2013年12月07日
【全世代必読?】『40歳からの会社に頼らない働き方』柳川範之
40歳からの会社に頼らない働き方 (ちくま新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、東大大学院教授・柳川範之さんによる、現代における働き方の指南本。書名には「40歳からの」とありますが、その根幹部分は、全てのビジネスパーソンにお読み頂きたいものでした。
アマゾンの内容紹介から。
現在、技術の進化により産業の衰退と勃興のサイクルがどんどん速くなっている。また、新興国の成長も著しい。こんな激動の時代だから、どんな一流企業にしてもいつ倒産するかわからないし、誰にだって失業する可能性がある。この予測困難な状況を生き抜き、チャンスに変えるにはどうするべきか?本書では、その対策として、仲間たちと「バーチャルカンパニー」をつくること、仕事で得た知識を学問で体系づける「学び直し」をすることなど、新しい「複線型」の働き方を提案する。
それほど厚くない本なので画像は割愛しますが、どこを引用するか迷うほど付箋貼りまくりました!
【ポイント】
■1.恐れず失敗するいきなり成功しようと思うと、本当に大切なチャンスはつかめません。むしろ、その前に、積極的に失敗しておくことこそが大切です。
20代の若い人たちだけでなく、30代、40代の人もできれば多少の失敗を経験しくおくべきだと思います。変化の激しい時代に必要なことは、新しいことをやってみることだからです。
既存の発想では思いつかないようなことを、どこまで考えて実行できるかが、チャンスをつかむうえで大切です。でも、そんな新しいことをやってみる以上、何が正しい選択なのかは、誰にもわかりません。だから、ある程度「失敗する」ことを前提に、「まずはやってみる」ことが必要になるのです。
■2.首になるとわかったらどうするかを考えておく
今の会社で働くにしても、主体的に自分で働き方を組み立てるという作業が、どうしても不可欠になります。何が必要か、どういうことをやっておけばいいかということを自分で考えておくことです。一番わかりやすい方法は「もしこれから1年後か2年後に首になるとわかったらどうするか」を考えておくことです。それを、できる範囲で具体的に考えておくというのがすぐにやれることの1つです。
■3.目標は2つもつ
最近多くの人に、目標はできれば2つもったほうがよいと薦めています。この2つとは、「近い目標」と「遠い目標」です。近い目標は、状況に応じてコロコロ変えていくべきものです。遠い目標は、そんなにコロコロ変えないで、長い目で見て、動かして調整していくべきものです。遠い目標があることで、近い目標をコロコロ変えてもブレずにいられます。この組み合わせをうまく作れるかが重要です。
世の中で成功者といわれている人は、この2つの目標のバランスをうまくとりながらやっている人が結構多いようです。長期的な目標をしっかりもちながら、短期的目標ももち、それを柔軟に変えている人たちです。
■4.小さな成功体験を積み重ねる
たとえば、学習塾で有名な公文式の特徴の1つは、易しい問題からやらせていって、成功体験をさせるという点です。百点を取れるようにして、レべルアップしていくというしくみですが、百点が取れるという成功体験を低いレべルでもいいから積み重ねていくと、結果的にだんだんできるようになるというわけです。
桑田(真澄)さんの話で一番興味をひかれた点は、この小さな成功体験をつむ場所が「ブルぺン」だとおっしゃっていた点でした。限界はあるのですが、「いい球を投げられる」「自分が思う球を投げられる」というような小さな成功体験を、ブルぺンで作りあげるのです。
■5.肩書きをアピールに使わない
社外に目を向けたときに一番やってはいけない間違いは「前の会社で自分はこのような役職にいました」とアピールすることです。これは、今までの価値観をひきずっていて、それが通用すると思い込んでいるということです。「大企業の○○で部長までやったんだから、どこでも雇ってくれるだろう」というのは、一番まずいやり方で、それだとうまくいかないのです。
裏を返せば、このような人には、自分に誇れるものがない、自信があるスキルがないともいえます。面接で「あなたは何ができますか」と聞かれて、「○○で部長をしていました」としか答えられない人は、大会社でのポジションしかアピールできるものがないというわけですから。
■6.自分の能力を語れるようにする
自分の長所・短所を語れて、かつその具体例をあげられる、そしてそれをきちんと話すことができれば評価してくれる人は格段に増えるはずです。(中略)
