2014年01月21日
【仕事術】『世界エリートの「失敗力」』佐藤智恵
世界エリートの「失敗力」 (PHPビジネス新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、以前『外資系の流儀』をレビューさせて頂いた、佐藤智恵さんの新作。ハーバード、スタンフォード、マッキンゼー、ゴールドマン・サックス、グーグルといった海外のメジャーどころだけでなく、トヨタや三井物産といった日本メーカーの方にもインタビューした「力作」だと思います。
アマゾンの内容紹介から。
どういう人が成功し、どういう人が失敗するか?上司に逆らうとどうなるか?なぜ人もオフィスもオシャレなのか?MBA取得を機に「ガイシ」の世界に飛び込んだ著者が、自らの経験と豊富な取材で外資系企業の実態と仕事術を徹底分析。「初日からフル稼働を覚悟すべし」「デブは論外」「自分で育て」「会社の悪口は言うな」等、過酷かつ魅力的な環境を生き抜くトップエグゼクティブやヘッドハンターが語る“鉄則”とは。
人生「転んでナンボ」ですね!
【ポイント】
■1.失敗を語ると賞賛される:ハーバードビジネススクール「ハーバードでは、自分の失敗体験を授業で語ると拍手が起こるんです。成功体験よりも、失敗体験の方が、深い内容になりますし、言いにくいことをシェアしてくれた同級生に対しては文句なく賞賛しますね。中には、発言しながら、泣いてしまうクラスメートもいました」
(湯浅エムレ秀和さん)
■2.コンフォートゾーンから出る:スタンフォード大学経営大学院
コンフォートゾーンとは、自分が楽だと感じる領域のこと。
例えば生まれてからずっと同じ町に住んで、同じ友人とだけつきあっている人。例えば、上司から言われるままに、同じ仕事をし続けている人。こういう人たちはコンフォートゾーンの中にいる人。
しかし、それでは、組織に変革をもたらせない。そこから飛び出す勇気を持つ人がスタンフォードでは評価されるのだ。
コンフォートゾーンの外に飛び出すのは、容易なことではない。大企業を辞めて起業する、組織の中で新規事業を提案する、未知のべンチャー企業に投資する、新興国でNPOを立ち上げる――どれも失敗がつきものだ。スタンフォードが求めているのは、このように失敗を恐れずに挑戦し続ける人なのだ。
■3.リスクをとって挑戦する:マッキンゼー
「マッキンゼーは、リスクをとって挑戦する人を評価するのです。これは自分が人事評価をする立場になって分かったことですが、マッキンゼーには若手でもどんどんチャンスを与えて、どんどん重用する文化があるのです。僕の場合は、海外での仕事に積極的に取り組んだことで大きく成長したことが評価されたのではないかと思います」
(金田修さん)
■4.迅速に対応し、誠実に謝罪する:ゴールドマン・サックス
世界有数の投資銀行ゴールドマン・サックスには、社員、特に新人が失敗したときの鉄則がある。それは、「迅速に対応し、誠実に謝罪する」ということだ。
たとえば、どうしても避けられない数字のミス。これを自分で発見した場合はどうするのか。小辻さんは説明する。
「気づいたらすぐ上司に連絡して、解決策を練ります。そのまま黙っていたりするのは許されません。その上で、上司と一緒にクライアントに謝罪にいきます。何かあれば、部下が抱えこまず、率直に問題を打ちあけられやすいように、上司はコミュニケーションに気を遣っていたと思います」
(小辻洋介さん)
■5.最高ではなく、最低限を満たす:グーグル
グーグルでは、普通の企業で「失敗」と捉えられるようなことでも、「失敗」とは認識されないのだという。
「グーグルでは、『最高ではなく、最低限を満たせ』という考え方があります。最低限のスぺックがそろったら、商品を市場に出して試してみるのです。これは、『最高』をめざすアップルと対極にある考え方だと言われています」
(石角友愛さん)
■6.失敗を覚悟で、大きくて難しい仕事に挑む:電通
電通の鬼十則には、「難しい仕事を狙え、そして、これを成し遂げるところに進歩がある」という項目がある。つまり、最初から失敗を覚悟で、大きくて、難しい仕事に挑めと言っているのである。曽我さんは話す。
「失敗を奨励する文化とは言いませんが、少なくとも失敗を追及する文化はないと思います。社員が『どうしてもこれをやりたい』と言えば大抵のことはやらせてもらえると思いますし、たとえ失敗しても、2度目、3度目のチヤンスは与えられると思います」
(曽我有信さん)
■7.過去の失敗を共有する:三井物産
三井物産では、失敗事例およびその事例から得た教訓を全社で共有するる仕組みがある。そこには、案件の詳細も記録されていて、社員がオンライン上で閲覧することができるという。三井物産の飯島彰己社長は、朝日新聞のインタビューに次のように述べている。(中略)
