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2014年02月09日

【ビジネスモデル】『事業創造のロジック ダントツのビジネスを発想する』根来龍之


事業創造のロジック ダントツのビジネスを発想する
事業創造のロジック ダントツのビジネスを発想する


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、リアル書店で目にして、思わず飛びついてしまった1冊。

早稲田大学ビジネススクール教授である根来龍之先生が、「ビジネスモデル」について解説されている「スゴ本」です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
注目のダントツ企業を題材にして、ビジネスを創造・発展させるための「5つのポイント」を解説します。
取り上げる事例は、アマソンの「キンドル」、セブン-イレブン、DeNA、ソフトバンク、玉子屋、サウスウエスト航空など。
それらの会社のビジネスモデルに埋め込まれたロジック(考え方)に注目し、「どういう発想で、勝つための仕組みを作り上げたのか」を解き明かします。

私もそうなんですが、「ビジネスモデル」好きの方なら、一読の価値アリです!





Kindle 3 / kodomut


【ポイント】

■1.キンドルとソニーリーダーの唯一の違い
 キンドルにあるものはビジネスモデルだけです。技術的にはほとんど新しくない。
 しかし、キンドルにはリブリエと決定的に違うことが1つありました。それは通信モジュールの内蔵です。アメリカのソニーでソニーリーダーのビジネスに携わっていた人が言うには、「これほどびっくりしたことはない」。アマゾンからキンドルが出るのは知っていたけれど、通信モジュールが入るとは思わなかった。「あり得ない」と思ったそうです。
「通信モジュールを内蔵して、いつでも使える状態で売って、いったい通信費を誰が払うんだ?」と。


■2.弁当屋「玉子屋」の驚異的に低い廃棄率を実現する配送システム
 通常のルート配送は、担当エリア別に必要な数量の商品を積み込んで配送車が散っていきますが、玉子屋は違います。まず、工場から離れた地域を担当する先発組(遠距離便)は、予測される受注数よりも多めの弁当を持って工場を出発し、担当エリアで弁当を配達する。その後、配送を終えた先発組は工場に戻らず、遅れて出た後発組(中距離便)と連絡を取り合いながら、弁当が不足している(または余っている)エリアの配送組と落ち合い、過不足分の弁当を受け渡します。現場の配送員たちの見事な連携プレーで、廃棄率を極限まで下げているわけです。(中略)
 この見事な連携プレーができるのは、弁当が1種類だけだからです。メニューが何種類もあれば、それぞれのメニューごとに過不足を調整しなければいけない。そうなると調整にも積み替えにも手間がかかって、配送がスムーズに進みません。ここでも、1品メニューであるということがとても重要なポイントになっているわけです。


■3.ソフトバンクの「ホワイトプラン」と同じ戦略のセブン銀行
セブン銀行は、現金の引き出し手数料で儲けるというビジネスモデルです。セブン-イレブンの店内などにATMを設置して、よその銀行に口座を持っている人の現金引き出しに使ってもらう。夜間などを除いて通常は「引き出し手数料は無料」です。ただし、預金者からは手数料を取りませんが、預金者がお金を引き出した口座のある銀行から手数料をもらうわけです。
 セブン銀行に預金をしている人は非常に少ない。ということは、セブン銀行のATMを利用して現金を引き出すのは、他行の預金者です。だから、ほぼ確実に手数料が入ってくる。ですからセブン銀行のビジネスモデルは「自行のお客さんが少ない」からこそ成り立っている。


■4.リアルタイムネットワークで勝負する「パーク24」
 パーク24の競争力のポイントは、リアルタイムネットワーク化です。タイムズの駐車場の大半は小規模で、5〜6台ぐらいしか止められませんが、すべての駐車場がネットワークで本部のサーバーとつながっています。(中略)
 最適な稼働率を維持するために、パーク24は、立地や曜日、時間帯などによって駐車料金を変えています。ライバル会社の時間貸し駐車場も、料金を土日・祝日と平日とで変えたり、深夜は安くしたりしていますが、パーク24はその設定が巧みです。自社が運営する駐車場の稼働状況をリアルタイムに把握して、各駐車場の実態にマッチする料金を設定しているわけです。その結果、たとえば、日曜のほうが高い駐車場もあれば、安い駐車場もあります。


■5.故障を予想してサポートに行く富士ゼロックス
 富士ゼロックスが取り組んでいるのは、故障トラブルの予測です。複合機にはセンサーが100個以上付いていて、センサーでとらえた情報はネットワークを通じて富士ゼロックスの情報センターに送られます。
 機械が故障する前には、必ず何らかの予兆があります。富土ゼロックスでは、蓄積された情報から、「この部分にこういう変化があったときには、こういう故障が起きやすい」という法則を見つけ出し(莫大なデータの中からこうした法則を抽出することをデータマイニングと言います)、故障の予兆があったら、クレーム発生前に先回りして、サポートに行くという活動を展開しています。


■6.トヨタ方式の真逆を行く100円ショップダイソー
 大創産業は、商品の製造を外部の会社に委託しています。外部の会社からの売り込みも多いといいます。これを一括発注の大ロットで買い取ることによって、安さを実現しているのです。製造を委託される会社は、稼働率を下げたくないとか、いろいろな理由で、すごく安く製造を引き受けてくれるときがある。大創産業はそういうタイミングを捉えて大ロット発注し、倉庫にためておく。「必要なときに必要なだけ生産する」のではなく、「生産できるときに、見込み生産で大量に生産してもらう」のです。これが大創産業の活動パターンであり、大きな倉庫という資源に結びついているわけです。


