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2014年01月15日

知らないと損する『スマホは人気で買うな!』


スマホは人気で買うな! (日経プレミアシリーズ)
スマホは人気で買うな! (日経プレミアシリーズ)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事で取り上げた、吉本佳生さんの最新作。

その時は気が付かなかったのですが、本書はクイズ形式であり、ベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』の「経済学版」という位置づけなのだそう。

アマゾンの内容紹介から。
ビール500ml 缶が350ml 缶より安く売っている店があるのはなぜ? 学習塾がなぜ無料の夏期講習をするの? 儲かっているコンビニオーナーの一番の心配事は? モノの値段など身近なクイズで経済学思考が身につきます。

なお、タイトルは新年初めてで「ホッテントリメーカー」のお世話になりました!




【ポイント】

★「クイズ形式」である本書は、その答えを書いてしまうと完全にネタバレなので、問題のみ引用していきます(スイマセン)。


■1.「お徳用サイズ」が割安でなくなったワケとは?


Ketchup / Looking Glass

 読者の家では、どのようなサイズのケチャップやマヨネーズを買っていますか。同じブランド(商品名)でいくつかのサイズが販売されているとき、昔は、大きいサイズを「お徳用サイズ」と呼んでおり、言葉の通り、お徳用サイズを買うほうが100グラム当たりの価格は"割安"でした。
 ところが、数年前に筆者のゼミの大学生が卒業論文を書くために調査をして、「通常サイズよりも大きなサイズのケチャップは、100グラム当たりの価格がむしろ"割高"になっていることがある」と、指摘しました。昔の論理は通じなくなったのです。この変化が起きた理由はなんでしょうか?


■2.学習塾がなぜ無料の夏期講習をするのか?


Summer School in Media and Nationalism (1/2) / Iker Merodio

 受験支援をおこなっている学習塾の業界では、夏講習を無料にするなど、無料ビジネスが広がっています。この現象を知ったとき、筆者は意外に感じました。長きにわたってデフレが続いてきたわが国で、消費者物価指数のデータをみると、学習塾の料金(月謝)は少しずつ上昇していたからです。値下げ競争の心配をしなくてもいい業界にもかかわらず、わざわざ無料ビジネスをおこなうのは、自らの首を絞めているようにみえます。
 では、この無料ビジネスを仕掛ける学習塾の狙いはなんでしょうか?


■3.ビール500ml缶が350ml缶より安く売っている店があるのはなぜ?


beer / Greencolander

 あるスーパーでビールの500ml缶(6本入り)が、同ブランドの350ml缶(6本入り)よりも安い価格になっていたことがあります。ビールを冷やて陳列してある棚の一番目立つ場所に、安売りの500ml缶があり、350ml缶は常温で少し離れた所にありました。両者の価格を比べれば、誰も350ml缶のほうを買わないのではと思われます。
 では、スーバーはなぜこんな売り方をしたのでしょうか?


■4.売上が急激に伸びたコンビニオーナーの心配事とは?


P1070071 / inspired by you

 近くに大きなマンションができた影響で、売上が急激に伸び、利益率がとても高くなったコンビニの、オーナーの立場で考えてみましょう。大手コンビニフランチャイズチェーンX社の看板を掲げているコンビニです。
 この高い利益率を維持したいと願っているオーナーが、いまいちばん心配なことはなんでしょうか?


■5.家電の「オリジナルモデル」を作ってもらう家電量販店やテレビ通販会社の思惑とは?


TV's at Warrrmart / lhepler

 大手の家電量販店やテレビ通販の会社が、有名メーカーの家電製品について、少し仕様を変更してもった「×××オリジナルモデル」を、自社だけで販売することがあります。ふつうに販売されているモデルと比べて、なにかの機能がカットされていたり、余分ななにかがついていたりします。
 家電量販店やテレビ通販の会社は、どんな目的で、独自の仕様変更をしてもらっているのでしょうか?


■6.もし土星にダイヤモンドがあったら?

アバター エクステンデッド・エディション [Blu-ray]

 圧倒的な映像美で話題になったSF映画『アバター』は、高価な資源が大量に眠る惑星が舞台になっていました。現実の世界でも、はるか遠くの宇宙には、大部分がダイヤモンドでできた惑星があるそうです。太陽系の惑星でも、木星や土星などにはダイヤモンドが眠っている可能性があると指摘されています。
 では、土星に高品質のダイヤモンドが大量にあるとわかり、採掘して地球に運搬できるとしたら、地球でのダイヤモンド価格はどうなるでしょうか。暴落するか、しないかを考えてください。


■7.流行っていたカラオケボックスが廃業したワケは?


