法試験合格者で法曹になれなかった人の受け皿として「企業法務」が機能していない。

(3)日本には税理士、司法書士、弁理士、行政書士など弁護士の類似資格が複数あるが、アメリカにそれらは存在しない。

(4)そもそも、アメリカに比べて訴訟件数が圧倒的に少ない。


■3.公認会計士試験に合格しても資格が取れない待機合格者
 公認会計士は短答式試験と論文式試験に合格した後、監査法人で2年間の実務を行い、修了考査に合格して初めて資格が取得できる。ところが、監査法人に就職できず、実務験を積めないために、資格取得ができない人が急増しているのだ。2010年の合格者で就職できなかった人は53.2%、11年は46.1%もいて、11年末の時点の待機合格者数は1300人にも達する。
 

■4.「企業内会計士」が広がらないワケ
 会計士を財務や会計部門で雇ってもうまくいかないのは、各企業が行う会計は、経営におもねりながら経営計画を立てる管理会計であり、それを行う経理部員は、その計画が実行されるよう、各現場にお願いしたり圧力をかけたりする、社内交渉がメインの仕事だからだ。社内に波風を立てずにこの仕事をするには、腹を割って話せる「同期の桜」が各部門に散らばったプロパー社員のほうが会計士よりよっぽどやりやすいことは言うまでもない。裏を返せば、元会計士が"上から目線"で各現場と交渉しても、角が立つだけだ。


■5.そのうちなくなる税理士業務
 監査法人勤務の公認会計士から税理士に転じ、都内に税理士事務所を開設したある税理士は、その税務の市場も「そのうちなくなる」と言う。
「そもそも、納税なんて国民や法人が税金を払えばいいだけの話で、それを他人にやってもらうこと自体、余計なコストです。日本の場合、税務業務は税理士の独占だけど、そんなこといっているのは世界のマイノリティ。韓国、日本、ドイツの3か国しかありませんから」


■6.転職に有利にならない社労士資格
「まず、中小企業に転職しようとしたら、社労士は、変に労働条件や労働法を知っちゃっているので、経営者にとって『うざい社員』になる」(中略)
「そもそも、従業員30人以下の会社で、人事部がある会社はめったにありません。1人で経理も総務も労務もやるパターン。来客へのお茶出しやコピー取り、銀行回りなど、何でもやる中で、たまに入退社の手続きをやるくらいの業務内容で、社労士が必要なわけがない。社労士の肩書を持っている人を優先的に雇う中小企業は99%ありません」(株式会社ブレインコンサルティングオフィス代表取締役・北村庄吾氏)


■7.日本企業がTOIECを有難がる理由
 TOEICが爆発的に普及したのは、5565円という受験料の安さによるところが大きい。
 企業が、「TOEIC高スコアでも英語が喋れない社員問題」を認識していながらも、スピーキングとライティングの能力もしっかり測ることで定評がある米国発のグローバルなテスト「TOEFL」の採用に踏み切れないのは、TOEFL受験には最低、225USドルが必要で、TOEICと比べて4倍近い値段の開きがあるからだろう。
 万人単位の社員を抱える大企業が、社員に一斉にテストを受けさせるとなると、この差額は甚大だ。それに、そもそも日本でのTOEFL受験はPC上でしか可能でないのも、厄介な問題となる。


【感想】

◆当ブログは今まで、主に「資格取得」を目的とした勉強本を、大量にご紹介してきております。

私と100冊の勉強本:マインドマップ的読書感想文

そんな当ブログで、「資格なんてとってもムダ」「とっても大変」という内容である本書を取り上げるのは、少々気が引けました。

ただ、実際に本を買ってまで受験される方は、対象となる資格のこういった状況を分かった上で挑戦されているのではないか、と(これから受けようかと漠然と考えてらっしゃる方を除く)。

また、今回取り上げられている資格というのが、上記ポイントでも登場する「弁護士」「公認会計士」「税理士」「社労士」の4つだけであり、受験者の多い「宅建」や、他にも「行政書士」「司法書士」といったあたりはスルーされているので、ある意味「特定業界」だけの問題とも言えると思います。