【感想】

◆一部、引用が長くなってしまったのでこの辺で。

登場する事例の中で、私がまったく知らなかったのが、上記ポイントの2番目に登場する、お弁当の「玉子屋」でした。

おべんとうの「玉子屋」〜おいしいお弁当を真心こめて。

ここの特徴を簡単に列挙すると、こんな感じ。

・430円の日替わり弁当

・メニューは毎日1種類のみ

・電話一本で職場まで配送(1日平均10食以上)

・容器は回収し、洗浄の上再利用


提供されるお弁当も、なかなか美味しそうです。

【配達】お弁当の玉子屋の画像、写真【メニュー】 - NAVER まとめ


◆見た目だけでなく、美味しそうという理由の1つが、原材料費の高さで、業界平均が約35%のところ、ここは約50%。

会社のサイトを見ても、色々と「こだわり」があるようです。

玉子屋のこだわり | おべんとうの「玉子屋」〜おいしいお弁当を真心こめて。

原材料費が高い分、他のコストを抑える必要があるわけで、その大きな要因が「単一メニュー」。

同じものしか作らないため、大量注文による一括仕入れを実現しており、同時に、上記ポイントの2番目のような「配送システム」をも可能にしています。

また、ユニークなのが、容器を回収して再利用していることで、その目的は、一義的にはコスト削減であるものの、昨今のエコブームにも乗っている模様。

さらに、容器回収には、実は大きなマーケティング的なポイントがあるのですが、一応ネタバレ自重で。

……あまりに圧倒されて「この会社のネタだけで1冊、本が書けるわ!」とオモタら、すでに会長の手による本が出ていましたw

コロンブスの玉子屋―日本一の弁当屋の華麗なる経営哲学
コロンブスの玉子屋―日本一の弁当屋の華麗なる経営哲学


◆一方、初っ端のキンドルについては、今となっては(少なくとも米国では)成功して当然のようですが、立ち上げ時にそこまで見通せるのがベゾスのすごいところ。

本書ではそれを「仮説性が高い」と表現しています。

つまり、普通の経営者だと「通信モジュールを内蔵して、紙の本でベストセラーになる27ドルの新刊小説を9ドル99セントで出せば、爆発的に売れるはずだ」と思っても、そこまでは踏み切れません。

その点ベゾスは「どのくらいコンテンツが売れれば、通信モジュール内臓によるコストを回収できるか」という計算を緻密にやっているハズである、と。

ただし、同じことを他社がやろうとしても、出版社に対する交渉力がアマゾンほどないですから、まず不可能。

少なくとも当時ソニーは、リブリエでコンテンツをダウンロード型にはできず、レンタル型(60日間)にせざるを得ませんでした。


◆本書は上記ポイントにてご紹介した他にも、セブン-イレブンやディー・エヌ・エー、サウスウエスト航空等が、事例として登場します。

特に、ディー・エヌ・エーが「モバオク」から「モバゲータウン」に移行した際のくだりは、なかなか興味深いな、と。

一見、あまり関連性がなさそうですが、そんな「繋がり」があったんですね。

詳細は本書、と言うより、南場さんのこの本を読む方が詳しそうですが。

不格好経営―チームDeNAの挑戦
不格好経営―チームDeNAの挑戦

ちなみにこの本、先月ご紹介した藤井孝一さんの読書本で、「第7章だけでも読む価値アリ」と言われていたので確認したところ、ホントにそうでしたw


◆今回は、私の趣味(?)で事例中心にお届けしましたが、本書ではそれぞれについて、より深く掘り下げられています。

中でも第4章で解説されている「4つの経済性原理」は見逃せませぬ!

こうした原理を理解した上で、各事例を眺めてみると、また理解が深まると思います。

そして巻末には「参考文献」や「経営戦略全般について学ぶための本」が収録されていますので、こちらも要チェックで。


ビジネスモデル好きに捧ぐ1冊!

事業創造のロジック ダントツのビジネスを発想する
事業創造のロジック ダントツのビジネスを発想する
第1部 出発点
 第1章 「ジョブの再定義」と「制約外し」――キンドルを発想する
 第2章 戦略モデルと収益モデル――顧客をど真ん中に置いて考える
第2部 因果関係
 第3章 突き抜けるロジック――玉子屋を発想する
 第4章 クリエイティブな作戦――原理を「利用する」「裏切る」「創出する」
 第5章 原理を逆手に取るロジック――ホワイトプランを発想する
 第6章 データ経営と経済性原理――パーク24を発想する
第3部 妥当性と正当性
 第7章 ビジネスモデルのコンテキスト――「前提」は正しいか?
 第8章 妥当性――ネットスーパーを発想する
 第9章 正当性――新しいビジネスモデルの罠
第4部 模倣困難性
 第10章 競争優位の活動システム――サウスウエスト航空を発想する
 第11章 活動システムの部分化――ポーターの理論を改造する
 第12章 「今日の強さ」と「明日の不安」――サウスウエスト航空のコンテキスト
第5部 発展性
 第13章 「次」の設計――「不整合」が進化のタネになる
 第14章 非連続的な進化――ディー・エヌ・エーを発想する
 第15章 勝ち続けるロジック――セブン-イレブンを発想する
解説1 経済性原理――一般的な因果関係を主張する「法則」
解説2 コンテキスト――人の認知・決定・行動を支える前提


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【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建(2010年10月20日)


【編集後記】

◆本書に興味を持たれた方なら、読んで頂きたいのがこちら。

ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

「目からウロコ」のビジネスモデルが多々登場します。

レビューは上記関連記事にてご覧ください。


ご声援ありがとうございました!

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