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2013年07月17日

【圧巻!】『田中角栄秘録』大下英治


田中角栄秘録 (イースト新書) (イースト新書 8)
田中角栄秘録 (イースト新書) (イースト新書 8)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、田中角栄元総理の人物像を明らかにした1冊。

数多くの関係者の証言を元に構成されており、新書ながら300ページを超えるという「読み応えのある」作品となっています。

アマゾンの内容紹介から。
「借りた金は忘れるな。貸した金は忘れろ」、「人は実感したものを信用する」、「権力の中枢は空洞だ」等数々の名言を残した田中角栄。角栄とは何者だったのか。戦後日本の象徴。鉄の結束を誇った「田中軍団」を作り上げた宰相。さらにはロッキード事件後も「闇将軍」として威力をふるった権力の源泉はどこにあったのか。盟友大平正芳、ライバル福田赳夫、竹下登、金丸信、小沢一郎、羽田孜、石破茂といったその後、一世を風靡する数多くの側近たちの証言をもとに昭和の巨魁・田中角栄の実像に迫る。

改めて、田中氏のスケールの大きさに圧倒されました。


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【ポイント】

■1.「1対1で会ってはいけない」
 かつて、田中の盟友と言われた大平正芳元首相が、身内に言っていた。
「田中とは、絶対に1対1で会ってはいかん。あいつは、人間じゃない。霊能師だ。1対1で会うと、必ずあいつの言うことを聞かされてしまう。必ず、複数で行け」
 百戦錬磨の大平正芳でさえ、そんな状態である。当時、弱冠24歳の青二才の石破茂が、田中角栄と1対1で向き合って勝てるはずもなかった。


■2.史上最年少で大蔵大臣になった際の挨拶
 大蔵省の役人たちを前に、田中が歴史に残る挨拶に立った。
「自分が、田中角栄である。こ存じのように、わたしは高等小学校卒業。諸君は全国から集まった秀才で、金融財政の専門家だ。しかし、棘のある門松は、諸君よりいささか多くくぐってきている。
 しかし、今日から諸君と一緒に仕事をすることになるのだが、わたしは、できることはやる、できないことは約束しない。これから、一緒に仕事をするには、お互いをよく理解することだ。今日から、大臣室の扉は常に開けておくから、我と思わん者は誰でも訪ねて来てくれ。上司の許可はいらん。仕事は諸君が思うように、思いっ切りやってくれ。しかし、すべての責任は、この田中角栄が負う。以上」
 凄まじい迫力だった。


■3.渡した金に睨みをきかせる
 福田派の議員が福田にお金を借りに行くと、福田はさんざん理由を聞いて、そのあとで、値切る。
 田中の場合は、お金を借りに行くと、何も聞かずに、気前よく相手が必要としている額以上のお金をくれる。
 ただし、田中は、後々になって、その渡した金に睨みをきかせる。金をもらった議員が、田中の申し出を断ると、「そんなことを言えた義理か」と迫る。


■4.金はもらうときより、渡すときに気をつける
 しかし、田中は、ひとつだけ佐藤(昭)に口を酸っぱくして言い聞かせていたことがある。
「金はもらうときより、渡すときのほうに気をつけろよ。相手に負担のかかるような渡し方をしちゃ、死に金になる。だから、金をくれてやるというような態度で渡してはいけないよ」
 田中は、幼いころから、父の借金のために苦労させられた。親戚たちにも、下げたくもない頭を何度も下げた。その悔しさや辛さは、忘れていなかった。そのため、佐藤には、執拗と思えるほどに念入りに釘を刺したのである。


■5.下の者を大事にする
 朝賀(昭)が、田中の供をして料理屋に行ったときのことである。田中が、朝賀に言った。
「女中や下足番は大事にしろよ」
 朝賀は、田中からそう言われて、料理屋に行くたびに田中の評判が気になるようになった。女将の評判はもちろんだが、女中、下足番の評判は群を抜いていた。
 朝賀は思った。
<オヤジも、小佐野さんと同じ百姓の出だから、下の者を思う気持ちがあるんだろうな……>


