2013年09月25日
【交渉】『絶対に負けない交渉術 やってはいけない35のルール』植田 統

絶対に負けない交渉術 やってはいけない35のルール
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、久々の交渉術のご本。著者の植田さんは、東大法学部卒で、世界最大の企業再生コンサルティング・ファームであるアリックスパートナーズでライブドア、JALの企業再生を担当したという「異色」の弁護士さんです。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
今日から本書を読み、書いてあることを実際に行動に移せば、もう心配する必要はない。
交渉はビジネスシーンに加え、人生においても欠かせない。
交渉の場をうまく操る術を身につければ、あなたの人生が、仕事が、そして恋愛も(!?)スムーズに動き出すだろう。
交渉の場で勝つだけではなく、「交渉した相手と長くいい関係を続ける」ための1冊です!

【ポイント】
■1.熱くなったらいったん中断する自分が感情的になりそうな場合は、交渉をいったん中断してでも休憩を取ることだ。トイレに行ったり、外に出て深呼吸するのもいいだろう。要はひと息入れ、気分を変えることである。
それでも、感情が収まらないときには、思い切って「今日はやめましょう」と交渉を打ち切り、次回に持ち越すことだ。時間を置くことで、自分を冷静に見ることができるし、向き合っていた案件に対しても新しい見方ができる。
■2.交渉成立後の印象を良くしておく
「気持ちいい取引だったな」と思ってもらうためには、交渉の最後にデザート(あるいは「おまけ」と言ってもよい)をつけることである。
たとえば、先方から何も言われなくても、最初に伝えた額より値引きをする。あるいは、ちょっとした頼まれごとをタダでやってあげる、といったことだ。
■3.相手の出方を見たいときは、代理人を立てる
代理人が緩衝材になるため、たとえ費用を払ってでも、代理人を立てて交渉をしたほうが有利だ。当たり前だが、代理人は本人ではないからだ。決定権がないので、先述した担当者のように、代理人が「本人に確認します」と持ち帰らざるを得ない。
すると、冷静になる時問ができる。先方から言われたことが正論かを検討したり、損得を計算して交渉の次の一手を考えたりすることも可能だ。
要するに、時間を上手にコントロールすることができるのだ。
■4.交渉の要素を増やす
第1章でも伝えたが、企業間の売買では、商品(製品やサービスの内容を含む)、個数、金額、納期と納入方法、支払い時期と支払い方法、アフターサービス、そのほかの条件を、交渉要素としてしっかり考えておく必要がある。
1つの問題だけに絞るのではなくて、いろんな要素を入れて交渉するフックを増やしていくのだ。たくさんの交渉のフックを持っていれば交渉はしやすくなる。
■5.相手をよく調べて落としどころを考える
落としどころを考えてはいるのだろうが、自分自身のことしか頭にない。
交渉する際には、相手の事情もよく調べた上で、つまり、きちんと準備した上で、落としどころ=着地点を考えておかなければならない。
相手がどういう状況かを考えたりイメージして、相手によって「だいたいこれぐらい」という落としどころをひねり出す。「ほかのケースではこうだったから、今回もこうだ」と安易に考えていては、交渉を成立させるのは難しい。
■6.相手の言葉の裏を読む
たとえば、転職の面接で面接官から次のように言われたとする。
「あなたの営業経験はスゴイですね。あなたみたいな人がうちで働いてくれたら、とても嬉しい。ですが、報酬の条件がちよっと合わないようなので……」
あなたならどう反応するか。
採用される見込みがありそうだな、と考えて、「何とか採用してください」と粘るだろうか、それとも、「そうですか。わかりました」とあきらめて次の会社を探すだろうか。
私は後者を選ぶべきだと思う。
「報酬の条件が合わない」は、「あなたには希望している報酬に見合う能力がないから、雇えません」と思っているときの、面接官の常套句だからだ。
■7.最後の5分で本心を聞く
初めて会った人の場合、挨拶や名刺交換をしているような最初のほうでは、お互いに警戒心が働き、なかなか本心を聞けない。ところが、ミーティングも終わり頃になってくるとだんだん打ち解けてくる。特にノートや資料をカバンにしまい込んた後、エレべーターに乗るまでの間がチャンスである。
