2013年12月05日
【顰蹙?】『ヒンシュクの達人』ビートたけし
ヒンシュクの達人 (小学館新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、当ブログとしては初のビートたけしさんの著作。内容的には、「『週刊ポスト』連載の「ビートたけしの21世紀毒談」の中から、特に反響の大きかったエピソードを抜粋し、大幅に加筆してまとめたもの」とのことです。
アマゾンの内容紹介から。
政治家やタレント、ネットでつぶやく一般人に至るまで、世間は不用意な失言で顰蹙を買うヤツばかり。その点、この男はひと味違う。ヒヤヒヤものの毒舌をマシンガンのように繰り出しつつも、その言葉は常に人々を頷かせる説得力を持っている。悪口・暴言も言い方ひとつで武器になる―。天才・ビートたけしが、自らの死生観や芸人論を交えながら「顰蹙の買い方」の極意を語る。
広範囲なテーマについて、バッサバッサと斬りまくっているのが爽快でした!
【ポイント】
■1.顰蹙発言も計算上のことペニオクの件を本人の前で言っちゃったことを「とんでもない」って言う人もいるけど、本当にそうなのか。「それは言わない約束」ってことで、勝手にタブーにしちゃうほうが、かえって本人には辛いんじゃないだろうか。
オイラがやったみたいに、一度「笑い」にして晒し者になったほうが楽なんじゃないか。それが「禊ぎ」になるんだよ。そのまま知らんぷりしてたら、そいつらは昔のスキャンダルでずっと悩まなきゃいけなくなる。
■2.「脱官僚」なんて無理
オイラはそれなりに政治家にも官僚にも会う機会があるから思うんだけど、普通の政治家がエリート官僚に勝とうなんてそりゃムリだって。悪いけど、今の政治家で官僚たちに実務能力や専門分野の知識で太刀打ちできる人なんてほとんどいないんだからね。
事務次官になろうかっていうトップクラスの官僚はおそらく国会議員なんて屁とも思っちゃいないね。だから、そんな政治家たちに「官僚がニッポンをダメにした」「官僚抜きで政治を」なんて言われたら、「寝言ぬかすなコノヤロー」って気持ちになるんじゃないかってさ。そりゃあ意地悪もしたくなるだろうってね。
■3.今の若いヤツらは「小銭で済む道楽」にハマっている
意識的なのか無意識なのかはわからないけど、若いヤツの多くが、無理して働いて自分の収入やステータスを上げようとしなくても追っかけられる趣味や道楽を選んでしまっているわけだよ。アイドルだとかスマホだとかラーメンみたいな狭いところに自分のテリトリーを限定して、その中だけで生きていこうとしているんだよな。(中略)
だけど、そうやって自分の視野をわざと狭めてる若者がいる一方で、そいつらを「メシのタネ」にしてる賢いヤツラもいるってのが、今の時代の「二極化」の実態でさ。頭がいいヤツは、与えられた状況に満足しているヤツラをターゲットに、そいつらの趣味嗜好に合ったものをうまく当てがって商売にしてさ。視野の狭いオタクが気がつかないうちに、ドンドン搾取して儲けてるって図式なんだよな。
■4.悲しみは本来「個人的なもの」
今回の震災の死者は1万人、もしかしたら2万人を超えてしまうかもしれない。テレビや新聞でも、見出しになるのは死者と行方不明者の数ばっかりだ。だけど、この震災を「2万人が死んだ1つの事件」と考えると、被害者のことをまったく理解できないんだよ。
じゃあ、8万人以上が死んだ中国の四川大地震と比べたらマシだったのか、そんなば風に数字でしか考えられなくなっちまう。それは死者への冒涜だよ。
人の命は、2万分の1でも8万分の1でもない。そうじゃなくて、そこには「1人が死んだ事件が2万件あった」ってことなんだよ。
(震災直後の2011年3月21日発売『週刊ポスト』のインタビューより)
■5.実力と人気の関係
正直、今の若手のほうがオイラたちの時と比べて技術的にはだいぶ上だと思うんだけど、それが人気や視聴率に比例するかっていうと、そういうわけでもないんだよな。(中略)
これがエンターテインメントってものの難しいところなんだけど、実は技術的にうまいか下手かというのは人気商売ではあまり問題じゃなくてさ。要は、衝撃的で、新鮮で、もう1回見たいと思えるかどうかってポイントに尽きるんだよ。「うまい漫才」を見たいってんなら、オイラより年上の大御所の漫才師たちが視聴率20%以上バンバン取れなきゃおかしいわけだけど、そうはいかないだろ。
■6.「才能がない」と言ってやるのも親の仕事
今じゃ世の中豊かになって、たいがいのものは手に入るようになった。それで、子供も世の中も、「努力すれば夢は叶う」と勘違いしてしまったのかもしれない。でも本当は「努力すれば叶う夢もごくまれにある」ってことなんだよ。
