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2013年10月24日

【体罰(・A・)イクナイ!!】『スポーツの品格』桑田真澄,佐山和夫


スポーツの品格 (集英社新書)
スポーツの品格 (集英社新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、野球解説者・桑田真澄さんと、ノンフィクション作家の・佐山和夫さんの対談本。

昨今話題になったスポーツにおける「体罰」等の問題点について、かなり踏み込んで話し合われています。

アマゾンの内容紹介から。
「体罰」「不正」等の問題から脱却し、スポーツ本来の姿を取り戻すにはどうすればいいのか。
元選手としてメッセージを発信する桑田真澄と、スポーツ史研究の第一人者である佐山和夫が、提言を行う。

それほど厚くない新書なのですが、中身は結構濃いです!




【ポイント】

■1.PL時代、活躍すると先輩ににらまれた清原
桑田 先輩に「ホームラン打つなよ」と言われて。仕方ないので、彼は流し打ちばかりしていました。レフトへ引っ張るとホームランになるから、わざとライト方向へ打つ。でも、そうやっているうちにライト方向の飛距離が伸びて、結局、ホームランになる。「おまえ、打つなと言ったのに、またか!」ってね。普通は、ホームランを打ったら喜んでべースを回るじゃないですか。でも、彼は泣きながら回っていましたからね。


■2.体罰を否定しない関係者が多い理由
佐山 それはこういうことだと思うんです。
 清原さんは言うまでもなく野球選手として成功した人だし、桑田さんがアンケートを取った現役のプロ野球選手と東京六大学の野球部員も、言ってみれば、野球という世界のエリートコースに入ることができた人たちです。そういう人たちは、自分の成功体験の中に、暴力とか体罰という要素が含まれてしまっているのですね。誰だって、自分の過去は是認したいですから、暴力や体罰を否定することは、自らの成功体験を否定することのように感じてしまうのではないですか。


■3.野球に体罰がはびこるようになったのは戦争がきっかけ
桑田 昭和初期に入ると、政府や軍部による野球の統制が強まりました。そのとき、飛田(穂洲)先生はご自身の指導理念とは必ずしも一致しない「練習量の重視」「精神の鍛錬」「絶対服従」というキーワードを用いて「野球は強い兵隊を養成するのに有用である」という主張をして、野球を弾圧から守ろうとしたのです。
 戦後になると軍隊から復員した人たちが先輩選手、指導者、審判としてアマチュア野球界に復帰し、旧日本軍の悪弊を持ち込みました。さらに、飛田先生に追いつき、追い越そうとした次世代の指導者たちが「もっと厳しい指導をしないと飛田先生を乗り越えられない」と思い込んで、「誤解された野球道」をエスカレートさせていきました。こうした状況に「勝利至上主義」が重なって体罰が当たり前になったのだと思います。


■4.「言われたことしかやらない」という育てられ方
桑田 いつも感じているのですが、プロ野球界には、一般の社会でも十分活躍できるような潜在能力を秘めた人材がたくさんいます。それなのに、現実にはセカンドキャリアで苦労する人が多い。その理由の1つは、選手時代に「言われたことしかやらない」育てられ方をしているからです。先輩や指導者が言うことを一方的に受け入れる人間を育てているのが、いままでの野球界、スポーツ界じゃないかなと思う。でも、いまの社会で必要とされているのは、自分自身で考えて主体的に行動できる人材だと思います。そういった人間をそだてるのがこれからのスポーツ界の役割じゃないですか。


■5.「育成」という言葉の矛盾
桑田 たとえば、少年野球にしても学生野球にしても、どの組織も「育成」という目的を掲げているじゃないですか。それなのに、実際にはどこも超勝利至上主義ですよね。あれがもう、僕は根本的におかしいと思うんです。
 いっそ、小中学生の全国大会とか、やめればいいと思うことがあります。大会があれば、指導者は勝ちたいじゃないですか。となれば、勝つために「手段」を選ばなくなるのは、無理もありません。