打ち解けたことに加えて、ミーティングの緊張からの解放感もある。本心を引き出しやすい。「ところで、先ほどの○○は、本当はどうなんですか」と質問すると、「いやー、実はあまりうまくいっていないんですよ」といった具合に本心を話してくれる。
【感想】
◆本書はリアル書店で買ったのですが、チラ見した序章の部分にあったのが、サッカー日本代表の本田圭佑選手のお話。ご存知ない方のために、簡単にご説明しておきますと、ロシアのCSKAというクラブにいる本田選手は、ビッグクラブへの移籍を望んでいて、今年の夏に意中のクラブであるACミランへ移ることがほぼ確定していました。
本田圭佑、ミランへの移籍が確定。イタリア人のクラブ番記者が断言「100%覆ることはない」 (フットボールチャンネル) - Yahoo!ニュース
それが土壇場になって、まさかのお流れ。
本田のミラン移籍が完全消滅…本田スレの長い長い夏が終わる : footballnet
植田さんが本書を執筆中にはまだ結論が出ていなかったこともあってか、「現在のチームに留まるか、移籍できるかで、彼の人生は180度変わるはずだ」と書いてあって、「ホントそうだよね」と思わず本書を買ってしまったワタクシ。
交渉次第で、まさに人生も変わってしまうことが良く分かります。
◆もちろん、今回の交渉とは別の次元の要素もあった(ACミランがレアル・マドリードから、ブラジル代表MFカカを獲得できた)とはいえ、本田選手を獲得しようとしていたACミランサイドに落ち度がなかったわけでもありません。
その1つが「感情的対立」。
たとえば、CSKAサイドからは、こんな声が漏れています。
【ロシアの反応】 激おこCSKA会長「ミランの振る舞い目に余る」本田圭佑移籍交渉 - サッカーインフル -
CSKAはヨーロッパのクラブに選手を売る用意があることもある。しかし、交渉の倫理基準があり、失礼なふるまいに目をつむることはできない。これはCSKAのギネル会長のインタビュー記事なんですけど、金額うんぬんではなく、そのふるまいについてご立腹のよう。
実は本書の第2章には「交渉の5大要素」というのが列挙されていて、そのうちの1つが、この「感情的対立」なのでした(その他の要素については本書にてご確認を)。
うーん、おそロシア。
◆また、植田さんは冒頭で触れているように、かつては企業再生コンサルティング・ファームにいたり、その前は会社勤めもされていたいただけあって、他の弁護士先生の書かれた本とはひと味違う気が。
たとえば、上記ポイントの6番目の面接官の「報酬の条件が合わない」というフレーズは、実際に転職の面接で植田さんが言われたものなのだそう。
これが「素晴らしい経験をしていますね」の方にフォーカスしてしまうと、相手の真意が見抜けないワケで、この辺はさすが「異色」なだけのことはあります。
同様に、ポイントの2番目の「デザートをつける」というのも、類書ではあまり見なかったと思われ。
◆ただ、本のコンテンツというより構成の問題として、「小見出しすべてが"NG行為"」というのは、ちょっと分かりにくいかと。
試しにアマゾンのページから、目次のページを開いて、小見出しをチェックして頂きたいのですが、こういう「〜する」という書き方だと、その内容について「そうしなさい」と読むのが普通です。
ところがこれらは、各ページの小見出しの頭に「絶対にやってはいけない!」と付いているので、実はすべてNGということ。
第1章だけは『絶対にやってはいけない「素人」交渉』なので、この書き方でも違和感はありませんが、第2章以降は「絶対に負けない交渉術〜」なんですから、ここからNGとは読み切れないでしょう。
もっとも、各小見出しに対応する形で、「勝つためのルール」と題したOKバージョンが節の終わりにありますので、小見出しスルーしてそちらを読めばいいんですけどねw
ビジネスシーンで活かしやすいコンテンツです!

絶対に負けない交渉術 やってはいけない35のルール
第1章 絶対にやってはいけない「素人」交渉
第2章 絶対に負けない交渉術【基本編】
第3章 絶対に負けない交渉術【戦略編】
第4章 絶対に負けない交渉術【戦術編】
第5章 絶対に負けない交渉術【実践編】
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【ウラ技?】『気づかれずに相手を操る交渉の寝技』間川 清(2012年11月25日)
【編集後記】
◆『考具』の加藤昌治さんの新刊が登場。
企画のプロが教える「アイデア講義」の実況中継
これまた面白そうです!

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