2014年01月19日
【140の戦略?】『説得とヤル気の科学 ―最新心理学研究が解き明かす「その気にさせる」メカニズム』スーザン・ワインチェンク
説得とヤル気の科学 ―最新心理学研究が解き明かす「その気にさせる」メカニズム
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、心理学博士であるスーザン・ワインチェンク女史によるコミュニケーション本。タイトルにもあるように、相手を説得し、ヤル気を出させるテクニックを、豊富な事例とともに解説してくれています。
アマゾンの内容紹介から、一部引用。
人間はいつも人に何かしてほしいと思いながら過ごしています。商品を買ってほしい、大量に発注してほしい、もっと働いてほしい…これは仕事に限らず家庭生活においても同じです。もっと勉強してほしい、自発的に行動してほしい、家事を手伝ってほしい…本書では心理学の最新の研究結果を示しながら、人を説得しヤル気を引き出すメカニズムを科学的に解き明かします。
動かしたい相手がいるなら、必読デス!
【ポイント】
■1.動詞ではなく名詞を使って集団への帰属意識をかき立てる教授は選挙での投票に関する実験も行い、このときはふたつの質問を用意しました。「明日は選挙ですが、あなたにとって有権者であることの重要性は?」と「明日は選挙ですが、あなたにとって投票に行くことの重要性は?」です。動詞(投票に行く)ではなく名詞(有権者)を使ったグループのほうが、実際に翌日投票に行った人数が多かったそうです。特定の集団への帰属意識が行動を左右するのです。
言語によっても違いはあるかもしれませんが、人を動かしたいときには、動作を表す表現よりも属性を表す名詞的な表現が使えないか検討してみましょう。ある集団への帰属意識をかき立てると、動いてくれる可能性がはるかに高まります。
■2.して欲しくない事は過去の実績を明かさない
たとえば私が大学の入学予定者とその保護者への説明会に同席したときのことです。学部の職員のひとりが、学内の学生寮ではこの3年間で禁酒規則の違反が200件を超えたと述べました。学内の飲酒問題を指摘したのです。そして大学側がその問題に真剣に取り組んでいることを延々と話しましたが、このメッセージが与えたダメージは決定的でした。300人の入学予定者を前に、在校生の多くが飲酒していることを明かしてしまったのですから。飲酒は増えこそすれ、減りはしないはずです。
■3.公的な関与をうながしてかかわりの度合いを強める
例をあげます。皆さんはホテルチェーンを経営しており、滞在してくれたお客さんにはアンケートを送るようにしている、と仮定しましょう。この場合のアンケートが、関与を促す手段となり得るのです。たとえばアンケートでお客さんが皆さんのホテルに高い評価をつけてくれれば、それが「再度宿泊する意向」を表明したという意味で関与となります。ですからアンケートには「当ホテルに再度ご宿白いただける可能性は?」という項目を忘れずに入れてください。このように、アンケートは皆さんの製品やサービスに関するデータやフィードバックを得る方法であるだけでなく、回答者の関与を促し結びつきを強化する方法でもあるのです。
■4.鉛筆やペンで手書きさせることで関与の度合いを増す
自分が何を手書きにして、何をキーボードで打ち込んでいるか、改めて考えてみるのは面白いことですが、大きな違いでもあるのでしょうか。
米国の脳科学者レーザ・シャドメールと精神科医へンリー・ホルコムは、人が文章をぺンや鉛筆で書くときとキーボードで入力するときの脳の活動の違いを調べました。その結果、手書きのときにはキーボード入力のときと異なる筋肉を使うこと、手書きのときのほうが記憶が固定する割合が高いことがわかりました。
■5.危険なシーンで記憶に刻み込ませる
人を動かそうとするとき、こうした現象をどう利用すればよいでしょうか。たとえばテレビコマーシャルなら、こんな方法が考えられます――危険な場面(カーチェイスなど)を映し出し、ぎりぎり「もうダメか」という瞬間に登場人物がある銘柄の清涼飲料やクレジットカードを受け取る。つまり、視聴者の情報処理系と感情処理系が厳戒態勢になっているので、その清涼飲料やカードが強い感情を伴って記憶に刻み込まれるというわけです。
■6.ルーチンワークには「アメとムチ」も必要
たとえばあまり頭を使わなくてもできる日常的な業務(職場の整理整頓など)をさせたいのであれば報酬を与えるだけでも、「熟達願望」と同程度かそれ以上の効果が得られます。
「熟達」という言葉には「身につけるべき技術や知識がある」という含みがありまずが、ルーチンワークでは熟達すべき技術やワザがあまりありません。難しい技術を習得する、新しい知識を身につける、といった意識がもてるような状況ではなく、内発的動機づけがなかなか得られないのです。こういう場合は、やはりアメとムチも必要、ということです。
■7.よく知ってる出来事ほど再発の可能性が高いと感じる
この「最近の経験による慣れと親しみの効果」は、人を動かしたいときに利用できます。たとえば仮に皆さんが保険のセールスレディだとして、損害保険への加入をお客さんに勧める最適なタイミングは、洪水のニュースが流れた直後です。洪水を経験したり洪水のことを聞いたりして間もない人は、将来自分が洪水に襲われる可能性を高めに見積もるからです。
【感想】
◆本書によると、「人のヤル気を引き出す要因」は次の7つ。・帰属意識実はそれぞれについて章があてがわれ、下記目次のとおり、第2章から第8章までで、それぞれについて解説されています。
・習慣
・物語の力
・アメとムチ
・本能
・熟達願望
・心の錯覚
そして各章には、「ストラテジー」が収録されており、その数なんと140!?
