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2013年09月20日

【スゴ本!】『決定力! :正解を導く4つのプロセス』チップ・ハース,ダン・ハース


決定力! :正解を導く4つのプロセス
決定力! :正解を導く4つのプロセス


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、『アイデアのちから』『スイッチ』でお馴染み、チップ&ダン・ハース兄弟の待望の3作目。

私たちの意思決定における問題点とその具体的な解決策について言及した、非常に中身の濃い作品に仕上がっています。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
大ヒット作『アイデアのちから』、『スイッチ! 』のハース兄弟が放つ新たなる全米ベストセラー・ビジネス書。ロックバンド「ヴァン・ヘイレン」のツアーを成功させた独創的な工夫から、命にかかわる選択を迫られた男性がとった行動まで、目からウロコのヒントが満載。4つの「WRAP」プロセスを使えば、あなたの仕事も人生もきっとうまくいく!

「要チェック!」ポイントの連続で、思わず付箋も貼りまくりました!




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【ポイント】

■1.マルチトラックする
研究者のひとりのスコット・クレマーはこう話す。「デザインがひとつしかなければ、自分の自我とデザインが完璧に一致してしまいます。でも、デザインがいくつもあれば、自我とデザインを切り離して考えられるのです」
 これは重要なポイントだ。マルチトラッキングは自我を抑えるのだ。上司がお気に入りのプロジェクトを3つ進めているとすれば、率直なフィードバックを伝えても、たぶん怒らないだろう。ところが、たったひとつのプロジェクトに全身全霊を捧げていたら、真実を伝えるのは一段と難しくなる。彼女の自我とプロジェクトが完璧に一致するからだ。


■2.未来ではなく、過去と現在について聞く
 たとえば、特許侵害訴訟を起こすべきかどうかについて、知財弁護士に相談しているとしよう。弁護士に訊ねるべきなのは、こんなタイプの質問だ。この種の訴訟で大事な変数は? 評決に影響を及ぼしかねない証拠は? 裁判前に和解で決着が付く確率は何パーセントか? 裁判になった場合、原告が勝つ確率は? こんな質問(過去の事例や法的な基準についての質問)をすれば、信頼できる情報が山のように得られるだろう。
 一方、予測的な質問(「この訴訟に勝てると思いますか?」)をすると、弁護士は内部の視点に閉じこもってしまうだろう。カリキュラムを執筆していた学部長のように、成功率を楽観的に見積もりすぎてしまう。


■3.ズームアウトとズームインを使う
 ズームアウトとは、外部の視点に立ち、自分と似た選択をした人々の経験から教訓を学び取ることだ。ズームインとは、状況にクローズアップし、意思決定の参考になる"色合い"をとらえることだ。(中略)
 できれば両方とも実行するといい。アメリカ国民の感情を理解するために、フランクリン・D・ルーズべルト大統領は統計的な要約を作り、かつ手紙の内容を読んだ。競合企業の製品を評価するとき、ポール・スミスの同僚たちは科学的なデータと個人的な経験の両方を頼りにした。命にかかわる意思決定を下すとき、ブライアン・ジクムント=フィッシャーは基準率と実際の患者の話の両方を信頼した。


■4.ウーチング(小さな実験)する
 ハンクスや彼の同僚たちは、ワイヤレス市場に頭から飛びこむ代わりに、まずつま先を付けることにした。「オール・オア・ナッシング(やるかやらないか)」ではなく、「リトル・サムシング(ちょっとだけやってみる)」を選んだわけだ。この戦略(ジャンプの前にウーチングする)は、仮説の現実性を確かめるもうひとつの方法だ。ウーチングすれば、意思決定に実体験を盛りこめるのだ。