■6.整形外科にいた「ひじの曲がった小学生」
桑田 佐山さん、いまはそれどころじゃないですよ。整形外科に行くと、小学生が、僕がプロになってからやった手術を受けている。そういう例がたくさんあります。
 この間も、あるトレーナーのところにいたら、子どもが来たんです。明らかにひじが曲がっているから「どうした?」と聞くと「明日、試合なんです」と言うんですね。びっくりして、「無理だよ」と言ったら「いや、監督に『おまえがエースだから投げろ』と言われているんです。治療してください」と頼んでくる。そこから説得ですよ。「ダメだ」「どうしてですか」「君には将来があるから」「でも、明日は大事な試合だって監督が」……。
 そこで僕は、彼にこう言いました。
「学生時代に、大事な試合なんて一試合もない。いちばん大事なのは、自分の体を守ることだ」って。


【感想】

◆桑田さんと言えば、PL学園。

そう言えば、つい先日、こんなことがありました。

【画像】PLの先輩を発見した時の宮本の表情wwwwwwwwwwwww :日刊やきう速報@なんJ

「どんだけ上下関係が厳しんだ」って言うww

それがゆえに、上記ポイントの1番目のように、仕方なく流し打ちをしていた清原選手ですが、右方向への長打が多かったのは、この先輩たちのおかげかもしれませんw(違


◆そして「体罰」に関しては、一家言ある桑田さん。

私は知らなかったのですが、桑田さんの早稲田大学大学院での修士論文のタイトルは「『野球道』の再定義による日本野球界のさらなる発展策に関する研究」であり、上記ポイントの2番目にある「アンケート」というのも、この論文作成の過程に行われたものです。

この論文は、要旨のみ外部公開されている模様(PDF)。

www.waseda.jp/sports/supoken/research/2009_1/5009A307_abs.pdf

ちなみに、そのアンケートでは、「プロ野球と六大学の選手、合計547人」を対象としたのですが、「体罰は必要」「ときとして必要」という回答の合計が83%だったのだそう。

これらは「現役選手」を対象としたものですから、それより前の時代であれば、もっと多かったのではないでしょうか?


◆また、「体罰」とは別に、もう1つの問題としてあるのが「勝利至上主義」であり、その結果、勝ち続ける特に強い学校では、優秀な投手ほど、酷使されることに。

実際、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でさえ、球数や登板間隔の制限があるのに、アマチュアや子どもの野球に制限がないのはおかしい、と桑田さんは言われています。

さらにデータとして、戦後の夏の甲子園優勝投手で、その後プロ野球で100勝以上したのは、たった4人しかいないのだとか。

そのうちの1人である松坂投手は、現在故障で苦しんでおり、全盛時とは程遠い状態です。


◆実は桑田さんもその1人なのですが、高校時代からケアを意識していて、「大会が終わったら1ヵ月ボールを握らない」等、肩やひじを壊さないようにしていたのだそう。

それでも桑田さん曰く「高校以前の段階で投げ過ぎていたことは確か」であり「小さいころからセーブしていたら、選手としてもっと長くできた」とのこと。

とはいえ「負けたら終わり」のトーナメント戦では、なかなかローテできないのが本当のところでしょう。

ゆえに高校生の大会もリーグ戦で行うべき、というのが桑田さんの主張です。

……これはこれで、運営する側としては、なかなか大変なのかもしれませんが。


◆こうした問題点の提起とは別に、自己啓発書好きとして見逃せない(?)のが、本書の第3章『「東大野球部」を指導する』です。

ここでは、2013年1月から東大の野球部で特別コーチをしている桑田さんが、いかに選手たちを指導しているかについて言及されているのですが、これがもう「コーチング」そのもの。

上記ポイントの4番目の「言われたことしかやらない」の真逆を行っており、常に選手たちに「考える」よう働きかけています。

しかも練習方法やアドバイスも、桑田さんらしくロジカル。

ここだけ本書の中ではちょっと異質なのですが、野球界に興味がない方でも、一読をオススメしたいところです。


桑田さんには、将来的にはWBCの監督もお願いしたく

スポーツの品格 (集英社新書)
スポーツの品格 (集英社新書)
第1章 「暴力」との決別
第2章 「勝利至上主義」を超えて
第3章 「東大野球部」を指導する
第4章 「新しいスポーツ観」を構築する


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【編集後記】

◆野球ではなくて、サッカーですが。

だれでもわかる居酒屋サッカー論
だれでもわかる居酒屋サッカー論

この本も面白そうですw


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