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2013年10月17日

【オススメ】『ロジカル・ライティング』清水久三子


ロジカル・ライティング (日経文庫)
ロジカル・ライティング (日経文庫)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、『プロの資料作成力』のスマッシュヒットで知られる清水久三子さんの最新作。

タイトルには「日経文庫」とありますが『戦略思考トレーニング』同様、文庫本ではなく、新書なのでご留意を。

アマゾンの内容紹介から。
企画提案も、報告書も、自由自在!文書を正しく組み立て、論理的に書く技術、相手の心を動かす表現の工夫を実践的に解説。

「てにをは」レベルの文章術とは全く違った、「コンサル流儀」のビジネス文書作成術に圧倒されました!




【ポイント】

■1.ビジネス文書の設計図は、「メッセージ」「ストーリー」「構成」から成り立っている
 まずメッセージですが、平たく言えば「言いたいこと」です。そこには含まれていないといけないものがあります。それは「主張」と「根拠」です。(中略)
 次のストーリーは、メッセージを効果的に伝えるための話の展開です。メッセージをそのままダイレクトに伝えても、必要な前提情報や経緯がわからないと唐突で受け入れられません。メッセージを相手の理解度や嗜好に合わせて、制限時間内に伝えることを意識して展開を決めます。(中略)
 設計図の最後は構成です。ストーリーは大きな話の流れで筋道を示しますが、構成は話の全体像とその中の部分の関係性を示します。

(詳細は本書を)


■2.相手の理解レべルから言葉を選ぶ
 複雑な概念を伝える場合には、比喩や引用が役に立ちます。たとえや比喩を使う場合も、年齢や業界など相手のバックグラウンドに加え、理解レべルを考慮しないと、効果が半減してしまいます。例えば、チームワークの重要性を説明するために先達の有名な言葉を引用する場合、相手が管理職層だったらラグビーの名監督の言葉が響く人が多いでしょうし、若手社員の場合であれば、サッカーのキャプテンの言葉のほうが効果的でしょう。


■3.議事録が書けない3つの原因
 議事録フォーマットは、日時、参加者、議事内容、決定事項、TODO(やるべき事項)の欄など書くべきことがある程度、明確に規定されているにもかかわらず、なぜ議事録も書けないと言われてしまうのでしょうか。
 その原因は、いくつかあります。1つ目は、何が書かれていればよいのかという「要件」を埋解できていないこと、2つ目は、内容の理解など「準備」が不足していること、3つ目はビジネスにおける基本的な「表現」を知らないことです。

(詳細は本書を)


■4.依頼文書に必要なマインドは、「おもてなしの心」
 おもてなしの心と言うと日本的・情緒的な印象を与えますが、依頼文書では「やってもらって当然」という考えが少しでも文書から感じられると、相手は動かないと考えたほうがよいでしよう。仕事上必然性があるとはいえ、当然のように頼まれると素直に行動しようという気持ちがそがれるからです。(中略)
 やってもらって当然でもなく、へりくだって仕えるわけでもなく、対等な関係でありながら礼を尽くすことがおもてなしの心だと私は考えています。依頼する際には、相手の労に対して尊敬の念を持って、自分ができることをやり尽くして依頼をするというスタンスが必要です。


■5.「視座」を高め「視野」を広げる
 視座は、立場や人によって異なります。問題を誰の視座でとらえるかは重要です。社員の視座でとらえた問題は、管理職や経営者の視座でとらえ直すとどういうことなのかを考えるのです。(中略)
 視野とは物事を見る広さで、空間軸と時問軸があります。(中略)
 問題を解決するということは、目の前の事象に振り回されたり、安易な対症療法をとったりするのではなく、高い視座と広い視野を持つことが求められます。初めはとても難しく感じますが、「お客様の上司はどう考えるのか?」「自分が社長だったら何を求めるのか?」などと意識することで徐々に身についていく思考ですので、チャレンジしてみてください。


■6.相手にとってのリアリティを表現する3つの方法
1つ目は、数値を相手のリアリティに変換することです。例えば、時間は「1000時間」ではなく、「毎日3時間」という表現にします。1日における時間は、誰にとってもリアリティを持ちやすいからです。
 2つ目は、特徴を相手のメリットに置き換えます。(中略)
「それによって何ができるのか?」という相手のメリットに置き換えましょう。史上初でしたら、「初の一体型製品のため、設置場所が半分」と表現するとよいでしょう。
 3つ目は、行動を特定することです。例えば、料理本に、「つやが出るまで混ぜる」と書かれていた場合、あまり料理をしたことがない人は具体的に何をすればよいのかわかりません。具体的に言うならば、「材料を入れた鍋を中火にかけ、木べらで5分ほど混ぜる。色が黄色に変わったら、弱火にして3分ほどつやがでるまで混ぜる」となります。