日本でホワイトカラーの転職が難しいのは、「自分の能力を語れない」ということが恐らく関係しています。能力を高めていく以前に、何が欠けていて何があるかという客観的な評価をできていない部分が理由として結構大きいのです。言い換えれば、それができるだけで、特別なスキルアップをしなくても転職はかなり容易になるのではないかと思います。
■7.今のうちから新しい能力を身につける
現在バリバリ仕事ができているということは、今が旬の能力をもっているということです。そうすると、その能力はこの先10年ぐらいはもつかもしれませんが、20年たったときに本当に通用するかというと、これはだいぶ怪しいのではないかと思います。そして、怪しくなってきたときに別の能力を身につけようとしても遅いのです。次の10年、20年をにらんで準備している人に、場合によっては負けてしまいます。ですから、10年後、20年後をにらんで、今のうちから新しい能力を身につけておくべきなのです。
【感想】
◆ここまで読んで来て、どの辺が「40歳から」なのか、ピンと来ない方も多いかもしれません。実は今回抜き出したのは、本書の第5章まで。
第6章以降はカットしているのですが、「第6章 複線的な働き方実践編―バーチャルカンパニーを作ろう」では、見出し通りに「バーチャルカンパニー」の作り方について述べられています。
そして、メインである本業(会社勤め等)の傍ら行なう、この「バーチャルカンパニー」というサブに、どこまで精力を注ぐか、ということが問題になり、著者の柳川さんのご意見としては「30代までは本業を優先する」ことを推奨。
結果的に「40歳から」というスタンスを取ることになったのではないか、と考えております。
……当ブログの読者層を考えて、今回はあえて広範囲な世代向けの部分を優先しましたが。
◆ちなみに、この「バーチャルカンパニー」とは、副業レベルのものだけでなく、もっと手前の段階までを含むもの。
そのまま起業につなげたり、活動していく上で、転職のためのスキルを身につけたりします。
そのメンバーも、社内での気心の知れた仲間や、社外の人材、さらにはライフネット生命の出口さんと岩瀬さんのように、違う世代を引き込むと良い、と。
「終身雇用」を維持できない以上、会社はこのような活動をサポートすべし、というのが柳川さんのご意見なのですが、それはさすがに、現実的にはなかなか難しいところでしょう。
◆なお、割愛した中で「なるほど」と思ったのが、MBAで学ぶことの意義。
例えば、売れている製品があるために新製品を出すのを躊躇しているうちに、新興メーカーに新製品を出され、かつ、それが売れてしまい、悔しい思いをしたという経験のある人にとっては、「イノベーションのジレンマ」という学説は、「ああ、これは自分が経験したものだ」と感じることができます。
MBAではもちろん新しいこともあるものの、かなりの部分はこうした「自分が経験したこと」を整理して位置づけるために使われているのだそう。
要は「経験を抽象化することで体系化する」ということ。
このように抽象化しておけば、似たようなケースに直面した際に、アイデアを応用して使えるワケですね。
◆本書は新書で、かつ200ページないボリュームなので、サラっと読み切ることができました。
とは言え、話を膨らませるための体験談等がなく、大事なエッセンス部分が中心のため、読み応えはアリ。
さらにアマゾンの書影ではカットされている帯には、ちきりんさんの「これからの『働き方』のとても丁寧な指南書」という推薦文も掲載されております。
私は既に自営業者なのでさておき、今現在会社勤めされている方なら、読んでおくべき1冊かと。
これはオススメせざるを得ません!
40歳からの会社に頼らない働き方 (ちくま新書)
第1章 新しい働き方を手に入れる
第2章 一生会社を頼りにする時代は終わった
第3章 将来を切り拓くための五つのステップ
第4章 能力の棚卸しはこう進めよう
第5章 どんな人でもスキルを磨く必要がある
第6章 複線的な働き方実践編―バーチャルカンパニーを作ろう
第7章 未来の働き方を自分のものにする
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【編集後記】
◆柳川さんの新刊がもうすぐ出る模様。ビジネスゲームセオリー(仮)
BCGの御立尚資さんとの共著なんですけど、現時点で書影がなくて大丈夫なんでしょうか?
ご声援ありがとうございました!
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