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2013年09月12日

【思考のワナ】『なぜ、間違えたのか?』ロルフ・ドベリ


なぜ、間違えたのか?
なぜ、間違えたのか?


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも、特に注目されていた1冊。

ドイツの「2012年年間ベストセラー・ノンフィクション部門」で1位となり、現在も売れ続けているのだそうです。

アマゾンの内容紹介から。
わたしたちはよく、誤った判断を下してしまう――。
自分を過小評価するよりも、過大評価することのほうがはるかに多い。
何かを手に入れるときよりも、失う危険があるときのほうが、はるかに素早く反応する。
このような傾向を知っていると、自分の行動がどんな間違いにつながるかを予測できるようになる。
本書ではそんな、誰もが陥ってしまう「思考の落とし穴」を52項目、ユーモアあふれるイラストとともに、切れ味鋭く解説する。
世界各国で話題となっているドイツ発のベストセラー、待望の邦訳!

しかも、本書の出版のきっかけとなったのが、『ブラック・スワン』刊行直前のナシーム・ニコラス・タレブとの出会いと聞いては、スルーできませぬ!?


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【ポイント】

■1.イメージのワナ


R Graffiti / CarbonNYC

 ドイツ語には「Rで始まる」単語と「Rで終わる」単語ではどちらがたくさんあるか? 答えは「Rで終わる」単語は「Rで始まる」単語の2倍以上ある。しかし、この質問をされた人のほとんどが答えを間違える。どうしてだろう? それは、Rで始まる単語のほうがすぐに思いつくからだ。
 わたしたちは、自分が思いつく単純な実例を手がかりにイメージをつくり上げている。ばかげたことだ。なぜなら、想像しやすいというだけの理由で、現実の世界では頻繁には起こらないことを思い浮かべ、それが現実であると信じているからだ。


■2.「いったん悪化してからよくなる」のワナ


Lit d’hospitalisation a 6 places / zigazou76

「いったん悪化してからよくなる」のワナは、「確証のワナ」の親戚でもある。自分の専門と言っていながら、その分野を実は何も理解していない、あるいはまったく確信がもてない人には、このワナを利用するのが無難である。悪化すれば、予測の正しさが証明されるからだ。反対に予測に反してすぐに改善されれば、顧客は喜び、それも自分の手柄になる。どちらに転んでも、自分は正しいことになる。


■3.回想のワナ


Euro Financial Crisis Word Cloud - Green / EuroCrisisExplained.co.uk

世界にはおよそ100万人もの経済専門家がいるのに、金融危機がどのように進行するかを正確に予測した者は1人もいなかった。多くの専門家は「回想のワナ」にハマリ、過去を振り返って金融危機は予測できたと発言しているだけなのだ。
「回想のワナ」は、取り除くのがもっとも難しいワナの1つだ。「こうなることははじめからわかっていた現象」とでも言おうか。あとから考えてみれば、すべては必然的に起こったように思える、というワナである。


■4.コントロール幻想のワナ


Wonder if there's any relation? / Lawrence Leonard Gilbert

 ニューヨークのマンハッタンで道を渡ろうとして信号のボタンを押す。しかし、実はそのボタンは機能していない場所がある。それならば、どうしてボタンがついているのだろうか? 自分が信号の色を変えることができると、歩行者に思わせるためだ。ボタンを押すことで、信号待ちの苦痛がいくらか解消されることが実験でも証明されている。
 エレべーターの開閉ボタンも、押しても意味がないことがある。ニセのボタンを本物と思い込む「プラシーボボタン」だ。


■5.基準比率無視のワナ


zebra / chaouki

 どこの大学の医学部でも、医学生は「基準比率の無視のワナ」にハマって直感で誤った判断を下さないようにするためのトレーニングを受けている。アメリカでは、医師になろうとしている人なら誰もが聞かされる言葉がある。「ワイオミングで蹄の音が聞こえ、白黒の縞が見えたような気がしても、それでもやっぱり馬だろう」。つまり、風変わりな病気と推測する前に、まず標準的な可能性に目を向けよ、ということだ。
「基準比率の無視のワナ」による間違った判断を下さないためのトレーニングを受けられる職業は、残念ながら医師だけである。


■6.誤った因果関係のワナ


Reading / surlygirl

 最近読んだ新聞にもこんな記事があった。本がたくさんある家庭の子どもは本が少ない家庭の子どもよりも成績がいい、という記事だ。この調査結果が発表されてから、世の親たちは本を買いあさるようになったらしい。「誤った因果関係」のいい例である。実際には、一般に、教養のある親はそうでない親よりも、子どもの教育に関心があるというだけのことだ。教養のある親はそうでない親より多くの本をもっているが、本そのものが子どもの成績に決定的な影響を与えているのではない。親の教養の程度と遺伝子が影響を与えているのだ。


