2013年08月06日
【起業】『ジャスト・スタート 起業家に学ぶ予測不能な未来の生き抜き方』レオナード・A・シュレシンジャー,チャールズ・F・キーファー,ポール・B・ブラウン
ジャスト・スタート 起業家に学ぶ予測不能な未来の生き抜き方
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、久々の「起業本」。本書の著者陣の1人であるレオナード・A・シュレシンジャー氏がかつて学長を務めた「バブソン大学」のことを、お恥ずかしながら全く知らなかったのですが、バブソン大学は「起業家精神(アントレプレナーシップ)教育において、20年連続で全米ナンバーワンの評価」を受け、これまでに数々の優れた起業家・経営者を輩出してきたのだそう。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
ほんの少し先の未来さえ見えない、不確実性にあふれた現代社会においては、そもそも予測できることは限られている。何が起きるかわからないのだ。
ならば、考えるより前に「賢い一歩」を踏み出そう。
創造(クリエイション)と同時に行動(アクション)を起こす「クリアクション」こそ、起業家たちの考え方と行動から導き出された、成功の秘訣。
まず行動し、その成果をもとにリスクを受け入れ、みずからの手で未来を築くのだ。
あれこれ思い悩んだあげく、なかなか実行できない私にとっては、耳イタイ1冊でした!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.見通しが立たなくとも行動するマスメディアで起業家が取り上げられる場合、判で押したようにその行動に焦点が当てられる。ハワード・シュルツやマイケル・デルは会社を創業するためにどんなことをしたか、といった具合に。(中略)
だが、サラスヴァシー教授は、起業家の行動――実に独創的なものばかり――には目を向けず、彼らの考え方に着目した。そして、彼らが物事を推論し、問題に取り組み、チャンスを利用するプロセスに驚くほどの共通点を見出した。もちろん、細かい部分は個々のケースによって異なるが、基本的なアプローチ法は同じだと教授は判断した。
先の見通しが立たない場合に、起業家は行動する。具体的には次の手順を踏む。(1)手始めに小さく、賢い一歩を踏み出す
(2)一歩進んで学んだ結果を、立ち止まって確かめる
(3)学んだ結果を次の一歩に活かす
■2.「賢い一歩」の3つの原則
●手近な手段ですばやく行動する。自分の知識、人脈、そのほか何でも利用できるもの(「素晴らしいシェフを知っている。家族や友人に協力を頼めば、開店資金を集められるかもしれない」)を活用する
●許容損害の範囲内にとどめる。賢い一歩に必要なコスト(時間、資金、評判など)は、思いどおりにいかなかった場合に失っても構わないと思える程度に抑える
●協力者を増やす。利用できるリソースを増やす。それと同時にリスクを分散し、アイデアを固める
■3.許容損害を定める
成功した起業家は、必ずと言っていいほどリスク管理の基本原則を守る。すなわち、結果を予想できないことを行なう際には、(1)得られる利益以上の金額を支払ったり賭けたりしない。(2)失っても大きな影響のない金額を超えて支払ったり賭けたりしない。
これらの原則をひと言で表わすと、どちらも「許容損害」となる。これから冒すであろうリスク――新たに会社や事業を始めるに当たって費やす時間、資本金、その他のリソースなど――の影響を考えて、計画どおりに事が運ばない場合に、これ以上失うわけにはいかない限度を定めるという考え方だ。
■4.事前の調査は行わずに、試作品の反応を見る
起業家は少ない資金で事業を始めるだけでなく、ほとんどの場合、従来のような事前の調査はほとんど行なわない。その代わり、身近な人のところへ試作品を持っていき、注文を取るべく最終的な特徴や長所を細部にわたって説明する。
なぜか? 潜在的な顧客の反応を目の当たりにすることによって、どこに問題があるか、顧客はどのような疑問を持っているか、どの点を改良すべきかといったことがわかるからだ。場合によっては製品が売れるかもしれない。市場調査が売り上げに結びつくのだ。誰かがあなたの製品を買うまでは、新しい会社を興すに至ったアイデアは想像にすぎない。最初の売り上げがあがるまでは現実にはならないのだ。
■5.協力者を作る
起業家が競争分析を行なわないという事実は、統計的にも裏づけられている。(中略)
だが、ひとつだけ彼らがたっぷり時間を割くことがある――起業するにせよ、別のことを始めるにせよ、彼らは周囲の人々にもこれを強く勧める。それは、早い段階からできるだけ多くの人の理解を得て、事業に誘い入れるということだ。自らの意志で協力を表明した人が仲間になれば、それだけリスクが分散され、自分のアイデアは注目に値すると認識することができ、さらなるリソースを入手したうえに、もっと楽しむことができる。事実、起業家たちはサラス・D・サラスヴァシー教授にこう語っている。曰く、会社がどれだけ成長するかは、集めた資金の額ではなく協力者の数によって決まる、と。
