2013年09月29日
【マーケティング】『「戦略力」が身につく方法』永井孝尚
「戦略力」が身につく方法 (PHPビジネス新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、久々のマーケティング本。著者の永井さんは、シリーズ40万部突破の『100円のコーラを1000円で売る方法』を書かれた方なのですが、そちらと違って本書は物語形式ではありませんのでご安心をw
アマゾンの内容紹介から。
自分の仕事を「見える化」し、結果を出して、自分で評価し、かつ自分で説明できること。日々の業務に仮説検証プロセスを取り入れ、現場やチームメンバーと共有するかたちで仕事を進める。できあがった資料は組織の改善活動にそのまま活かされる。人、組織を巻き込み、成果を上げる戦略を紹介。
この部分だけだと、ピンと来ないかもしれませんが、実際には事例も豊富で分かりやすかったです!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.「顧客絶対主義」ではなく「顧客中心主義」で「顧客中心主義」は、「顧客絶対主義」とは似て非なるものだ。お客様は神様ではなく、「大切な人」と考える。大切な人であるが、間違えることもある。だからすべての要望に応えるのではなく、顧客が気づかない大切な要望に応えるようにする。そして顧客の期待値を上回って、顧客に「すごい」と言わせる。つまり「価格」で勝負するのではなく、「価値」で勝負するのだ。
■2.ターゲットとする顧客は誰なのかを考える
ここで、街の電器店がターゲットとする顧客は誰なのかを考えてみよう。「安さが一番」と思っている顧客は最安値の家電量販店で商品を購入するので、街の電器店はこれをターゲットとすべきではない。街の電器店が狙うべきは「価格は少々高くてもよいから、手厚くサポートして欲しい」という顧客だ。
このように考えると、「近所に住む、シニアの富裕層」が街の電器店のターゲット候補だ。定年を迎えて、お金をある程度持っており、高価なデジタル家電の購入を検討中。価格には敏感ではないが、複雑なデジタル家電のトラブルの際にはすぐ家に来てサポートして欲しい、そのような価値を求めている人たちだ。
■3.顧客に購入後も正当性を感じてもらう
たとえば、車を買った後にその車の記事ばかりを見ている。あるいは高価な服を買った後に、その服の広告が気になる。
これには理由がある。人は高価な買い物をした後に「自分は本当にいい買い物をしたのか?」と不安な気持ちになっている。だから購入後も「自分は正しい選択をした」ということを証明する情報を集めようとするのだ。(中略)
この考え方はビジネスでも重要だ。顧客は「自分が買ったのは正解だった」と証明する情報が得られれば、それを他の人にも伝えようとする。クチコミで顧客も増えるかもしれない。その人自身、将来再購入する可能性も高い。「この商品を選んたのは正解」と顧客に感じてもらうことは、企業にとっても重要なことなのだ。
■4.ライバルは追わないで、顧客に集中する
最優先で考えるべきは、顧客のどの課題を、いかに解決するかだ。ライパルではなく顧客を中心に考えると、顧客の変化に応じて戦略を柔軟に変えられる。オーソドックスに見えるかもしれないが、これが攻めの姿勢なのだ。ライバル企業を考えることも必要だ。しかし、優先順位は「顧客の課題」の次。最優先ではない。
たとえば、若者向けの車の企画を考えてみよう。競合中心に考えると、自社とライバルの若者向けの車を徹底的に比較調査し、ライバルを凌ぐ車を開発することを考える。しかし最近は、若者が車を買わなくなってきた。より重要なのは、若者が車を買わない原因を理解し、どのようにすれば買うようになるかを考えることなのだ。
■5.価格勝負をせず、価値勝負をする
価格競争への対応は、値下げで応戦することだけが唯一の解ではない。付加価値を上げて価格競争からは一線を画して戦う方法もある。別の顧客層を攻める方法もある。価格競争で低収益になった市場からは、いっそ撤退してしまうという決断もある。選択肢は多いのだ。「価格競争だから、うちも低価格で勝負だ」という考え方は短絡的であり、唯一の解ではない。
■6.「言いわけ」せずに「問題の根本原因」を取り除く
たとえば、次のケースはどうだろうか?