Karaoke with Peter Styles / Shane's Stuff

 ずいぶん以前、ある政令指定都市で新しい交通システムができた直後の話です。その駅の近くにあったカラオケボックスが、しばらくして、とても繁盛していたのに廃業したことがあります。当時は、コンテナを改造して、コンクリートブロックのうえに乗せただけのカラオケボックスが流行っていて、まにそのタイプでした。
 そこによく通っていた人が「なぜ潰れたのでしょうか?」と、筆者に質問しました。バブル経済の時期に銀行に勤務していた筆者は、よくあることだと知っていました。ではなぜ、カラオケボックスをやめたのでしょうか?


【感想】

◆本書収録の問題は全部で68問。

『戦略思考トレーニング』がそれぞれ50問ちょっとでしたから、それに比べると3割以上のボリュームアップとなっています。

もっとも、同じ事例から複数題を問われるケースが多いので、『戦略思考トレーニング』に比べて、それほどハードになった印象はありませんでした。

むしろ、回答が二者択一だったり、選択肢があったりする分、「手も足も出ない」感は、あちらの方が上だった気が。

少なくとも、本書の問題に関しては、私も一応全問考え(かつ、それなりに正解して)ましたw


◆さて、本書のテーマは経済学ですから、当然「価格」のお話は避けては通れません。

下記目次でもお分かりの通り、第1,3,5章は、タイトルからして価格ネタなことは明らか。

また、そうでない章であっても、ちょこちょこ価格のお話が出てくるので、数字や計算がお嫌いな方には、本書はあまり向いていないかも。

この辺は、タイトルとPOPな装丁に釣られて買うと、後で泣きを見ちゃいそうなw


◆ところで、この68問とは別に、本書の終わりでは、「現代のiPhoneと、100年以上前のT型フォード」と題して、「iPhone 5c」について言及しています。

売れまくった上位機種「iPhone 5s」とは異なり不人気だった「5c」は、「廉価版にしては価格が高すぎる」という意見が数多く見られました。

……スマホ童貞の私ですら、スペックだけ見て「思ったより高くね?」と感じたくらいですしw

しかし吉本さんは「果たしてそうか?」と疑問を呈し、「4つの留意点」を列挙。

なるほど、確かにそこを読んだら「あれで良かったのかも」と私も考えを改めました。←安易w


◆要は、「日常生活のなかでみつけた身近な現象について、経済・会計の基礎理論を適用していろいろと考えよ」ということ。

吉本さんは、その一例として、2013年9月30日で終了となった、ミスタードーナツのポイント発行のことを挙げています。

misdoclub card ポイントサービス終了のお知らせ|グッズ&キャンペーン|ミスタードーナツ

この件について、定期試験の直前に受講生から疑問をなげかけられた吉本さんは、「キミたちはどう考えたの?」と逆に質問。

何も考えようとしない受講生に向かって「定期試験の開始時間を少し遅らせて」説教混じりに解説したのだとかw

……うん、急ぎじゃない時に本書を読める分、私たちは落ち着いて考えられますね。


経済学的思考を身に付けるために!

スマホは人気で買うな! (日経プレミアシリーズ)
スマホは人気で買うな! (日経プレミアシリーズ)
1章 価格の基本を知ろう
2章 大きいことはいいことだ?
3章 価格差別のことを学ぼう
4章 ライバルとの戦い
5章 価格戦略の応用
6章 個人にとっての経済
7章 マネー世界の論理と計算


【関連記事】

【価格戦略】『無料ビジネスの時代: 消費不況に立ち向かう価格戦略』吉本佳生(2011年09月10日)

【価格戦略】『マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか? クーポン・オマケ・ゲームのビジネス戦略』吉本佳生(2010年12月04日)

【全51問!】『戦略思考トレーニング2』鈴木貴博(2013年08月12日)

『戦略思考トレーニング』が想像以上に凄い件について(2013年04月20日)

【スゴ本】『価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?』リー・コールドウェル(2013年02月17日)


【編集後記】

◆「価格」を考える場合に、避けては通れない1冊。

価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?
価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?

レビューは上記関連記事にて。


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