今回、要因の数が丁度7つということで、各章からストラテジーを1つずつ選ぼうかとも思ったのですが、類書とのネタかぶり等も考慮して、上記のようになりました(必ずしもストラテジーのタイトルとも一致しておりません)。
ちなみに、話としては面白くとも、実験内容がこの本からのものについては、ご存知の方も多いでしょうから割愛せざるを得ず……。
影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか
参考記事:【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)
◆また、第3章の「習慣」では、この本も紹介されていました。
習慣の力 The Power of Habit
参考記事:【オススメ!】『習慣の力 The Power of Habit』チャールズ・デュヒッグ(2013年04月26日)
こちらはモロに習慣をテーマにした作品ですから、ご自身の習慣について関心のある方なら、一読をオススメ。
ただし、本書の第3章では、「習慣形成には長い時間を要する」という常識を覆す(?)「新たな習慣を1週間で定着させる方法」なるものが紹介されています。
ホントなら、それも今回ご紹介したいところだったのですが、それだけでかなりのボリュームになりそうなので、泣く泣く割愛。
簡単に言うと、「『ちょっとした行動』を、しっかり定着している既存の習慣につけたす」……と、これではやはり、良く分からないと思いますので、詳細は本書にてご確認頂きたく。
◆一方、第8章の「心の錯覚」で、繰り返し登場していたのがこちら。
ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?
ファスト&スロー (下): あなたの意思はどのように決まるか?
お恥ずかしながら、私は未読でして、今般本書でその概要を知り、「あー、これは読まねば」と思った次第(今さら)。
タイトルだけ見て、「ファスト&スロー」とは、何を意味するのかと思っていたのですが、なるほど、そういうことだったのか……ってアマゾンの内容紹介で簡単に触れられていたんですが(これまた今さら)。
この第8章では、「質問を熟考し、分析してもらいたいときは、あえて読みにくい書体を使う」なんてTIPSも登場していて、なかなか興味深かったです。
◆さらに第9章の「ケーススタディ」では、実際の状況において、どの「要因」とどの「戦略」を選べばよいかを指南。
そのケーススタディの中から、当ブログに関係ありそうなものとして、例えば「採用してほしい」を見てみます。
まず、用いる要因は「心の錯覚」「本能」「帰属意識」の3つ。
そしてそれぞれについて、具体的なアクション(「システム1型思考に訴える」「『確証バイアス』を味方につける」等々)がダーっと、4ページ強にわたって記載されているのですが、さすがにご紹介しきれませんので、これまた本書にてご確認を。
「科学的な自己啓発本」をお好きな方なら必読です!
説得とヤル気の科学 ―最新心理学研究が解き明かす「その気にさせる」メカニズム
第1章 人をヤル気にさせる要因
第2章 帰属意識
第3章 習慣
第4章 物語の力
第5章 アメとムチ
第6章 本能
第7章 熟達願望
第8章 心の錯覚
第9章 ケーススタディ
第10章 ストラテジー一覧
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【スゴ本!】『やってのける 〜意志力を使わずに自分を動かす〜』ハイディ・グラント・ハルバーソン(2013年09月24日)
【スゴ本!】『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』イアン・エアーズ(2012年10月30日)
お前らもっと『30秒で話を伝える技術』の凄さを知るべき(2013年10月06日)
【編集後記】
◆この本も気になっています。「勇気」の科学 〜一歩踏み出すための集中講義〜
やはり「科学的自己啓発書」好きとしては、読んでおかねば。
ご声援ありがとうございました!
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