■5.親友にアドバイスするつもりで考える
 つまり、他人へのアドバイスにはふたつの大きな利点がある。ひとつは意思決定の最重要な要素を自然と優先できること。もうひとつは一時的な感情を脇に置いておけることだ。そういうわけで、意思決定の行き詰まりを解消するには、こう自問するのがいちばん効果的かもしれない。
親友が同じ状況にいるとしたら、何とアドバイスするか?
 単純すぎるようにも思えるが、こんど意思決定で行き詰まったら、ぜひ試してみてほしい。こう自問するだけで、目の前がぱっと明るくなることに驚くだろう。


■6.事前検屍を行う
「検屍(postmortem)」とは違って、事前検屍はプロジェクトの将来的な"死"を仮定し、「死因は?」と問う。事前検屍を行うチームは暗い未来を想定するところから始める。「よし、今から12ヵ月後、われわれのプロジェクトが大失敗に終わったとしよう。惨憺たる大失敗だ。その理由は?」
 チームの全員が何分かかけて、プロジェクト失敗の考えられる理由をひとつ残らず書き出していく。次に、チーム・リーダーがひとりひとつずつ理由を訊ねていく。これを考えが出尽くすまで続ける。すべてのリスクが明らかになれば、プロジェクト・チームはなるべく多くの負のシナリオの予防策を立て、「誤りに備える」ことができる。


■7.アラームをセットする
 たとえば、あなたの夫がトピアリー制作の事業を始めたいと思っているとする。あなたは突拍子もない考えだと思っているが、彼がやる気満々なので、否定するのはかわいそうだ。こんなときは、アラームをセットするといい。「わかったわ、トピアリー制作の事業を試してみましょう。でも、投資するのは1万ドルまでにしない?」。こんな言い方もできるかもしれない。「やってみましょう。でも、3ヵ月以内にお客さんが現われなかったら、第2の案を真剣に話し合いましょう」
 このようなアラームなら、リスクに上限を設けられる。それに、ある種の安心感も得られる。上限に達するまでは、あなたも夫も自動操縦でいられるからだ。


【感想】

引用量が多くなるので割愛してしまいましたが、冒頭の内容紹介にあった「4つの『WRAP』プロセス」について、ここで簡単に解説を。

まず、一般的な「意思決定の4つの段階」には、それぞれ「罠」が潜んでいます。

 1.選択に直面する。でも「視野の狭窄」によって選択肢を見逃してしまう。

 2.選択肢を分析する。でも「確証バイアス」によって都合の良い情報ばかり集めてしまう。

 3.選択する。でも「一時的な感情」によって間違った選択をしがちになる。

 4.選択の結果を受け入れる。でも未来の出来事について「自信過剰」に陥りやすい。

それに対して、それぞれの「罠」を打ち破る「戦略」が次の4つ。

 (W)選択肢を広げる(Widen Your Optios)

 (R)仮説の現実性を確かめる(Reality-Test Your Assumptions)

 (A)決断の前に距離を置く(Attain Distance Before Deciding)

 (P)誤りに備える(Prepare To Be Wrong)

それを受けて、各戦略における具体的な「戦術」が、上記ポイントの他、本書には多数収録されているという仕様。

「罠」の問題点やその具体例も豊富に登場するのですが、プライオリティから考えて、今回は戦術オンリーでまとめてしまいました。


◆たとえば「視野の狭窄」で言うなら、「ふたりの関係をもっと良くする方法は?」と考える代わりに、「恋人と別れるべきか否か?」と考えてしまうなど。

本書によると、こうした「〜べきか否か」形式の意思決定は、ビジネスの世界においても「長期的に見て失敗しやすい」(1993年、ポール・ナットの調査による)のだそうです。

そこで必要なのが、上記にもあるように「選択肢を広げる」こと。

面白い事例が、「新作ビデオのセール」の実験のお話で、「好きな俳優の出る好きなジャンルのビデオが、特別価格の14ドル99セントで売られている」場合、「買うか/買わないか」で問うと、75パーセントの人がビデオを買う、と答えました。

