2013年08月07日
【サッカーファン必読!?】『日本サッカースカウティング127選手』ミケル・エチャリ,小宮良之

日本サッカースカウティング127選手
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「スペインフットボール界でも最高のスカウティング技量を持つ」と言われるミケル・エチャリ氏による、日本人選手並びにサッカー日本代表チームの寸評集。2003年UAEワールドユース大会で日本代表チームに興味を持ったエチャリ氏は、その後も日本代表の戦いぶりを定点観測しており、そこに新たにJリーグの試合も追加して「日本サッカーの今」を分析したものが本書になります。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「エチャリのような人物がいてくれたおかげで、プロの道が拓けた」 ――シャビ・アロンソ
グアルディオラも高評価するスカウティング力を持つ目利きによる、日本代表、次世代、Jリーグ全127選手のスカウティングリポート!
なお、明日はウルグアイ戦の選手発表もあるということで、既に「代表当確」「先発常連」と言われているメンバーは割愛して(スイマセン)、当確線上(?)の選手を中心にまとめてみました。

【選手寸評】
■1.高橋秀人FC東京をスカウティングした印象だが、プレービジョンは日本人選手の中でもトップレべル。中盤の配給役として、最善のプレーを選択するMFだ。例えば攻撃のとき、相手に阻まれて跳ね返されたボールがどこにこぼれるか、察知して即座に動いている。次のプレーが読めている証拠だ。そして再度ゴールに近づき、攻撃に厚みを与えられる。(中略)
パス1本で味方を動かし、プレー全体のスピードを上げられる技量はやはり非凡。ミドルシュートのタイミングも正しい。プレーリズムを変えながら、中盤で味方を操り、助け、試合を支配できる点も出色だろう。また、バックラインとアタックラインとの呼吸もいい。Jリーグで1、2を争うMF。
■2.鈴木大輔
体格は良く、フィジカルコンデイションもDFとして適正。速く、強く、勇敢かつアグレッシブ、空中戦の高さも標準以上だろう。(中略)
しかしどうやら戦術的熟成度が低いため、集中力の欠如からあり得ないポカを見せることもある。また、いくつかのアクションで辛抱できず急ぎすぎてしまうことも欠点と言えるだろう。
それでも、指導者次第では世界的センターバックになれる素質だ。優秀なセンターバックはリーガエスパニョーラでも枯渇しているだけに、成長次第では可能性もある。個人的にはオリンピック世代で、「最も育ててみたい素材」と思わせた選手である。
■3.山口蛍
オリンピックでは一度決断すると、プレーに迷いがなかった。ボールを前に運ぶ技術、2列目からのランニングでボールを引き出す異能は持ち味の1つ。また、カバーリング意識が強いのは◎。扇原とのコンビも良かった。(中略)
狭いエリアでのプレーは申し分ないレベルだけに、今後は広いエリアで展開するプレー能力を身につけられるか。潜在的なダイナミズムをいつでも表現できるようになれば、リーガだけでなく欧州のトップリーグで活躍する道が拓ける。
■4.山田大記
体格は悪くない。利き足がどちらかわからないほど、両足を巧みに使えるのは際立った特長。両足でのドリブル、左足での強いシュート、そして優れたプレービジョンにより選択するプレーは、すでに国際レべルにある。
名古屋戦はプレーの選択において、一度も不正解がなかった。サイドでのプレーに自在に対応し、右ではサイドバックを引き出してスルーパスを送り、左では自ら深く侵入して決定機を演出。ショートレンジ、ロングレンジ、どちらのプレーも容易にやってのけ、ゴール前も含めてピッチのどこにいても一向にプレーの質が落ちない。
コンタクトプレーが少ないJリーグではフィジカル能力を測るのが難しいが、技術戦術の部分はJリーグで突出している。
■5.森重真人
体格はセンターバックとしては細いが、補ってあまりあるほどアジリティーが高い。右利き。フィード、ポジショニング、空中戦は非の打ち所がない。個人能力が優れているにもかかわらず、それに頼らないところも○。右センターバック、左サイドバック、ボランチとのコンビネーションプレーに優れている。ボールを持ち運びながら、いいプレー判断、選択ができるのは◎を付けられる。実にエレガントな雰囲気を醸し出すセンターバックだ。
マイナス要素はほとんど見当たらないが、代表に選ばれていないのは理由があるのか。
■6.豊田陽平
体格は長身で大柄。右利きだが、左足も同じように使う。まず、デスマルケ(DESMARQUE/マークを外す動き)が異彩を放つ。とりわけ密着されればされるほど、パスコースを上手く空けてボールを呼び込める。敵の空隙を付くマリーシアを持っているのだ。シュートアクションも同様で、相手の視界から消え、コースを見つけるセンスはFWとして最高級の部類。(中略)
ただし世界のトップクラブでのプレーを考えるなら、動作を連続し、より速めるべきだろう。1つのプレーが終わった後、わずか1拍だが間が空いてしまう。現状では、リーガエスパニョーラのクラブは難しく、オランダリーグの上位クラブがべストの選択か。
■7.工藤壮人