■7.自己奉仕のワナ


Picking up the garbage bags-Tamanna / nist6ss

 わたしが暮らしているアパートに、5人の男子学生がシェアしている部屋がある。エレベーターで彼らといっしょになることがある。そこでわたしは、学生たちがごみ出しをどれくらいの割合で担当しているか、それぞれの学生に別々にたずねてみた。
 ある学生は「2回に1回」と答えた。別の学生は「3回に1回」と答えた。さらに別の学生は、はちきれそうにパンパンにつまったごみ袋を片手に、悪態をつきながら答えた。「ほとんどいつも、9割は俺が捨てている」。全員の答えを合計すると100%になるはずなのに、彼らの答えた数字を合算すると320%になってしまう! 予想通り、彼らは自分の役目を過大評価していた。


【感想】

◆個人的にも興味深いテーマである「行動経済学」。

本書は、その行動経済学にも通じる「思考のワナ」を52個紹介しています。

ちなみに著者によると、わかっているだけでこのようなワナがおよそ120あるそうで、本書は「その中から厳選されたもの」といって良さそうな。

当然、今まで当ブログで取り上げてきたものや、世間的に広く知られているものもありましたが、今回は、できるだけユニークなものを選んでみたツモリです。


◆たとえば上記ポイントの2番目の「『いったん悪化してからよくなる』ワナ」。

タイトルだけ読んでもピンと来ませんでしたが、著者のドベリには身に沁みて分かった経験がありました。

彼がフランス領コルシカ島で休暇を過ごしている際、急な腹痛に襲われます。

そこで、その島の医師に診てもらったところ、薬を処方され「いったん悪くなりますが、そのあとによくなります」と言われたのだそう。

確かにその後、症状が悪化したため、彼は医師を信用します……航空救助隊にスイスの病院に搬送され、盲腸炎の手術を受けるまではw←笑い事じゃない

このパターンは「問題解決を依頼されたコンサルタント」にも使える手であり、打つ手が間違っていて「問題が悪化」しても、それは「見立て通り」という仕様。

偶然事態が好転したら、それはそれで「見事解決しました!(ドヤ顔)」と言えるというw


◆また、ポイントの4番目の「コントロール幻想のワナ」も、私は知りませんでした。

事例に挙がっている信号のボタンの効果は、なるほど絶妙ですね。

同じく本書で紹介されていたのがサイコロの例。

「たいていの人は、大きな数字を出したいときには力を込め、小さな数字を出したいときにはできるだけそっと振る」という指摘は、なるほど確かにw

要は「実際には自分ではどうにもできないことに対して、自分で制御でき、影響を与えると信じてしまう」ということ。

それを受けて本書では、「自分自身で影響を与えられることだけに専念せよ」と説いています。


◆なお本書は、巻末に18ページにも及ぶ参考文献の一覧を収録。

そもそも個々のワナに対して、事例が複数紹介されているので、引用元や研究を載せていたら、それは膨大な量になります罠。

そういうアカデミックな作りの反面、ワナそれぞれにグラフィックアーティスト、ビルギット・ラングのフルカラーイラストが付されているのも、なかなか面白いな、と。

ちなみに、こんなテイストの方です。

birgit lang - illustration

……装丁は地味なんですが、中を開くとシャレオツ仕様ワロタw


気軽に読めて、ためになる1冊

なぜ、間違えたのか?
なぜ、間違えたのか?
なぜ、「意見が一致したら要注意」なのか?
なぜ、エラい人には遠慮しないほうがいいのか?
なぜ、「自分だけはうまくいく」と思ってしまうのか?
なぜ、お酒をおごってもらわないほうがいいのか?
なぜ、モデルの友人は連れていかないほうがいいのか?
なぜ、少ししかないクッキーはおいしく感じるのか?
なぜ、歴史的事件の意味は、あとからでっちあげられるのか?
なぜ、「選択肢」が多ければ多いほど、いいものを選べないのか?
なぜ、自分に似ていれば似ているほど相手を好きになるのか?
なぜ、ゴールキーパーはじっとしていないのか?
なぜ、商談のときにはなるべく高い価格から始めるべきなのか?
なぜ、自分の知識や能力を過信してしまうのか?

ほか


【関連記事】

【オススメ】『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』ダン・アリエリー(2012年12月11日)

【ヒューリスティック】『思い違いの法則: じぶんの脳にだまされない20の法則』レイ・ハーバート(2012年04月24日)

【行動経済学】『鈴木敏文の実践!行動経済学』(2012年03月03日)

【ネタ満載】「ねじれ脳の行動経済学」古川雅一(2009年04月24日)

「行動経済学」友野典男(著)(2006年07月20日)


【編集後記】

◆本書に関連して、タレブの作品も。

まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか

これも「思考のワナ」なんでしょうね。


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