2014年01月14日
【オススメ!】『脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する』トレーシー・アロウェイ,ロス・アロウェイ
脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「脳ネタ好き」「勉強本好き」ならマストな1冊。本の分厚さに一瞬ひるんだものの、いったん読み始めたら、止まらない面白さでした。
アマゾンの内容紹介から。
もっとサクサク仕事をこなしたい!
IQが高いのに実績が上がらない人、逆に低いのに成功する人。その違いは、「ワーキングメモリ」という脳の認知機能にある。ビジネスや人間関係で重要な役割を果たすワーキングメモリは、30代をピークに衰え始める。そのメカニズムを解明するとともに、運動・食事・脳トレなど強化法を詳しく紹介する。
今回は特に、「ワーキングメモリに良い習慣」を7つ選んでみましたので、ご覧ください!
【ポイント】
■1.選択肢の数を最小限に抑える選択肢が多すぎるとワーキングメモリに過負荷がかかり、さまざまな悪影響が及ぶ。ストレスや不安が増大したり、判断力が鈍ったり、正しい選択をしたかどうか自信がもてず、くよくよと考え込んだりしがちになるのだ。だから幸福になりたいのなら、選択肢の数を最小限に抑えよう。職場では「この時間はこの作業に専念する」と決めよう。パソコン画面には複数のプログラムではなく、ひとつのプログラムだけを立ちあげよう。いちいち画面を切り替え、複数のプログラムを行ったり来たりするよりも、作業に集中しやすくなる。
■2.ランニングする
イリノイ大学の研究によれば、ランニングはワーキングメモリも改善する。運動するとワーキングメモリを強化できるのではないかと考えた研究チームは、どんなスポーツがもっとも効果があるかを調べることにした。(中略)
いくらウェイトをもちあげたところで、ワーキングメモリに測定可能な改善は見られないというのに、ランニングは頭脳の力を大きく上げたのである。とりわけランニングの直後、ワーキングメモリの能力が急上昇した。たった30分間のランニングであろうと、その直後は、ランニングの前よリワーキングメモリの働きが向上したのである。
■3.オメガ3脂肪酸のサプリメントを摂取する
オメガ3脂肪酸が、いわばワーキングメモリ増強剤であることは、科学的に証明されている。たとえ、あなたが健康で元気いっぱいの若者で、おそろしく頭が切れるとしても、オメガ3脂肪酸を摂取すればワーキングメモリの性能はさらに向上する。2012年におこなわれた研究では、6か月間、健康な若者(18〜25歳)に、オメガ3脂肪酸を摂取させたところ、半年後、彼らのワーキングメモリは大きく改善された。他方、オメガ3脂肪酸の欠乏はワーキングメモリに悪影響を及ぼすという報告もあがっている。
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■4.ローズマリーの香りを嗅ぐ
2003年の実験で、モスは被験者の成人をローズマリーのグループ、ラベンダーのグループ、そして何も嗅がない対照群という3つのグループに無作為に分けた。(中略)
するとローズマリーのグループは、対照群と比較して、ワーキングメモリ課題で高スコアを獲得した。ところが、ラベンダーは逆効果であることがわかった。ラベンダーのグループのスコアは、対照群のそれより低かったのだ。ローズマリーには覚醒作用があるので、ワーキングメモリが改善され、ラベンダーには鎮静作用があるため、ワーキングメモリには逆効果だったのではないかと、モスは推測している。
■5.整理整頓を心がける
ワーキングメモリに関する知識に基づいて考えれば、そして、散らかっていた場所と散らかっていない場所での生活に予想を超える違いがあった実体験から考えれば、生活空間や職場にものが多けれぽ多いほど、ワーキングメモリの働きが悪くなり、日常生活のさまざまな場面に悪影響が及ぶはずだ。必要な書類をさがしだす作業にワーキングメモリがかかりっきりになっていると――「ほら、明細が書いてあったあの書類、どこに置いた?」「知らない。どこかにしまったんでしょ?」――あなたは本来の仕事にワーキングメモリを専念させることができなくなる。
■6.暗算する
暗算は、ワーキングメモリを強化する。というのも、暗算をするには、さまざまな数字を同時に覚えなければならないからだ。数を左から右に順に掛けていき、そのつど、足していくのが、暗算のもっともわかりやすい方法だ。
(例) 39×7の場合
・30×7=210
・9×7=63
・210+63=273
■7.テレビを消す
子どものワーキングメモリをサポートするうえで欠かせないのは、テレビを消すことだ。研究によれば、子どもがテレビにさらされる時間が長ければ長いほど、注意などに関する面で発達に問題がでるリスクが高まり、ワーキングメモリが正常に発達しにくくなる。では、いったいどうすれば、テレビを消すことを子どもに納得してもらえるだろう? 率直に、ていねいに、子どもたちに説明しよう。テレビを観ていると集中力が衰えるおそれがあるうえ、生活のさまざまを場面に悪影響が及ぶ可能性があることを説明しよう。
【感想】
◆ここまで記事を書く前に、そもそも「ワーキングメモリとはなんぞや」というお話からしておくべきでした(今さら)。「ワーキングメモリ」とは「作業記憶」とも呼ばれており、情報を一時的に保存し、その情報を利用して何らかの作業を行う際に使われる領域のこと。