「三井物産には、過去の失敗から得た『暗黙知』の教訓を『形式知』として社内で共有する仕組みがあります。失敗経験を機能に進化させ、前に進むことが大切です」(朝日新聞デジタル 2012年9月7日)
【感想】
◆本書の「はじめに」によると、著者の佐藤智恵さんが本書を書くきっかけとなったのは、『世界最高MBAの授業』執筆のため、欧米の経営大学院13校を取材した際、各校の教授陣が「失敗力」の大切さについて教えていたことなのだとか。ちなみに本書で言う「失敗力」とは、「失敗から学び、失敗を自分の成長に生かす力、つまり、失敗から正しく立ち直る力」のこと。
本書に登場するのは、上記ポイントの最初の2つであるハーバードとスタンフォードだけですが、この傾向は収録された2校だけに留まらないわけです。
さらにその傾向は経営大学院だけでなく、グローバル企業や、グローバル化を推進する日本企業も同様のよう。
上記ポイントの3番目以降の他、割愛した企業を挙げると、ボストンコンサルティンググループ、トヨタ自動車、ソニー、三菱商事と、いずれも一流どころの企業が「失敗力」を重視していました。
◆本書では、上記ポイントにも個人名があるように、各校ないし各社のOBもしくは海外駐在員・元駐在員にインタビューを敢行。
スペースの都合上、まるごと割愛してしまいましたが、各人の「失敗体験」が赤裸々に語られています。
小は「MBAのクラスで発言できなかった」レベルから、大は「買収した会社の清算」等々までさまざま。
中には「社名を出して、よくぞここまで」というエピソードもありましたが、一部、匿名で記載されている部分もあるようなので、実名ではないのかもしれません。
ただ、いずれにせよ、皆さん「失敗したまま」で終わることなく、それを活かして、その後の会社人生を歩まれているようです。
◆また、失敗の傾向として、純粋にビジネスとして失敗しているものとは別に、グローバルならではの失敗もいくつか見られました。
それは宗教だったり、人付き合いや仕事に対する考え方の違いだったり、日本国内だけにいたのでは、わからないことばかりです。
例えば、上記ポイントの4番目に登場する小辻洋介さんは、西アフリカでは「何時間もかけて一緒に昼食を食べて人間関係を築くことの方が、仕事の納期を守ることより大切」であることを学んだのだとか。
そう言えば私も会社員時代のイラン出張中に、手違いでトランジットの荷物が1週間近く届かないことがあり、その際、テヘランの航空会社の担当者に、何とかするよう結構ハッキリ主張したところ、駐在員事務所長にたしなめられたことがありました。
所長曰く「こっちの人は、そういう言い方はしないよ」と。
その前に滞在したドバイに比べて、ホテルのレベルが極端に低かったことや、毎日部屋で下着を洗濯していたこともあって、自分自身カリカリしていたのですが、その土地その土地によって考え方の違いがあるのは、仕方ないものだと気が付いた次第。
……今の仕事には、ほとんど活かせてませんがw
◆なお、本書の最終章である第6章では、「世界で活躍するエリート流の失敗力の鍛え方」がまとめられています。
・失敗したら早く修復せよ
・むやみに謝罪しない
・敗因分析をする
といった、共通項が抽出されているので、ここは必読!
ちなみに、「むやみに謝罪しない」に関して言うと、スタンフォード大学のジェフリー・フェファー教授曰く、自分が関わっている事業などが失敗したら、何よりも「自分の身を守る」ことが大切なのだそう。
教授の書かれたこの本も、最近文庫化されましたし、再読する必要がありそうな。
「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)
参考記事:本当は残酷な『「権力」を握る人の法則』 の話:マインドマップ的読書感想文(2011年07月23日)
世界で活躍するために!
世界エリートの「失敗力」 (PHPビジネス新書)
第1章 ハーバードが教える失敗力
第2章 スタンフォードが教える失敗力
第3章 外資系企業の失敗力
第4章 日本企業の失敗力
第5章 失敗を恐れる前に
第6章 失敗力を鍛える
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本当は残酷な『「権力」を握る人の法則』 の話:マインドマップ的読書感想文(2011年07月23日)
【編集後記】
上記ポイントの5番目に登場する、石角さんのご本。ハーバードとグーグルが教えてくれた人生を変える35のルール
石角さんのように、グーグル日本を通さず、直接本社に採用されるというのはかなり珍しいのだとか。
ご声援ありがとうございました!
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