男ってのは、自分には才能がないとわかってからが勝負なんじゃないか。親父にできるのは、いつか子供がうまくいかずに傷ついた時に、それでも生きていけるような強い心を育ててやること。だから、子供の心を傷つけることを恐れちゃいけないと思うんだ。
■7.自分が優位な時に相手にどう振る舞うかで品性がわかる
最近、「自分が勝った」と思った瞬間に、相手をトコトン叩きのめしてやろうという感覚の人間が増えたような気がする。自分のほうが有利だとわかった瞬間に居丈高になるんだよな。
スキャンダルを起こした有名人をネットで批判するヤツラもそうだ。絶対安全圏から、どん底に落とすまで叩きまくる。(中略)
人間、自分が圧倒的に優位な立場にいるときに、相手にどう振る舞うかで品性みたいなものがわかる。「溺れた犬は叩け」じゃないけど、弱ってる相手、弱い立場の相手をかさにかかっていじめるのは、とにかく下品なんだよ。
【感想】
◆丁度先日、ネットでこんな記事を読んだばかりのワタクシ。たけし 生放送でペニオク騒動言及はタレント本人への配慮 | マイナビニュース
これってモロに上記ポイントの1番目の件でして、その際、本書の存在を知った次第です。
ちなみに、この記事の最後に『本記事は「NEWSポストセブン」から提供を受けております』とあって、リンク先を見ると、他にも本書からの引用記事が。
NEWSポストセブン|ビートたけし 「いじめ」でなく「暴行罪」と呼ぶべきと指摘
NEWSポストセブン|ビートたけし氏 橋下徹市長を「落ち目のアイドル」と表現
……この調子だと、上記ポイント部分ももっと広範囲に引用されて記事になるかもしれません。
◆もっとも、ネット上でアクセスを集めそうなネタは、割愛した部分の方が圧倒的に多いワケで。
・『オールスター感謝祭』で出した「M崎県知事のH国原さんが実際に起こした事件はどれでしょう?」という問題
・次の選挙で「北野新党」を立ち上げて政権を獲った際の組閣について
・『戦場のメリークリスマス』撮影秘話
・矢口真里は「間男コンサルタント」で復帰すべき
・安藤美姫の「娘の父親」は、ビッグダディ説...etc
この辺はまだいいんですが、巻末の「A●ネーミング大賞」とか、とてもここでは取り上げられませぬ……。
もっとも、この辺の方が、たけしさんらしい、と言えばそうなのですがw
◆それと、上記ポイントの5番目に関連して、漫才についての考察も興味深かったです。
現役当時と今とを比べて、まず異なるのが「尺」である、と。
当時はテレビでは7分程度、寄席等だと15分はやっていたものが、今だと4〜5分であり、当然やり方もまったく違ってくるのだそう。
つまり、今の芸人は「余計なモノを全部削ぎ落として、次から次に『オチ』を繰り出していく必要がある」とのこと。
これをたけしさんは、アナログな「レコード」に対する「iPod」に例えています。
オイラの頃はレコード針をレコードの上に落としたりするプロセスから、「プチプチッ」ていうノイズまで「味」だって楽しんでいたわけだけど、今の漫才はアルバムの中でも余計な曲は外して、好きなものだけ抽出して、ピンポイントで取り出してるっていうことだよ。なるほど確かに。
◆こういった芸能ネタ・芸ネタ以外にも、政治、スポーツ、教育、生き方等々、本書で論じるテーマは多岐に渡っています。
それらが押しつけがましくなく、独自のユーモアに包んで提供されているのが、「たけし流」といったところでしょうか。
上記の「ネーミング大賞」等のお下劣なパートがあるので、女性にはオススメしにくいところですが、サラっと読めて、結構奥が深いのが本書の特長かと。
今年4月に出た『嫉妬の法則』が大昔の本に加筆修正したのに比べると、ネタ的にも新鮮なのもポイント高いです。
たまにはこういう「自己啓発書」も良いかと!
ヒンシュクの達人 (小学館新書)
第1章 政治家は「顰蹙の買い方」を知らない
第2章 震災以降、「生き方」と「死に方」について考えてきた
第3章 「恥」と「粋」の芸人論
第4章 顰蹙覚悟の「教育論」
第5章 「話題の芸能&スポーツ」一刀両断
爆笑トーク特別編(1) 衝撃!オイラの東京五輪開会式プラン
第6章 ニッポンの軽薄ブームに物申す!
爆笑トーク特別編(2) 「AVネーミング大賞」歴代ナンバーワンを大発表!
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【成功法則】『ダメなときほど運はたまる ~だれでも「運のいい人」になれる50のヒント~』萩本欽一(2011年01月26日)
【編集後記】
◆今日の気になる本。1%の人だけがやっている 会社に「使われない人」になる30のヒント
書影を見る限りライトな感じですが、版元が講談社さんなんで大丈夫かと。
ご声援ありがとうございました!
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