■7.感情をコントロールする2つのパターン
 感情をコントルールする思考には、2つのパターンがあります。それは「想像と想起」です。「想像」とはまだ体験していないことを考えること、「想起」は過去に体験したことを思い出すことです。つまり、未来や過去を考えさせることによって、感情をコントロールするのです。
 想像させるためには、「考えてみてください」という枕詞をつけるのが有効です。
「考えてみてください。この取り組みで、子どもたちの笑顔が取り戻せる日のことを」
(喜びの想像)
 想像と同様に、想起は「思い出してみてください」という形で過去を考えさせることで、感情をコントロールします。


【感想】

◆当ブログでは、主に引用を中心とする形式で記事を書いているため、どうしても「引用できる部分」しか挙げられません。

つまり、断片的に抜き出しても、意味が分かりにくい部分や、図表がメインとなる部分は後回しにしています(図表は写真を撮る、という荒業がありますが)。

一方、本書の場合は、これらと違った「紹介しにくさ」がありました。

というのも、最初の4章は1つのテーマなのですが、第5章以降は、各ビジネス文書ごとに展開されており、かつ、それぞれが同じ"フォーマット"(「要件」「準備」「表現」)や"基本的な考え方"(「マインド」「フレームワーク」「情報収集」「ストーリー」等)で整理されているから。

ちなみに上記ポイントも、3番目は「共有文書」の中の「議事録」、4番目は「依頼文書」、5&6番目は「説得文書」の中の「ソリューション提案書」、7番目は同じ「説得文書」の中の「企画提案書」からのものになります。

ですから、1つのポイントが、必ずしも他のタイプの文書に適用できるとは限らないため、この記事だけを見て、そのまま実践するのは、少々問題アリかと。


◆かといって、第4章までに付箋を貼っていないかと言うとそうでもなくて、例えば第3章では「相手の期待を超えたものを提供する」ために「意外性を出す4つのやり方」というのが紹介されているのですが、そこに登場するのが「SWOT分析」

「メッセージが強い(S)/弱い(T)」「追い風環境(O)/向かい風環境(W)」の4象限で、それぞれ施策が解説されていて、これは正直「目からウロコ」でした。

また、同じ第3章では、文書を見せる相手(ターゲット)を分析するために「プロファイリングシート」なるものも登場しているのですが、これにも圧倒されまくり。

本書では、そのフォーマットや記入例も掲載されていますので、気になる方は、ぜひご確認を。


◆そして「もっと簡単に使える話はないのか!?」という方にオススメなのが、第7章の「依頼文書のフレームワーク」。

これは清水さんが外資系企業で働いていた頃、英文メールの書き方の研修をしていて、そこの受験生から非常に評判の高かったものになります。

曰く「英語でメールを出しても返事をもらえない、もしくはなかなか返事がもらえなかったのに、このフレームワークでメールを出したら、すぐに返事がきて行動してもらえたという声がたくさんあった」とのこと。

ホントはこれだけ紹介してエントリーを書こうと思ったくらいなのですが、とりあえず空気を読んで「ネタバレ自重」しました。

もちろん、日本語の依頼文書でも十分威力を発揮するでしょうから、本書の中では、真っ先に実践して欲しい部分と言えます。


◆ただ、本書を読んで思ったのですが、200ページほどの新書なのに「ネタを突っ込み過ぎ」ではないか、と。

それぞれの文書ごとでも新書なら出せるでしょうし、そもそもこの範囲なら単行本で出して欲しかったです。

その分、中身が濃いと言えば濃いですし、付箋も貼りまくってはいるのですが、この本自体が「まとめ」と言ってもいいくらい余計なモノがないのも、読書をするには若干ヘビーでしたw

まー、中身スカスカの本に比べたら、全然いいんですけどね(贅沢な悩みw)。


これはもう、お買い得と言うしかありません!

ロジカル・ライティング (日経文庫)
ロジカル・ライティング (日経文庫)
第1章 「わかりやすい」文書を作るには
第2章 目的を明確にする――基本ステップ1
第3章 ターゲットを知る――基本ステップ2
第4章 メッセージを構成する――基本ステップ3
第5章 共有文書の書き方
第6章 報告文書の書き方
第7章 依頼文書の書き方
第8章 説得文書の書き方


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【編集後記】

◆冒頭でも触れた、清水さんの出世作がこちら。

プロの資料作成力
プロの資料作成力

タイミングを逸して未読なのですが、今回の本を読んで、こちらも読みたくなりました!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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