◆確かに、各資格における問題点はまちまち。

ただし、初っ端の弁護士と公認会計士は、政府の方針により、合格者数を大量に増やしたことが問題の根底にあります。

何たって、ともに「合格者数が約10年で2倍」というのですから、さすがにやり過ぎの感が。

そして、その過程においてリーマンショックやらデフレがあって、景気が縮小してきた以上、それは人だって余ります。

また、弁護士は「消費者金融の過払い金バブル」、公認会計士は「J-SOX法(日本版企業改革法)」による「会計バブル」により、一時的に景気がよくなったものの、終わった後の反動でさらに景気が悪化している点も似ている感じ。

合格すること自体大変ですし、正直、合格後のツテがないと、今からでは挑戦しにくい雰囲気です。


◆一方、我が(?)税理士業界の問題は、ずばりIT化。

今さらITもクソもないとお思いでしょうが、「過半数が60代以上」の税理士業界では、パソコンすらまともに使えない人が結構います。

その反対に、若くして資格を取った開業税理士は、ホームページで「格安」をうたいますから、全体的に相場自体も下落。

最近では、記帳に関しては、モバイルで使えるこんなクラウドソフトも出ていますから、ますます苦しくなる事務所も増えるのだと思います。

クラウド会計のfreeeがiPhoneアプリをリリース、法人向け初のモバイル会計 | TechCrunch Japan

そして、上記ポイントの5番目のように、税務申告業務もいずれなくなるか、独占業務ではなくなる可能性は高いかと(調査立ち会い業務は残るかもしれませんが)。


◆なお、社労士に関しては、上記ポイントの6番目のように「必ずしも転職には有利にならない」ものの、「社内社労士」自体はかなりいる模様。

というのも、試験直前の2〜3ヵ月で詰めて勉強すれば一発で受かるため、一流企業の人事の人が結構受けるのだとか。

つまり、資格を取って入社したのではなく、元からいる職場で合格したということですね。

それを聞くと、社労士の平均年収が760万円(2010年度)と高いのも納得。

逆に知らないで「社労士って儲かる!」と舞い上がると、後で大変なことに!?

ちなみに、社労士の須田美貴氏によると「社労士の仕事で食べていける人は、実感としてせいぜい1割程度」なのだそうです。


◆下記目次にもあるように、第6章のタイトルは「それでも資格をとりたいあなたのために」。

ここが冒頭の内容紹介にあった「資格の賢い活かし方」であり、「アドバイス」が7つありました。

個々の中身については、本書でご確認頂くとして、個人的に「確かに」と思ったのが、「出来ない仕事も引き受ける」というもの。

一般的に資格試験を突破するような人は「出来ないこと」「経験のないこと」を、むげに「出来ません」と言ってしまいがちです。

しかし「それでは成り立たない」と、取材した資格取得者のほぼ全員が口を揃えたのだそう。

先輩に聞くなり、調べるなり、実際にやってみるべし!

……食っていくためには、資格とは別に、バイタリティも必要なんですね。


資格を取ったその先にある真実とは!?

資格を取ると貧乏になります (新潮新書)
資格を取ると貧乏になります (新潮新書)
第1章 イソ弁にさえなれない―弁護士残酷物語
第2章 “待機合格者”という生殺し―公認会計士の水ぶくれ
第3章 爺ちゃんの茶坊主になれ!―税理士の生き残り作戦
第4章 社会保険労務士は2度学校へ行く
第5章 TOEICの点数が上がると英会話が下手になる
第6章 それでも資格を取りたいあなたのために


【関連記事】

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【必読!】『10年後に食える仕事、食えない仕事』渡邉正裕(2012年02月04日)

【出世の秘訣?】『20代のあなたに、会社が期待していること』相原孝夫(2014年01月26日)


【編集後記】

◆今日の本に関連して(?)こんな本を。

最後の英語やり直し!
最後の英語やり直し!

勝間さん、久々の新刊は「英語勉強本」。

勝間さんご自身も、英語には結構ご苦労されたハズですから、これは期待できそうな!?


ご声援ありがとうございました!

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