いわゆるセンターフォワードとしては力強さを感じない。欧州のトップレべルではポストワークに耐えられないだろう。
しかしボールをコントロールする方向とその流れからのシュートは止まることがなく滑らかで、大いなる才能を感じた。頭でコースを変えるなどへディング技術も高く、基本的テクニックとビジョンを備え、スペースに入ってフィニッシュする能力もある。おそらくはDFを背負ってプレーするボジションではなく、ゴールに近いポジションで前を向いてプレーすることができれば、もっとその才能が生かされるはずだ。
欧州移籍を考えているならば、そうしたプレーコンセプトを持ったチームを選ぶ必要があるだろう。
【感想】
◆127人もの選手が収録されているので、その中から7人選ぶのは結構大変でした。いや、だって先発メンバーだけでも11人いるわけですし、ベンチを含めたらその倍以上。
ゆえに、何度も代表に選ばれている常連は割愛して、先日の東アジアカップで新たに選ばれたメンバーを中心にした次第です。
……って、初っ端が代表常連の高橋先生なのは置いといてw
ただ、高橋選手は毎回代表に選ばれても、試合の最後の方にちょこっと出るだけなので、素人の私には今一つ実力が良く分からなかったのですが、Jリーグの試合を観た(代表枠での寸評ながら、代表の試合での出場時間は少なすぎたため)エチャリ氏は激賞してますね。
◆なお、言及されている代表の試合は、南アフリカW杯から先日のコンフェデまで。
ゆえに、東アジアカップでの評価は本書には含まれていません。
注目のセレッソ大阪の柿谷選手は、J1第1節の対アルビレックス戦での寸評が収録されており、この試合では最後に点を取ったものの、「ほぼ消えていた」前半の内容を大幅に改善すべし、との指摘が。
日本代表の欠点である「決定力」を兼ね備えている柿谷選手ですが、「試合から消えてしまう」傾向をザッケローニ監督はどう考えているのか……。
◆また、選手だけでなく、チームとしての評価についても興味深いものが。
例えば、南アフリカW杯直前の代表チームについては「前線からの激しいプレッシングも攻めたくてうずうずしている、もしくは攻めないで守っているのに耐えられない、というように見えた」とのこと。
……うーん、確かに思い当たるフシがありますねw
さらに、現在までの評価も、ポジティブな面を挙げ連ねながらも、以下のようなネガティブな面も指摘。
「コーナーキック時の守備のマークのズレ、8人も敵ペナルティエリアに入るなど過剰な攻撃参加(攻撃への強迫観念)、危険なロストボール、カウンターへの備えがない、攻撃しているときの守備の準備不足、各選手のカバーリングの遅さ、ミドルシュートの精度の悪さ、フィニッシュの精度の低さ」
これまた、「耳イタイ」お話ばかりですな。
◆全般的にディフェンス陣、、中でもセンターバックについては厳しい評価が多かった感じがしました。
特にセンターバックの常連である、吉田選手と今野選手は改善点がかなりある模様。
というか、今野選手の適正ポジションは、センターバックではなく1列前のボランチである、と。
いや、適正な人材がいれば、ザッケローニ監督もそうしたいんでしょうけどね……。
◆一方、攻撃陣については称賛のコメントが多く、特にエチャリ氏がお気に入りっぽいなのが、岡崎選手。
「プレーセンスは日本代表においてナンバー1」「FWとして、もしくは1人のフットボーラーとして、マイナス点を見つけるのが難しい」と、最大級の評価をしています。
もちろん、本田選手、香川選手についてもそれぞれ賛美の言葉を連ねてますけど、まぁこの2人は今さら言わんでもw
そして清武選手、乾選手については、褒めつつも、問題点をしっかり指摘していて、これまた納得。
2人が代表定着、さらには先発で出るためには、今後何とかしてもらわないといけないポイントでした。
◆ちなみに、エチャリ氏によると、「Jリーグで1,2を争うクレバーなフットボーラー」というのは、上記で登場している高橋&山田両選手と、中村(俊)選手。
ただし「総合的にフットボーラーとしてJリーガーの中で最も高い評価を付けた選手」が他に1人いるのですが、これは一応ネタバレ自重ということでw
いずれにせよ本書は、私たちが日頃接しているメディアとは「ひと味違う」視点で日本サッカーを評価している点で、サッカーファンにはたまらない内容だと思われ。
もちろん、「自分のお気に入りの選手の寸評を楽しむ」という読み方もアリでしょう。
サッカー日本代表並びにJリーグのファンなら要チェックな1冊!

日本サッカースカウティング127選手
序章 名スカウトが見たフットボール・ハポネス
第1章 日本代表の戦術分析
第2章 日本代表のスカウティングリポート
第3章 次世代のスカウティングリポート
第4章 Jリーグのスカウティングリポート
最終章 日本代表の現在地
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【編集後記】
◆本書はもちろん内田選手についても言及されていますが、ウッチーファンならこちらもww
SAMURAI FOOTBALL VOL.10(ゴング格闘技2013年9月号増刊)
エチャリ氏によると内田選手は「プレービジョンは欧州でも最高レベル」だそうです。

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