■6.他派閥の人間でも応援する
「おい、羽田(孜)。そう多くないが、これも何かの足しにしてやってくれ。ただし、これは、田中さんからです、なんて一切、言うな。おれが、各方面に電話をしたことも言う必要はない。すべて、おまえがやった、ということにしろ」
 羽田は、恐る恐る訊いてみた。
「ご存じの通り、青木さんは石井派です。幹事長が総裁選に出ることがあっても、一切、応援はしてもらえないと思います。それなのに、幹事長から、いただいてよろしいんでしょうか」
 その瞬間、羽田に怒声が浴びせられた。
「馬鹿野郎! おまえが、そんな生意気なことを言うんじゃない! 青木一男は日本政界の宝だ。自民党の顔として、どうしても必要な人材なんだ。あの人がいなくなったら日本のためによくないッ」
 参議院選挙の結果、青木はみごとに当選をはたした。が、のちに鬼籍に入るまで、田中から受けた恩恵をついに知ることはなかった。


【感想】

◆ちょっと長くなってしまったので、この辺で。

冒頭でも触れたように、新書ながら300ページを超えるボリュームに、まずは圧倒されました。

ただし、いったん読み始めると、後はもうノンストップ。

おかげで寝坊して、記事の投稿が(ry


◆まず序章では、昭和55年頃の現自民党幹事長の石破茂氏と、その父親である二朗氏とのエピソードが紹介されていますが、田中氏が政治家になる前から第1章が始まります。

昭和22年に28歳で初当選を果たし、昭和32年には戦後初めて30代で大臣(郵政)就任。

さらに、昭和36年には政調会長、40年には自民党の幹事長にまで登りつめるという出世ぶり。

その最大の武器は「情」にありました。


◆実際、割愛したエピソードでも、年上年下に関わらず、情けをかけまくり。

例えば、最初に総裁選に名乗りを上げた際には、多数派工作で福田赳夫氏に勝てる目途が立ったものの、盟友である大平正芳氏が急に参戦。

田中氏は「自分の次に大平氏」と考えていたため、「票が少ないと総理の資格がなくなる」と、苦労して集めた票を大平氏にまわしてしまいます。

ただし、過半数を超えなかったため行なわれた決戦投票では、大平派はその思いに応え、田中氏に投票。

結果福田氏を圧倒して、田中氏が念願の総裁の座についたという……。


◆ちなみに本書では、本文とは無関係に、ところどころ田中氏の「名言」がコラム風に紹介されています。

これがまた、当ブログ的には非常に「ツボ」だったのですが、解説が一切ないため、いつどんな状況で述べられたものかがわからず、さすがに記事の中心にすることはできず(当たり前)。

それでももったいないので、いくつかピックアップ。

●初めに結論を言え。理由は3つに限定しろ。世の中、3つほどの理由を挙げれば、大方の説明はつく。

●必ず返事を出すんだ。結果が相手の希望通りでなくても『聞いてくれたんだ』となる。大切なことだよ。

●会議の長さは出席者数の二乗に比例し、会議の成果は出席者数の二乗に反比例する。

●時間の守れん人間は、何をやっても駄目だ。

●私はメシも仕事も早い。一生の間、理想を追っても結論を見出せないような生き方はキライだ。すべてのことにタイムリミットを置いて、可能な限りの努力をするタイプだ。


……どこぞのコンサルタントの言葉かと思う限りでワロタw


田中角栄、恐るべし!

田中角栄秘録 (イースト新書) (イースト新書 8)
田中角栄秘録 (イースト新書) (イースト新書 8)
序章 田中角栄 情は武器なり
第一章 越山 田中角栄の戦後
第二章 上昇気流
第三章 権力の階段
第四章 栄光と挫折――その死


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【編集後記】

◆本書は「ビジネスパーソン仕様」とは言い難いのですが、こちらは当ブログの読者さんにオススメ。

田中角栄流「生き抜くための智恵」全伝授 (ロング新書)
田中角栄流「生き抜くための智恵」全伝授 (ロング新書)

レビューは上記関連記事にございます。


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