私も勘違いしていたのですが、「短期記憶」とは異なります。
本書の訳者あとがきから抜き出すと、「パーティで出会った初対面の相手の名前をしばらく覚えている」というのは「短期記憶」で、「その情報を短時間覚えているだけではなく、その情報でなんらかの"作業"ができる」ものが「ワーキングメモリ」。
例えば、上記ポイントの6番目の暗算で、どちらを先に計算するかは別にして、「210」と「63」の計算結果を覚えていて、両者を足すことができるのは、ひとえにワーキングメモリのおかげです。
◆もう1つ区別をしておかねばならないのが、「IQとの違い」。
アマゾンの書影では割愛されている帯では、大きく「IQ」と書かれた文字にバッテンが付けられ、その脇には「頭の良さは、もうIQでは測れない」と記されています。
何でも、本書によれば「ワーキングメモリのスコアがわかれば、知能検査の結果よりはるかに正確に学生の成績を予測できる」とのこと。
例えば、幼稚園時代のワーキングメモリのスコアから、95%の確率で小学校6年生のときの成績を予測することができたのだとか。
また、その上の年齢層であっても、例えば、7歳から11歳の約70人の生徒を2年間調査したところ、「読解」「スペリング」「算数」の3教科において、これらの成績とIQはほぼ無関係だったにもかかわらず、ワーキングメモリは強い関係があったのだそう。
勉強本オタクさんたちが、本書にロックオンした予感w
◆……とここまで読むと、「ワーキングメモリ全開バリバリ」(死語)だと人生バラ色のようですが、そうでもないのが「スポーツ競技」でのお話。
俗に言う「ゾーン」に入っている状態の時は、ワーキングメモリは使われていないのだとか。
さらに、練習の段階からワーキングメモリを使って技術習得した人は、プレッシャーに弱いとも!?
そこで登場する解決法が、「疲れ切った状態で練習すること」。
詳細は本書を読んで頂くとして、ここは「目からウロコ」でした。
◆また、割愛した中で興味深かったのが、「脳トレ・ゲーム」とワーキングメモリの関係について。
「脳トレ・ゲーム」の効果を調べようと、過去何度か調査が行われているのですが、
・2010年の10歳児を対象とした調査では、紙と鉛筆を使うクイズより、ワーキングメモリーを向上させるわけではないことがわかったのだそう。
・2010年の50歳から71歳を対象にした調査では、任天堂の脳トレ・ゲームを4週間以上プレーしてもらったが、認知テスト(文章を完成する、時間制限のあるタスクを行う等)にはなんの改善もみられなかった
・2012年の60〜70代を対象にした調査では、実行機能や処理速度なので改善を見せたが、ワーキングメモリ・テストにおいては改善が見られなかった
逆に、高齢者にWoW(ワールド・オブ・ウォークラフト)をプレーさせたところ、ワーキングメモリに関する課題の成績に上昇が見られた……って、かえって依存症の問題の方が大きそうですがw
1日16時間World of Warcraftをプレイするゲーム中毒の少年とRMTに関する動画 | 英語動画でリスニング
◆本書ではいくつかの章の終わりに、その章の内容に関連した「ワーキングメモリ・エクササイズ」を収録していますので、それぞれお試しアレ。
さらに第7章以降の第2部では、「ワーキングメモリを改善する」というタイトル通り、実践的な内容となっています。
勉強本オタクとしては、記憶の達人が活用する3つのテクニック(「コードブレーカー」「ブートストラッピング」「チャンキング」)辺りも触れたかったのですが、かなり細かい内容なので、これまた本書にてご確認を。
特に、この本に出てきた「自分の娘をチェスの名人に育てるために妻を公募した」ハンガリー教育心理学者ラズロー・ポルガーの娘さん(スーザン・ポルガー)の話は必読だと思われ。
究極の鍛錬
参考記事:一流職人もびっくり 驚愕の『究極の鍛錬』(2012年06月13日)
そして、本書が分厚すぎて躊躇した方は、巻末の「ワーキングメモリ活用法まとめ」だけでも要チェックで!
これはオススメせざるを得ません!
脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する
第1部 ワーキングメモリの可能性
第1章 ようこそ、ワーキングメモリ革命へ
第2章 成功の鍵を握るワーキングメモリ
第3章 幸福とワーキングメモリ
第4章 失敗、悪癖、うっかりミス
第5章 学習成績を左右する
第6章 スポーツで成果を上げる
第2部 ワーキングメモリを改善する
第7章 ワーキングメモリの発達と衰え
第8章 ワーキングメモリ・トレーニング入門
第9章 スペシャリストの秘密
第10章 ワーキングメモリと食生活
第11章 スーパーチャージする7つの習慣
第12章 ワーキングメモリの未来―世界をデザインしなおす
ワーキングメモリ活用法まとめ
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【オススメ】『つねに結果を出す人の「勉強脳」のつくり方』に学ぶ7つのポイント(2012年12月29日)
【編集後記】
◆本書で推奨されている本の中から。脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方
ビジネスパーソンがランニングするのにも、こういう効果があったんですね!
ご声援ありがとうございました!
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