■6.プレディクションとクリアクションの使い分け(抜粋)
●予測できる状況では予測する
●予測が難しいほど、プレディクションを用いるのは非効率的
●予測が難しい状況ほど、同じだけの結果を得るためにコストをかけ続けるべきではない
●明らかに予測可能でも、行動は考えるだけよりも意味を生み出す
●行動すれば常に何らかの発見があるが、考えるだけでは何も見つからない
●すでに述べたように、プレディクションとクリアクションにはそれぞれ向き不向きがある
【感想】
◆冒頭の内容紹介で「クリアクション」の簡単な説明がありましたが、本書内でのその対義語とも言える「プレディクション」について触れておらず申し訳ございません。これはひと言で言うと「予測に基づいた推論」のことで、通常の企業活動等は、すべてこのプレディクションに基づいて行われています。
分かりやすい例が「人口動態統計」で、現状から推測すれば、●十年後の世界の人口や年齢構成等はほぼ断定可能。
実際、新しいビジネスを検討する際に、こうした予測は現在でも良く使われていますよね。
◆一方、「未来を予測できない場合にどうするか」というのが本書のテーマであり、その場合に「成功した起業家」が活用しているのが、クリアクションである、と。
ただし、上記ポイントの6番目の初っ端にもあるように、リソースの無駄遣いを防ぐために「予測できる状況では予測する」のが当然ですし、プレディクションとクリアクションは、状況に応じて使い分けるべき。
もっとも、同じくポイントの6番目にあるように「たとえ予測可能でも行動した方が良い」場合もあります(詳細は本書を)。
そして私たちは、日頃からプレディクションを使う習慣が身についてしまってるので、まずクリアクションを使えないかどうかを意識するよう、本書では提案されていました。
◆個人的に興味深かったのが、上記ポイントの3番目の「許容損害を定める」。
プレディクションの世界では「期待収益」を重視するところ、クリアクションの世界では「許容損害」を重視するワケです。
ただし、前者の数字は「未来を予測できない場合」にそもそも計算することが無謀であり、あくまで仮説に過ぎません。
それに対し後者の数字は、現在の資金状況や、失うことのできる限度額といった「既知の情報」から導き出すものですから、かなり確度が高いモノ。
クリアクションは「見通しが立たなくとも行動する」にもかかわらず、むしろこちらの方が「地に足の着いた」やり方ではないか、と感じました。
◆ここまで読んできて、当ブログの読者さんなら、この本を思い出されているかも知れません。
小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密
参考記事:【オススメ】『小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密』ピーター・シムズ(2012年04月05日)
本書の「補足」によると、実はこの本と本書のテーマは同じなのだとか。
ただし、『小さく賭けろ!』の方が具体的な事例が豊富であったのに対して、本書の方が、大学のカリキュラムを意識している分、アカデミックな印象を受けました。
また、相対する概念である「プレディクション」を引き合いに出している分、本書の方が深みがある出来になっていると思われ(後発なんで、工夫があるのは当然なんですけどねw)。
バブソン大学の教育の真髄が詰め込まれた1冊!
ジャスト・スタート 起業家に学ぶ予測不能な未来の生き抜き方
[序] 不確実な時代を生き抜く
Part I 未知の状況に直面したら
[1] 未来を予測できない場合にどうするか
[2] 何はさておき欲求
Part II 不確実なことにチャレンジする
[3] 手近な手段で行動開始
[4] 許容損害を決める
[5] 学んだことを活かす
[6] 協力者を作る
Part III クリアクションを実践する
[7] 現在の結果としての未来――プレディクションとクリアクションの使い分け
[8] 不確実に備える――仕事でのクリアクション活用法
[9] 日常生活におけるクリアクション
[10] クリアクションで世界を変える
[終] 興味深いコメントや質問への回答
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【編集後記】
◆こちらはタイトルが気になった1冊。君の働き方はサラリーマンか、ビジネスマンか。
内容は「伝説のビジネスマンが贈る、『51の成功の習慣』」とのことなので、チェックしてみなくては!
ご声援ありがとうございました!
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