ところがちょっと質問を変えて「買うか/買わないで、14ドル99セントで別のものを買うか」とすると、今まで25パーセントの人しか「買わない」としていなかったのに、45パーセントの人が「ビデオを買わない」と答えたのだそう。

このように、私たちは選択肢を増やしただけで、いきなり決定が変わってしまうワケですね……。


◆また「一時的な感情」をうまく乗り越えられた好例が、自社のメモリー事業撤退を決心したインテル社のアンディ・グローブのお話。

日本製メモリーに圧倒されつつも、彼の心は、馴染み深く、苦労して築き上げてきたメモリー事業の存続に傾いていました。

それが、たった1つの質問――新しいCEOならどんな策を取るか?――で撤退に踏み切れたという。

また、こうした「距離を置く」戦術で一番効果がありそうなのが、上記ポイントの5番目の「親友にアドバイスするつもりで考える」、というもの。

迷っている本人が、親友のことだと考えるだけで、すんなり「正解」を導き出せる、というのですから、これは試してみる価値はありそうです。


◆これは「視点の切り替え」ですが、同じように感情から距離を置くのに有効なのが、「時間軸を切り替える」戦術である「10-10-10」プロセス。

これは決断してから「10分後、10ヵ月後、10年後」にどう感じるかを考えるというものです。

本書でも紹介されていますが、詳細はこちらの本に。

10-10-10 人生に迷ったら、3つのスパンで決めなさい!
10-10-10 人生に迷ったら、3つのスパンで決めなさい!

参考記事:【5つのツボ】「10-10-10人生に迷ったら、3つのスパンで決めなさい! 」スージー・ウェルチ(2010年01月26日)

紹介ついでに申しあげておくと、上記ポイントの4番目の「ウーチング」の考え方を1冊丸々かけて扱っているのが、こちらの本。

小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密
小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密

参考記事:【オススメ】『小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密』ピーター・シムズ(2012年04月05日)

さらに、冒頭の内容紹介の「ヴァン・ヘイレンの独創的な工夫」とは、この本で触れた「M&M'sチョコレート」のお話になります。

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】
アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】

参考記事:マッキンゼーが選んだ『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』の10個の原則(2011年06月23日)


◆長々と述べて参りましたが、最終的に本書の優れているところは、このように「具体的な戦術」がキチンと述べられているところかと。

人は頻繁に意思決定している割には、「罠」に気つかず、悩み続けたり間違った決定をしてしまいます。

それが、本書にある戦術を1つでも2つでも使えば、すんなり結論(しかも正しい!)が出る可能性も高いかと。

クエーカー社が18億ドルもかけて買収を失敗したり、コダック社が倒産しなくても済んだと思います(詳細は本書を)。


これはオススメせざるを得ません!

決定力! :正解を導く4つのプロセス
決定力! :正解を導く4つのプロセス
第1章 意思決定の4つの罠
第2章 視野の狭窄を避ける
第3章 マルチトラックする
第4章 自分と同じ問題を解決した人をみつける
第5章 逆を考える
第6章 ズームアウトとズームイン
第7章 ウーチングする
第8章 一時的な感情を乗り越える
第9章 核となる優先事項を貫く
第10章 未来を"幅"で考える
第11章 アラームをセットする
第12章 プロセスを信じる
次のステップ
クリニック
障壁を乗り越えるには


【関連記事】

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【オススメ】『小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密』ピーター・シムズ(2012年04月05日)

【5つのツボ】「10-10-10人生に迷ったら、3つのスパンで決めなさい! 」スージー・ウェルチ(2010年01月26日)

マッキンゼーが選んだ『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』の10個の原則(2011年06月23日)


【編集後記】

◆土井英司さんのメルマガで知った1冊。

やってのける ~意志力を使わずに自分を動かす~
やってのける ~意志力を使わずに自分を動かす~

既に売れちゃってますが、今からでも読まねば!


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