「うちの商品は成熟市場向けだ。だから、そもそも売上は伸びないのだ」
これは、「言いわけ」の典型だ。「成熟市場向けの商品である」ことが分かっても、問題は解決できない。「市場が成熟している」という状況を変えることも困難だ。一方で、成熟市場でも売上を伸ばしている会社は数多くある。「成熟市場向けの商品である」ことは、売上が伸びない原因ではない。「言いわけ」だ。
解決の糸口になる「問題の根本原因」は、必ず存在する。(中略)
「言いわけ」と「問題の根本原因」を最初に見極めることが、大切なのだ。
■7.マーケティング施策を進化させる
私はさまざまな新製品担当者から、「自分が担当している新製品がなぜ売れないのか?」という相談をよく受ける。売れないケースには共通点がある。新製品の強みは大いに語れるが、売るべき対象顧客とその顧客ニーズについてはほとんど語れないのだ。新製品を出した段階、最初の顧客が採用する段階、アーリーアダプターが採用する段階、本格的普及に繋げる段階で、マーケティング施策は進化させる必要があるのだ。
【感想】
◆マーケット本は今まで色々読んできましたが、それらと比較しても、本書の分かりやすさはなかなかのものでした。冒頭で触れた永井さんの『100円のコーラを1000円で売る方法』は、タイトルからしてちょっと怪しい(?)ですし、それ以上に物語形式なこともあってスルーしていたのですが、なるほど、本書と同じ著者さんであれば、「シリーズ40万部突破」というのも納得。
その要因の1つは、永井さんご自身が、実際にマーケティングマネージャーとして、現場で苦労されていたということ。
学者やコンサルタントの立場ではない、「企業の中の実務担当者」として身につけられた知識や経験が、今こうして活かされているのだと思います。
◆実際、本書の事例の中には、永井さんご自身の経験されたものも多く、基本的にはビジネス上のお話メインですが、上記ポイントの2番目に関連して、街の電気店も登場。
これは、永井さん宅の照明器具が断線した際、その対応を購入元の家電量販店に電話しても「メーカーに直接問い合わせて」と言われたのに対して、近所の電気店に落ち込むと、5分で完了したというものです。
言われてみれば私の実家も、家電量販店ではなく近所の電気店で、音響製品を購入していました。
確かに、アンテナ繋いだり配線したり、というのは、お年寄りや女性にはハードルが高いようですし、狙うべき層かもしれません。
これも1つの「価値勝負」ですね。
◆また、割愛した中で興味深かったのが、「マーケティング理論は道具に過ぎない」というお話。
私は未読なのですが、こういう本が紹介されていまして……。
戦略サファリ 第2版 -戦略マネジメント・コンプリート・ガイドブック
日本ではポーター教授の競争論戦略は戦略理論の代表として考えられているところ、この本によると、10種類の戦略スクール(学派)のうちの1つに過ぎない、と。
ですから、こうした理論に変に振り回されないためにも、エッセンスを知る一方で、仕事に役立つ部分を活用すべき、というのが、永井さんの主張です。
……それにしてもこの本、分厚いとはいえ、お値段高くて、おいそれとは買えませんがw
◆また、上記ポイントの最後は「キャズム」に関するもの。
ここでのキモは、「キャズムで」いうところの「イノベーター」や「アーリーアダプター」と、「アーリーマジョリティ」との攻め方を変えよ、と言うものです。
例えば前者には「技術情報」を与え、後者には「顧客事例」や「サポート体制の充実」等を伝えよ、と。
というのも、前者はある程度リスクを負ってでも購入に踏み切るのに対して、後者はリスクを気にするから。
キャズム理論については、話としては知っていましたが、対応を変えるべきなのかと改めて知った次第。
理論と実践が結びついた良書です!
「戦略力」が身につく方法 (PHPビジネス新書)
第1章 顧客を理解する力
第2章 市場と顧客を洞察する力
第3章 現場を動かす戦略を構築する力
第4章 戦略を実践する力
第5章 戦略を検証し、改善する力
第6章 自分の「戦略力」を育てる
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【編集後記】
◆田島弓子さんの新作。「頑張ってるのに報われない」と思ったら読む本
「それなんて自分?」と思った方は、ご一読を。
ご声援ありがとうございました!
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